黒い・・・


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1: 111 (2002/04/19 13:18:00)



日曜日、俺は今一人で町を歩いている。
秋葉は遠野家の家長の仕事があるらしいし、琥珀さんと翡翠も秋葉について行っている。
言える先輩の方も、埋葬機関の方で用事が出来たらしい。
何より!あのアルクェイドがレンまで連れて、用事があるというのだ!!!
久しぶりの自由
アルクェイド達と遊んだり、喧嘩に巻き込まれる日々も楽しいのだが、こういう穏やかな日々もたまには良いもんだ。
今日は何しようか?
等と考えながら、交差点に向かう。
何気なしに穏やかな風景や、周りの人達を見る。

       ドクン

一人の少女に目を留めたとき、心臓が大きくなった。

       ドクン     この衝動は・・・

俺はその少女の後を付ける。

       ドクン     覚えがある・・・

少女はホテルに入り、一つの部屋に入った。

       ドクン     そう・・・

眼鏡を外す。

       ドクン     あの時は確か・・・


ポケットに入っているナイフを取り出す。

       ドクン     この七つ夜で・・・

チャイムを鳴らす。

       ドクン     あの時・・・

わずかにドアが開く。

       ドクン     俺は・・・

俺は隙間に手を入れて、無理矢理ドアを開ける。

       ドクン     こうやって・・・

驚いた少女の顔。

       ドクン     アルクェイドを殺した

其処まで思い出した瞬間、俺は自らの衝動を全身全霊を掛けて押さえて、そのまま意識を闇に落とした。





気が付くと、見知らぬ天井。
体を起こして、状況を確認する。
「起きたか?」
声を掛けられて驚いた俺は、その方に顔を向ける。
「君は?」
其処にいたのは、長く黒い髪、黒い服、赤い目の・・・驚くほど整った容姿をした少女。
その容姿はアルクェイドにさえも見劣りしないだろうが、惜しむらくはその無表情さ。
それさえ何とかなれば、正にアルクェイドと並ぶであろう。
「「君は?」ではないであろう。お主がわらわに用があるのであろう?」
その手に持つナイフ−七つ夜−を見て、俺は全ての記憶を取り戻した。
「あ、ああ」
ようやく思い出した俺を見て、少女は聞いてくる。
「それでは・・・何故、わらわを殺そうとしたのだ?」
何故だろう?アルクェイドの時と同じく、血の衝動?それをどう説明するんだ?
「何故に?」
考え込んでいる俺に、無機質に少女は聞いてくる。
「ごめん、理由はないんだ・・・・その・・衝動的に・・・」
「良くもまぁ正直に・・・まぁ、概念武装もされてないような武器で向かってくるのだ、埋葬機関の者ではあるまい。
お主、俗に言う、「通り魔」・・・そうであろう?」
笑いながら七つ夜が投げられたので、俺はそれをポケットにしまう。
埋葬機関に狙われるって事は、この子も吸血鬼なんだろうな・・・
「そうであろう?」
いや、行動としてはそう変わらないが・・・
「え、と・・否定できないんだけど、否定したいなー」
「「通り魔」であろう?」
俺の前で来た少女が、俺を尋問するかのような目で見ている。
何というか、こういう整った容姿の子がこういう目つきをすると、有無を言わせぬ迫力があるよな・・・
「・・・はい」
情けなくも、その目に押されて自分は「通り魔」だと認めてしまう。
「そうか、やはり「通り魔」か・・・うむ」
そう言って後ろを向いて、無防備な背中を向ける。
うるうる・・・この子の中で、俺は「通り魔」と分類されてしまった。
俺は心の中で涙ぐむ。
「ふむ・・・お主、私の知っている「通り魔」とは違うのぅ」
