空と月の死期〜壱章・空の使徒〜


メッセージ一覧

1: 舞姫ますたー (2002/03/21 00:36:00)[akiko28@tcn−catv.ne.jp]

空と月の死期〜壱章・空の使徒〜


街にしんしんと雪が降る。

去っていく冬を名残惜しむ様に、雪は降り続ける。

春の訪れを告げる暖かい風は吹かず、ただひたすらに雪が降り続けた日、

街に四人の使徒がやってきた。

そう空と月の物語を交えるべく、月の町に空の住人がやってきた。

『空』っぽだったその人は『境界』を越え

『空』の様に澄んだその人は『境界』に気づかず

『空』の様な兄に恋したその人は『境界』に歓喜し

『空』色の姓と髪を持つその人は『境界』を破壊しながら

それぞれが『月』の『姫』が在る街へと舞い降りた。

今、まさに会合の時、月と空は天使を残し、交わり創めた。


雪はなぜ降るのだろう。

科学による解明なんてとっくに済んでいるのに、何でだろう、

この街に来た時、そう思った。

子供の頃思ったのは神様が降らしているわた、天使の羽、そんなところだ。

でも今はこう思う、

境界線を越えたことに対する祝福の華ではないかと。

何の境界線かは解らないが、なぜかそう思った。

別にロマンチストというわけではないのだが・・・・

こんなこと式に言ったら笑われるだろうな。

そんな空想に耽っていると、式が語りかけてきた。

「なあ、幹也。これからどこ行くんだ?」

その一言で僕は現実に引き戻された。

これから僕たちが向かうのは遠野という家、この辺りでは有名な資産家だ。

その人にうちの会社が家の改築の設計を依頼された。

お金持ちなのでお抱えの設計士が居そうなもんだが、

どうやら非科学的、魔術的な要素が絡んでいるらしい。

うちは表立ってそういうことをやっている訳ではないが、

そっち方面で依頼が来たというわけである。

それでも僕は与えられた仕事をやり遂げるだけだった。

「うん、遠野っていう資産家の家。

 そこで泊り込みの設計作業なんだけど・・・

 って式、聞かされてないの?」

今日、仕事に行こうとしたら式と鮮花も連れて行くって所長に言われた。

なので、てっきり事情も聞かされているのかと・・・・

「ああ、幹也が泊り込みだってのと、その家は女が多いってことだけ」

「それで式はのこのこついて来たと」

「そうだよ、みすみす他の女に幹也を取られてたまるか。

 お前は私のもんだ。誰にも渡さない」

式は変わってない、でも少しだけ・・・

もう俺という一人称を一切使わなくなり、

式は僕を自分の物だと言い張るようになった。

少し女らしくなって独占欲が強いのは良いんだけど、その後の言葉が・・・

「取られるぐらいなら、殺して私のものにする」

ほらやっぱり・・・

こっちは式以外になびくつもりはないっていうのに・・・

「大丈夫だって。

 念のため、誓いのキスでもしとく?」

「いや、いい・・・・」

式は赤くなって俯いてしまった。

家が古風なせいか、式はこの手のことには疎い。

こっちとしてははもうちょっと深い仲になりたいっていうのに・・・

「二人ともなにいちゃついているんだ。ほら、着いたぞ。」

いつの間にか二人はだいぶ先にいた。

鮮花はすごい形相でこっちを睨んでいる。

そんなんだからいつまでも彼氏ができないんだ、と内心思いながら、

走って二人に追いついた。

「でかいですね・・・」

目の前には式の家より大きい家と、大きい門が有った。

その門に一人の人が立っているのが見えた。

その人は時代錯誤なメイド服を着た女の子がいた。

おそらく僕より年下だろう。

橙子さんが近づいて話しかける。

「蒼崎だが、当主はいるか?」

「お待ちしておりました、蒼崎さま。

 中で秋葉様がお待ちです。こちらへどうぞ」

少女は無表情で門を開け、中へ案内した。

そこは異界の門のように見えた。

まるで自分が入ってはいけない物語の入口の様だった・・・・


雪の日、二つは一つになるべく、月に空が入ってきた。

交わりはゆっくりと確実にやってくる・・・・・

                        続く・・・・



ちわー舞姫ますたーデス。
空と月の死期の壱章、楽しんでいただけたでしょうか?
天戯さんの様にオリキャラは出てきませんが、読み続けてやってください。
それと・・・鮮花ファンの方スイマセンm(__)m
鮮花セリフ無し!・・・・ごめんなさい、シリーズ中に必ず見せ場を・・・
いや、ホント。
ではまた弐章で、アリヴェ・デルチ!


記事一覧へ戻る(I)