宵(R18)


メッセージ一覧

1: アラヤ式 (2003/10/01 12:36:00)[mokuseinozio at hotmail.com ]

大変なことになった。

俺を追っ手の死者から助けてくれた女が、自分を抱いて欲しいという。

包帯ぐるぐるまき状態の俺は、突然のことにベッドから身を起こしたまま、呆気にとられて情けないことに声もだせない。

女は、見た目14歳前後、黒いレースのセーターを羽織った人形みたいな女。

梟がやかましく泣き喚く夜、女はベッドの側に突っ立っていて、夜這いにやってきた、らしい。

困った。

断っておくが、俺は幼女趣味ではない。

絶対に。

まじで。

ほんとだってば。

しかし、こまったことに、俺の横で突っ立っている女は、おとぎの国から飛びだしたような絶世の美女なのだ。

床にまで届く長いナチュラルブロンドの髪に、白い磁器をおもわせる肌。つぶらでそのくせ大きな赤い瞳が、めちゃくちゃかわいい。

今すぐ押し倒した……いや、だから待て俺。

わざとらしく咳払いをして、俺は不測の事態の収拾にかかる。

「いや、おまえさんには、すごく、とっても、空前絶後に感謝している。
あのままだったら俺は死者の餌になってた。
だけど、今すぐ抱けっていわれても、その、ぶっちゃけ困るぞ。 お互いの気持ちもあるしな。
もっと自分を大事にしろよ」

俺は自分でも感心するほど、良心的で節度ある説得をした。

ギンギンな自分のあちらさんを抑えるのにホトホト苦労するが、だからといって、見た目中学生に近い少女に手をだすのは社会的にまずいとおもう。

「……あなたは、私がきらいなの?」

アルトルージュは目の端に涙をにじませて、肩をふるわせて尋ねてくる。

おいおい、反則だろ。

そんな特権行使の可愛すぎる仕草をされたら、俺の脳のシナプスは一本残らずショートして焼き切れちまう。

「お願い。 傲慢なのはわかってる。 それでも私、あなたに愛されたいの」

目をつぶり、アルトルージュは言葉を振りしぼる。

このとき俺の脳内で、部屋の隅っこに置いてある魔剣アヴェンジャー似の狐天使と狐悪魔の、壮絶な攻防戦がはじまった。

(やっちまえよ! こんなチャンス、二度と御目にかかれないぜ〜!)

(うむ。 僕ちんもまったくもって同意見!)

