路空会合六話2


メッセージ一覧

1: 烈風601型 (2003/02/27 16:29:00)[kouji-sugi at mtj.biglobe.ne.jp]

アルクェイドとセルトシェーレの第一声を聞いた時、俺と鳳明さんは互いに顔を見合わせ苦笑しあった。
当然だと言えば当然の反応だがやはり苦笑するしかない。
「と、遠野君??こ、これは一体??」「七夜殿・・・え、えーと、どちらが七夜殿なのでしょうか?」
「兄さんが二人?どう言う事?琥珀、兄さんに双子の兄弟でもいたの?」
「い、いえ、そのような事は存じておりません」「どうして?何がどうなっているの?」
「ほ、鳳明様?どちらが鳳明様なのですか?」「両方とも鳳明さんの気を感じます。両方とも鳳明さん?」「し、志貴様・・・」「・・・・・・・」
皆が皆、それぞれの表情で絶句したり、ぶつぶつ何か言っている者もいる。
そこで事態の収拾の為に俺が説明しようとした時、「な、なななな何故じゃ!!何故、七夜鳳明がもう一人おる!!貴様一体何者じゃ!!」と、妖術師が俺を指差してそう絶叫した。
「・・・ふっ、言っておくが爺、こいつは俺じゃないぞ」それに鳳明さんは小さく笑いながらそう言った。
「な、なに?で、では一体何者じゃと言うのじゃ」「志貴、自己紹介してやれよ」
「そうですね」鳳明さんに促された形で俺は静かに一歩踏み出すと「爺さん、俺の名は・・・七夜志貴」
「!!兄さん!」後ろから秋葉の悲鳴に近い声が聞こえた。
「この時代の七夜の当主・・・いや、そんなお偉いものじゃないな。七夜の最後の生き残り・・・そして、純血としての最後の・・・『凶夜』だ」
「なっ!!!」俺の言葉に奴の表情が固まった。
「そして・・・『凶夜』としての俺の能力は・・・」
そう言いながら俺は静かに眼鏡を取りながら瞳を閉じる。
「これさ」
俺は静かに眼を開けた。
視界にはもう馴染みとなった(もっともこの、気分の悪さは慣れるものでは無いが)線と点が縦横無尽に走っている。
「ま、まさか・・・」
「そう、そのまさかだ。だから言っただろう爺『こっちにも俺のような奴がいる』と・・・それに、そんなびくついた面をするなよ。どんな時代の奴も見れるものじゃないんだからな『凶夜』と、この『死の眼』の持ち主を二人も見れるなんてな・・・」
そう言いながら鳳明さんも力を解放したようだ。
瞳の色が全身に鳥肌が立ちそうな位ゾクリとする蒼に変わっている。
「そ、そんな・・・『凶夜』が二人も・・・」「さて、爺さん。俺もあなたを許せれるほど寛容な気分ではないのですよ」
「爺、最後ぐらい貴様に決めさせてやる。紅葉に捕らえられて遠野家で処刑されるか、俺と志貴によって殺されるか・・・好きな方を選べ」「・・・ふっふふふふふ」
だが唐突に妖術師は笑い出した。
「?爺、何が可笑しい」
「・・・そうじゃった。いかに『死の眼』が強大な力を有していようとも、いかに『凶夜』が二人いようと結局はたかだか二人、何を恐れる事があるじゃろうか」
「・・・どうやらあの爺さん、やる気になったようですね」「そのようだ」
突如強気になった妖術師を俺達は哀れみの視線を向けていたが「さあ!!やれ!!七夜鳳明、そして七夜志貴を鷲の力の一部とするのじゃ!!」
そう妖術師が号令を掛けた途端、今までおとなしかった緑の化け物が動き出した。
が、ドシュ、と鈍い音がしたかと思うと一体に巨大な杭が突き刺さり瞬く間に砂と化した。
「なんだ?」「あれは多分・・・」
と、俺は音のした方向を見ると、やはりと言うべきであろう、屋根で先輩が第七聖典を手に可能な限りの連射で次々と化け物を砂としている。
密集している為か面白いように第七聖典が当たる
「志貴あれは一体?彼女も『死の眼』を?」「いえ、あれはどちらかと言えば『凶断』・『凶薙』に類する物です」
「なるほどな、・・・では俺達も潰すぞ」「はい!!」
俺達は二手に分かれると左右から化け物達を潰しにかかった。
まず俺は一体を刺し貫くと、瞬く間に一体を葬った。
さらに砂となり崩れ終わる前に俺は既に別のポイントに移動を果たしていた。
そして今度は『凶断』を地面に突き刺し脳裏に針の山をイメージを浮かべる。
