報告〜Cruel law〜


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1: 舞姫ますたー (2003/05/16 20:17:00)[kousuke-xe-ma03 at tcn-catv.ne.jp]



 ガランとした建物だ。



 ……なんとも舌足らずな表現だが、それ以外言いようが無いのだから仕方がないだろう。

 絢爛豪華には程遠いけど、廃墟というには少し可哀想過ぎる。

 普通の人が住んでいるには何も無さ過ぎるが、人が住んでないにしては掃除が行き届いている。

 ……なんだか自分の中でも良く分からないが、とにかくガランとした建物。

 それが此処に来てはじめて感じた事だった。

 今となってはもう数えるのも馬鹿らしくなるくらい此処に来たが……相変わらず感想は変わらなかった。

 見上げると並みの建物数階分の距離を数える、丸い天井。

 地面を見下ろすとありがちな赤絨毯や真っ白な床ではない、黒ずんだ木製の床。

 壁に申し訳程度についた、ちっぽけなステンドグラス。

 年代を感じさせる建物でありながら、いやあるが故に此処に美というモノは一切無かった。

 最もそれは、この館の主人に対する個人的感情が多分に含まれているが……
 
 コツコツとブーツが床を鳴らす音が響いた。


 
 コツコツコツ

 

 チッチッチッ

 

 チャリチャリチャリ



 三種の音が静寂を支配する。

 ブーツと時計と……刃物の音。

 これももう慣れた感覚だ。

 何度か三重奏を繰り返し、大きな門に当たった。

 門と言うには小さすぎるが、扉という表現はあまり当て嵌まらないだろう。

 鉄格子と、南京錠の付いた扉なんて見た事無いから……

 鉄格子を縛する何重もの鎖をまとめた南京錠に、カチリと鍵をはめる。

 役立たずの錠が、錆付いたその身を開いた。 

 ふと脳裏に27という数字が浮かんだ。

 ああ、そういえばそんな間抜けもいたなと頭の中で自己完結し、鎖を取り払う。

 まったく毎度ながら面倒くさい作業。

 こんな物在ったところで現代の本職の方々には無意味だし、こんなところ盗られる物すら無い。

 一般人からすれば重い門を片手で開けると、その奥に待つこの建物の主の場所へと赴いた。











 




 報告〜Cruel law〜























「ごくろうさま……」

「…はい」 

 高慢そうな女はその外見そのものの口調で、とってつけたように言った。 

 ちっとも労う表情じゃないが、まあ文句を言ったら後でどんな目にあわせられるか、

 分かったもんじゃないので適当に返事をする。

「何か不満そうね」

「いえ…別に…」

 不満? そんなものいくらでも出てくる。 

 あなたのせいで、こちらがどれだけ苦労したと思っているのだ… 

 何故あらかじめ政府に話しをつけなかった?

 何故ネロの存在を隠した?

 そして、何故……今更呼び戻した?

「色々ありますが…一つだけ……」

「ふうん…言ってみなさい」

 すう…と息を吸い、呼吸を落ち着ける。

 心拍数を正常に戻すべく、心臓に言い聞かせる。

 ああ…自分は恐れているのだなと納得し、手のひらの汗腺に折り合いをつけた。

「何故……呼び戻したのですか?」

「決まってるじゃない……」

 恐らくはまあ、見当はついている。

『命令よ…それ以外に何がある……脳みそ蛆湧いてるんじゃないの?……房入り1ヶ月』

 そんなところか……もしかしたら拷問フルコースが待っているかも……






「あなたが惜しいからよ」






「は?」

 今…何を言った?

 あなたが惜しい?

 どういうことだ……彼女のこんな言葉は初めて……じゃない

 そういえばあの時……

「刻まれた歴史と、能力と、素質……ですか」

「あら、よく覚えていたわね」

「……そこまで馬鹿ではないですよ」

「ふふふ…そうね……」

 どうしたことだろう?

 彼女は妙に機嫌がいい……
 
 任務を無事完遂したからか?