さいしょから攻防戦になっちゃいなかった。結局、俺は両方の意見を取り入れることにした。

もう、なんとでも言え。

彼女を受け入れることにした俺は、いきなり事におよぶのも面白くないので、少し意地悪をする。

「じゃあ、先に脱げよ」

「え?」

「当たり前だろ。 言い出しっぺはおまえさんなんだからな」

意地の悪い俺の要求に、アルトルージュのくりくりした丸い瞳は泳ぎ、指をもじもじさせて途端におろおろしはじめる。

自分でもなかなか鬼畜だとおもうが、余裕を失っている女の姿は見ていて楽しいものだ。

ましてやそれが、死徒の姫さまであればなおさらのこと。

アルトルージュは顔をまっかっかにして頷くと、たどたどしい手つきで服を脱ぎ始めた。

羽織るように着ていた黒いセーターが、はらりとカーペットに落ちる。

その下にはクリーム色のドレス。アルトルージュは肩をだすようにして脱いでいく。

窓から差し込んでくる月明かりに照らされて、真っ白い肌があらわになった。

雪のような透明度のたかい肌色に、俺の心臓はビート刻みをはやめ、血液が全部集まって破裂しそうになる。

恥らう少女の姿に、不覚にも、生唾を音が出るほど飲み込んでしまった。

純白の下着をつけるアルトルージュは、まぶしすぎるほど綺麗だった。

恥ずかしさが極限まで達しているのか、アルトルージュは小ぶりな胸を両手でかくしたまま動こうとしない。

「こいよ」

俺は手招きで、アルトルージュをベッドへ導いた。

向かい合うように、アルトルージュは俺の前でしゃがみこむ。

伏せ目がちで、ちょこんとお座りするアルトは、等身大のフランス人形。

こんな綺麗なものが、生きて鼓動を打っているのがまったくもって不可思議だ。

「あなたも、脱いで」

羞恥を押し殺してむけられる要求。確かに、女を先に脱がせておいて自分が服を着たままなのはイエローカードだ。

俺はTシャツを乱暴に脱ぎ、ジーパンに手をかける。

ええい、ままよ。

一気に自分の身ぐるみをはいで、俺は堂々と、真っ裸であぐらをかいて座り込んだ。

邪魔な包帯も、復元がすすんでいたのでとっぱらう。

互いに一糸纏わぬ姿になった。

しばらく、俺たちはみつめ合って硬直する。

想像どおりなら彼女はきっと初めてだろうし、いざこうなると俺も手を出しづらい。

アルトルージュの表情は、裸の俺をみたまま完全に固まってしまっている。

俺はこのフリーズ状態を解くべく、俯くアルトルージュを少し乱暴に抱き寄せた。

彼女は驚いた声をあげて、抱きしめた瞬間むずがって体を震わせる。

アルトルージュの体は、余裕で両腕を回せるくらい小さくて、彼女の滑らかな肌の感触が直に伝わってきた。

肌はとれたてのラ・フランスのようにすべすべしていて、肌をあわせて抱いているだけで、きかん坊がいきりたってくる。

「……エンハウンス」

しばらくして、振り絞るように彼女は俺の名を呼んだ。

彼女の肌の感触に夢中になっていた俺は、ふと我に帰る。

アルトルージュは、林檎のように真っ赤になった瞳で、俺の、あれを、じっとみつめていたのだ。

それに気がついた俺は、顔から火が出そうになった。

アルトルージュは消え入るようなか細い声で、呟いた。

「……触っても、いい?」

俺の目は、きっと漫画みたいに点になっていたとおもう。アルトルージュは俺のモノをみつめて、声がふるえていた。

未知との邂逅に怯えながらも、多少なりとも興味はあるようだ。

「おまえさん、意外と」

「いや! いわないで」

途端に彼女は首をふって目を閉じた。もう、恥ずかしさも限界をこえているのだろう。俺はいじわるするのをやめて、彼女の手を握った。

「あ……」

おびえる彼女の欲しがっていたところに、導いてやる。

アルトルージュの小さな手はひんやりと冷たく、触れられただけで気分が高揚する。彼女は困惑極ってか、握る手が小刻みに震えている。

「好きにしていいぞ」

アルトルージュは俺の言葉に少し安心したのか、微笑をうかべた。幼子的な背徳感も相まって、破滅的にかわいい。

