あなたはだれ?
ここはどこ?
わたしはだれ?
あなたはなに?
ここはなに?
わたしはなに?
あなたはいるの?
どこにいるの?
わたしはいるの?
どこにいるの?
いまはあるの?
夢。
わたしはからっぽだ。
いきさえできず。
あるくことはもとより。
なやむことも。
くるしむことも。
なくことも。
わらうことも。
あなたをすきになることさえできない。
でも。
もしかしたら。
からっぽのわたしにからっぽをつめていったのなら。
いつか。
からっぽでないわたしができるのだろうか?
夢。
眼を開いて世界を視ることに何の意味があろう。それが幻視でないと誰が言い切れ
るんだ?
この現の世にはその名に反し、現れることなど欠片もない。全ては幽かだ。
ならば、此処にいるあたしは誰だろう?
現世に生を受けたモノであるのに、そうではないかのように幽かなモノだ。
ならば。
この世の何処にも現世など有り得ないことに成るではないか。
全ては何処にもなく、また何処にでもある。
揺れている。
遊螺遊螺、遊螺遊螺。
それはまるで、水たまりに映った月のようで、不意に
涙が出た───────
蒼ノ姫 月ノ香 ソノ、カケラ
一瞬世界はフラッシュバックした。
さて。
行き着く先はどんなトコロだろう?
あたし、月姫蒼香はそれを楽しみにしていた。
そして、月が揺らめく。
私が起きた所は、見たことのない座敷だった。天井は自分の家より遥かに高い所にある。木目が斑模様に見えて、本当は禍々しいモノになるのだろうけれど、何故かそれは綺麗に見えた。
障子から入り込んでくる光は淡く、優しい。それで、今は夜だと知れた。
此処は何処だろう? 当然の疑問が今更になって湧いてくる。
それでも何故か、恐いと思えないのは自分でも不思議としか言い様がなかった。
何故か、安心する。
そしてその安心は、どうしても未だに感じたことのない、安楽死の感情とよく似ているのではないだろうかと思った。
どうやら、私は布団に寝かされていたらしい。勿論寝た記憶など無いのだが。
起こしていた躰を倒して、布団に寝ころんでみた。
ぼすっ。
枕が音を立ててへこんだ音が夜に聞こえた。冷たくて、気持ちが良かった。
目が疲れていた。
思い出してみると、私は泣いていたんだっけ。
どうして、こんな所で寝かせてもらって居るんだろう?
思い出せない。
月の景しか、思い出せない。
ならば。
月の光を見れば、思い出すかも知れない。
それは無駄な行為だと知りつつ、私は布団から起きあがって、蒼白く透けている障子を、開けた。
濃緑の森。景を反射する水。屋敷の天井。
そして、蒼天には、月が、それも、真白に輝く、夢のような月が
それを背景に。
一人の少年が、縁側に座っていた。
何と声を掛ければいいのか、私はとっさに思いつかなかった。
なんて、綺麗。
それはあまりに、そう、あまりに完璧すぎて、
私は、どうすればいいか立ち竦んだ。
恐い、と思った。
触れてはいけないモノ、それが其処にいる気がする。
完璧なモノに触れてもいいんだろうか? それはこの少年を怪がしてしまうことにならないだろうか?
辛い。
私は目をそらして、天の月を視た。
それは儚く、淡く、夜の海に浮いていた。
どうして、私はこんな所にいるのだろう?
「おはよう」
?
気が付くと、少年は笑ってこちらを見ていた。
「おはよう?」
もう一度、彼は私にそんなことを話す。
戸惑ってしまう。
返事をしてもいいモノだろうか?
彼は笑っていた。私が返事をしないのが、そんなに珍しいのだろうか?
え……っと、
「……おはよう」
肺から息を絞り出して、私は彼に返事をした。それだけのことなのに、酷く疲れた。
「うん」
彼は、笑ったままで、そう答えた。
何とはなしに。
涙が、出た
どうも。intoです。
蒼ノ姫 月ノ香 ソノ、カケラ の続きです。お待たせして申し訳ありません。
羽ピン、出すかどうか迷ってます。出したら歪んでいきそうだしなー(w
まぁ、もうちょっと悩みます。
感想、アドバイス、待ってます。