月下の蜃気楼 3-上


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1: 嘉村 尚 (2003/03/28 20:36:00)

アルクェイドとシエル先生たちのやり取りで時間をとられてしまった俺は、息を
弾ませながらバイト先に向かう。

早いもので、もうこのバイトを始めてかれこれ3ヶ月になる。
しかし今思っても、よくあの秋葉が許してくれたものだとしみじみ思う。
実際、琥珀さんの助けがなかったら到底無理だっただろう。
そういう意味では、まったく以って琥珀さんには頭が下がる。
そう、あれは確か丁度5月の下旬頃だった。

………………………………………………

更に口ごもる俺に、秋葉は勝ち誇った笑みを浮かべると、両の腕を組み、遠野家の当主としての
威厳を全身に漲(みなぎ)らせトドメの科白を厳かに告げた。

「兄さん!用件が他にお有りで無いようでしたら、夕食までご自身の部屋で勉強でも
されてはいかがですか?それでなくても最近の兄さんは、学生の本分である筈の勉強時間
が不足しているんですから!宜しいですか!くれぐれも言っておきますが、遠野家の
家名を穢すようなマネをされたら、どうなるかは、勿論お分かりですよね…」

秋葉の辛辣な科白を背中に受けた俺は、肩を落としつつ、体の活力を肺腑から全て吐き出す
かのような大きい溜息を吐き秋葉の部屋を後にした。
「あらあら、志貴さん、どうしたんです?そんなに肩を落とされて」

不意に呼びかけられ、顔を上げると元気そうな笑顔を向ける和服姿の少女、琥珀さんがいた。
「なんだ、琥珀さんか…」
「あらあら、なんだとは随分ですね、志貴さん。…ひょっとして秋葉さまの着替え中に
お部屋に入って怒られちゃったんですか?」
俺の科白に琥珀さんは、少し拗ねた口調ながらも、興味シンシンの眼差しを向けてくる。
そんな琥珀さんを見ていると、一体琥珀さんは俺をどういう目で見ているんだとの疑問
が湧いてこなくも無かったが、今は不平を口にするような気分にも慣れない。

そんな琥珀さんの笑顔での問いかけに答える気力も湧いてこない俺は、力なく頭を振った。
そんな俺の様子に琥珀さんは更に笑顔で続ける。

「じゃぁ、翡翠ちゃんと仲良くしているところを見られて、ネチネチとお説教されちゃったとか…」
「別に、そんなんじゃないよ…」

俺は溜息をつきつつ、少し呆れの入った口調で琥珀さんに答えたが、琥珀さんは別段
特に気にしていないのか、首を傾げ右手の人差し指をコメカミの辺りに当てて、思案の
ポーズをとりながら独りでうんうん唸っていたが、やがて頭上に電球でも具現化しそうな
ぐらいの、納得顔でポンと小気味のよい音を立て握り拳の小指側で槌を振るようにして
掌をたたくと、とんでもないことを言ってのけた。

「それじゃぁ、昨日わたしがハンカチの代わりに翡翠ちゃんのシルクの下着を志貴さんの
ポケットに入れといたのが、ばれちゃったとかですか?」
琥珀さんの思いがけない一言に思わず、鼻白ばむ。

「あー!あれ琥珀さんの仕業だったのか〜!昨日、玄関先で落としたのを秋葉に見咎められて、
ほんとに大変だったんだぞ!オマケに見送りに来ていた翡翠までいたモンだから、余計に
話がややこしくなって、秋葉には怒られるは、翡翠には泣かれるはで、翡翠なんか
あれから今朝起こしに来るまで一言も口きいてくれなかったんだから」
「あらあら、翡翠ちゃんたら。もうホントに素直じゃないんだから。うふふ」
「琥珀さん、もう笑い事じゃなよ〜ホントに…」
鈴のように笑う琥珀さんに、心底情けない声を上げてしまう俺。