いつの間にかこちらを向いていた少女が、そう言ってくれる。
「わらわが知っている「通り魔」は突然気を失わぬし、捉われたら自分がわらわを殺そうとしたのを認めぬ。
さらには凶器を返したり、後ろを見せたりすると、すぐに襲いかかってくる輩ばかりだったが・・・」
そこで考える素振りを見せる。
沈黙が走ったので、もう一度この少女をよく見る。
長く黒い髪に赤い目、アルクェイド並に整った容姿に黒い服。
アルクェイド並?
否、アルクェイドに似ているのだ。
あいつの表情はくるくる変わるし、少し幼いのですぐには思いつかなかったが、アルクェイドによく似ている。
まるで姉妹のように・・・
「お主、何が出来る?」
「へ?」
そんな所まで考えていた俺に、少女が聞いてくる。
「お主に何が出来るのか聞いておるのだ。シュトラウト等がアヤツを見つけるまで、わらわを楽しませたら命を助けてやる」
「・・・」
考える。
コイツを楽しませるか・・・
俺としては、コイツがアルクェイドに似ていると気付いた時点で、コイツが無表情なのが嫌になったので不満はない。
それならどうやってコイツを楽しませるか・・・
映画館・・・二番煎じは嫌だ、せめて二つ目に・・・
公園・・・コイツの感性を刺激するには穏やかすぎるだろう。
路地裏・・・殺される・・・いや、一度アルクェイドを連れてったら殺されかけた。
それなら・・・遊園地でも行くか?
金なら卸してきたばかりだ。
遊ぶ物もいっぱいある・・・決めた!
「良し!それなら外に出るか」
「外で戦うか。確かに此処は狭いしのう」
はい・・・?
外で戦う?
タノシマセロッテ、ソウイウコトデスカ?
「戦わない!」
「何!?戦わぬのか?しかし、それ以外の楽しみとなると、読書ではお主はいらぬし・・・拷問か?」
コイツ、それ以外楽しみ無いのか?
その言葉を聞いて、少しくらっとしかけた。
吸血鬼って、こんなんばっかりか・・・
「では?・・・もしかしてナニをするつもりか?わらわはそんなコトする気は無いぞ。まだ処女であるからな」
「ゆ・う・え・ん・ち・に・いっ・て・あ・そ・ぶ・ん・だ」
何となくアルクェイドのつもりで、そのほっぺたを引っ張る。
コイツ、人のことをなんだと思ってやがるんだ?
「ふぁ、ふぁなふぇ」(は、離せ)
何となくその感触が気に入って延ばしていると、生意気にも抗議してきやがる。
仕方ない、離してやるか・・・
「お主、良い度胸で有るな。わらわは吸血鬼、アルトルージュ・ブリュンスタッドなるぞ」
コイツ−アルトルージュは、名乗ると同時に殺気を放ってきたが、コレくらい慣れている・・・慣れたくはなかったが
ちなみに赤くなった頬をさすっていては威厳もない。
「やっぱりな。吸血鬼って事は予想してた」
「は?」
その、凄んでいたのに予想外のことに気が抜けた顔は、アルクに似ていて可愛らしく、思わず笑ってしまう。
「わ、笑うでない」
今度は顔を赤くして抗議してくるが、アルクはほとんどしない表情で・・・可愛らしい。
思わず頭に手を置いて、撫でてしまうほどだ。
「な、撫でるでない」
そう言ってくるが、その実、嫌そうではない。
実力行使してこないのが証拠だ。
「お主、わらわが怖くないのか?」
「全然」
怖い?あの人外魔境で生活してれば、コレくらいどうって事無いさ
「わらわは吸血姫、ガイアの怪物を従える死徒の姫なるぞ」
「ああ。それで?」
人外魔境には慣れている。
「「それで?」だと・・・お主、わらわが知っているどのような人間にも当てはまらぬ」
俺が即答したのに、またもや驚いたようだ。
なんか、本当にアルクェイドに似ているな、コイツ。
思ったより簡単にコイツの表情を引き出せたことで、俺の目的は半分以上完了したが・・・
「それじゃ、遊園地に行くか」
「・・・うむ」


