永遠の誓い
真祖の姫君が恋をした。生まれてはじめて自分を殺した相手に・・・
その者は、人に在らざる死を視る魔眼を以って、不老の混沌と不死の蛇を滅し、
真祖に在らざる優しき心を以って、姫の凍てつきし心を解かした。
姫君は彼を愛し、また彼も姫君を愛していた。
けれどこの汚れなき純白の姫君は知っていた。
この幸せが永く続かないことを。
夢・・・夢を見ていた。
山奥にひっそりとたたずむ城で、一人在る白き吸血鬼。
家族もいない、友達もいない、悲しき孤独の吸血鬼。感情がないはずのその吸血鬼は確かに泣いていた。
俺はそいつを泣かせるわけにはいかなかった。でも、言葉が出なかった。何かを言おうとして、やっぱり出なかった。
なんでだろう、わからない。俺はそいつを幸せにしてやりたかったのに、わからない。
言葉が出ないうちにそいつは俺に向かってただ一言「ばいばい」とだけ言って、消えてしまった。
そこで夢は終わりだった。
「・・・・・」
めずらしく俺は一人で起きていた。窓は俺が寝ている間に翡翠が開けておいてくれたのか、そこから風が吹いていた。
俺は一人何をするでもなく、ぼーっとそれを眺めていた。
時計は現在、午前九時を指し、普段なら余裕で遅刻だ。
だがそれも、冬休みの俺には関係なかった。
「・・・・・」
少し考え事をしていた。
あの悪夢のような出来事から二ヶ月が過ぎた。
二ヶ月の間、俺はアルクェイドと普通の恋人のように接していた。
遊園地に行ったり、食事に行ったり、愛し合ったり。
とても楽しく、充実した日々だった。
朝、アルクェイドに起こされ、夕方、アルクェイドのマンションへ遊びに行く。
それが、遠野志貴にとっての日常になっていた。
その日常が今日は、ない。
アルクェイドが起こしに来ないのだ。たとえそれが休みだろうが必ず、あいつは朝早く起こしに来る。
それはこの二ヶ月、一度も途切れた事はない。
「・・・やめ、やめ。どうせ今日は寝坊しただけだろう。
たまにはこっちから起こしてやるか」
そう自分に言い聞かせると、俺は早速着替えを済まし、朝食をとるべく居間へ向かった。
「あら、志貴さん、おはようございます」
「おはようございます、志貴様」
「おはようございます、兄さん」
居間に入るなり、三人から朝の挨拶を掛けられた。
三人はいつもどうりの配置で食後のティータイムを満喫していた。
「おはよう三人とも。琥珀さん、早速で悪いんだけど、朝食あるかな?
ちょっと急ぎの用事が出来ちゃって」
俺は割烹着の少女に頼むと、いつもの場所に座った。
「はい、わかりました。では少々お待ちください」
そう言って琥珀さんは台所の方へ消えていった。
「兄さん、どうしたんですか?急ぎの用なんて」
「ああ、ちょっとな」
俺は適当に返事をすると、思案をめぐらせていた。
今日はアルクェイドとどこへ行こう。たまにはカラオケでも連れてってみるか。
あ、でもあいつ歌なんて知ってるのかな?
