路空会合四話2


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1: 烈風601型 (2002/11/19 10:46:00)[kouji-sugi at mtj.biglobe.ne.jp]

「・・・っと、・・・き!!志貴!起きなさい!」「・・・ううっ・・」「あっ、やっと起きたな。もう志貴!!気分が悪いならそう言わないと駄目じゃない!」
「遠野君無茶しすぎです!後は私達がしますから遠野君は少し休んでください」「もう兄さん!!あまり心配させないで下さい!」「志貴様?まだご気分が優れないのですか?」「志貴さん?お薬を用意しましょうか?」「にゃあ?」
「・・・なんだ?髪を切ったのか?セルトシェーレ、それに先刻と違った服を着ているな」「へっ?」「紫晃殿、貴殿も変わった服を着ているな、それにその眼に付けているものは何なのだ?」「と、遠野君・・・」
「ん?確か貴女の髪は赤ではないのか?紅葉殿、・・・まあ、黒も似合うが」「に、に、兄さん・・・」「翠、珀お前たちもまた変わった服を着ているな。まあ、お前達には何でも似ていると思うが」「・・・・」「はあーやですよ志貴さん?」
「??・・・どうした?」「・・・志貴・・・」「なに?シキ・・・しき・・・し貴・・・」

「セルトシェーレってだれよーーー!!志貴ーー!!」「遠野君!!紫晃とは誰です!!」「兄さん!!私たちに飽き足らず紅葉とは誰ですか!!」「志貴様・・・」「あははー早く言わないとお仕置きですよー」「にぃぃぃーーー」
ようやく気が付いた俺を出迎えたのはアルクェイド達六人の盛大な大絶叫だった。
「な、何だ?・・・あ、あの―皆さん、なんでそんな眼で人を見ているのでしょうか?」
「「「「「「・・・・・・・」」」」」」
その問いに答える者は誰もいなかった。
「・・・志貴もう一度聞くけどセルトシェーレって何処の誰なの?」
「へっ?セルトシェーレ・・・って誰?」「しーーーきーーー、冗談にしては笑えないわよ。さっき私の顔見てセルトシェーレって言っていたくせに」
「俺が?」「ええ、それはもう真顔で」「・・・遠野君、私も知りたいですねー私を見て紫晃と呼んだのはどうしてですか?」「えっ?」
「兄さん、紅葉と言うのは何処のどなたでしょうか?ぜひともお聞かせください」「あ、あのー」
「志貴様」「志貴さん」「は、はい、なんでしょうか?」「志貴様、翠・珀と言うのは」「一体どういった方なのでしょうか?私達の顔を見るなり他の方の名を口にするなんて酷過ぎますよー」
「ちょっと待ってくれ。つまりはこういうことか?俺が皆の名を言い間違えたと言う事か?」「そうよ志貴」
「えーっと、アルクェイドをセルトシェーレ、先輩を紫晃、秋葉を紅葉、翡翠と琥珀さんを翠、珀・・・だよな」
全員無言で頷いた。
「・・・ごめん皆それ夢だ」「はあ?」「兄さん、私たちが夢を見たとでも言うのですか?」「待て待て、秋葉俺が夢を見たと言う事だ、夢に皆に瓜二つな子が出て来たんだよ」
そう、不思議な事に俺は今回の夢をはっきりと覚えていた。
セルトシェーレはアルクェイドが髪を長くし、青いドレスを着せ王族らしい風格を付け足したらそのままだし、紫晃は先輩が法衣でなく、呪術師の格好をさせれば良い。
紅葉は何時ぞやの秋葉そのものだし、翠、珀にいたっては瞳の色を変えてしまえばそれでどっちか判らなくなるほど似ていた。
「ふーん」「そうですか」「まあ少し怪しいけど」「・・・」「あららーでも志貴さんそんな事を真顔で言っちゃ駄目ですよ」
俺の説明に皆かなり怪しそうだったがそれでも納得してくれた。
「それで志貴、夢の中のセルトシェーレってそんなに私に似ていたの?」「ああ、お前が正真正銘のお姫様の素振りをさせればそのままだ」
「むぅー志貴それじゃあ私がお姫様らしくないってこと?」「違うのか?」「むぅー志貴の意地悪ー」
「さて、無駄口を叩く前に本を・・・あれ?」「ああ、本なら私達が回収しておいたわよ」「はい、遠野君ももっと私達の事を信頼してください」
「えっ、・・・ああ、ありがとう・・・」「?志貴様・・・」「いや、何でもないんだ・・・」
そんな事を話している内に俺に気絶する前の不安・・・いや、恐怖が襲ってきた。
(『凶夜』はひとたび狂えば目に付く者全てを抹殺していった。狂わなかったのは七夜鳳明ただ一人のみ。俺は・・・どうなんだ?『凶夜』とならずに・・・狂わずに己を保てるのか?・・・もし狂えば俺は・・・)
「ちょっと志貴?どうしたの?」「えっ?ああ、心配要らない。少し考え込んでいただけだから」
「ねえ、志貴少しおかしくない?」「何が?」「もう一人の『直死の魔眼』の持ち主をの事を知った時から様子が変ですよ。遠野君何か不安な事でも?」
「い、いやなんで、今になって七夜鳳明の夢を見たのかという事が気になって・・・」
「それってさーひょっとして志貴の中に七夜鳳明の魂があるのかもねー」「!!!」「あ、あれ?志貴どうしたの?真っ青よ」「・・・な、なんでも無いよ皆、少し疲れが本当に溜まっているみたいだ。じゃあ少し休憩したら本を整理して別荘に帰ろう」
アルクェイドにしてみれば悪意のない些細な一言であったのであろう。
しかし俺にしてみれば更なる、得体の知れない恐怖となり体を締め付けたそれを何とか押さえ込むと、無理やり平静を繕うとそう言って館跡に背を向けた。
その時不意にレンちゃんが俺の方に乗っかると、
(志貴さま・・・)(??)(どうして私が出て来なかったのですか?)(・・・・・・)
そんな事俺に聞かれても困る。