俺達は今、遊園地に来ている。
それは良いのだが、何かアルクェイド達といる時以上に見られてるな。
アルクェイド達の場合はほとんどが、俺に対する嫉妬かアルクェイド達への羨望の視線だけど、少し違うな。
この年齢差じゃ恋人は無理だし、コイツと俺じゃ兄妹は無理だろう・・・もしかして俺、変質者に見られてる?
「きゃっ、あの子綺麗」
「一緒にいる人と兄妹かな?凄く似合ってるよね!」
「声かけてみたらどう?」
「駄目駄目、私達じゃ釣り合わないよ」
何かひそひそ話してるよ・・・
南無三、警察が来ませんように・・・
「それじゃ、何に乗る」
周りの視線を無視して、とりあえずは希望を聞いてみる。
「わからぬ。任せる」
予想通りの答え。
仕方ない・・・とりあえずは定番から行くか・・・

ジェットコースター
「まずはこれだな」
流石は遊園地のメイン、長蛇の列が出来ている其処に並ぶ。
「コレに乗るのか?」
「そうだよ」
質問に答えてやるが、まだ不思議そうだ。
「こやつらは?」
目の前の行列を指さす。
「俺達より先に乗る人達」
「そうか。なら、殺して・・・・」
「や・め・ろ」
この常識知らずは・・・
とりあえずは柔らかいほっぺたを引っ張る。
「わひゃっふぁひゃらひゃみぇりょ」(解ったから止めろ)
「よし」
不満そうだったが、その頭を撫でてやると大人しくなってくる。
そのまま大人しく待っていると、思ったより早く俺達の番がやってきた。
「のるぞ」
「うむ」
そしてしばらく・・・
「なにやら面白そうだのぉ」
コイツもなにやら期待で興奮しているらしい。
そしていよいよ・・・
   ゴォォォォォ
「何だ、この程度か・・・つまらぬ」
始まったのは良いが、人外のコイツにはこの程度の早さや高さは面白くないらしい。
かくいう俺も、この程度慣れているので楽しくない。
「つまらなかったぞ」
白い眼で見てくる。
「すいません」
選択ミスでした。
其処まで考えて、この遊園地の乗り物を考える。
お化け屋敷・・・吸血姫に何を今更
観覧車・・・・・同じく
メリーゴーランド・・・馬に乗ったことぐらい有るだろう、俺も恥ずかしいし
パレード・・・・今は3時、何時間後だ?
失敗だった。
「お主、もしかしてわらわが吸血鬼であることを忘れていたのか?」
「うっ・・それは、その・・・・・・・・はい」
思いっきり忘れてました。
「そうか」
そう呟いた顔は、何故か嬉しそうに微笑んでいる。
「とりあえず歩くぞ」
「あ、ああ」
コイツが手を握って歩き出したので、それに引っ張られながら付いていく。
結局、遊園地内の雰囲気を感じながら、2人で散歩するだけになった。
ま、何故か嬉しそうにしているから良いか。


夕方、もう門限が近づいてきている。
コイツにかまうのも、もう終わりか・・・
「もうこんな時間か・・・もう帰るよ」
秋葉に怒鳴られるのは嫌だからな・・・
「だめだ、お主はわらわの物だ」
横柄な言葉とは裏腹に、どこか寂しそうな顔。
こんな所までアルクェイドに似てやがる・・・
アルトルージュの頭に手を乗せて、言い聞かせるかのように言う。
「悪いな、俺には待ってる人達がいるんだ。その人達の所に帰らなきゃいけないんだ」
何時までも一緒にいるわけには行かない。
俺は、みんなの所に帰らなきゃいけないのだから・・・
しばらくそうしていると、背後に二つの気配が生まれた。
「アルトルージュ様。彼の者の居場所を突き止めました」
「すでに文も送っております」
「今夜12時、公園にてお会いになる事が出来ます」
交互に喋る人影。
俺のことなど眼中にもない。
「そうか、解った」
アルトルージュの顔は始めてみたときと同じく・・・無表情だった。



あの後解放された俺は、そのまま屋敷に戻ってきていた。

「アルトルージュ様。彼の者の居場所を突き止めました」
「すでに文も送っております」
「今夜12時、公園にてお会いになる事が出来ます」

後ろにいた人影の言葉。
そして、無表情になったアルトルージュの顔を思い出す。
彼の者・・・か
時計を見ると、もう11時だ。
「・・・いくか」
そして俺は、屋敷を抜け出して公園に向かった。