その途端、地面から無数の針、いや槍が盛り上がり二、三十体をまとめて掃討を果たした。
志貴も派手にやっているようだ。
「では俺もすこしやるか・・・」
そう呟き俺は、稲妻の雲を想像した。
その途端『凶薙』からは何十条もの稲妻が走り、まさに縦横無尽に化け物を切り刻んでいく。
一撃必殺の攻撃が多い『凶断』・『凶薙』だが、敵の動きを止める為の攻撃も少ないが確実にある。
そしてある程度の知恵を働かせて連中があえて創った空間に一ヶ所にまとまると、今度は竜が天を飛翔する様を思い浮かべる。
今度は、妖力で具現化された竜がその集まった地点目掛けて突っ込んでいく。
そして周囲に溢れた光と音が収まるとそこは草一つ生えぬ荒野と化していた。
「いい具合だな、・・・ちっ、溜め込んだ妖力が尽きたか。収集に行くとするか」
『凶薙』に残る力が少ない事を察知すると、今度は化け物の群れに突撃を開始した。
そして瞬く間に五・六体の生命力を根こそぎ奪い取る。
「鳳明さんもやるな、そう言えば『凶断』も残り少ないな。じゃあ俺も」
俺もまた鳳明さんを見習い、七夜のスピードで十体をまとめて片付けた。
俺達の後ろに回り込もうとする奴もいたがそれらは後方にいるアルクェイド達が葬ってくれている。
時間的には三十分とかからなかっただろう。あれほど大量にいた化け物は残らず全滅し残すは妖術師とあの真紅の化け物のみとなっていた。
「そ、そんな馬鹿な・・・」「さて爺さん、これで残すは貴方だけとなりましたね」
「爺、覚悟は出来ているな念仏でも唱えな。直ぐにあの世に送ってやるからな・・・」俺と鳳明さんはそう言うと奴に一歩ずつ近付こうとしたが、
「こ、こうなれば!!やれ!!鷲の最高傑作よ、皆殺しにせよ!!」
そう妖術師が叫びそれに呼応して今まで身動き一つしなかった触手が、猛烈なスピードで動いた。
しかし、そこにいたのは俺達では無かった。
「ぐぎゃあああああああ!!!」「なに!!」
なんと真紅の触手は創造主である筈の妖術師を、原型が何であったのか判別がつかないほど、串し刺しにすると今度はまだ鮮血の滴り落ちる肉の塊を突如開いた口に放り込んだ。
「い、一体・・・なにが」「あ、あの野郎、食ってやがる・・・」
俺が半ば呆然と呟き、鳳明さんは嫌悪も露にそう吐き捨てた。
確かに中からはクチャクチャと生肉を咀嚼する音とその過程でまだ残っていた骨を砕く音がよく聞こえてきた。
暫くすると食事が終わったのか何の前触れも無く、俺達目掛けあの触手を向かわせた。
「志貴!!避けろ!量が多すぎる」「はい!!」
咄嗟に俺達は左右に飛んで最初の一撃をかわしたが、触手は二手に別れなおも俺達に追いすがった。
「しつこい!!」「とっとと下がれ!」咄嗟に俺と鳳明さんは先刻化物を掃討した妖力の雷と弾丸で迎撃に出る。
しかし妖力の弾丸も、雷も触手は容易く弾き飛ばし、追撃の手を緩めない。
「くっ!!」「くそっ!!」
触手は木々を貫き、岩をも砕き俺達を追い詰め、遂に「囲まれましたね」「くそ、あの触手、間違いなくあの爺の妖力で強化されている」
俺達は四方を触手に囲まれてしまった。
「ここまでか・・・」「跳びますか?」「無理だ。その途端串し刺しにされる。突破しかない」「付き合いますよ・・・」
そう言葉を交わすと、俺達は一点目掛け突破を仕掛けようとした。
しかし、これと同時に触手全てが俺達に襲い掛かろうとした。
が、その途端、周囲から爆音が聞こえる。
何事かと見渡すと触手が外部から次々と攻撃を受けている。
ある触手は急激に萎みぼろぼろになり、ある触手は炎をまとって燃え上がり、見た事も無い奇怪な生物が触手に攻撃をしている。
「紅葉の略奪・・・それに紫晃の餓鬼式神・・・」「先輩の黒鍵・・・それに秋葉か」そう呟いていると
「志貴!!早くこっちへ!!」「遠野の小娘達があれを牽制しておる。ホウメイ早く来い!!」
行く手を塞いでいた触手がまとめて消滅しアルクェイドとセルトシェーレが呼びかけている。俺達はその呼びかけに呼応して即座に囲みから脱出すると、今度は秋葉や紅葉達の援護を開始した。
「こっちならどうだ!!」「あれで駄目ならこいつで・・・」
そう呟き合うと、今度は俺は真紅の隕石の雨を降らせ、鳳明さんは妖力の紅竜を発現させる。