「まあまあ、志貴さん。ちょっとした、お茶目な悪戯(いたずら)じゃないですか」
そう言い切る琥珀さんに、俺は非難めいた視線をむけるが、琥珀さんには、どこ吹く風である。
「ところで志貴さん。じゃぁ、一体何をそんなに、肩を落とされてるんですか?」
俺の非難めいた視線を、しれっとした笑顔であっさりと受け流す琥珀さん。こうなって
しまっては、もはや俺ごときでは、太刀打ちできない。
諦めた俺は、秋葉の部屋での一部始終を琥珀さんに話し始めた。

……………………………………………

俺は扉の前で2・3度深呼吸を繰り返すと、顔を両手で挟み込むように叩き気合を入れ、
目の前の重厚な造りの扉を2度叩いた。

中から凛とした声音で、「どうぞ」との返事があったので、ドアノブを静かに回す。

俺は厚みのあるドアの重さを右手に感じつつゆっくりと押した。
ドアは、手入れの行き届いているためか、その重さの割りにスムーズに開いた。

秋葉の部屋は雅(みやび)さと重厚さが絶妙の割合で混在している洋間である。秋葉の部屋の
調度品はそれ自体が美術品としての価値もあるみたいで、所謂アンティーク・ファニチャーと
呼ばれるモノらしい。
前に翡翠が、風邪をこじらせ動けないときに、琥珀さんが翡翠の代わりに秋葉の部屋を
掃除しようとしたら、翡翠が動かない体に鞭打ってそれを必死に阻止していたので、
翡翠に理由を聞いてみたところ、なんでもこの古い洋館の完成時にヨーロッパの由緒ある
家から寄贈されたものらしく、秋葉の言葉に喩えるなら、遠野家の当主に相応しい最強の装備…
もとい最上級の調度品の揃った部屋らしい。

ただ、俺の性格からなのか、それとも単に俺が貧乏性だからなのか、はたまた秋葉の存在が
そうさせるのか、こういった豪華で重厚な家具に囲まれているというのは妙に落ち着かない。

しかも、今回は俺の今後の生活に多大な影響を与える相談をしようというプレッシャーも
あってか、居心地の悪さに更なる拍車がかかる。

俺が部屋に入ると秋葉は窓際で本を読んでいた。
「あら、琥珀随分と早かったわね……」
そう言いながら、手元の本から視線を上げた秋葉は一瞬目を見開き驚きの表情を見せたが、
おもむろに本を閉じて椅子から立ち上がると、両の腕を組み、皮肉めいた流し目で俺を見た。

「珍しいですわね。兄さんが“こんな時間に”屋敷に居らして、しかも私の部屋なんかに
顔を出されるなんて、本当に何ヶ月ぶりのことかしら」
秋葉は両の腕を組んだまま目を閉じ“こんな時間に”という部分を強調しつつ、実に
しみじみと言う。

う……、早速先制ジャブを食らってしまった。
実際、ここ最近帰りが遅かったのは事実なので反論の余地は無い。
しかも5月は連休やら何やらで休みが多かったってのに、1日中家でゆっくりしていた
日なんて、殆どなかったのだから、これは秋葉でなくても嫌味の一つぐらい言いたくなる
ってモノだろう。

ともかくそんな感じで、ついついアルクェイドと遊びすぎたモンだから、有間の家に
いた頃に溜めた貯金も終に(ついに)底を尽きてしまい、頼りの高田くんにも、この間
借りたばかりで流石にこれ以上は……という状況に陥っていた。

アルクェイドは、“別にお金なんて、気にしなくてもわたしが出してあげるのに〜”
なんてことを言うが、俺にも一応プライドらしきモノは多分ある。さすがに全部依存
してしまった日には、それこそヒモになってしまう。
そこで、バイトでも始めようかと秋葉に相談しに来たんだが……。
そんな秋葉の雰囲気を見て、俺は自分の未来の前途多難さを改めて感じた。