アルトルージュの指は、俺の先端を恐る恐るつついたり、先端に軽く触れたりする。

はじめて玩具をもらった子供のような姿に、不謹慎だが笑いそうになった。

馴れない手つきでしごかれる感覚はかなり新鮮なもので、体の奥が高ぶっていく。

アルトルージュは馴れてきたのか、だんだんスピードをあげてきた。

う。

俺はもう夢中になって遊んでいる、彼女の手をとめた。

途中で遮られたアルトルージュはかなり不満なのか、頬を膨らませている

「……ここまでやらせておいて、案外だらしないのね」

む。

少しカチンときた。

自分から触れたいとぬかしておいて、その言い草はないだろ。

「だらしないかどうか、自分の口で試してみろよ」

言うがはやいか、俺はアルトルージュの頭を両手でつかむと、驚いた声をあげる彼女に構わず、可憐な口を強引に導いた。

ヌメッとした湿り気が、熱さとともに俺の分身を包み込んでくる。

息がままならない彼女に構うことなく、俺は無理やり彼女に口淫させる。

くぐもった声をあげ、苦しむ彼女には悪いとおもうが、ここで夜の主導権を渡すわけにもいかない。男の沽券にかかわる。

しゃぶらせるスピードを徐々に上げる。

アルトルージュの顔はますます苦悶の色を濃くし、塞がれている口からは声にならない喘ぎが、先端に響いてくる。

彼女の目尻にたまる涙が堰をきりそうで、これ以上続けるとこぼれてきそうなので、開放することにした。

抜いた瞬間、彼女の下唇と俺の先端とのあいだに、透きとおった糸ができる。

放出はしていないが、

しゃがみこむアルトルージュは、苦しそうに咳き込んで、口元を抑えている。

余程苦しいのか、飲み込めないものを飲み込もうと頑張っている。

その努力も空しく、耐え切れなかったアルトルージュは、大粒の涙をこぼしはじめた。

俺は自分の節操なしの行動に、さすがに後ろめたさを感じた。

このままにはしておけない。ベッドの隣においてあるティッシュペーパーを何枚かまとめてとる。

彼女の口の近くまでもっていき、ニガイもの(くどいようだが出してはいない)を吐き出させるように勧めた。

だが、アルトルージュはニガイものを口に留めるのが精一杯で、外に出す余裕すらなさそうだ。

しょうがないので、俺は自分の人差し指を、彼女の唇にそっと触れさせた。

そのまま指を口腔へすべり込ませ、ゆっくりとなかのニガイものを掻き出していく。

「ん……」

アルトルージュは目をつぶって、俺の行為を素直に受け入れた。

爪をたてずに、口の中を傷付けないようにしながら、苦い液体をかきだしてティッシュにとる。

しみこんだ唾液とニガイものの混じった液が、テッシュに透明なシミをつくった。

指を出し入れするたびに、アルトルージュの桜色の頬が飴玉をなめているようにぷくっと膨らんで、なかなかかわいい。

ニガイものは粗方とりおえ、用の終えたティッシュを丸めてゴミ箱に捨てた。

「……はぁ」

荒々しい呼吸で、ぺたんと座ったアルトは肩をふるわせている。双眸は完全に普段の凛々しさを失って、とけかかっている。

しばらくして、目に若干の力がもどったアルトは、ジト目で俺をにらみつけてきた。

「……ひどい」

「ハッ。 だらしなくはなかっただろ?」

つかの間の勝利にひたる俺に、アルトルージュは結構お冠のようだ。

窓の外は、月の明かりが雲に邪魔されて、

彼女の裸体をわずかに照らしていた光も遮られた。

「……いいな」

「どうした?」

「あなたは、自由ね」

アルトの不意な問い。

「自由っていうのも、あんがい不自由なものなんだぜ?」

「不自由にしばられた自由より、ずっといいわ」

雲は、風に流されて、再び淡い光が、彼女の顔をてらしだす。

姫でも、死徒でもない、ただ一人の少女の顔。

「不満があるわけじゃないのよ。
リィゾやフィナは、私に良くしてくれるわ。
今日、城をぬけだしてこれたのも、ブライミッツに頼みこんだおかげなの」

