真夏の終わりに・・・


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1: グリフィンドール生 (2003/01/01 22:43:00)

時間は少し遡り、7月

屋敷の電話が鳴り響く。
トゥルルルル、トゥルルルル、トゥル・・・ガチャ。
「はい、遠野家ですが・・・ああ、久我峰様・・・えっ・・・はあー、わかりました、少々おまちください。」
彼女の名前は<琥珀>、遠野家に残る数少ない使用人だ。
タタタタタタタ、廊下を歩く音が近づいてくる。
「琥珀、今電話が鳴らなかった?。」
彼女の名前は<遠野秋葉>、成人さえしていないと言うのに遠野家当主という立場にある。
「あ、秋葉様ちょうど良かったです。久我峰様からお電話です。」
「・・・はあー、まったく何であんな男が・・・。」
と言って電話の受話器を受け取る。
「はい変わりました。・・・はっ?、えーと・・・確か・・・に、会った事は・・・なっ、暴行事件?。な、なな、・・・は?・・・何故あの子をこちらに呼ばなければならないのですか?。」
次第に不機嫌になる秋葉。
「・・・わかりました、この事はよく話し合う、という事で・・・それでは。」
電話が切られる。
「秋葉様?、どうかされましたか?。」「・・・はあ、何であの子が・・・。」「秋葉様?。」「あっ、え・・・どうやら分家の一人が問題を起こしたようなのよ。」
そして、秋葉は事情を話した。



遠野家の敷地面積はとてつもない大きさだ。そして、そこにそびえたつ屋敷もかなりの大きさだ。
その屋敷内の一箇所に人が集まっている。
「それでは、兄さんの退院を記念して・・・。」
「「「「「「カンパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ。」」」」」」
ガチャン、グラス同士がぶつけられる音。
当然その場の主人公<遠野志貴>も飲む。・・・酒を。
「フー、皆ごめんね、迷惑かけて。」
と、志貴は言った。
「いいよいいよ別に〜、志貴が無事なら〜。」
彼女の名前は<アルクェイド・ブリュンスタッド>、<真祖の姫君>と恐れられる者だ。
「そうですよ。・・・まあ、心配をかけた代償としてデート一回ですね〜。」
彼女の名前は<シエル>、<教会>という退魔機関の人間で本名を<エレイシア>という
「・・・あ〜ら先輩、何か仰りましたか?。」
・・・ちなみに秋葉の髪は赤。
「その通りです。し、し、志貴さ、様は、は、私とデートに、に行くのです。」
彼女の名前は<翡翠>、遠野家に残る数少ない使用人の一人。
「・・・あの、皆、勝手に・・・。」「何言ってるのよ、志貴は私とデートに行くんだから。」
志貴の言葉は聞こえていない。
「何言ってやがんですかあなたは、と、遠野君は、私と・・・。」「・・・お二人ともふざけないでくださる?。兄さんは・・・。」「あは〜、私とですかね〜?。」「・・・琥珀・・・あなたまで・・・。」
その時、黒い物体が志貴の膝へ向かった。

「ニャ〜ン。」(しーきーのーひーざー。)
この猫・・・彼女の名前は・・・。
「あら、レン。最近見ないと思ったらこんな所に居たんだ。」
彼女は・・・。
「ああ、アルクェイドの使い魔ですね・・・何で遠野君に?。」
<使い魔>という単語で皆一斉に振り向く。
「ああ、皆には言ってなかったね。この際だから言うけど俺、レンと<契約>して主になったから。」
・・・沈黙。・・・で。
「兄さん?。使い魔と<契約>とは一体・・・。」「ああ、実はレンが死にそうでね、それで俺が主になったんだ。」
さらり、と言った。
「に、兄さん?。兄さん自分の体がどうなっているかわかっているんですか?。」「大丈夫だよ妹、志貴には<直死の魔眼>があるわ。レンへの供給<は>問題ないわ。」
その言葉に三人を除いて皆安心する。
「ええ、それは問題ありません・・・が、遠野君、本当に<契約>したんですか?。」
ジャキッ。突如俺の喉に<黒鍵>が突き付けられる。
「せ、先輩?。」
なんか、めちゃめちゃ怒って・・・切れている。
「しーきー?、レーンー?。」
アルクェイドもだった。
「えっ、なっ・・・。」
何かやばい・・・。
「ちょ、ちょっと二人とも兄さんに何を?。」「し、志貴様に何をなさるのですか。」「あはー。」
最後の発言者だけは楽しそうにしている。
「だ、だから、俺はレンに俺の血を与えて主になった。それに問題があるんですか先輩。」
その言葉で二人の動きが止まる。
「志貴の・・・。」「血を・・・。」
<黒鍵>が引っ込められる。
「「あっ、あは、ははははははは。」」
と、苦しそうに笑い出す二人。・・・俺何かしたか?。

