真夜中の散歩


メッセージ一覧

1: 多々良 (2001/11/25 17:59:00)[ryuuha at ezc.ido.ne.jp]

今日は月が綺麗だ。
私は外に出る。あの人の居る家にも後で寄ろう。
外の空気は凍ったように冷たかった。
私は夜の空を駆ける。ずっとそうしていた気持ちもある。

ソウスレバイイノカナ・・・デモ・・・アノヒトニアエナクナル

不意にあの人の顔を思い出す。
優しい顔。厳しい顔。色んな顔が頭の中を交錯する。
そういえば教会の女が言っていた。

「あなたは変わりましたよ。でも・・・は譲りませんよ!」

何だか嬉しそうな顔で言っていた。
私とあいつはいつからこんな関係になったのだろう。
ああ、あの人が私を変えたんだ。
違う。私だけじゃなく、あの女も変えた。
少し悔しい気もする。あの人は誰にでも優しいのだ。
妹。あの人の妹。私のことは嫌いだろう。

「あなたは兄さんに迷惑をかけているだけです!」

そう・・・迷惑をかけた。
でも、傍にいたいというのは我が侭だろうか。
あの人はどう思うだろうか。傍にいたいと言ったら笑ってくれるだろうか。
あの人はいつもメイドに起こされている。
いつか話した時も感謝していると言っていた。羨ましい。
空は月でいっぱいになる。今日は満月だ。
私は知らなかった。
こんなにも夜が暗いものだと。
こんなにも夜が寂しいものだと。
こんなにも一人がつまらないものだと。
考えれば愚痴ばかりだ。こうなったのもあの人の御陰かな。
辛い事も悲しい事もあの人がいればいい。

アア、コンナニモイトシイナンテ

私は足を止める。ビルの下にはたくさんの人間がいる。
あの人はいない。
そうか。
私はあの人に会いたいんだ。
会いに行こう。そして、この気持ちを伝えるんだ。そうすれば笑える。
私の使い魔だった猫もいるだろう。
あの部屋で一緒に話がしたい。
きっと寝ているだろうから、起こさず待つ事にしよう。
朝になっても待っていよう。あの人が目を開いて私を見てくれるまで。


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