知ってても外国の歌だろうし。うーん、どうするか・・・
「兄さん、ちょっと兄さん聞いてますか?めずらしく早起きしたんですから、
たまには家族サービスとか考えないんですか。せっかく皆暇そうにしてるのに」
「悪いな秋葉。今日は勘弁してくれ。今日は用事が・・・・って、あれ?」
答えてみて、秋葉の質問に違和感を感じた。
秋葉はめずらしく早起きしたと言っていたよな。
その表現はおかしい。俺は休みの日もアルクェイドに起こされてもっと早く起きている。
「秋葉、今のなんかおかしくない?普段起きるのはもうちょっと早いじゃないか」
「それは、平日は当たり前じゃないですか」
「いや違うって、休日も」
俺の言った言葉に秋葉は妙な顔をしている。
まるで自分の言った言葉が間違ってないかのような、そんな顔だ。
不安になって翡翠にも聞いてみる。
「ねえ、翡翠。俺、いつももうちょっと早いよね」
翡翠は困ったような顔をして答えた。
「失礼ですが、志貴様は、お休みの日は正午近くまで寝ていらっしゃいますが」
「翡翠までなに言ってるんだ。いつもアルクェイドが朝早く起こしに来てるじゃないか。
秋葉も、翡翠だって知ってるはずだ!」
さっきの不安がまた胸をよぎり、俺はつい語気が荒れてしまった。
それでも二人は冷静に答える。俺にとって絶望の一言を。
「誰ですか?その人」
「どなたですか?志貴様のご学友ですか」
「なっ・・・・・」
何も言えなかった。言える筈がない。二人はいたずらにそんなことを言う人ではない。
ならば、答えは簡単だ。本当に忘れているのだ。何もかも。
アルクェイドが最初に家に来た事も、幾度となく口げんかした事も。全て。
不安は的中した。
「くっ・・・アルクェイド!」
俺は走り出していた。いてもたってもいられなかった。
「兄さん、どこへ行くんですか」
「志貴様、朝食は」
「ごめん、いらない。それと多分、今日は遅くなる」
心配させないためにそれだけ言うと、俺は全速力で走り出す。
走りながら考えていた。
俺があんな夢を見たのはおそらく、アルクェイドの夢魔のせいだろう。
別れを告げるため、夢を使ったのだ。
そのことから考えて、これら一連のことはアルクェイドが自ら行った事。
そして、俺だけ記憶を消さなかったのはおそらく、止めて欲しいから。
そんなアルクェイドに俺は何をした。なにも出来なかったじゃないか。
無意識にわかっていたのだ。あの時、アルクェイドに声をかけるという事は今までの人生を
全て捨てると言う事が。家族や友達、思い出さえも。それを俺はためらった。
アルクェイドが何より大切だと言っておきながら、俺は全てを捨てれなかったのだ。
「・・・アルクェイド・・・アルクェイド・・・アルクェイド!」
俺は一番大切な者の名前を呼びながら、泣いていた。
「なんで、なんで俺はアルクェイドを選ばなかった!なんで声を掛けられなかったんだ!」
そうだ、何で気付いてやれなかったんだ。俺は確かに家族や友達と呼べるものがいる。思い出もそれなりにある。
だがあいつは何がある?なにもないじゃないか。
あいつは俺だけなんだ。だから・・・だからあいつに声を掛けられるのは俺だけなんだ!
「待ってろよ、アルクェイド。もう俺は迷わない。
例え何が無くなろうと俺はお前を選ぶ。必ず、一生お前を離さない」
決心はついた。この選択が俺にとって良いものか、悪いものか今はわからない。
だけどきっと大丈夫、アルクェイドと一緒ならどこまでも行ける気がするから。
ただがむしゃらに走っていた。今までアルクェイドと一緒に行ったところを全部回る。
そうすれば、あいつは必ずいる。
まずはアルクェイドの部屋
初めてあいつを愛したところ。初めてあいつを殺したところ。
つぎに路地裏
初めてあいつの笑顔を見たところ。
ホテル
初めてあいつと戦ったところ。
映画館
初めてあいつと意味もなく行ったところ。
隣町の遊園地
初めてあいつと恋人として行ったところ。
「・・・・いない、か」
どこにもいなかった。有り金はたいて隣町まで行ったのに、どこにも。
「もう、だめなのか・・・・・」
頭からはアルクェイドの、最後の寂しそうな笑顔が離れない。
いやだ、離れたくない。もっと一緒にいたい。
「まだだ、まだ捜すんだ。きっと見つかる。いや、見つけてみせる。
後、行ってないのは公園と学校ぐらい。そのどちらかにいなければ、また最初から捜す。
見つけるまで何度でも捜してやる。
「よし、行くか」
一息つくとまた走り出した。向うのは公園、それから学校だ。
「ここにもいない」
夜、誰もいなくなった学校を後にする。時計を見るともう午後の九時を回っていた。
あれから結局、もう一度同じところを全て回ったが、どこにもあいつの笑顔はなかった。
「もしかして、本当にいなくなったのか・・・」
嫌な考えが頭をよぎったが、ぶんぶんと頭を振ってその考えを取り払う。
「きっと、まだどこかにいる筈だ。もう少し待ってろよアルクェイド」
しかしこれ以上どこを捜す?アルクェイドとの思い出が詰まったところは全部捜したはずだ。
・・・・いや待てよ。全部、本当に全部か?違うまだ一ヶ所だけ行ってないところがあった。
「なにやってるんだ、俺は。一番大事なところを忘れていた」
そうだった。あいつを初めて見たのは何処だった?殺したと思ったあいつがいたのは何処だった?
あいつと再び会って約束したのは何処だった?
