路空会合五話6


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1: 烈風601型 (2003/02/12 23:21:00)[kouji-sugi at mtj.biglobe.ne.jp]

ガタガタガタガタ・・・
音が気になって、はっと俺は目を覚ました。
辺りはもうすっかり夜になっていた。
ガタガタガタ・・・
音は夢ではなくはっきりと聞こえてきた為、俺は慌てて明かりをつけると、音の方向には『凶断』があった。
・・・まるで魚の様に飛び跳ねる『凶断』が・・・
「な・なんなんだ・・・えっ?!」
俺はその光景に唖然としていたが不意に脳裏に浮かんだ光景に言葉を失った。
「・・・なぜ、『凶薙』が震える?」
七夜鳳明の夢がまだ続いている?・・・
「な・なに?この光景は・・・恐らく志貴の時代のもの・・・なぜだ?」
どうして俺が起きているのにこの光景を見る?
今までは眠りについて初めてお互いの光景を見ていた筈。
そうだととすればなぜ俺と志貴は同時に起きている?
なぜ俺達は同時にこの光景を感じられる?
「それも大切だが何で・・・『凶断』がこんなにも震える?」
その答えを脳裏の光景が教えてくれる・・・
「なぜ、『凶薙』が・・・そう言えば聞いた事があるな・・・」
『凶断』と『凶薙』は元々、一本の刀にするつもりであった物を二本の小太刀に造り替えたと言う。
さらに、一本であった時には造りし『凶夜』の血を受けその鉱石の持つ力を極限まで高めた。
それらの要因の為かこの二本の刀は別々に分けられるのを極端なほど忌み嫌い、それが長い時間続くと二本ともその家に祟りをもたらす呪われた魔刀と化してしまうという。
だが、その二本は再会の時には喜びに震えるように自ら動き出すと言う・・・
「・・・それは」「つまり・・・」
    「二本の刀が再び遭うと言う事?」
俺は咄嗟に『凶断』とナイフを手にすると部屋を飛び出していた。
「あっ志貴さん、起きたんですか?晩ご飯・・・」
「ごめん琥珀さん。ちょっと出掛けるよ」
ちょうど上がってきた琥珀さんに俺はそう言うと階段を飛び降りると、靴もそこそこに外に飛び出していた。
『凶断』の震えは『七夜の森』に入った途端さらに大きくなった。
志貴が飛び出した途端、『凶薙』の震えは一層大きく、そして強いものとなってきた。
「・・・と言う事は」
「やはりあの妖術師が『タイムホール』の作成に関わっていると言う事か・・・?ちっ、客か・・・」
「ん?足止めか・・・『芸術品』と抜かしていたわりには扱いが酷いな・・・」
森の暗闇から三・四体の化け物が現れた、恐らく俺をいい獲物と見たのだろう。
五・六匹、俺の前に立ち塞がる。
おそらくは時間稼ぎだろう。
「悪いが俺は少し急いでるものでな・・・とっとと・・・失せろ」
そう呟き俺が『凶薙』を手に荒れ狂う暴風を思い浮かべるながら横に払った途端、中に溜め込んだ生命力の内の一部が風のように荒れ狂い、化け物共を瞬く間にこの世から消去した。
俺は眼鏡を外すと、ナイフと『凶断』を手に構えた。
こいつの使い方は今までの鳳明の夢で充分に教わった。
奴らが全員同時に触手で攻撃してきたがそれをジャンプでかわすと、「・・・俺も急ぎなんだよ・・・」
そう呟き、俺は隕石郡をイメージに浮かべ『凶断』を静かに振るとエネルギーの隕石群がまさに雨のように降り注いだ。
轟音と砂煙が収まると俺はそこを何も無かったように走り抜けた。
「ん?ここは・・・」
俺は遂に奴を追い詰めた。
そこは完全な袋小路、逃げ場は何処にも無い。
さらに「・・・はあ、はあ、ほ、鳳明様・・・」「はあ、はあ・・・お、遅くなりました・・・」「すまん。翠・珀・・・ところで他は?」
「遂に追い詰めたぞ!!お師匠の・・・敵め!!」
「随分とてこずらせてくれましたわね。でも・・・もうここまで来れば逃げる事は出来ませんわよ。・・・遠野家を裏切った事を心の底から後悔させて差し上げましょう」
「妾は、それほどお主に恨みを持っている訳では無いが・・・覚悟を決めるが良かろう」
「・・・」「爺、完全に追い詰められたな・・・どうする?」
ゆっくりと俺は妖術師に近付く。
だが奴の表情にはまだ余裕がある。
「・・・まだ奥の手があるようだな」「ほほう、わかるのか?七夜鳳明?」
「貴様のその憎たらしい位の余裕ある表情が教えてくれるからな・・・」
さらに言えば俺にはその奥の手が何であるのか推測も出来ていた。
その時、奴の背後の空間が不意に歪みだした。
「えっ?」「な、なに?」「な、なんじゃ?」「・・・やはりか・・・」
俺の呟きは他の驚愕に満ちた声と、
「はぁーーはっははははははっは!!!」
妖術師の勝利に満ちた高笑いによってかき消されていた。
「・・・爺、その時空の穴に入って別に時代に逃げる気か?」
「!!・・・な、なぜその事を・・・ま、まあ良い、この時代では余りにも鷲に危険が多すぎる、向こうに赴き鷲の高貴な理想を実現させてやろう」
「止めておけ、貴様がどんな野心を持っているかは知らんがそっちの時代にも俺のような奴がいる。止めておいた方が身の為だぞ」
「はははっ何を言うかと思えば、そのような下らぬ舌三寸で鷲を欺こうとは、お前のような意思を持つ奴が現れようとも、鷲に叶う筈が無かろう。さてお喋りもここまでにして、そろそろ失礼させてもらおう」
そう言うと妖術師と化け物はその時空の穴に飛び込もうとしたが、その瞬間には俺は既に同時にその穴に飛び込んでいた。

