路空会合三話4


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1: 烈風601型 (2002/09/03 17:31:00)[kouji-sugi at mtj.biglobe.ne.jp]

一人、屋敷に向かった俺はその前にある所に立ち寄った。
それは森の中にある少しだけ開けた場所にひっそりと作られた、粗末な墓だった。
そう、それこそ盛り土をしてただ、棒を突き立てただけの本当に粗末な墓・・・
俺は、今回の事を行う前にここに報告を入れることも決めてきた事だった。
周りの咲いていた、何本かの野花を積むと墓に添え静かに手を合わせながら
「親父・・母さん・・・それに皆・・・俺あの屋敷焼くよ・・・そうしないと俺、過去の事にばかり目を向けちゃいそうだから・・・」
そう言うと静かに立ち上がり、そこを後にした。

数日振りの屋敷は相変わらず荒れに荒れていた。
しかし幸いな事に、ここ数日雨は降らなかったようだ。
屋敷内や柱に湿気った跡は何処にも無い。
「さて始めるか・・・」
俺は早速、リュックを降ろすと持ってきたビニールシートを広げた。
更に、灯油・火種用のライター・懐中電灯と持ってきた物を次々と広げ、準備を終えると早速本の回収を始めた。
隠し階段を開け、地下の蔵書庫に足を踏み入れようとした時、ふと思い出した。
「そういえば・・・ここは当主の間だったな・・・」
そうなると親父はここの存在を知っていたのだろうか?
多分知っていただろうな・・・何しろここにこんな物を造ったのは、他ならぬ俺の爺様だったから・・・
なんでも爺様には未来予知と過去の透視、この両方の能力を保有していたらしい。
どちらか一方を保有している者は比較的多い。
しかしこれを双方とも保有している者は極めて珍しいといえる。
それで何を見たのかは不明だがある時、「必ず必要になる」と言って周囲を押し切る形でこれを造ったのだ。
更にその中には七夜の門外不出の書まで混ざっていたらしく一族会議はかなり紛糾したらしい。
「まさか・・・孫の代で早々に必要になるとは夢にも思わなかったろうな・・・」
もしかしたらそれすらも見えていたかもしれない。
何しろ爺様の評判はといえば、
「暗殺者らしからぬ点もあるが信頼に値する方。しかし、時折何を考えているのかわからない事がある」
だと言う事なのだから。
そう考えながらも、俺の手は自然に本を回収して、シートの上で日干しにする。
二・三十分程で本の回収も終わり、殻になった蔵書庫をもう一度見回して上がろうとした時だった。
階段の反対側の壁になぜか目が離せなかった。
自分でも判らない内に俺は自然にナイフを手にして眼鏡を外すと久しぶりに力を解放した。
その瞬間、あの忌まわしき線がでたらめに走っている。
そして俺はその中から、壁だけを通る線にナイフを走らせた。
その途端壁は崩壊し、そこに新たな部屋が隠されていた。
そこには本棚が唯一つ、そしてご丁寧な事に、鎖で何重にも封印された木箱があった。
俺はそれを手にすると今度こそ、そこを後にして、今度は灯油を手にすると、
今度は屋敷中の柱や畳などの、燃えやすい箇所に灯油を振りまき、その作業も終わらせると、ポケットティッシュにライターで火を付け畳に放り投げた。
その途端灯油に引火した火はゆっくりと、暫く経つと瞬く間に屋敷全体を炎で包んでいた。
そして俺はそれを無言でそれをじっと凝視いていた。
それが七夜最後の生き残りである俺の勤めだと確信しながら・・・

そのころ・・・
「うわぁー琥珀さんすごい御馳走ですねー」「はいー、志貴さんのお生まれになられた所に行かれるので少し腕によりを掛けちゃいましたー」
昼の弁当を広げている琥珀とその手伝いをしていたシエルがそんな事を言い合っていた。
その声に他の全員も中を覗いて感嘆の声を張っている。
「確かにすごいわね、琥珀、貴女屋敷でもこんな豪勢な物作った事は無いんじゃないの?」
「うわぁー本当だーすっごく豪勢!!」「姉さんこれって志貴様の好物ばかりなのでは?」
ちなみにレンは指を咥えてもの欲しそうな眼で豪勢な弁当を見ている。
「はい、志貴さん今日はすごく頑張られたので私からのご褒美です!」
「・・・ちょっと琥珀まさかとは思うけど貴女それを使って点数稼ぎを考えていないでしょうね?」
ふと危険を感じた秋葉がジト眼で詰問しだした。
「あはー嫌ですねー秋葉様、そんな事する訳無いじゃないですか。私はただ料理の出来る人の方が結婚してもおいしいご飯を食べられるという事を教えようとしているだけですよー」
「琥珀・・・貴女どこを略奪してあげましょうか?」
「琥珀さん良い度胸していますね。今から貴女の輪廻を絶って差し上げましょうか?」
「琥珀それって私のあてつけ?」「姉さん・・・」
琥珀のそんな言葉に秋葉達四人は殺意を漲らせて琥珀ににじりよった。
そんな時、「志貴さま!!」突然今まで蚊帳の外だったレンが大きな声でそう叫ぶと、走り出した。
志貴が戻ってきたのだ。手に見慣れぬ木箱を片手に・・・

後書きの前にお詫び
申し訳ありません!!まさしく私は大嘘吐きです!!
月3回だの4回だのといっていたのに先月はゼロでした!!
ただ弁明させて頂ければ、先月はいろいろとありました。
8月にADSLを予定していたのですが、予定外の事が起こって一月延びてしまい、
更にはいろいろとパソコンに故障が起こりその復旧にかなり時間が掛かってしまいました。
ただようやく、今日復旧とADSL投入も完了しました。
今後は急ピッチでこの物語を進めていきます。
今後もよろしくお願いします。

正式な後書き
志貴が『凶夜』の事を詳しく知るのは次回になりそうです(反省)
次回も早めに書き上げます。
それまでお見捨てないようお願いいたします。


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