「う・・・ふああああ、何時の間にか寝てたみたいだな。・・・あれここは・・・そうだ別荘だったな」
えーと時間は・・・五時?俺そんなに寝起き良かったか?」
目を覚ました俺は目覚まし片手にそんな事を呆然と呟いていた。
はっきり言ってこんな時間に目を覚ますとは・・・
「・・・やっぱりあれの所為か・・・」
そう・・・今となっては夢ではと思いたくなる様な光景。
古びた日本家屋、満点の星空と煌々と輝く満月、そして・・・それを背景に俺を見ていた俺に瓜二つな男・・・」
「まあ・・・悩んでも仕方ない・・・あれに関してはまた後回しだ。
それよりも今日は『七夜の森』に入るからな。朝飯を食うか・・・」
そう思い直し昨夜の内に用意した服を着ると一階に向かった。
「あれ・・・志貴さん・・・ですよね?」「おはよう琥珀さん。こんな朝早くから朝食の用意?お疲れ様」
「いえ、朝ご飯とお昼のお弁当つくりですよ今日はいよいよ志貴さんの故郷に行きますから腕によりをかけますよー」
「はは、行っても何も無いんだから」
そんな事を言いながら俺達はははと笑いあう。
しかし琥珀さんは急に真剣な表情に戻ると、
「ところで志貴さん今日はどうなされたんですか?いつもなら翡翠ちゃんが十回は起こさないと起きないのに」
「!!・・・う、うーん・・・久しぶりに里に行くもんだからやっぱり緊張しちゃったのかなー」
嘘だ。
あの光景が俺の眠りを浅くしたのは間違い無い。
何しろ朝起きて瞼が重いなんて今日が初めてなのだ。
「志貴さん!!」「!!」
琥珀さんが急に大きな声を上げた。
「??」
琥珀さんはじっと俺の顔を見ている。
「あ、あの琥珀さん・・・」「志貴さん嘘ついてますね?」「えっ?」「志貴さんの眼、何か隠してますよ。・・・何か悩んでいますね」
「・・・」
鋭い。
さすがは、半年前のあの事件以前は秋葉達を陰で操っていただけの事はある。
しかし、あの光景が何であったのか分からない以上、話すことは出来ない。
言っても皆を不安にさせるだけだ。
「志貴様?」とそこに翡翠がやってきた。
「ああ翡翠・・・!!」俺は振り向いて挨拶しようとしたがその瞬間、俺の思考は凍りついた。
翡翠の後ろに鏡が見える・・・あの光景を映し出した鏡が・・・
「?志貴様、どうなされたのですか?」「志貴さん?」「ご、ごめん・・・ちょっと・・・」
それだけ言うと。俺は鏡に近づくとゆっくりと鏡を覗き込んだ。
そこに映っていたのは・・・別荘の内装を映し出し、少し青い顔をした遠野志貴がいた。
何も異常はみられない。
やはりあれは幻だったのか?
いや幻とは到底思えないほど鮮明な光景だった。
では一体・・・あれは・・・
「あれー?志貴ずいぶんと早いんだねー」「遠野君おはようございます」
「兄さん?どうされたのですか?こんなに早くに??」
「志貴さまおはようございま・・・ふああああ・・・」
そんな時、残り四人がそろって降りてきた為、俺の思考はそこで中断された。
「あ、ああ、皆おはよう、じゃあ琥珀さん皆揃ったから朝ご飯にしましょうか?」
「はいー分かりました」
そう言うと琥珀さんはいつもどおりの表情をしたが、いつに無い不安な視線を俺に向けてきたが俺はそれをあえて無視した。
どう言えば良いのか分からなかったから・・・
そして七時半、俺達は登山の格好をして別荘の前に集合していた。
俺が予想外に早く起きた為、俺を待つ必要が無くなり、
『それだったら早めに出るとしましょう』と秋葉の声に全員が賛成した為だ。
「それじゃあ出掛ける前に・・・もう一度注意するけど森の中じゃあ絶対に不審な物には触れるなよ」
「はーーーい!!」「・・・アルクェイド・・俺はお前が一番心配だ」「にゃあー」
予想通りと言うべきか、いの一番になおかつ元気良く返事したアルクェイドに俺は溜息付きながらそう言い返した」
ちなみにレンちゃんは、猫形態になって俺の肩に乗っかっている。
「むぅー志貴何よそれって」「遠野君の意見に賛成ですね。子供のまま大きくなったようなあーぱー吸血鬼に団体のルールが守れるとは到底思えません」
「何よシエル、私は志貴の言う事は守っているわよ。でなきゃあんたなんかとっくの昔に死んでいたわよ」
「私も遠野君のことが無ければ貴方を封印している所です」
「・・・・・・」「・・・・・・・」
「はいはい、先輩もアルクェイドも落ち着いて。じゃあ皆出発するよ。皆俺に付いて来て」
あわや大喧嘩になりかけたので、俺は慌てて遮り、強引に話を進めて出発した。
「あーっ!!志貴待ってよー」「遠野君!!置いて行かないでください!!」
俺の後ろを秋葉・琥珀さん・翡翠、そして慌ててシエル先輩とアルクェイドの順で俺達は森へと足を踏み入れた。