やっぱり・・・
深夜の公園
其処で二つの影が戦っている。
「「誰(だ)?」」
誰何の声に答えて現れる・・・俺。
「「志貴(お主は)・・・何故ここに?」」
アルトルージュと・・・アルクェイドの2人が聞いてくる。
何故・・・か・・・
「簡単なことだ・・・・お前等を止めに来た」
そう言って、俺はアルトルージュとアルクェイドの中間に立つ。
「私を止めに?何で邪魔するの、志貴?」
「わらわを止めに?何故じゃ?」
何故?簡単なことだろ。
「お前達に戦って欲しくないからだ」
そう言って、眼鏡を外す。
セカイノシガミエル
「そ・・・志貴がそう言うんなら止めておくわ」
「何を言うアルクェイド!」
矛を収めるアルクェイドに、アルトルージュは食ってかかる。
「私、志貴に嫌われたくないから」
笑いながらアルクェイドが抱きついてきたので、抱きとめてやる。
「それに、私じゃ志貴に勝てないし」
「なっ!」
アルクェイドの「志貴に勝てない」と言う言葉に、アルトルージュは絶句している。
「そう言うこと。お前も物騒なことは止めた方がいいぞ」
そう言ってアルトルージュに近づいた俺は、その頭を撫でてやる。
腕をつねるのは止めてくれ、アルクェイド。
「だが・・・」
「だが?」
「だが、数百年にも及ぶこ奴との因縁。存在理由を奪われた憎しみを、そう簡単に割り切れるものか」
存在理由?
もしかして、”堕ちた真祖を狩る”と言う奴か?
「そんな殺伐としたモンの為に生きてて楽しいか?俺ならそんなモン拒否するけどな」
その言葉に、アルトルージュはポカンと惚けると・・・
「ふっ・・・・・ははははっ・・ふははははは・・・・」
いきなり笑い出した・・・・
「誠にお主らしいわ」
そう言って俺の顔を見る。
「そうだな。確かに、そんなモノのために生きるのは楽しくない」
「そうだろ」
解ってくれたらしい。
だからつねるのは止めろ、アルクェイド。
「これからはもっと楽しむために生きるとしよう」
その方がいい、こうやって笑えるのだから・・・
「これからもよろしく頼むぞ」
「え?」
聞き返そうと思ったが、その頃にはその姿は消えていた。
「さて・・・志貴、どういう事か聞かせて貰いましょうか」
追いかけようと思ったが、この俺の腕を掴みながら笑ってない笑いをしている吸血鬼をどうするか?
それを先に考える必要があった。


「この不浄者ー」
「何よ、この陰険シエル!やる気?」
「遠野君を汚そうとする者は敵です!」
翌朝
いつも通り俺は、いつもの喧噪の中で目が覚めた。
「おはようございます。志貴さま」
「おはよう。翡翠」
翡翠も慣れたモノで、何事も無いかのように俺を起こしてくれる。
「志貴さま、今日はお客様がロビーにお見えになられております」
客?アルクェイドもシエル先輩もここにいるし、誰だ?
「秋葉様と一緒にお待ちになられているので、お早めにいらっしゃってください」
心なしか、翡翠の目が冷たい
イヤナヨカンガスル

結局俺は、嫌な予感がすると言っても行かない訳にはいかず、着替えをしてアルクェイド達の喧嘩を止めて降りていった。
「お主、遅かったな。いつもこの時間まで寝ておるのか?」
「兄さん。またこんな子供に手を出したんですか」
其処には思った通り、アルトルージュと髪が赤くなった秋葉がいた。
「お主の言うとおり、楽しく生きようと思うのでな・・・お主と」
「は、はは・・・ははははは・・・・・・・・・・・」
アルトルージュの言葉を否定するわけにはいかず、俺は乾いた笑いを浮かべるだけだった。










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アルトルージュじゃないな(汗)
駄作ですいませーん。


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