日常における朱い月 その2「遠野家地獄変」


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1: ししりい (2002/04/25 20:17:00)[yurikamome6 at hotmail.com]


   日常における朱い月 その2
 

「志貴さま、失礼します」
部屋に入ると同時に翡翠が固まる。目に映るのは見慣れぬ長い金髪の
女性とジャレあっている――様に見える俺。
「やあ、おはよう翡翠・・・ええと、その」
バタンッ!と音と共にそのまま無言で扉の向こうに引っ込んでいった。
「なんだ。満足に挨拶も出来ぬとは躾のなってない使用人だな?」
全然状況を把握していないよ、この天然入ったお姫様〜。
「俺達に気を使ってくれたんだよ、翡翠はさ」
「そうなのか?なら、お主の使用人には失礼な事を言った。許せよ」
なんて意外にもしおらしい事を言ってくれる。なんか可愛いかも。

「なんですって!兄さんの部屋に知らない女が?!」
「あらあら、志貴さんの部屋に知らない女の人ですか〜?」
翡翠の報告に激昂する秋葉と対称に何処か嬉しそうな琥珀。
「で、どんな女なの?」
「あ、あの、とても綺麗な外国の方でした。金色の髪が長い・・あ?」
「どうしたの?翡翠ちゃん」
印象は全く違うが自分のよく知る人物に似ている事に気が付いた。
「雰囲気は違いますがアルクェイド様と良く似ていらっしゃいました」
「・・・それって結局はあの泥棒猫って事なのかしら?翡翠」
「いえ、確かにそっくりでしたが――」
「でもね〜翡翠ちゃん。あの人程の美人は他にいませんよ、ねぇ秋葉様?」
「なんで私に同意を求めるのよ、貴方は?」
「あはは〜、別に意味なんて〜♪」
女3人寄ればとは言うけれど今日の遠野家のリビングは実に姦しい。
志貴にとっては近寄りたくない空間であり――まさしく地雷原。

「やあ、おはよう、みんな」
意を決して階段から声をかける。努めて明るくなるべく自然に・・・
「おはようございます、兄さん。ちょっとお話が――」
「志貴さん,おはようございます。朝からお楽しみだったみたいですね〜♪」
その言葉にムッとする秋葉。当然矛先は俺に向くわけですね。
「あ〜、実はそのアルクェイドがお前に挨拶したいんだとさ」
「は?今更なにを考えているのですか?あの泥棒猫は!」
やれやれと呆れた顔をする秋葉。と、その時
「泥棒猫とはずいぶんだな?遠野家当主よ」
俺の後ろから姿を現した朱い月。
「あ・・・・」「・・・・」「!―――――」
その声の主を見た瞬間、秋葉が息を呑む。いや、秋葉だけではなく琥珀さんも
翡翠も目を離せないでいた。それはかつてロアの心を奪い狂わせたあの・・・
自分達の前にいるモノ。それは遠野の血の起源である魔の中の王。紅赤朱と化
したあの軌間当主をも比較しえない圧倒的な存在。
スッと朱い月は白く美しい手を俺に差し出し
「ん?ああ。」
皆が見守る中、俺に手をとらせ階段を降りていく。その立居振舞いは芸術であり
身に着けたいつものタートルネックの白いセーターと紅いロングスカートが違っ
て見えるくらいだ。・・・ちょっと演出過多な気もするが。やはり女だな、朱い月。
流れるような動作で秋葉の前に立つと一言
「我が名はアルクェイド=ブリュンスタッド。お主達の祖の王にして真祖の姫である」
「な・・・なんですって〜!?」
いきなりのご主人様宣言に驚き、我に返る秋葉。先刻までの幽玄な雰囲気は何処へやら。
秋葉の剣幕に青ざめる翡翠。あはは〜な琥珀さん。
「お、おい!」
先ほどの泥棒猫発言を根に持っているのか俺の静止も聞かずそのまま挑発的な口上を続ける
「何だ?別に嘘は言っていないが。」
「に・い・さ・ん?」
屈辱的なソレに秋葉の髪が段々と紅くなっていく。怒りの方向は当然の如く俺かい?

『この身は言うなればアルクェイドの悪夢である』
初めて会った時、アイツは俺にそう言った。しかし現状を見るに
『実は俺の悪夢の具現化かよ!?』と、思ったり―――

「要するにアルクェイドさんは反転なされてしまったんですね〜♪」
「姉さん・・・なんでそんなに余裕なんですか?」」




  つづく〜


  『あとがき』
 実は一番書いてみたいのが朱い月VSゼルレッチのリターンマッチ。琥珀が勝利の鍵だ!(笑)
 朱い月はビッグファイヤ。琥珀さんは諸葛孔明、奪われたブリュンスタッド城を
取り戻せ!ってな感じで―――――
「あはは〜、全ては私の思うままですよ〜♪」
 ゼルレッチは空条某みたいな人らしいのでやはり能力はスタンドってイメージが・・・


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