ああ、あのいけ好かない犬っころか。

ちなみにそのワン公は、そとに備え付けの小屋で就寝中だ。

「でも、時々たまらなくなるの。 なにか違うことがしたくなって、たまらない時があるの」

「金持ちの気まぐれか?」

「違う!」

皮肉っぽくいった俺に、アルトルージュは顔を真っ赤にしておこる。

「酔狂で、こんな、こんな恥ずかしいことできない……!」

声を荒げるアルトルージュを、俺はベッドに押し倒した。

「だったら、もう余計なことは考えるな」

声をあげそうになる彼女の肩を両手でおさえつけ、そっと体を重ねた。

火照ったアルトの体から、心音が直に伝わる。

大人と子供くらいの身長差があるから、頭を彼女と同じ位置につける。

恥じるアルトの金髪が、シルクの糸のように白いシーツにまかれた。

真っ白な肌に浮き出た鎖骨に、舌を這わせる。

「あ」

アルトの鎖骨を甘く噛み、ほとばしる快感を追ってなぞってやる。

「今ここにいるのは俺とおまえ。 それだけだろ?」

「あ、ふ」

皮膚の下にある硬い骨が、俺の舌でなぞられるたびに、アルトルージュは淫靡な嬌声をあげる。

香水のような甘い香りが鼻腔をくすぐり、脳髄が甘美でとけそうになる。

鎖骨をいじめていた舌をそのまま今度は耳朶へ持っていく。同時にお留守にしていた右手を彼女の頭に、左手は胸へ。

やわらかい耳のぷにぷにとした感触が、舌を介して伝わってくる。左手は、小ぶりな胸を外周から揉みしだき、桜色の先端を軽くつまんだ。

耳と胸を嬲られ、アルトルージュの喘ぎはますます熱をおびる。

「……私、胸ないから恥ずかし……あっ!」

二箇所を同時に攻められ、アルトルージュは小さい舌をだして軽く気をやっている。

口元からは抑えきれない唾液が筋をつくって枕をぬらし、頬に流れていたそれを、俺は舐めとった。

舐めとってあつめた唾液は、アルトにそのままお返しした。

舌をからめあう激しい接吻に移行した。お互いの歯茎をなめ貪るような激しいものになる。

音をたて、恥も外聞もなく、アルトは積極的に求めてきた。腕を俺の背中にまわし、きつく抱きしめて離れない。

キスをしているさなか、アルトの赤い瞳が揺らぎ、涙の量が増しているのが如実にわかった。

やめるつもりはない。気持ちよすぎる唇のやわらかさは、手放すには惜しい。

唇はそのまま、胸をいじっていた左手を、今度は下にもっていく。

下腹部へ左手をゆっくり滑らした。それに気付いたアルトは、唇を離す。

「……いや、そこ」

初めて触れられる、一度も誰にも触れられたことのない場所。

羞恥に駆られたアルトは足をきつく閉じて、侵入を阻止しようとする。

俺は再び、彼女の唇を力強くうばった。強張っていたアルトの体は、キスで徐々に弛緩していく。

その隙に、俺の指は目的の場所にたどりついた。

しっとりと濡れている花びらが、淫乱に咲き誇っていた。

中指をつかって軽く触れると、アルトは途端に目を見開いて反応する。口はふさがれているので、声は出せない。

花びらの中心に指をもぐりこませると、腰がピクピクと震え始めた。

「ん!」

指をうごかす。

柔らかい花弁は指を出し入れするたびに、あつい粘液がからみつき、そのたびにアルトの声にならない声が俺の口腔で響いた。

内側をこすられる快感に、アルトの顔が紅潮していく。楽しいので、舌をからませるキスと同時進行で愛撫をくりかえす。

段々はげしさを増す愛撫は、いやらしい音をたて、アルトを快感という奈落の底へおとしていく。

入っている指から伝わるのはこまかい襞の列。膨れたかわいらしい突起をいじると、汁はとめどなく溢れてくる。

耐え切れなくなったアルトは、唇をはなして喘ぐ。

「いや、だめぇ!」

「あーあ。 こんなに濡らしちゃって、いやらしいお姫様だな」

「……い、やぁ」

からかわれたアルトは、快感でゆるんでいる顔を両手でかくした。

それでも押し寄せる快楽の津波は、彼女の理性を確実に破壊していく。

