琥珀と志貴の物語第二話


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1: 昆布 (2003/06/15 17:37:00)





                           月姫 SS









志貴の通う学校から屋敷に通じる裏道

そこは普段から人通りが少なく今では少し大きな荷物を抱えた女性以外、誰もいなかった

その道の曲がり角のところに一つの影が立っていた

いや、立っているというより浮かんでいると言う表現の方が近いか

それは蜃気楼のように揺れていた

その影の中から不意に目のようなものが光り、一人で歩いている琥珀に向けられた











「はあ、ホントに人がいませんねー」

琥珀はとぼとぼと歩いていた

周りを見渡しても誰もいない

その空間だけが切り離されたかのように感じ、琥珀は身震いした

急に気温が低く感じた

なぜか震えが止まらなくて歩く足を速めた

早めれば早めるほどに嫌な空気が濃くなっていった





これはなんなのか

琥珀は突然殺気のようなものを感じた

酷く、張り詰めた空気

耳鳴りが止まらず

世界が揺れている

全てが危ういものに感じた

それがなんなのかわからない

わからないから不安になり

不安になるからそれら琥珀の周り全てが崩れるような錯覚に陥る



ふと前方を見た

そこには影のようなものが浮かんでいて鋭い眼光がこちらを睨んでいた

琥珀は明らかに狙われていた





「あ、なに、これ・・・」

いやなかんじ

何かが降りかかってくる

そう思った

琥珀はあまりの不安と恐怖に崩れ落ちそうになった

もうだめ・・・

そう思ったとき後ろから声をかけられた







「琥珀さん!!」









   琥珀と志貴の物語

                     第二話







琥珀は聞こえるはずのない声に反応して振り向いた

そこには息を切らして走っている遠野志貴がいた

志貴は琥珀のそばまで来ると息を整えて言った

「琥珀さん、おかえり」

「・・・・・」

「?、どうかしたの?」

「あ、いえ、ただいま志貴さん」

琥珀はなんとか笑顔を浮べて言った

だが志貴は琥珀の微妙な変化を見落とさなかった

「琥珀さん、どうしたの?顔色悪いけど」

「え?そうですか?」

「そうですよ!さっきもふらふらしてたじゃないですか

思わず走ってきましたけどどこか具合悪いんですか?そういう時は遠慮しないでいってくださいよ

もう遠慮するような間柄じゃないんだから」

志貴は琥珀の十八番である『お姉さんは怒ってますよ』ポーズを取って言った

「あ、はい・・・でもべつになんでもないんですよ?」

「そんな顔で言っても説得力ないですよ。日射病ですか?秋とはいえまだ日差しは強いんですから帽子くらいかぶった方がいいですよ」

「う〜ん、そうですねー」

「うむ、素直でよろしい」

琥珀と志貴は同時に笑い声を上げた

「うふふ、志貴さんったら・・・そういえば学校はもう終わったんですか?」

時刻は1時過ぎ

学校が終わるには早い

「あはははは・・・さぼってきちゃった」

志貴は頭をぽりぽりとかいて言った

「もう、さぼってはいけませんよ」

「いや、でも琥珀さんのことが心配で・・・」

志貴はあれから心配でいてもたってもいられずに授業を放り出してきたのだ

「はあ、じゃあこれから喫茶店にでも行きましょうか」

「え?なんで?」

「だってこのまま帰ると翡翠ちゃんにサボったってことがばれちゃいますよ」

「あー・・・そうか、そこまで考えてなかった」

翡翠にばれる=秋葉にばれる

ということはまた秋葉の小言のネタになると言うこと

志貴はやだなーと言う顔をした

それを見て琥珀はくすくすと笑いながら言った

「それじゃ、志貴さんいきましょうか」

「うん、行こう琥珀さん」

二人は腕を組みながら歩き出した

琥珀はついさっきまで感じていた恐怖を忘れていた

それは愛する志貴のおかげだったということを琥珀はわかっていた













そのあと

裏道では影が一人で呟いた

「あの男、何者だ?たやすく結界を破り我が呪縛を解くとは・・・

協会のものか?とりあえず様子を見るか・・・」











その後志貴と琥珀は4時近くまで公園などで時間をつぶして家に帰った



「はあ、はあ・・・志貴さんは毎日この坂を上ってるんですよねー疲れたりしませんか?」

「うーん、慣れればどってことはないよ」

息を切らしている琥珀とは対照的に志貴は涼しい顔をしていた

「志貴さん、疲れというのは気付かないうちに蓄積しているんですっ

ですから知らず知らずのうちに体を酷使していて、気付いた時にはボロボロになってるなんてことはよくあるんですよ

だから家に着いたらマッサージをしたりして体を休めてくださいね!」

「んー、でもマッサージって言われても・・・」

「だめですっ!深呼吸とか肩を回すだけでもずいぶんと楽になるんですよっ」

「・・・(志貴、顎に手を当てて思案中)

いや、俺には必要ないよ」

「志貴さん!」

志貴はにやりとして言った

「俺の場合疲れが溜まっても週末に『治療』してもらうから

 だから今晩も疲れを取ってくれるかな?」

それを聞いて琥珀は顔を真っ赤にしてしまった

「・・・・」

「あれ?琥珀さんどうかした?」

「そ、その・・・わたしからも・・・お願いします」

もじもじと顔を赤くしながらこんなことを言われた日には志貴の理性も吹っ飛びます

志貴は有無を言わさず琥珀を抱き寄せてキスをした





つーか白昼堂々門の前でそんなことしてるのはどうかと

ほらほらあっちから翡翠が歩いてきた

・・・・うっわーすごい怒ってる

これは報告決定だな

しかも気付いてないし二人とも

・・・・まだやってるよ



3分後

ようやく志貴と琥珀は離れた

といってもまだ二人は視線を合わせながら抱き合っているのだが

そんな二人を尋常じゃない殺気を込めて見ている翡翠

この後の志貴の運命

推して知るべし









あとがき



はい、志貴と琥珀はラブラブです

そのせいで謎の男の影が薄いこと薄いこと

それじゃあこれにてさよおなら


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