「それで、“ご多忙極まりない”兄さんが、わざわざ私の部屋なんかに来られるなんて、
一体どういったご用向きですか?」
秋葉は、“ご多忙極まりない”という部分を強調して皮肉たっぷりの口調で刺すような
視線を投げかけてくる。

その秋葉の怒りのオーラの矛先に立たされた俺は、当にアナコンダに睨まれたアマガエル
よろしく、動けなりつつも辛うじて言葉を搾り出す。
「え?ああ、いや、実は…秋葉…その、お金が……」

「なんだ、そんなことでしたの。そんなことなら最初から言ってくだされば宜しいのに。
遠野家の長男ともあろう者が、お金に不自由しているなんてことが世間に知れたら、
それこそ遠野家の名折れです」
以外にも秋葉は笑顔で俺にそう言った。
思いがけず、あっさり問題が解決してしまって正直、拍子抜けしてしまった。
「どうしたのですか?兄さん。そんなに驚かれて。兄さんは遠野家の長男なのですから、
もう少し自覚を持ってくださらないと困ります。例えどんなに高額でも、兄さんが
“本当に必要な用途に使う”のでしたら、いくらでも差し上げます。………で、一体
何に使うおつもりですか?」
秋葉は笑顔をキープしつつ俺に尋ねたが、その目は笑ってなかった……。

…う……、やっぱりそう来たか……。
口ごもる俺に、秋葉は更なる追い討ちをかけてきた。
「兄さんに限って、そんなことは在りえないと信じていますが…、ま・さ・か、
遊ぶお金に困ってとは、流石に言いませんよね?」

更に口ごもる俺に、秋葉は勝ち誇った笑みを浮かべると、両の腕を組み、遠野家の当主としての
威厳を全身に漲(みなぎ)らせトドメの科白を厳かに告げた。

「兄さん!用件が他にお有りで無いようでしたら、夕食までご自身の部屋で勉強でも
されてはいかがですか?それでなくても最近の兄さんは、学生の本分である筈の勉強時間が
不足しているんですから!宜しいですか!くれぐれも言っておきますが、遠野家の……
…………………………………」

……………………………

「…と言う訳なんだ」

「あらまあ、秋葉さまったら、随分とお茶目さんですね〜」
琥珀さんは本当に分かっているのか、右手の甲を口元に当てて鈴のような声で笑うと、
自信たっぷりに胸を張って俺を見た。

「分かりました。昨日の翡翠ちゃんの下着の件もお詫びもかねて、ここは志貴さんのために、
そして私の楽しみのためにも、この名策士の琥珀さんが、一肌脱ぎましょう。あ、でも、
脱ぐって言っても、エッチなこと考えたら、いけませんよ。志貴さん!」
琥珀さんは、腰に左手を添え右手の人差し指で俺の額の辺りを指差して、いたずらっぽい笑顔で
俺にそう告げた。

そんな琥珀さんの様子に一抹の不安を感じなくも無かったが、今の俺はそれこそ、
“藁にも縋りたい状況”ってやつに陥ってるので、琥珀さんに頼るしか道はない……。

そんな俺の心中を知ってか知らずか琥珀さんは、その策とやらを俺にそっと耳打ちする。
「いいですか?志貴さん……」

…………………

「えー!?………琥珀さん、それは確かに一理あるけど、相手はあの秋葉だよ……」

琥珀さんは俺の科白に微笑むと、自信たっぷりに策士としての微笑を浮かべた。

「……そうですね。確かに、秋葉さまは一筋縄で行かない方ですからね。でも安心
してくださいな。そこで登場するのが、“秘密兵器”です」

「何?その…“秘密兵器”って……?」
俺は首を傾げ訝しげに琥珀さんに尋ねた。

「うふふ、それはこれです。この薬を打てば、たちまち、秋葉さまでも……」
自信たっぷりに掲げられた琥珀さんの右手には、毒々しい色合いの薬品を満たした
二本の注射器が握られていた。
「………………」
「………………」
ニコニコ顔の琥珀さん。
いやな汗を全身にかいた俺。
一瞬時が止まったように絶句してしまった俺だった。
「ちょ、ちょ、ちょっと、琥珀さん、その、注射はちょっと、まずいんじゃ……」
我に返った俺は、当然その物騒な提案を丁重に辞退した。

