蒼い目、赤い目 第一回「顔合せ」 M:志貴 傾:シリアス


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1: nari (2002/03/21 15:47:00)[naripeko at excite.co.jp]

「よう、朝から憂鬱な顔してるね〜遠野。どうしたよ?」

朝から寝不足の俺に有彦が話し掛けてくる。
何で寝不足なのかと言うと話は昨日に遡る。
昨日本屋で立ち読みしていてきづいたら門限の時間を過ぎていた。
慌てて帰ったら案の定秋葉がお冠だった。

琥珀さんは”またやってしまいましたね”という感じで苦笑いしていた。

翡翠はいつもの事の様に普通に対応していた。

言い訳を聞かれたので時間を見ていなかったと正直に言ったら油に火を注いでしまったら
しく更に説教の時間がのびてしまった。
秋葉が俺に説教をしている途中ばれない様に小声で

「そんな些細な事でこんなに怒らなくてもいいのに。血管切れるぞそのうち。」

ぼそっと言ったのだが秋葉の地獄耳は見逃してくれなかったなかったらしい。
秋葉の髪が赤くなりその後怒鳴り声が館内中に響いた。
そんなこんなで説教は時計の短い針が十二の所を過ぎた辺りで終わった。
帰ったらやろうとしていた期限ギリギリの課題を残していたため(やらない自分が悪いが)
朝まで死ぬ思いで終わらして窓を覗いたら既に朝だった。
朝日が眩しく目に毒だった。
何となくアルクゥエイドに親近感を感じつつ今の状況にいたる。
いつもの遅刻魔今日は馬鹿に珍しく普通に登校している。
普通の奴ならこの不自然極まりない状況に何かあるなときづく。
だるい体を起こしながら

「お前こそ珍しいな有彦。今日は快晴なのに後10分したら雨が降るぞきっと。遅刻魔のお
前が何でこんなに今日は早いんだ?」

「知りたいか?」

有彦は何やらもったいぶっている。
既に人との会話より睡眠を欲している俺は

「いい。今日は傘持ってくるの忘れちまった。濡れるのは嫌なのにな。」

皮肉を言いそのまま机につっぷつした。
十五分後教師が入って来て朝のホームルームがいつもの様に始まる。

「さて朝の挨拶の前に今学期からこのクラスに編入する新しい生徒を紹介する。入ってきたま
え。」

ああなるほど。
有彦の言いたかった事はここで初めて理解した。
ガラッと言うドアの音を立てて転校生が入って来た。
入って来たのは女子だった。
長い黒髪で顔立ちが良く目が細く背が大きく180近くありモデルのような体系をしていた。
美人の代表例。
第一印象はそんな感じだった。
男はみんな喜びを女は敵意の眼差しを彼女に向けていた。
先生の横に立つと

「石神 渡和歌 といいます。よろしくお願いします。」

石神は簡潔に挨拶を済ませた。

「では石神あそこの席が空いているのであそこに座りなさい。」

先生は二つ空いている席のうち俺の隣にある空席を指した。
石神が歩いてくる途中俺の前で何かを落した。
しょうがないのでそれを拾い石神に呼びかける。
手に拾い確認をしてみるとどうやら髪留めらしい。
金色の色をして綺麗な細工が施されていた。
石神に

「はい、これ」

金細工らしき髪留めを渡された石神は微笑み

「ありがとう。七夜 志貴君。」

パキンッと何かが割れる音が心の奥底で鳴った。
七夜と言う余りに聞きなれていない旧姓の発音を聞かされ衝撃を受けた。
その名前をなぜ知っている?
石神はそのまま何もなかったかの様に黒板の方へ顔を向けた。
俺はこの後何も手につかず終始ずっと下を向きなぜ自分の過去の闇に葬られた名前を知って
いるのか問いただす時間が出来るまで待った。
昼休みの知らせのチャイムが鳴ると同時にすぐさま石神に話し掛ける。

「石神さんちょっといいかな。話がしたいんだけど。」

「あらなにかしら遠野君?いいわよ。」

「ここじゃなんだから屋上で。聞きたいことが山ほどあるし。」

「フフッ、それは楽しみね。でも奇遇ね。私もあなたに用があったの。じゃあ行きましょう
か。ついでに校舎案内してもらえません?まだこの学校は不慣れでよく分からないの。」