で、二人に説明をちゃんとしてもらった。
「あはー、つまりお二人は志貴さんが、<淫夢>で<契約>した、と思ったんですね。」
<淫夢>の辺りで顔を赤くする、翡翠。・・・可愛いなあ、と眺めてしまった。
「に・い・さ・ん?。」「はい。」

その後、レンの人間の姿を見せた。アルクェイドはともかく皆驚いていた。
なんせ見た目は本当に幼い少女なのだから・・・。

ちなみに、秋葉はレンをこの屋敷に置く事をしぶしぶながら承諾してくれた。
・・・条件に<レンには手を出さない>何てのがあった。どうやら信用されていないらしい。

そして、パーティーは続く。・・・はずだった。
「いい加減消えなさいこのアーパー吸血鬼ー。」「そっちこそバチカンでもどこでも行っちゃっへば。」「・・・どうせなら二人とも・・・消えなさい。」
と、大喧嘩が始まる。
もしかしたら、俺は一生<安息日>が来ないのかもしれない、と思ってしまった。

一時間後、安全のため身を隠していた翡翠と琥珀さんが戻ってきて一緒に掃除をする事になった。・・・琥珀さんだけはレンの相手をしてもらったが。

そして、見事元通りになった頃、秋葉が皆を呼んだ。
「妹ー、用事って何?。」「そうですね、これまた改まって・・・。」
実は俺も知らない。
「はい、これは私と琥珀しか知らない事で、兄さんにも言ってはいません。」「えっ、何で言わなかったんだ?。」
もう少し<兄>として自分を頼ってほしい。
「申し訳ありません。言う必要が無いと思い黙っていた事なんですが・・・どうやら説明が必要になりそうなんです。」
秋葉は申し訳なさそうにしている。
一体どんな事なのだろうか。
「姉さん。」「何?、翡翠ちゃん?。」「どうして私にも教えてくれなかったの?。」「う〜ん、実はどうなるかまだ確定した訳じゃないだけど・・・。」「いいわ、琥珀。私が説明するから。」
皆秋葉の言葉を待つ。
その気配にレンも注目する。
「実は、もしかしたら何ですが・・・この屋敷に新しい同居人がくるかもしれないんです。」「「「「「えっ。」」」」」
その言葉には皆驚いた。



話を要約すると、
<今宮隆一>という少年が俺達の親父の命令で<久我峰家>に居たが、学校で暴力事件を起こしたため手に負えなくなったので<遠野家>に押し付けようとしている、という事だった。そして、彼の家族は皆死んでおり、俺とは・・・まあ俺は養子だが・・・従兄弟になるらしい。しかも異端の血が色濃く、反転の対策としてそれなりの家柄でないといけないらしい。
「ふーん、そんな奴が居たんだ。」
まあ、知らなくても当然もしれないが。
「・・・実は隆一は一度この屋敷に来ているんです。」「えっ、そうなの?。」「はい、と言っても兄さんが来る少し前・・・入れ違いと言った方がいいかもしれませんが、とにかく来たんです。まあ、その時の隆一の年齢は確か三歳ですから覚えているかあやしいですが・・・。」
俺が来る前・・・四季がまだ反転していなかった時だろう。
「ふ〜ん、でもなんで私とシエルにそんな事話す訳?。」「わかりませんか、アルクェイド?。」
先輩が答える。
「要するにその隆一君が来たらこれまでのような騒ぎはなくしてほしい、と言う事ですね?。」
なるほど、それならわかる。
「はい、なにせ隆一の<遠野家の鬼の血>については、お父様が記憶を操作して忘れさしているんです。・・・そうしないと隆一は壊れていたかもしれないから・・・。」
壊れていた?・・・どういう事だ?。

そして、説明が終わった。・・・俺はしばらく立ち上がれなかった。
「・・・兄さん。」「・・・志貴様。」「・・・志貴さん。」「・・・遠野君。」「・・・志貴。」
家族を殺され、その相手に復讐した男。・・・そして施設、久我峰家と、たらいまわしされた挙句にここへ来る。
何故だろうか。俺は<今宮隆一>という人物に会ってみたくなった。
「いいんじゃないか?、ここに来ても。」
それが俺の出した答えだった。

後書き
 あけましておめでとうございます。さっそく書きました〜。<歌月十夜>の後、レンがどうなるか書いてみたかったのでこういう形にしてみました〜。それでは〜。


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