仮面の復讐騎 予告編
蒼い月明かりに照らされる生気の感じられない巨大な城。
その一室。一人は黒い皮製の上下を着た男。もう一人は喪服を着た女性。
「もう、この流れは止められないのですよね?」
「フ・・何を今更。全てお前の計画通りなのだろう?琥珀」
その琥珀と呼ばれた女性の呟きは男、復讐騎にとって以外だった。
この女、琥珀は遠野と言う人外の血が混じる一族縁の人間だ。しかも真祖の姫君とも
知己でありその護り手である殺人貴の使用人でもあった。
それがある日突然に男の前に現れ――
『貴方の復讐に彩りを添えてみせましょうか?』
と、仮面の様な笑顔を浮かべ、そう言った。そして
『志貴さんを奪って消えたお姫様に復讐したいんですよ』
とも付け加えた。表情の無い笑顔で・・・
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「お久しぶりです、秋葉」
「―――アッ!?アルトルージュさん?今まで何処へ!?」
秋葉に語り掛けるのは穏やかな口調の少女。黒い衣装の共を連れた死徒の姫君は懐かしい遠野の
屋敷に現れた。
血と契約の支配者と詠われる程の魅力的なその笑顔も今は隠せない疲れが浮かんでいる。
「もっと早く帰るつもりだったのですが・・・」
「何か、良くない事が始まっているのですね?」
力無く頷くアルトルージュ。いつもはあれ程気丈に振舞える秋葉も憔悴し切っていた。
1年前、魔眼殺しで直死の魔眼を制御出来なくなった志貴を連れてアルクェイドがいなくなった。
―――それと同時にアルクェイドの居城、ブリュンスタッドも何処かへ姿を消したのだった。
そして今、27祖を頂点とする死徒達の間でかつて無い規模の派閥の崩壊が始まろうとしていた。
現在、死徒の派閥は大きく分けて真祖狩りを提唱する[白翼公]派とアルトルージュ派の2つ。
『ある人物』からの情報で[反真祖狩り派]である自分の派閥争いは未然に防げたものの
事態の収拾に7ヶ月もかかってしまったいたのだ。
遠野家のリビング。それはアルトルージュにとって懐かしくも暖かい記憶の象徴。
志貴と初めてあったのも、妹であるアルクェイドと再開したのもこの場所だった。
「お茶をどうぞ。アルトルージュ様。カモミールがお好きでしたよね?」
「ありがとう、翡翠。貴方の淹れたお茶が恋しかったですよ」
「お上手ですね」、と久しぶりに笑みをこぼす翡翠
「あら、本当ですよ」と笑い返すアルトルージュ。しかし直に表情が曇る。
一口、二口を口にした後、カップを置く。そして何かを決意したように――
「秋葉、それに翡翠。貴方達に全てをお話します」
アルトルージュの口から語られる7ヶ月間にあった出来事。しかし二人が聞きたいのは・・・
親友でもある人間の少女達がいつ話を切りだそうかと考えあぐねいているのを察し
「―――分かっています、志貴・・・そして琥珀の事が気になるのですね?」
ふぅ、と一拍置くその仕草は、まるで自分の動揺を隠すかのように見え
「志貴の―――ブリュンスタッド城の行方はまだ分かりません」
「そ・・・そんな?」「―――――」
見ていて胸が締めつけられるほど落胆する二人。
「じゃあ、姉さんは?琥珀姉さんは――――――」
悲痛なまでの翡翠。無言で答えを待つ秋葉。だが辛いのはアルトルージュも同じ。
「7ヶ月前、内部分裂の情報を私に伝えたのは、多分・・・琥珀です。」
―――――!!!?何故?!どうして琥珀が?――― 姉さんが?!!
崩れ落ちそうな二人にアルトルージュは涙をこらえ
「今回の一連の事件の首謀者は第十八位に数えられる死徒。そして・・・琥珀なんです!」
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「志貴、今夜はとても月が綺麗だね。手を伸ばせば消えてしまいそうな・・・」
【後書き】
ああ、やってしまいました。取り合えず予告編です。
アルトルージュのイメージは幼い頃の秋葉がそのまま成長したような感じで、とに
かく良い娘です。癒し系です。順番が狂ってしまいましたがアルトルージュの話は近い内に。
一応、「日常における朱い月」とアルトルージュの話と仮面の――は繋がってます。
感想お待ちしております。