思っていた以上に話がすんなり進みそのまま教室を出て屋上へと向かった。
バンッとドアが開く。
屋上の空気がやけに涼しい。
「さて貴方からどうぞ。聞きたい事があるんでしょ?」

カシャンッと石神がフェンスに寄りかかりながら言った。

「率直に聞くけど何で俺が七夜だと知っているんだ?君は何者なんだ?」

石神は不適に笑い質問に答える。

「いいわ。教えてあげる。石神 渡和歌と言うのは偽名。私の本当の名は九式 霞沙。ある人
からの依頼で貴方を監視または殺す様に頼まれた。七夜と言う言葉を知っているのはクライア
ントから提供された情報よ。まだ貴方を殺すつもりはないから安心していいわよ。直死の魔眼
使い君。」

気が動転しそうになった。
冗談なら質が悪すぎる。
正気をなんとか保ちそのまま質問を続ける。

「依頼者は誰なんだ?」

「あらあらそんな野暮な事は聞かない方がいいわよ。聞いたら聞いた分だけ死期を早めるだけ
だから。そうねぇでも今ここで私に素手で勝てたらヒントを上げるわよ。十中八九有り得ない
だろうけど。」

九式は挑発している。
だがここで素直に”はいそうですか”と出来る訳がない。
とりあえず目的は相手が九官鳥並にぺらぺらと喋ってくれたのでおおよそ把握することができ
た。
クソッ相手が男なら迷わず七夜を開放して張っ倒した後依頼者が誰なのかはかしてやるのに。
そんなことを考えていると九式は恐ろしい事を言った。

「貴方の妹さん、確か秋葉って子だったかしら。可愛い子よね。私が食べてしまおうかし
ら?」

俺の中の何かが弾ける。
そこまで言われて黙っているほど俺は人間出来ちゃいない。

「止めろ!!秋葉は関係無いだろう。もし秋葉に手を出してみろ。その時は女だろうと容赦せ
ずお前の息の根を止めてやる。」

九式は笑う。余裕の笑みを浮かべている。

「アハハッ、誰が私に手加減するって?まあいいわ今日はここまで。今階段を上って来てる人
がいるから。どうやら貴方のお仲間さんみたいだし。弓は私でもやりずらいしね。安心して少
しからかっただけだから。悪魔でも標的は貴方よ。邪魔者が居なければの話だけど。それじゃ
私は戻るから。」

教室に戻ろうとする九式に”ふざけるな”と言おうとして肩を掴む。
九式は肩を掴まれると同時にに何やら呪文のようなものを早口で唱え始めた。

「今生において我を束縛する者に同じ罪をあたえん・・フュウッ」

九式が何やら言い終えると突然肩に電撃のような痛みが走った。

「グアッ」

思わず俺は悲痛な声を上げ肩を庇う様にして後ろに跳んだ。

「何をした?」

「貴方が掴んだからその力を高めてそっくりそのまま貴方に返しただけ。簡単でしょ?じゃあね。」

そのまま九式はドアの方へ歩いていく。
九式がドアを開ける前にバンッと音が鳴り屋上のドアが勢いよく開く。
重い音のする鉄のドアからはプンスカ怒っているシエル先輩が出てきた。