「え〜。お注射は駄目ですか?では、この錠剤を……」
そう言って、懐に手を伸ばす琥珀さん。
「いや、だから、琥珀さん、その、できたら薬以外の方法は無いのかな…」
「えー、駄目ですか……お薬……」
琥珀さんは、さも残念そうに言う。
「うん、できたら、その、もっと普通ので、お願いできるかな……」
琥珀さんは暫く、無言で考えていたが、再び頭の上に電球を具現化させたような笑みを
浮かべた。
「わかりました。それではこんな、秘密兵器はいかがですか?」
「琥珀さん、薬はもうナシだよ」

「大丈夫です。薬じゃありませんし、難しいことでもありません。簡単に言うと志貴さんが
秋葉さまの前で、いつもの志貴さんでいることです」

「は?いつもの俺………?」
俺の間抜けな科白に、琥珀さんは胸を張って答える。
「はい、志貴さんは、怒っている秋葉さまの前に出られると、必要以上に萎縮して
しまわれます」
「そりゃ、そうだよ。怒ってる秋葉を前にして萎縮しない人なんて、そうはいないよ」
俺の知る限りでは、そんな人(?)はアルクェイドとシエル先輩ぐらいだと思う。
「うふふ、確かに私も怒っている秋葉さまは手が付けられないと思います」
「だったら、そんな無茶言わないでくれよ。それにそもそも、いつもの俺って、どういう意味?」
「うふふ、それはですね、志貴さんが志貴さんらしく、悪人ぶりを発揮してくれれば
何の問題ありません。」

へ?アクニンぶり?何のことだか、わからない。

確かにアルクェイドを十七に解体してしまった俺が、今更、善人ぶるつもりなんて
無いけど、ソレをしらない筈の琥珀さんにまで悪人呼ばわりされるほど悪いことは
してないつもりだが……。

「琥珀さん……何?その悪人って………」
「志貴さん、それは自覚が無いから悪人なんですよ」
琥珀さんは笑顔でそう言うと俺の鼻頭を指さす。
「自覚……?」
益々わからない。

「大丈夫ですよ、志貴さん。要するに志貴さんは秋葉さまの前で、笑顔で居続けて
ください。それだけで、いいんです。どうです?簡単なことでしょ?」
「はあ、笑顔ね……」
琥珀さんの意外な科白に再び、間抜けな反応をしてしまう。

「そうです。昔から笑う門には福来るって言いますし。いいですか志貴さん?例え
怒っている秋葉さまを前にしても、笑顔でいてくださいね」
そう言って、笑顔の見本とばかりに、にっこりと笑う琥珀さん。
「…え?あ、あの、琥珀さん、それって怒っている秋葉を前にしても…?」
「はい。勿論です」
琥珀さんは、他人事のように(…って実際他人事なんだが…)しれっとした笑顔で
即答する。
「琥珀さんは、他人事だと思って……」
愚痴る俺に琥珀さんは、更に笑顔を輝かせて、しれっと言う。
「はい、他人事ですから」
実際ミもフタもない科白なんだが、琥珀さんのニコニコ顔を見ていると確かに
これ以上反論できなくなる。
そういう意味では確かに多少は効果があるのかもしれない。
でも秋葉相手に、果たしてそんな効果を期待して良いものか……。
それに、俺的には男としていつもヘラヘラしているのもどうかと思うんだが……。

そんな俺の様子から、俺の心中を察したのか琥珀さんが続ける。
「志貴さんはご存知ないかもしれないですけど、笑顔は一番の“ぽーかーふぇいす”なんですよ」
「そんなモノかな」
「はい、そんなモノなんです!」
とにっこり笑って答える琥珀さん。
「では、お困りの志貴さんに、ちょっとしたアドバイスを……。ところで志貴さん。
今の秋葉さまを見て、どう思います」

