月影。Act.6


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1: アラヤ式 (2003/05/29 22:14:00)[mokuseinozio at hotmail.com ]

―― 一人は、愛する者を救うため。

―― 一人は、過去の因縁に決着をつけるため。

本来相反する運命にある二人の男は、

月光の中、結託する。






「志貴ー!!かっこいいー!!」

「男と男の固い契り、しびれますね。」

!?

志貴とエンハウンスは驚いて振り向いた。

見ると、茂みがガサゴソ悶えている。

バサッ。

飛び出てくる、白と黒の物体。

それは、

満面の笑みを浮かべた白のお姫様と、おなじく微笑みをうかべる、黒の代行者であった。

「アルクェイド!?」

「シエル!?ってめえ!!聖葬法典のメンテはどうしたんだよ!?」

「えへへ、帰ったあと、ヤッパリ志貴のこと気になったから、後つけたんだよ。」

「メンテナンスはとっくに終了させています。
……甘いですねエンハウンス。
あなたが屋敷にいる時、
そっと、トオノくんの部屋においていた書置きに、私が気付かないとでも思いましたか?
ちょうど、隣のアーパーさんも、その辺でうろうろしていたので、ここに連れてきたわけです。」

してやったりの女2人。

してやられた男2人。

「……全部、聞いたのか?」

志貴は、恥ずかしそうに聞いた。

「うん!最初から最後まで全部!志貴ってば私にゾッコンなんだね!安心しちゃった!」

賽ですか。

「はい、私も一部始終きかせてもらいました。
……まあ、誰かさんが、写真をバラまくだのどうのこうの言っていたみたいですが……。」

先輩は笑っているが、背後にドス黒いオーラを感じる。

怒っている……。

「〜〜!! しっシエルっ?!あれはな、言葉のあやってもんでな……」

エンハウンスは、冷や汗をダラダラ垂らしている。

七夜の血がこう叫ぶ。

―――エンハウンス。ニゲロニゲロ。

「あなたっていう人は!!私の恥部を、性悪女に売り飛ばす気なんですか!!」

「まっ待て!!話を聞いてくれ!!グホッ!!
言葉のアヤっていっているだろ!?うわっ!!」

先輩の黒鍵が、エンハウンスの脇腹をかすめた。

殺る気マンマンだ。

肩に黒鍵が刺さっているエンハウンスは、助けを乞う。

「志貴!!俺たちはチームだよな?シエルを止めてくれ!!」

「すまん。短い付き合いだったな。」

「……ってめえ!!この薄情モノ!!じゃあ、姫君!!」

「うーん、ムリ。」

「そんな……」

エンハウンスは泣きそうになっている。

先輩は、容赦なし。

「あなたのようなヤサグレ鬼畜半吸血鬼は、ココで浄化してあげます!!」

「わっわかった!!シエル!!カレーライスで手を打たないか!?」

「『メシアンの揚げたてカレーパン一年分』以外で、譲歩するつもりはありません!!」

「そんな無茶な……。うっうわあああああああああああああああああああああああ……」

ザクザクザクッ!!

哀れエンハウンスは、黒鍵20本の集中砲火を浴び、こときれた。

合掌。

「おーい。ちょびヒゲー。生きてるにゃー?」

ツンツン。

ねこクェイドは、小枝で、ピクピクしているエンハウンスを突っつく。

「……。なんとか……な。」

虫の息で答えるエンハウンス。

「もう、シエルったらホント容赦ないわね。ちょびヒゲ、針ねずみみたいだよ。」

「このくらいのことは当然です!!
だいたい、このヤサグレには、
これくらいの措置がちょうどいいんです!!」

ぷんぷん怒る先輩。

「ところで志貴。」

急に真顔にもどるアルクェイド。

先輩も黒鍵を収めた。


「志貴。私もチームにいれてよ。」

!!

「っダメだ!!お前を助けるために、おれはエンハウンスと組んだんだぞ!!
おまえをこれ以上戦わせることなんて、できるはずないだろ!?」

志貴がそういうと、アルクェイドは二コッと笑う。

「また、約束破っちゃうんだね。志貴ってば。」

「はあ!?」

「ネロと戦ったときから、私たちもチームじゃない!!」

しまった。

そう。

あのときの誓い。

アルクェイドを殺してしまったとき、約束した誓い。

あの思いは、もちろん今でも変わらない。

だけど。

そんなぁ。

「私を殺した責任、今度も取ってもらうからね。」

「そんな……。せっ先輩、頼む。アルクェイドになんか言ってくれよ……。」

「却下します。」

先輩もニコッと笑ってこういった。

「トオノくんの頼みでも、それは無理です。当事者間同士の問題ですからね。
あきらめて、彼女をチームに入れてあげてください。
当然私も、彼女の監視役として、チームに入れてもらいます。」

なにぃ!?

「……。2人とも、謀ったな。」

「あはは。あきらめろ!志貴!」

「私たちから逃げようなんて、思わないほうが身のためですよ。」

最強コンビの二国干渉のまえに、俺はただ、降伏するしかなかった。

「エンハウンス。どうする?」

地面に伏したままの、瀕死の復讐騎に聞いてみる。

「……勝手にしろよ。
ただ、一つ条件がある。」

「条件って?」

「……輸血パック、かっぱらってきてくれ。
マジで死んじまう……。」

みると、体の半分くらいは血液を失っているっぽいエンハウンス。

あーあ。

「きゃー!!大変!!ちょびヒゲホントに死にかけてるよ!?
バカシエル!!手加減するっていったじゃない!!」

「〜〜!!私は台本どおりにやっただけですよ!!
大体、打ち合わせのときに、
『いっぱい刺しちゃったほうがいいにゃ』なんていってたのは誰ですか!?」

「……。2人とも?今回の過程でエンハウンスを串刺しにする必要はどこにあったのかな?」

バキッ!ドカッ!

いつものケンカをはじめる二人は、俺の質問なんか聞いちゃいない。

「志貴。……お前にまかせる。
もう、俺、目も見えなくなってきた……。耳も聞こえなく……」

復讐騎は、マジで昇天しそうだ。

「〜〜!!逝くな〜!!
すぐに取ってきてやるからな!!待ってろよ!!」

俺たちは、二度目の堅い握手を交わす。

死ぬなよ。相棒。





翌日。ある地方新聞の三面記事に、病院の空き巣被害が掲載されていた。


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