今度はさすがに効果があったようだ。
隕石群は触手をまとめて叩きのめし、真紅の竜は弱った触手に止めを刺す。
こうして俺達が集合を果たすと触手の方も一旦本体の方へと収納されてゆく。
「皆、無事か?」「はい大丈夫です」
「志貴様!!」「鳳明様・・・ご無事で・・・」「鳳明さん・・・良かった・・・」
「翠・珀、頼むから泣くな。まだ終わった訳じゃないんだからな」
「遠野君怪我は無いですか!!」「うん、先輩ありがとう。さっきは助かったよ。それと悪いな、アルクェイド」
「むぅー志貴〜私とシエルで何か差ない?」「気のせいだ」
「それよりも兄さん!!先ほど兄さんはご自分の事を『七夜志貴』と・・・」
「ああ、気にするな秋葉。あれはあくまでもあの爺さんに合わせただけだからな」
「それより!鳳明殿これは一体どういう事なのですか?気が付けば変な建物にいて、私たちと同じ顔の人がいるここは一体・・・」
「私も聞きたいです志貴さま。ここにどうしてセルトシェーレさまが・・・」「??レンちゃん、セルトシェーレと知り合いなの?」
「レンとこの冷たい女、元主従関係だって〜」「まあその事に関しては後ろの怪物を潰してからだ。・・・しかしあの爺がああ言う最期を遂げたからな、これで一応俺達の依頼は達成で来たわけだが・・・あれは潰さないとな・・・」
「そうじゃなホウメイ、あれは危険すぎる。放置しておけばどの様な災いをもたらすか知れたものでは無いからな」
そう言いあっていたとき俺は何気に後ろを振り返った。
「げっ!!鳳明さんあの化け物・・・」「どうした?なっ・・・なんて野郎だ」
それに気が付いた俺と鳳明さんは思わず絶句した。
見ると、奴の表面から明らかに顔と思わせる窪みが出現したのだ。
それも奴の表面のほぼ全域に・・・。
そして、「ひっ!!」「きゃあああ!!」「・・・これはちょっとした物ね」
後ろから恐る恐る見ていた女性陣から悲鳴が次々と上がった。
無理もない。
その顔と思われる窪みの内、眼と口の部分からあの触手がすざましいスピードで生え出したのだ。
さらにその口からは明らかにうめき声が聞こえてきた。
怨嗟を訴えるもの・苦痛にうめくだけのもの・絶命寸前にも関わらずか細い声で必死に助けを呼ぶもの別々だったがそれらが同時に発せられるのだ。
「う・・・うげぇ!!」「ううっ・・・」「翡翠ちゃん!!」「翠ちゃん!!大丈夫?」
余りのおぞましさ故に翡翠と翠が嘔吐した様だった。
琥珀さんと珀も顔を真っ青としながらも必死に看護している。
他の者の表情も似たり寄ったりだった。
「あれは一体・・・」先輩が嘔吐寸前のような表情でそう呟く。
「・・・おそらくあの緑の奴が今まで奪ってきた命だろう。あれは元々あの爺の生命力を補充する為に生み出されたものだからな、そして爺を真紅の化け物が食った事で今度はそれを奴が受け継いだのだろう」
「そ、その様な事が・・・」「こうなれば一刻の猶予もないな。志貴、決着を着ける。このまま放置すればあれはどんどん爺の妖力を使って、何をやらかすか判らん。突撃を掛けて一気に殺す」
「はい。アルクェイドとセルトシェーレはすまないけど至近での援護を頼む」「シエル、紫晃。貴女達には後方からの支援と翠達の護衛を頼みたい」
「秋葉と紅葉は遊撃の立場で触手の牽制を頼む。翡翠に琥珀さん、それに翠さんと珀さんそれにレンちゃんは先輩達と、後方の支援をしておいて」
俺と鳳明さんはアルクェイド達に矢継ぎ早にそう言うと合図もなく同時に飛び出した。

後書き
   今回は暴れさせました。(主に志貴と鳳明でしたが)
   なんか速いテンポで話が進んでいるなと思われるでしょうが戦闘は次回で終わりです。
   あと、『凶断』『凶薙』の具現化能力の技名、どれがどういった技なのか分からず混乱されている方もいられるかも知れません。
   実は下書きの段階では技の名前を言わせていましたが、なるべく現実に近くしようと思い、あえて名を言う言葉を書き直しました。
   ただそれではわかりづらいですので、次回後書きの代わりに『凶夜録』の様に余話として技の名を出そうと思います。
   ちなみに本編と余話、同時にです。


記事一覧へ戻る(I)