白い太腿はこまかく揺れて、背中をつかむ彼女の振るえる手が、もう限界に達していることを暗示していた。

「……もう、やめて。 ……辛いの」

彼女を愛していた手をとめる。

中にいれていた指は関節まで液で濡れて、彼女が感じきっていた証拠だった。

アルトはよほど疲れたのか、胸を大きくふくらませて、吐くように息をしている。

抱擁は解かないまま、その淫らな様子を眺めることにした。

脱力しきって、無防備な女。

それは、死者たちを蟻のように、圧倒的な膂力で撃破する吸血姫ではない。

彼女の淫らな一面を自分が独占しているようで、なかなかいい気分だ。

だが、ここで終わりというわけにもいかない。俺のきかん坊が、いい加減もう限界だ。

彼女の上気した頬に手で触れる。アルトは俺の意図を理解したのか、呼吸を整えて無言で頷く。

「いいんだな。 もう後戻りはできないぞ」

「……うん。 愛して」

賽は投げられた。

自分の身をおこし、正常位の格好で落ち着く。彼女の太腿を両手でひらいた。

間近に目にする秘所は、嚥下してしまうぐらい綺麗な、ほんのり霞みがかった桜色をしていた。

割れ目のなかの突起は真っ赤に充血していて、俺の受け入れを待っている。

入り口に先端をあてがう。表情が強張るアルトに気を遣いながら、ゆっくりと、腰を沈めていった。

徐々に沈んでいく肉棒から、熱くてやわらかい壁が締め付けてくる。

「い、いたい……!」

奥にいくまでの抵抗はことのほか強い。アルトはこの間にも、目をきつく閉じ、歯を食いしばっている。

彼女の白魚のような手は、両方ともシーツをきつくにぎりしめ、裂かれるような破瓜の傷みに必死で耐えていた。

なるべくはやく、痛みから開放してやらないとまずい。

肉棒を戻すことなく、一定の速さで、一気に押し込んだ。

「あぁ!」

アルトの嬌声とともに、全部中にはいった。

花弁から、透明な液に混じった鮮血が、肉棒の襞をつたわって流れ出てきた。

彼女の震える背中に手をまわし、包み込むように抱擁する。

なめらかな白い肌の感触は、一つになった快感とあいまって、例えようもない情感が奥底からわきでてくる。

「動くぞ」

繋がったばかりで、泣いているアルトルージュの返事も待たず、俺は律動をはじめた。

「あ! うぁ!?」

いきなり動かされたので、アルトの意識は襲ってくる激しい波に、ついていくことができないようだ。

出し入れをするごとに、花弁が粘液とともにまとわりついて、肉棒をきつくこすられる。

この快感は、異常だ。

「あ! あ! エンハ……ウンス……ああっ!」

アルトの喘ぎのボリュームは、回を重ねるごとに高ぶっていった。

花びらの奥から染みでる液が潤滑剤の役割を果たし、アルトも腰を回すようにつかい始める。

はじめての快感を必死でうけとめているアルトの健気な姿に、否が応にも興奮する。

深く、アルトの奥にうちつける槌は、彼女の神経を鋭敏にさせている。

小ぶりな胸の中心にある乳首がたち、アルトは俺の動きにあわせて、体をしならせる。

弓のように反り返ったラインは、美術品をおもわせる美しさ。

「私……変、ん!……なにか、くるの……怖い……!」

「怖がるこたない。 そのままいっちまえ」

「やぁ……!」

アルトルージュに覆い被さって、荒い抽送をくりかえす。

根元までいれて、抜いた時にアルトは感極まったようにあえぐ。

抜く時のほうが感じるみたいだ。

ならば、

「ひゃっ!?」

繋がったままアルトルージュの上体を起こす。俺の両足はベッドに投げ出して、アルトを上にもっていき、そのまま抱いた。

対面座位の格好になる。アルトの身長は低いから、このほうが抱きしめてもしっくりとくる。

涙をにじませて、アルトは懇願するようにみつめてくる。

「エンハウンス……あっ、あたる、の……」

正常位とは違うところをこすられて、また違った淫悦にひたっているようだ。

アルトの腰をつかみ、あげる。

「あ!」

持ち上げたところで手を緩め、そのまま彼女の自重にまかせて沈めた。

