8年前の懐かしい夢を見ていた。今ではもう手に入らないと思っていた、あの頃の夢。
屋敷の敷地内という限られた空間が世界の全てと思い、
時間が無限にあると信じて遊びまわったあの頃。
志貴さまがいて秋葉さまがいて、まだ四季さまが反転してなくて私がいて、
そして姉さんがいた。そのことがとても嬉しくて、とても悲しかった。
ただ、これでこれが夢であるとわかってしまった。
私が「そのこと」を認識してしまったとたん眼が覚めてしまった。
明けない夜が無いように、覚めない夢も無い。それはそんなとても単純なコト。
そんなコトをぼーっとながら考えていると目覚ましが鳴り始めた。
時刻は午前4:00、さぁ、仕事をはじめる時間だ。私はいつものメイド服に着替え、気合を入れる。
少しでもあの人の役に立てるように。そのために私はいるのだから。
「おはようございます、姉さん」
「はい、おはようございます。翡翠ちゃん。
どうかしたんですか?嬉しそうですよ」
志貴さまが帰ってきてから姉さんも明るくなった。
前みたいな張り付いた笑顔ではなく、本当の笑顔を見せてくれるようになったと思う。
「今朝の夢見が良かったんです」
「それは良かったですねー、志貴さんでも出てきましたか?」
「……違います」
「それじゃあ、お仕事がんばりましょう」
「はい」
屋敷にある窓という窓を開け放ち、屋敷内のよどんだ空気を朝の新鮮な空気と入れ換え、
屋敷内いで目に付く所を簡単に掃除をする。そんな事をしているうちに、時刻は6:30に。
さあ、志貴さまを起こしに行かないと。
階段を上り、二階にある志貴さまの部屋へ向かう。扉の前で深呼吸をして気を落ち着ける。
……中から変な物音はしない。またあの方がいることは無いようだ。
ほっと胸をなでおろし扉をノックする。
コンコン
「失礼します」
さぁ、今日も頑張ろう。
もう四季さまはいないけど、何時かあの夢が現実になるように
あとがき
はじめまして、月影朧といいます。
翡翠の朝の日常を書いてみたくなって、書いてみたものです
まだまだ精進の余地ありですな。それではまた何処かで