あらすじ
秋葉倒れる
以上
琥珀さんは叫んだ。俺は縛られたままだ
「次のお題は・・・・持久走です!」
なんだって?
「つまり、長距離走のことだな。持久力を競い合うものだと推測される」
いつも間にかネロ・カオスが俺の隣に移動していた
「そんなことはわかる。なんで持久走なのかということだ」
「それよりも・・・人間よ。それはなんだ?」
「?それってなんのことだ?」
するとネロ・カオスは急に気まずそうな顔をしていった
「すまない、気配りが欠けていたようだ」
「な、何だよ急に」
こちらをちら、と見て言った。哀れみをこめていた気がする
「趣味か・・・」
「ちがうわ!こんぼけがぁ!」
なんちゅー誤解をしてくれるのか
奴はイスに縛られた俺をその方面の人間だと思ったらしい
「俺は好きでこうしている訳じゃねーんだよ!気付いたらこうなってたし何言っても聞いてくんねーし」
俺はなかば愚痴をこぼしていた
「ふむ、ならばほどいてやろうか?」
え?
「その姿はあまりにも情けなくて見ていられんからな」
余計なお世話だ
「じゃあ、お願いします」
・・・・・
「う、う〜ん」
久しぶりに手に入れた自由を思う存分堪能した
「どうかね、久しぶりの自由は」
「さいっこーです!」
俺、この人のこと尊敬してます
っていうかありがとう
このこと忘れないよ
と、奇妙な友情が生まれていた
「ではまずルールを言いますね。
1.5キロを走って速く着いた順で順位を決めます
ですがアルクェイド様、シエル様、それに弓塚様には当然ハンデを課します」
「えー、なにそれー」
ぶー、ぶーと不満げにアルクェイドが言う
「ま、しかたありませんね」
シエル先輩は素直だ
「さて、ハンデの内容ですがまず共通して十分の間停止していてもらいます。さらにもう一つこの箱から選んでください」
といってただの箱を差し出した
そして3人が取った紙を翡翠に手渡す
「まずはアルクェイド様のハンデは子守りです」
「こもり?」
「そうです、赤ちゃんを抱きながら走ってもらいますが」
「なんだ、そんなことなの?」
「いえ、その赤ちゃんが泣いている間は止まってもらいます」
「うーん、よくわからないけどいいか」
あっけらかんとした様子で言った
「では、次にシエル様のハンデは野菜たっぷりのうどんです。栄養満点です」
「は、はぁ」
「シエル様には合計15杯のうどんを食べながら走っていただきます
ですがその際、汁が一回こぼれるごとに1秒追加、さらに具が一つこぼれれば30秒追加、麺が一本こぼれれば1分追加します
それらの計測はネロ・カオス様にお任せしています
なお止まって食べた場合、最後までにうどんを残した場合は失格となりますのでお気を付けください」
15杯も?それはちょっと尋常じゃないぞ
「わかりました、受けて立ちましょう」
「では最後に弓塚様のハンデです。弓塚様のハンデはうさぎ跳びです」
「それってあのぴょんぴょんはねるやつ?」
「ええ、ただし後ろ向きに走っていただきます」
「え?でもそれじゃ前が見えないけど・・・」
翡翠は静かに言っている
「その点は心配無用です。コーナーの20メートル前と10メートル前には表示がございます」
「あ、そうなの・・・」
なんていうか静かな圧力に負けたようだ
「では説明も終わりましたし早速始めましょうか」
さささ、と5人が横一列に並ぶ
有彦が笛を咥えている
「よーい、どん!」
琥珀さんと翡翠は並んでスタートした
それにしても着替えなくていいのだろうか。メイド服に割烹着はとてもじゃないが走るのには向いていない
俺はここで初めてコースを見てみることにした
まずふつうと違うのがコースの外周上にいくつもうどんが机の上に並んでいるところだろう。シエル先輩用か
そして所々に哺乳瓶やらおむつやらが置いてある。アルクェイド用らしい。
とにかくどちらもまず普通ではお目にかかれない光景であることは間違いない
そして一周300メートルといっていたがその何箇所かにあからさまに落とし穴っぽい地面がある
あれに引っかかる奴が果たしているのだろうか。はなはだ疑問である
・・・・・
はっきりいってこれが普通に終わるとは考えられなかった
そうこうしてるうちに琥珀さんと翡翠は走り続けていた
そして時が流れる
十分後
ついに人外達のスタートの時がやってきた
「では、お三方。スタートラインのほうにどうぞ
今から30秒後にスタートしまっせ」
有彦はそう言ってシエル先輩にうどんと箸を渡した
弓塚さんは両手足を縛られてしまった。そのとき有彦がどんな表情をしていたかはあえて触れないでおく
そして30秒後アルクェイドにどこの赤ちゃんかわからないがとにかく赤ちゃんが手渡されると同時に有彦がスタートの合図をした
パン!!