「・・・はあ・・・はあ・・・はあ」
今日ほど、このポンコツのような体を恨めしく思ったことはない。朝からの全力疾走で俺の体は
完全にガタがきていた。走れば骨は軋み、眩暈がする。
だがこれくらいの痛み、あいつの心の痛みに比べれば何ともない。
アルクェイドはもっと痛かったはずだ。信じていた唯一の人と別れなければいけないなんて。
自分からまた何もかも無くしてしまうなんて。
だから走る。この体が壊れようと構わない。そんなのアルクェイドがいなくなるよりずっとましだ。
どのくらい走ったか、一時間走ったような気もするし、五分だったかもしれない。
目の前にはあの交差点が広がっていた。
そこのガードレールには一つの白い影が在った。
白い影は何時かのように問い掛けてきた。
「学生さん、今帰り?」
そいつは確かにアルクェイドだった。
「ああ」
「ずいぶん遅いんだね」
「人を捜していてな。そいつがまた恋人を置いて一人で行こうとするバカ女で
えらく苦労しちまった」
「そっか、いけない人だね」
「・・・・・」
「・・・・・」
それ以来二人は黙ってしまった。
お互い言いたい事はたくさん有った筈なのに、なにも出てこない。
どれ位経ったか、俺は口を開いた。
「あの・・・」
「あのね・・・」
二人の声が重なってしまった。
「アルクェイドから言えよ」
「うん・・・あのね、私行かなくちゃいけないんだ。一人で」
それは別れの言葉、まさかアルクェイドの口から聞くとは思わなかった言葉。
「どうしてだよ!なんで俺を連れて行かないんだ。おまえ、前に言ってたじゃないか、
何処までも俺を連れて行くって」
そんなのは納得いかない。納得してたまるもんか。
「最初はそのつもりだったの。でもねわかっちゃたんだ。この二ヶ月志貴と一緒にいてみて、
志貴には今の生活が大事だって、志貴を必要としている人がたくさんいるんだって。
・・・・だからここでお別れだよ」
アルクェイドはそれだけ言って振り向くと、歩き出そうとした。
アルクェイドは最後まで笑顔だった。
だけど、それでも俺はアルクェイドを行かせる訳にはいかなかった。
「待てよ。言いたいことだけ言ってさっさと行っちまうつもりか?」
「・・・・・」
「俺にも言わせろよ」
アルクェイドはこちらを振り向かずに止まっていた。
「確かに、俺には今の生活がとても大事だ。出来ることなら失いたくはない」
「ほら、やっぱり。今度こそ本当にお別れだね」
アルクェイドは初めて泣きそうな声で答えると、再び歩き出した。
だが、まだ俺の言いたい事は終わってなかった。
「だから待てって。最後まで聞け!」
「・・・・・」
アルクェイドはまた無言で立ち止まった。
「確かに今の生活は大事だ。けどなその今の生活、日常にはおまえも含まれているんだよ。
遠野志貴にとっておまえは大事な日常なんだ」
「大丈夫だよ。わたしがいなくても志貴はたくさんの日常に囲まれているじゃない。
それに使命が終わったら必ずこの町に戻ってくる。たとえ志貴がいなくても、この町にはあなたと過ごした
思い出がたくさんあるから・・・・だから志貴は普通の生活をして、普通の人と結婚して、
普通に生きるんだよ」
アルクェイドは初めて俺のほうを向いてそう言った。
その顔は笑っていたけど、目からは涙がこぼれ落ちていた。
「・・・ぐすっ・・あれ、おかしいね。笑ってお別れしなきゃいけないのに・・・涙が・・・止まらないよ」
強がっていても別れは悲しいのか、アルクェイドは泣いていた。
それがもうどうしようもなく悲しくて、切なくて、俺はアルクェイドを抱きしめていた。
「・・・痛いよ、志貴」
「ああ、もうまだるっこしい。いいか、俺はおまえがいない日常より、おまえがいる非日常のほうが大事なの。
言ったろ、別にこの町を守りたいとかの正義感で、吸血鬼退治を手伝ったんじゃないって」
「それじゃあ・・・」
「俺はアルクェイドの傍にいたいだけ。
俺にとってアルクェイドはかけがえのない、一番大切なものなんだ」
「他の人全部よりも?」
「確かに皆は大事だ。秋葉も翡翠も琥珀さんも、ついでに有彦も。
でもな、朝は決心がつかなかったけど今は言える。
その全てよりもアルクェイド、おまえの方が大事だ!」
俺はアルクェイドをしっかり抱きしめるとこう続けた。