「へ?どうって?何が?」
琥珀さんの唐突な質問に、意図が掴めず訝しげな視線を向ける
「ですから、志貴さんの子供の頃と比べてどうですか?綺麗になったとか、迫力が増したとか、
陰険になったとか、戦闘力が格段に上がったとか、魂を吸い取られそうとか、そういうの
って何も感じませんでしたか?」
「……………なんだか最初以外は随分な例えだね…」
「あらあら。いやですわ、志貴さん。例えば…の話ですよ。うふふ。それはともかく
何も感じませんか?あ、勿論、正直に言ってくださいね。大丈夫です。誰にも言いませんから」
俺のツッコミに焦るでもなく、余裕を持って答える琥珀さん。
しかし、何故だろう。琥珀さんに、“誰にも言わない”なんて言われても、いや
琥珀さんだからと言うべきか、なんかイマイチ正直に言う気が湧いてこない。

そんな俺の胸中を知ってか知らずか、琥珀さんは答えを促す。
「どうしました志貴さん?じゃぁ、質問を変えて秋葉さまは変わられたと思います?」
「そりゃぁ、思うよ。昔の秋葉は、あんなに……、えっと、あんなに……そう、あんなに
完璧なお嬢様然としてなかった」
琥珀さんに、あげ足を取られないように言葉を選んで言った。
琥珀さんはそんな俺の心中を見透かしたようにクスリと笑うと。
「そうですか……。やっぱり志貴さんもそう思いますか…。確かに秋葉さまは遠野家の
ご当主としての責務を完璧にこなしていらっしゃいます。ですけど秋葉さまは志貴さんの
知ってる秋葉さまのままですよ。怒っていらっしゃるのも、よく見ると拗ねていらっしゃる
だけの場合も結構多いですしね」
琥珀さんはそう言って微笑む。
「そんなモノかな……」
「長年秋葉様にお遣えしている私が言うんですから間違いありません。心配しなくても、
秋葉さまは志貴さんの知ってる秋葉さまのままですよ。いいですか志貴さん!他の女の子に
関心を持つのも結構ですけど、もっと秋葉さまにも関心を向けてあげてください。そう
すれば笑顔なんて後からついて来るものです」

秋葉に関心を向ける……、言外にアルクェイドにしか関心を向けていないと言われている
ようで、なんだか落ち着かない。
「……まぁ、努力はしてみるけど、でも正直こんなことだけで、あの秋葉を説得できるとは、
俺には思えないんだけど」

「そんなことないですよ。この策が上手くいけば秋葉さまを説得できるかもしれませんよ」
「え?でも、相手はあの秋葉なんだよ……」
「そうですね。確かに秋葉さまは一筋縄には行かない方ですからね。でも安心してくださいな。
もし志貴さんが失敗したときは、この琥珀が骨は拾って差し上げます。うふふ。大丈夫ですよ、
志貴さん。後はこの名策士琥珀にお任せくださいな」
琥珀さんはそう言って、自分の胸元をポンとたたいた。

「とりあえず、志貴さんは夕食後のお茶の時間を見計らって秋葉さまにお話してください」
「うん、わかった。なんとかやってみるよ。それじゃぁ琥珀さん、万が一のときはよろしく
頼みます」
そう言って俺は琥珀さんに頭を下げた。
「はい、あとはこの名策士の琥珀に、“超特急でおっまかせ〜”です。うふふ」
「琥珀さん……それ、何ですか……?」
「秘密です。それにいいんですよ。元ネタも分かりにくいですし……なんだか楽しく
なりそうです。うふふふふ」
琥珀さんは鈴のように笑うと、二の腕をさするように和服に不釣合いなガッツポーズをとった。

……………………………

かくして、ミッションのときがやってきた。

月下の蜃気楼3−下に続く。


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