「ああっ!!」

一際甲高い声をあげ、アルトは体をくねらせる。

互いに汗ばむ肌をすりあわせて、ベッドのスプリングのはずみがはやくなる。

繰り返し抽送され、つきあげる刺激に我慢できないのか、アルトは俺の左肩に歯を立てた。

血が、流れる。

少し痛いが、目を瞑って必死に耐えているアルトが愛らしいので、そのままにしておく。

「ん! んぅ!」

締め付けが一団と強くなり、一つになっている部分が痙攣しはじめる。

もう、限界か。

「だすぞ」

「……んぁ……あう……」

牙を突きたてたままでは返事できるわけもないだろうが、俺は肯定と受け取った。

アルトの奥に、深く突き上げるような一撃を放つ。刹那、頭が真っ白になった。

「あぁ、ああああああ!!」

黄金の髪を淫らに振り乱して、アルトルージュは達した。

彼女のなかを、俺の白い濁流が満たし、噛み付いている牙も、同時に細かく痙攣している。

背筋をつきぬける電撃のような快感がほとばしり、

股間はアルトの液で濡れて、花弁は俺のものをつかんではなさない。

赤い瞳から涙が溢れ、俺の肩を濡らす。




「あなたの……赤ちゃん……欲しい……」




脱力したアルトが、意識を手放すまえに呟いた願い。

繋がったまま昏倒したアルトを抱きかかえた俺は、やりきれない焦燥にかられてしまった。

生物的に強者である死徒同士が交配できる確率は、

限りなく、ゼロに近い。











目に、眩しい光が差し込んでくる。

気がつけば、もう太陽は昇っていた。

お日様は苦手だけど、私は素直に『おはよう』ということができた。

ベッドから身をおこすと、彼の姿はない。

一瞬不安になったけど、扉越しに彼の鼻歌が聞こえてきた。

良かった。

昨日の燃えるような逢瀬を思い出すと、私は急に恥ずかしくなって、枕に顔をうずめた。

好きな人と愛しあうのが、こんなに嬉しいことだったなんて知らなかった。

私の粘液でぬれていた部分は、激しい情交があったことがなかったように綺麗になっている。

彼が、寝ている間に私の体を拭いてくれたみたい。

雑把にみえるけど、優しい人。

窓から、トントンと音がする。

あ。

円らな黒い目をしたブライミッツ・マーダ―が両前足をかけて、じっとわたしをみていた。

気のせいか、じと目で睨まれているような気がする。

一晩中、外にほったらかしにしたから当たり前よね。

ごめんね。 あとで血液あげるから、許して。

私は目配せで魔犬にお詫びした。

「おーい」

彼が呼んでいる。

私はあわてて飛び起きると、脱ぎ捨てていた服に袖を通した。

甘い香りが立ち込めるキッチンでは、白いTシャツに赤いバンダナを頭に巻いている彼が、フライパンを振るっていた。

彼は、私に気がつく。

「おはようさん。
小腹空いたろ? お姫様のお口にあうかどうかわかんねえけどな」

彼が炒めていたのは、山小屋に貯蔵されていたジャガイモ。

ぶつ切りにして、オリーブオイルと一緒に加熱して、塩コショウで味付けしたシンプルな料理。

彼とテーブルに向かい合って、朝食をとる。

皿にもられたクリーム色の芋にフォークをつきさすと、スポンジのように抵抗なく突き通る。

口にほおばると、油で表面は香ばしくパリッとした食感、なかはホクホクしていて美味しい。

「俺は百姓だから、昔はいつもこんなもんばっかり食ってた。 ま、今もだけどな」

彼はそういうと、テーブルに肘をついて、ジャガイモを乱暴に口に放り込んだ。

フィナのつくる料理も美味しいけど、彼の料理も美味しい。

毎日こんなに美味しいもの食べられたらいいな。と私がいうと、彼は苦笑いでやめとけといった。

「貧乏なんて、望んでするもんじゃないぞ」

銀色でぼさぼさの髪をかきあげて、彼は笑う。私は彼の、ただ一人の女になりたいと心の底から願った。


彼が、私の前から姿を消したのは、それから二日たった朝のことだった。


記事一覧へ戻る(I)