空と月の死期〜弐章・結界と空〜
「ふむ、ここまでは悪くない」
男が一人、闇の中に在った。
闇の中に溶け込むように身に纏うは、黒。そしてただ一点の白銀。
あまりに鋭いその目線の先にはひとつの屋敷があった。
時代を遡ったようなその屋敷には、二人の男と八人の女と一匹の猫。
壁の有無など関係ないかのような目線は、
その中で二人の人物を捕らえていた。
一人は、太極を体現せし女。
一人は、七つの夜の末裔の男。
共通するはひとつの眼。
神をも死に至らしめるその眼の名は、
【直死の魔眼】
この力はどの魔法使いも、どの吸血鬼も、どの代行者も持ち得なかった、
死を具現化しうる力なり。
「くっくっくっ、おもしろい、果たして我が結界破れるかな」
渇いた笑みを漏らす男は、口元を歪めていた。
男を知る者が見れば驚嘆しただろう。
その数百年の生涯で男が笑ったのは数えるほどしかなかった。
「他にも真祖の処刑姫に第七司教、赤の人形師か・・・
まっこと興味が尽きぬ連中よ」
男はその状況を心底楽しんでいるようだった。
あまりに強力な力を前にしても、男の自信はゆるぎない。
「さて・・・では行くか。念には念を込めぬとな」
そう男は虚空に語った。男は浮いている。そして消えた。
まるで絵本の魔法使いのように・・・・
「式、鮮花、気をつけろ。この世界、何かおかしい」
「世界・・・ですか?」
「どういうことだ橙子」
橙子の言葉は良く解らなかった。
世界というのはこの土地のことか、存在するもの全てのどちらかだろう。
しかし前者の異常ならば、橙子は世界なんて遠回しなことは言わない。
ならば、後者は?それもおかしい。
存在するもの全てには私も含まれている。
だが今のところ私には異常ない。
「私にも解らん。ただ、何か違和感がある」
「結界ではないのですか」
鮮花が尋ねたのは魔術師として当然のことだった。
他の魔術師の結界内に入ることは宣戦布告を意味する。
「それはないだろう。私が気付かないほど上等な結界を創れるのは
片手の指で事足りる人数しかいないからな。
しかもそのうち一人はもう存在しない」
それはあの荒耶宗連だろう。
孤独でありながら理想の人間像に縋った、悲しき僧。
あいつは何時か転生しても同じことを繰り返すのだろうか・・・
「以上のことからまず結界ではありえない
この感じはどちらかというと・・・・」
「なんなんです?」
「いや、なんでもない。
そんなことはありえないからな」
「そうですか・・・」
橙子は口を噤んでしまった。何か言いたかったのは明白だったが、
それ以上聞いても無駄なので、私と鮮花は聞き返さなかった。
「それよりこの事は黒桐には黙っておけ
無駄に不安がらせることはない」
「はい、もちろん」
「ああ、わかっている」
この三人に共通することは黒桐を失いたくないということだけ。
「なにやってんの三人とも、追いてっちゃうよ」
黒桐はなにも知らずに話しかけてきた。
まったく、こっちの気も知らないで・・・
まあ、それが黒桐なんだろうけど。
そう思うと自然、笑みがこぼれる。
「なに式、僕変なことでも言った?」
「いや、ただ黒桐らしいなって」
「なにそれ?」
「なんでもない、ほら行くぞ」
私は黒桐の腕をつかみ、メイド服の少女に追いつこうとする。
黒桐は頭に?マークを浮かべながらついて来る。
追いついたところで、メイド服の少女はこちらに向かってこう言った。
「ではこちらです。
どうぞ、秋葉さまは居間にいらっしゃるので」
目の前には大きな屋敷と、それに比例するような門。
その先には何が待っているのか、私は柄にもなくドキドキしていた。
続く・・・
どーも、舞姫ますたーです。毎度読んでいただき、ありがとうごぜえやす。
最近読み始めた方、この物語は序章から始まっています。
壱章からじゃないですよ。ご注意ください。
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本編ですが・・・全然進んでませんね(汗
敵は出てきたけど、終わるのはいつになるやら・・・
月姫キャラ全然出てきませんし・・・
と、とにかく次回、参章で。再見(ツァイツェン)
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http://www.geocities.jp/hiroyuki71k/にもおいらのSSが載ってるよ。
友達のHPで他にも壁紙などもやってるので、行ってみんさい。