「ふう・・・もう夜か・・・長い一日だったな・・・」
別荘の自室で俺は軽く伸びをした。
あの後暫く休憩をした後、俺達は回収した本と共に『七夜の森』を後にした。
これから先俺が自発的に、ここを訪れる事はもうないだろう。
そして別荘に戻ると、自室に篭って俺は一冊づつ目を通している。
さすがに爺様が子孫の為に残しただけの事はある。
七夜の歴史を事細かに記したものや、暗殺技法、法術など、俺が退魔師や暗殺者となれば有効極まりないものが揃いに揃っている。
現に、下の階で、目を通し終えた本をアルクェイドと先輩が呼んでいる。
俺は最後の本を机に乗せると、「少し・・・出よう・・・皆に顔を会わせにくい・・・」
そう呟き、そっと玄関から外に出た。
最初は別荘周辺をぶらついただけだったが、気が付けば『七夜の森』の外周部分を歩いていた。
「・・・俺の中に七夜鳳明の魂があるかも・・・か」
不意にアルクェイドに言われた台詞を俺は呟いた。
確かにその通りかも知れない。
そうでなければ、あのリアリティな夢をどう説明できると言うのだろうか?
(そういえば・・・俺がこの森に来た時からだったな妙な夢を見る様になったのは、もしかしてここに来た事が俺に何らかの影響を与えてしまったのか?俺は・・・一体、どうしたら・・・)
「ちょっと君、人通りがないからって幅取り過ぎよ。ぶつかるわよ」
その時不意に後ろから声が掛かった。
「あっすみま・・・って先生!!」「えっ?志貴?志貴じゃないの!」
俺は慌てて右により振り向いたが、その人物の姿を見た途端目を引ん剥かんばかりに驚いた。
向こうの人物もぽかんとして俺を見ている。
驚いた、まさかこんな所で会うなんて・・・
そこには半年前の事件が終わって以来となる先生の姿があった。


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