大きな音がして一斉に走り出した
が大きな音に驚いたのか急に赤ちゃんが泣き出した
「びええ〜!!」
すぐにアルクェイドがぴたっと止まった
「ああ、ほらほら。泣かないの。いい?お姉ちゃんがそばにいるから、ね?」
アルクェイドは赤ちゃんに笑いかけた
するとだんだんだが泣き止んできた、と思った矢先にシエル先輩が横から口を挟んだ
「こら!このあーぱー吸血鬼!ふざけないでください!わあああーーーー!!!」
かなり大声を出した
ようやく泣き止んだかに見えた赤ちゃんがまた泣き出した
「ふえええ〜ん!」
「ああ・・・こら!そこのでか尻女!なにすんのよ!また泣いちゃったじゃない!」
「ふん、何とでも言ってください。その間に勝たせてもらいますけど」
「にゃにおー!」
ああ、アルクェイド。大きい声を出したりしたら
「ふやあああー!」
「ああ、ごめんごめん。ほら、泣かないで」
「ふふっ、馬鹿なことを。自分で自分の下に穴を掘ってるようなものですね」
「くっ、覚えてなさい」
そしてシエル先輩は走り去っていった
一方弓塚さんは快調なペースで進んでいた。そう後ろ向きでうさぎ跳びをしながら
この光景はちょっとばかり怖かった
が、突然ズボッと言う音と共に弓塚さんの姿が消えた。何かと思ってよく見てみると音がしたあたりに穴が開いていた
「人間よ、こちらのモニターで確認ができるようだ。見てみるがいい」
ネロ・カオスがそういった
「ん?どれどれ・・・」
たしかにそこには弓塚さんがいた
だがモニターの中の弓塚さんはとてつもなく巨大な蛇に巻きつかれていた
「ちょ、ちょっと。冗談じゃないわよこれー!」
ほんとにシャレになっていない
なぜか弓塚さんの力でも切れそうにない縄。何か仕掛けがあるのだろうか
みるみるうちにぎゅうぎゅうと巻きつかれている
なんと顔色が青くなってきてるような
「いやよ!こんなことくらいで遠野君はあきらめないもん!」
そういうと
え〜い!
なんと穴から蛇を身につけながら飛び出してきた
そしてなんとまたうさぎ跳びで進んでいった
・・・・
その間に琥珀さんと翡翠はちょっとずつ進んでいった
だがシエル先輩は超人的なスピードでうどんをたいらげながら走っている
速さはまだそれほどでもなく(シエル先輩にしてはだが)まだ慣れていないようだった
アルクェイドはまだ赤ちゃんをあやしていた。それなりに進んでいるようだが
「ふふふ、アルクェイド。あなたまだそれしか進んでいないのですか?ようやく遠野君を諦めたようですね」
「な、なによ!まだ勝負は終わってないわよ!」
「それでは、私はこれで」
「むー、負けないからー!」
だけど今アルクェイドとシエル先輩の差は結構ある
「ああ、ほら泣き止んで。もー・・・そうだ!」
アルクェイドは目を輝かせていった。何か思いついたらしい
「えいっ!」
そうすると赤ちゃんはピタリと泣き止んだ
あのやろう魔眼を使いやがった
「あ、アルクェイド!あなたなにを・・・」
「ふん!魔眼を使っちゃいけないなんてルールは聞いてないわ」
そう言うとアルクェイドは猛ダッシュを始めた
「待ってなさい!このでか尻女!」
「く、なんて卑怯な」
たしかにちょっとずるい
そういえば弓塚さんは何回も穴に落ちては這い上がり(というより跳ね上がり)その度になにかを身につけて進んでいる
コース上には蛇がつぶれてるし針見たいのが転がっていたりとにかくすごかった
だけどさすがに体をヨーヨーとか絡ませながらでは思うように進まないようだ
スピードも普通になっていた
そのころ
「アルクェイド!かんねんしなさい!もう私はうどんを食べ終わりましたからあとは本気で走らせてもらいます!」
そしてアルクェイドとシエル先輩とのデットヒートが始まった
あっという間に琥珀さんと翡翠は抜かれた。あたりまえだった
だが元の差が開きすぎていたらしく結局シエル先輩が2分近く早くゴールした
「やりました!遠野君一位です!」
そういってシエル先輩は喜んでいた
ようやく終わった
結局一位はシエル先輩
二位 アルクェイド
三位 翡翠
四位 琥珀さん
五位 弓塚さん
となった。驚いたことにシエル先輩はうどんを残さず、汁も五、六回程度こぼしただけだった
弓塚さんは数々のわなに力尽きてしまった
「はあ、はあ、ようやく終わりましたー
はあ、はあ、それにしても、つ、疲れました。運動不足でした」
「・・・・・」
翡翠に至っては何も言えずに息をしていた
俺はよくわからないが女の子が一・五キロ走りきるのはそうとう大変なのではないだろうか
「で、では、罰ゲームですが、弓塚様はダウンして、おりますので、今回は保留ということで、よろしいですね」
はあ、はあ、と肩で息をしながら司会の仕事をこなしていた
保留ってことはあとでやるってことか
「ちょ、ちょっとお待ちください、はあ、はあ」
そういうと琥珀さんはごそごそと何かを取り出した
「こ、これで・・・」
そして取り出した瓶を開け、飲み始めた
液体は黒かった
「ごく、ごく・・・ぷはあ、さあ!はりきっていきましょー!おえっ」
なんでいきなり元気になってるんだ?
あと「おえっ」てなに
「ね、姉さん」
「あ、翡翠ちゃんも飲む?これ飲めば疲れなんかあっというまに吹き飛んじゃうんですから
でも初めて挑戦するとちょっと記憶が曖昧になったり発狂したり髪の毛が全部抜けちゃったりするけど死にはしないと思うから」
さあ、と言って翡翠に瓶を差し出す
「・・・結構です」
うん、賢明な判断だ
「ちぇっ」
・・・・
「さて、いよいよ最後のお題の発表です。泣いても笑っても叫んでも発狂しても逝っても飛んでも何をしてもこれで終わりです!」
なんだ今のは
「それでは最後のお題は・・・これです!」
続く
あとがき
今回はさっちんが犠牲に
ま、出番ないしいいか
あと、1500メートルってどれ位で走れるもんなのか。俺の記憶では7分程度だった気が(いや、それは記録だった気もする)
ま、琥珀さんと翡翠は鍛えてないし
さて次はラスト
栄光は誰の手に?