「前に言ったよな。保証はしないけどおまえを一生愛し続けると。
今は違う、保証する。
遠野志貴は一生アルクェイド・ブリュンスタッドの傍にいて、愛し続けることを誓う」
俺は一生、こいつの傍にいる。
例えどんな事があろうとそれだけは変わらない。
ずっと、今も、これからも。
「・・・志貴・・志貴・・志貴!」
「大丈夫だ、ここにいるよ。もう何処にも行かない」
アルクェイドは泣いた。子供のように声を上げ、泣いた。
そして俺は安心させるため、誓いのため、アルクェイドに口づけした。
ゆっくり、長く・・・・・
しばらくすると、アルクェイドは落ち着き、事情を説明してくれた。
それによると、
1、アルクェイドは大元たる死徒二十七祖を全て打ち滅ぼす事を使命としている。
2、ロアの死により、死徒二十七祖が一人、白翼公トラフィム・オーテンロッゼが活動を再開。
ドイツにて猛威を振るっている。
3、そいつは強力で教会からアルクェイドに協力要請が来た。
という事らしい。
「まあ、大雑把に説明するとそんなところだけど、どうする?」
「俺は別に行ってもいいぞ」
「うーん、やっぱりそうするしかないか・・・」
少し二人で考えてみても、結局は行くしかないようだ。
とその時、後ろからコツコツと足音がした。
二人とも後ろを見ると、そこには初老の外国人紳士が立っていた。
「そうですね。出来れば姫には来ていただきたいのですが」
その老紳士はゆっくりとした口調でそう言った。
「じいや!」
とアルクェイド老紳士に駆け寄った。
「お久しゅう、姫様」
どうやらこの人はアルクェイドの知り合いのようだ。アルクェイドが嬉しそうに話している。
こっちは何がなんだかわからずただ呆然としているだけだった。
「あのー、こちらはどなたで?」
率直に質問してみる。
「あ、志貴は知らないんだっけ。紹介するわ、この人はわたしのじいやで、
魔道元師ゼルレッチ、通称宝石のゼルレッチ。
現存する五人の魔法使いの一人で、死徒二十七祖でもあるわ。
死徒といっても真祖の協力者だから安心して」
あんまりよく解んなかったけど、とにかくすごい人なんだなと言うことは理解した。
「ゼルレッチと申します。以後お見知り置きを」
「ども、遠野志貴っていいます」
お互い挨拶すると、改めて老紳士、ゼルレッチさんを見る。
とても人のいい優しそうな人だ。
アルクェイドがじいやと呼んでいたから執事か何かかな。
「さて、自己紹介も済んだところで、本題です。
オーテンロッゼが活動再開したことはご存知ですね。
こいつがなかなか厄介で、できれば姫に協力して欲しいのです」
「・・・・・」
やはりドイツまで行かなきゃいけないようだ。
俺は別にアルクェイドと一緒ならいいのだが、アルクェイドはあまり乗り気ではないようだ。
「あのね、じいや。そのことなんだけど・・・」
「と言いたいところですが、姫は行きたくないようなのでいいです」
「「え?」」
見事にハモってしまった。あまりに意外な言葉に俺とアルクェイドは呆然としている。
「その代わりと言っては何ですが、私が出向きます。
それと埋葬機関からはメレム・ソロモンと弓。
さらにオーテンロッゼと反目しているアルトルージュと
黒騎士シュトラウト、白騎士ヴラドまでが動いているようです」
「すごい、ほとんどオールスターじゃない」
いやそんな名前出されてもこっちは全然わかんないんだけど。
「すごいの?それ」
「すごいなんてもんじゃないわよ。現在活動している死徒二十七祖のほとんどが相手なんて、
いかにオーテンロッゼが強力でも勝てるわけがないわ。私でも勝てるかどうか・・・」
アルクェイドが勝てるかどうかわかんないって、そんなのに勝てる奴いるわけないじゃないか。
「じゃあ、もしかして」
「ええ、姫は志貴さんとこの町にいて下さってかまいませんよ」
「やったー。志貴、一緒にこの町にいても良いってさ」
よっぽど嬉しいのかアルクェイドは俺に飛びついてきた。
少し恥ずかしかったけど、それを忘れさせるくらいアルクェイドの笑顔は可愛かった。
「お、おい、やめろよ。ゼルレッチさんが見てるぞ」
「あ・・・」
アルクェイドは慌てて離れて顔を赤らめてしまった。
「ほっほっほっほ、良いではないですか。姫様の嬉しそうな顔を見られるとは、このゼルレッチ