「遠野君探したんですよ!!お昼せっかくご一緒しようとしたのに!!乾君に聞いても何も教
えてくれませんし。こんな所で何してたんですか?この人は誰なんですか?」

どうやらシエル先輩はまだこの状況を飲み込めていないらしい。
今は九式が危険な奴だと教えないとまずい。

「先輩そいつから離れろ!!そいつの近くに居たら危ない!!」

「どうしたんですか遠野君?この人がどうか・・・ん!?あなたは!!」

「気づくのが遅いわよ埋葬機関の死神さん。平和ボケでもしたの?」

今ある現状を把握したらしくシエル先輩は躊躇せず黒鍵を抜きながら俺の居る位置まで後方に
一気に跳躍した。

「遠野君怪我はありませんか?」

「俺は大丈夫。先輩あいつは何者なんだ?吸血鬼の類なのか?」

「そんな生易しいものじゃありません。込み入った話は後で。何で地獄の異端者がここに居る
んですか!!貴方は既に二十年以上昔に協会に封印されたはずです!!」


「そうよ。封印されたわ。偽装工作でね。アハハハッ。あんなトロイのに捕まるわけ無いで
しょ。協会の追っ手の奴らは美味しく戴いたわ。彼ら生命力が豊富な集団だから。」

「なんの目的でここに?答えなさい!!」

式はフゥッと軽くため息をつき

「口が過ぎるわよ小娘。今すぐ死にたいの?私がここ居る理由はそこの七夜君にでも聞いた
ら?彼なら何で私がここに居るのか分かるから。私五月蝿いのは嫌いなの。悲鳴は好物なのだ
けれど。私の邪魔をするなら今すぐこの世から存在を無くしてあげるわよ?」

「この命、魔を狩るためなら喜んで捧げましょう!!覚悟!!」

先輩は前方の敵めがけて黒鍵の一本を前に突き出し刹那の如くかけて行く。

「あらら良いのかしらそんなことして?お馬鹿さんね。そんなこしたらここの学校に居る生徒
が全員死ぬわよ?」

ビタリッと先輩の黒鍵が九式の喉ギリギリで止まる。
後一センチ前なら九式の喉に刺さっている。
先輩の目が更に険しくなる。
だが次の瞬間信じられない光景を見る。
九式は自分から黒鍵を喉に刺しずぶずぶと耳障りな音を
たてながらそのまま先輩に顔を近づけたからだ。
刺さった部分からは九式の血がトクトクと溢れ出る。

「そうよ。良い子ね。私を狙うのなら夜にすることね。」

刺さっているのに九式は平気な顔をしながら喋る。
喋り終えるとグチュッと言う音をたてながら九式は前に屈み後ろに下がりながら喉から黒鍵を
抜いた。
先輩は歯を食いしばったまま状態を崩さず九式を睨んでいる。

「フフッ、良い顔よ。死神さん。」

カツカツカツ、ギィーバタンッとドアが閉まる。
九式は喉の傷をほったかしたままは下に降りていった。
俺はすぐさま先輩の所に向かう。

「先輩大丈夫か?あいつは何者なんだ?」

「はい大丈夫です。しかし何であんなのが・・・。遠野君話しておきたい事があります。」

「九式のことでしょ。奴は何者なんだ一体?」

先輩は一呼吸置くと真剣な顔で俺に分かりやすく説明を始めた。
九式は元々協会に属している奴だったらしい。
九式家と言う由緒ある名家の出らしいが今ではその血は途絶え奴が最後の生き残りらしい。
なんで今は生き残りが奴だけなのかと言うと奴は五十年程前協会の所有物である[破邪の剣]と
いう物を盗みその剣で協会の者を十五人、同じ一族のもの全てを皆殺しにしたらしい。
その後三十年近くして多くの犠牲を出しながらも協会によって封印されたはずだった。
しかし今の状況から見ると奴は捕まるどころか追ってきた協会の刺客をどうも返り討ちにした
らしい。
だがここまでで一つ疑問が残る。
奴の年齢はいくつなんだ?
いくらなんでもおかしい。

「先輩、奴は何で歳をとらないんだ?物理的に五十生きてあの容姿はあわないと思うんだけ
ど。」

「それはですね。それは奴が持ち出した剣に秘密があるんです。[破邪の剣]は持ち主の時を止
めてしまうという呪われた力があるんです。だから奴は歳をとりません。いや、とれないと言う
方が合っていますね。私は実物を見たことがありませんが[破邪の剣]は持ち主の考えるイメー
ジによって姿形を変えるんだそうです。だから奴は必ず何処かに身に着けているはずなんです
が・・・。奴を近くで見ても全然何処にあるのか今の私の力では分かりませんでした。」

「さっき奴は先輩の黒鍵に自分から喉に刺しに行ったのに何で奴は平気なんだ?」

「それは私にもわかりません。黒鍵には祝福儀礼が施されているのにまるで効きませんでした
。それに・・・・。」

先輩が行った言葉がきになり先輩の持っている黒鍵の方を見る。
奴を刺した黒鍵は茶色くなり錆びていた。
俺はそれを見て悪夢が今一度再び舞い降りたことを嫌と言うほど理解した。


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