 違う…彼女にとってそれは当たり前で、さして感情に起伏をもたらすものではない。

「知りたい?」

 ビクンと体がはねた。

 まったく相変わらず心臓に悪い…

「また…『読んだ』んですか?」

「どうでもいいじゃない……それより知りたいかと聞いているのよ」

「…少し」

「あなたが任務を完遂したからよ」

「そんなわけ…」

「裏の任務もね」

「……そういうことですか……」

 今回の任務は『ロアの処理及び、情報規制』だった。

 ……表は。

「姫君の無力化と、日本土着の異能種の調査……どうやら成功したみたいね」

「真祖への対処方法は、若干納得いかないものがありましたが…」

「あら、本気であの子のことが?」

「……さあ、どうでしょう? あなたがそんなこと聞く必要は無いと思いますが」

 本気というのが、どこまでか分からないが、此処に居るよりはあそこに居たほうが数万倍良い。

 そういった意味で、これは本気の感情なのだろう。

 しかし、本気が愛ということなら、それはどうだろう?

 自分でも良く分からない。

「それもそうね……ところで、向こうに面白いサンプルが存在したそうだけど?」

「……ああ、あれなら殺されましたよ」

 弓塚さつきの事であろう。

 彼女はあの人によって殺され、土に還った。

 実際その場を見てはいないが、確信はある。

「あなたから見てどうだったの? 祖どもに匹敵する程だった?」

「ええ、間違いなく…そういった意味では早い処理は幸運でした。

 なんせ何の魔術知識も無く、固有結界を有していましたから」

「へえ、ちょっと興味があるけど……まあ、いいわ後で報告書を見せてもらう。

 さて、じゃあ……今からあなたは休暇よ…好きになさい」

「そうですか……では失礼します」

 さてと……あのぬるま湯の日々に戻ろう。

 暫らくは心地よいそこで、暮らしていけるだろう。

 自分はさほど此処に呼び戻されるのが頻繁なわけではないので、おそらくあと数ヶ月は大丈夫だ。

 コツコツコツ、と来た時と同じように音を立て主から遠ざかる。

 入り口の、ここに入るまでの道程に在った様々な建造物に比べると豪華な扉の前まで来ると、

 形だけの一礼をし、ドアを開けようとした。

「……ちょっと待って、第七位」

「なんです?」

「もう洗脳は解いたから、あなたがあそこに戻るのは無理よ」

「は?……解いたって無理矢理ですか?」

「ええ」

「まったく、あなたは無茶をする……まあいいですよ、どうせ偽りの家族ですから」

「そう……以外に冷めているのね……それもそうか、あなたは……」

「それ以上語るのは、例えあなたでも許しませよ」

「おお怖い……じゃあ、今度こそ行きなさい」

「言われなくとも……」

「それとそのわざとらしい敬語止めなさい。気持ち悪いわよ」

「これが地ですから……もういいですか? いい加減帰りたいのですが……」
 
「最後に一つ、あの子は元気かしら」

「誰の事ですか?」

「決まってるじゃない」




































「シエルのことよ」






























「ああ、彼女なら殺しましたよ。邪魔でしたから。

 表の構成員は弱くて仕方が無い……もう少し教育をした方がよいかと」






























「そう……あなたは残忍ね、第七位。

 いえ、『邪眼』の七夜志貴」






























「あなたほどではないですよ、ナルバレック。

 では、失礼」






 私はまた、三種の音を立てて来た道を戻る。



 コツコツコツ


 チッチッチッ


 チャリチャリチャリ



 愛用のナイフの音がやけに高く響いていた。

















































【アトガキ】

 はっ!? 自分は何を……(挨拶

 ……シエルファンの人、コンクリート詰めは勘弁してください。 

 暴力変態!

 人類皆強大!(奈須大先生談

 大丈夫、自分はHシーンがあるキャラの中ではシエルは下から2番目に好きです!

 ……ん?
 
 ……まあ、いいや。暇つぶしに見てくれると嬉しいです。

 今回は自分の作風じゃなかったんですが……というかそもそも、そんなん語れるほど熟練じゃないですが。

 とにかく異色の作品。

 どうでしたか? 感想待ってます。

 メールも完備しました。

 遂に自分のメルアドです!

 というか、前回からアドレス変わったんで、よろしく。

 では、またー。

 委員長=晶子……だよねえ?















【なんとなくBGM】

 このコーナーは作品にあった曲じゃなくて、自分が書くときに聞いてた曲です。

 つまりオススメの一曲。

 島谷ひとみ「シャンティ」


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