「・・・?姉さん、秋葉様、アルクェイド様にシエル様それに志貴様まで、
一体どうなされたのですか?」
入ってきた翡翠はこの光景を見るなり目を丸くした。
「あっ翡翠ちゃん、もう良いの?」「ええ、ごめんなさい姉さん」
「そうだわ。ちょうど良いし翡翠にも参加してもらいましょうか?」
「あ、秋葉?一体何に参加されるんだ?」「あら兄さんお判りでは?」
「一応の見当はついている。けど確認したくて」「あらそうですか。・・・翡翠」
「はい何でしょうか?秋葉様」
まだ怪訝な表情をしている翡翠に秋葉は、
「今兄さんに私達が聞きたい事を全部まとめて言ってくれることになったのよ。
だから、貴方も何か聞いて良いわよ」
秋葉・・・これはそんな生易しいものじゃないぞ。
「そうだよー、翡翠も何か聞いたら?今だったら志貴何でも答えてくれるから聞いたほうが良いよー」
アルクェイド・・・『答える』じゃなくて、『強引に吐かせる』の間違いじゃないのか?
「そうですよ翡翠さんも参加されたらどうですか?」「そうだよー翡翠ちゃんも参加しようよー」
こんな皆の勧誘に翡翠は「・・・・・・」無言だったが、不意に
「はい私も志貴様に、一つ聞きたいことがありましたので」
・・・神様・・・俺は一体何処で道を間違えたのでしょうか?
「では早速ですが秋葉様一つ宜しいでしょうか?」「ええ良いわよ。私達の方は長くなりそうだから」
そう聞くと翡翠は俺の前に立ち、「志貴様」「な、なんだい?翡翠?」
正直に言ってこの時の俺は、やけくそだったが、次の翡翠の言葉に思考が止まった。
「志貴様・・・『ホウメイ』とはどの様な方でしょうか?」
ビキィ室内の温度が一気に10℃下がった気がした。
ああ、皆の視線に殺意を感じる。
「あら翡翠、奇遇ね貴方もその言葉を聞いたの?」
「はい、ですがこの事で志貴様が御叱りを受けているのでしょうか?」
「そんなの決まっているじゃないの志貴さんにその『ホウメイ』っていう女性の事を聞くためですよー」
「そうよねー志貴ったら私達にも内緒でね」「はい。事によっては遠野君にお仕置きしないといけませんし」
もう俺が他に女性がいると言うのは決定事項のようだ・・・。
(もう駄目だ・・・)そう思った時だった。
「・・・皆様・・・」それまで黙っていた翡翠が「失礼ですがその『ホウメイ』と言うのは女性では無いと思います」
「「「「えっ」」」」あ、皆の声が見事にはもった。
「ちょっと翡翠それはどういう意味?」「翡翠、志貴の肩を持つのならしなくても良いわよ」
「そうだよ翡翠ちゃん」「翡翠さん何か根拠があるのですか?」
皆から一斉に反論の言葉が出たが翡翠はそれに直接答えずに俺に、
「実は志貴様、今朝志貴様を起こしする際に、志貴様が寝言で『ナナヤホウメイ・・・』
と呟かれていたものですからお聞きしたのです」
「!!」「えっ・・・」「翡翠?本当に俺はそう言ったのか?」「はい」
翡翠の思わぬ言葉に秋葉や琥珀さんは絶句し、俺は翡翠に改めてそう尋ねた。
「?『ナナヤ』、翡翠さん『ナナヤ』とはなんなのですか?」
「そうだそうだー妹と琥珀は知っているみたいだけど、私とシエルはわかんないぞー」
「ああそういえば先輩達は知らなかったのでしたわね」
秋葉が力なくそう呟くと今度は琥珀さんが
「アルクェイド様、シエル様、七夜というのは太古から続く退魔師と暗殺者の家系の事です」
「そして志貴様は元々七夜の末裔なのです」「えっ、それじゃあ、志貴と妹って」
「はい志貴さんと秋葉様は血族的には義理の兄弟と言う事になります」
「それにしても面白い組み合わせと言うべきなのでしょか・・・遠野君が退魔師で秋葉さんは吸血鬼もどきですか・・・」
「先輩・・・もどきとはなんですか?私をそこの推定年齢八百うんぬん歳の怪物と一緒にしないで下さい」
「あーっそれって酷い差別よ妹。私は確かに八百歳は超えているけど血をジュースみたいに飲む悪魔とは大違いよ」
「・・・・・・」「・・・・・・」
「はいはい秋葉様もアルクェイド様も落ち着いてください。
どちらにしろこれで志貴さんの浮気疑惑は完全ではないにしろ、かなりの高確率で白と判明しました」
「それは何故ですか?」「あっ・・・それは・・・」「・・・」「・・・」
「・・・先輩・・・それは七夜は俺が子供の頃、遠野家によって俺を除いて皆殺されてしまったからだよ・・・」
皆言いにくそうだった為俺が変わって先輩とアルクェイドにそう説明した。
「はい・・・そして・・・お父様は兄さんを養子として迎えられたのです・・・」
秋葉はすっかり落ち込んでいた。
それを見ると俺が七夜の時の記憶を思い出した事を告げた時の事を思い出す。
あの時翡翠や琥珀さんは素直に喜んでいたが、秋葉は顔を蒼白にして床にへたり込んでしまった。
例え今まで兄妹として育ったとしても自分は俺の家族と記憶を奪った一族の当主。
罵声はもちろんだが秋葉は俺が遠野の家を離れるのでは無いかとその恐怖にも怯えたようだった。
しかし、遠野志貴であろうとも七夜志貴であろうとも今の俺には秋葉や琥珀さん、翡翠は大切な家族。
大切な家族なのだ。
そう言うと翡翠と琥珀さんは思わず涙ぐみ、秋葉は俺にしがみついて泣き出してしまった。
「しかし・・・『ナナヤホウメイ』・・・この名は・・・」
俺は今が気まずい静寂に包まれて皆が俺をチラチラ見ていることにも気付かず思案に耽っていた。
聞いたことは無いのになぜか感じる懐かしさ・・・そして得体の知れない恐怖・・・
そんな感情がぐるぐるごちゃ混ぜになっていく・・・
しかし・・・なにか思い出せれる・・・もう少しで思い出せれる・・・思い出せ!!
ナナヤ・・・ホウメイ・・・七夜・・・ホウメイ・・・七夜・・・鳳明・・・七夜鳳明!!
俺は唐突に立ち上がると、「悪い少し調べてくる」そう言うと居間を後にした。
どうも。
まだ序盤のじょの字にすら入らないのにこんなにも長くなりまして申し訳ありません。
ただここまで長くしない事にはどうしても必要ですのでご承知ください。