俺がその沼に到着した時、沼の真上には真っ暗な・・・闇よりも暗い黒い穴がポッカリと開いていた。
「これが・・・タイムホール・・・」
俺がそう呆然と呟いた時だった、その穴から巨大な何かが飛び出てきた。
俺は咄嗟に後ろに避け、それは俺の手前を跳ね、一旦森に姿を消した。
さらにその直後、その穴からまた誰かが出てきた。
その人物は軽く着地すると周囲を見回した。
「・・・ここは?!・・・ふっ、神とやらがいるとすれば粋な事を・・・まさかもう見れぬと思っていた『七夜の森』に来るとは・・・誰だ!!」
その男は俺に気付いたようだった。
そして俺はその男が誰なのか直ぐにわかった。
雲に隠れていたのか月明かりが、ぼんやりと周囲を照らしたのはそんな時だった。。
「!!・・・お前は・・・」「・・・やはり・・・あなたでしたか・・・」「七夜志貴か・・・」
「はい。とお・・・七夜志貴です。七夜鳳明さんですね?」
「・・・ああ、俺は七夜鳳明。お前から見れば遥か過去の七夜の当主。そして・・・『凶夜』だ」
そう言うと俺と鳳明さんは静かに歩み寄りお互いの手を握り合った。
これが常に夢で互いの人生を見続けた俺達二人・・・『直死の魔眼』の持ち主であり『凶夜』同士の会合だった。

後書き
   やっと・・・やっと・・・やっと・・・ここまで来た!!!
   完結にはもう一山ほどありますが、終盤でやっと志貴と鳳明を一つの時代で会合させました。
   これで五話は終わりです。
   次は戦闘が完全メインの六話、オールメンバーで暴れさせます。
   でも一番目立つのはやはり志貴と鳳明だろうな・・・


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