もう思い残す事ありませんな。志貴さん、姫様を頼みましたぞ」
「はい、一生この命をかけてアルクェイドを守り通します」
俺はさっきそのことを誓ったばかりだ。必ず守り通す。
「では、私は行くといますか」
ゼルレッチさんはそう言って去ろうとしたけど、途中でこっちを振り返って立ち止まった。
「ああ、いけない、肝心な事を二つ忘れてました。
まず一つ目、お二人に埋葬機関の弓、シエルから伝言です」
シエル先輩だって?そうか弓ってシエル先輩の事だったのか。先輩はまだ戦っているんだな
「ただ一言、『お幸せに』だそうです」
そっか、シエル先輩は俺達のこと認めてくれたのか。
アルクェイドは嬉しいやら、恥ずかしいやら、妙な表情をしている。
「そして、こちらはあまりいいお知らせではないのですが、
確実に、数年以内にthe dark sixが目覚めます」
「何ですって!」
さっきの表情とは一変してアルクェイドの表情は厳しいものになっていた。
「なにそのザ・ワールドって?スタンド?」
「違うわよ、the dark six。闇色の六王権と呼ばれる最初の死徒よ。
これが目覚めた暁には死徒二十七祖を束ねると言われているの。
ただ、今まで全てが謎とされていたけど・・・じいや、その情報は確かなの?」
アルクェイドは依然、厳しい表情のままだ。
「はい、法王庁とロンドンの魔術師協会の合同調査によりわかった事です」
「ふーん、あの頭でっかちどもが手を組むとはね。
ま、相手が闇色の六王権じゃそれもしょうがないか」
いやもう俺は完全にかやの外だ。全く何の話かわからん。
「とりあえず、そいつが目覚めたらアルクェイドの力が必要ということなの?」
「残念ですが、今のところそれしか手はありません。
姫にはずっとこの穏やかな生活を続けて欲しかったのですが・・・」
ゼルレッチさんは寂しそうな表情をしてそう言った。この人は心底アルクェイドのことを心配しているんだな。
「大丈夫です。その時は俺が必ずアルクェイドを守ります」
それで命を落としても俺に悔いはない。そう思っていた。
「そうでしたね。あなたは、あのネロ・カオスを打ち滅ぼしたのでした。
その直死の魔眼はきっと姫の役に立つでしょう」
「うん、志貴はとっても頼りになるよ」
それからしばらく三人で話していた。俺の知らないアルクェイドをゼルレッチさんは知ってたし、
ゼルレッチさんの知らないアルクェイドのことをたくさん話していた。
とても楽しい時間だった。
「さて・・・そろそろ老いぼれは行きますか。では今度こそ、さようなら」
「あ、待って。わたしもシエルに伝言があるの」
「なんでしょう?」
「がんばってって伝えてくれる?」
それはあれだけシエル先輩を憎んでいたアルクェイドの和解の言葉だった。
俺にとってはとても嬉しい事だった。
「承知しました。では」
ゼルレッチさんは今度こそ闇の中に去っていった。
「・・・・さて、どうするか」
「ん、どうするって?」
時計はそろそろ次の日になろうとしていた。
「さすがに今から屋敷に戻るわけにもいかないだろう」
「じゃあ、わたしの部屋に行こう。今日はわたしの話ばっかりだったから、今度は志貴の話が聞きたい。
まだわたしの知らない志貴がある。志貴の知らないわたしがある。
だから、これからもっとお互いの事を知り合おう!」
それは俺も同じ気持ちだった。
「そうだな、覚悟しろよ。今日は徹夜だ」
「うん、いっぱい話しようね」
二人で寄り添ってアルクェイドの部屋へ向かって歩き出す。
これからはいろいろあるだろう、普通に暮らすのは無理かもしれない。
でもきっと大丈夫、アルクェイドと一緒なら。
「アルクェイド、ずっと一緒だぞ」
「うん!」
こうして純白の姫君は永遠を手に入れた。
永遠は終わらない。きっと・・・ずっと・・・
END
お初です、舞姫ますたーです。
えーと・・・何というか・・・すいません。
処女作なのでこんな不出来なものを載せてしまってm(__)m
他の皆様に比べるとかなり見劣りしますが温かい目で見てやってください。
今回は自分の書きたいことを全て詰め込んだので、次はもうちょっとましなもの
を載せます。
ちなみにこの作品は友達のHPにも載っています。パクりではありません。
ではでは、またいつか。ポンコツな舞姫ますたーでした。