手紙


メッセージ一覧

1: N2 (2001/11/23 20:23:00)[ccd79310 at nyc.odn.ne.jp]

 夜という静寂の時間。
 俺の部屋にいるとこの世の中に自分一人ではないかというくらいの
 静けさが俺を襲う。だが、今はこの静けさがちょうどいいと思う。
 俺は机に向かって、一枚の紙と格闘していた。
 手紙という自分の気持ちを伝える情報伝達手段の一つと。
 だが、書き始めてみたがなかなか思うように進まないでいる。
 書くべき内容は決まっているのだが、それをどのように伝えるかが
 うまくいかないのだ。

「はあ………」
 ペンを置き、窓を開けてみる。
 春が近いとはいえ、まだ夜は冷たい空気が入り込んでくる。
 そしてその夜には蒼く輝く月。
 それを眺めているといろいろな事を思い出される。
 昔、俺の後ろを黙ってついてきた秋葉。俺の事を8年も待っていてくれた秋葉。
 やきもちを妬く秋葉。怒っている秋葉。素直になれない秋葉………。
 まるでいくつもの秋葉が俺の中で住んでいるかのように。
 会いたい…………。
 最近、俺はそればかり考えている気がする。
 机の上にある秋葉からの何通かの手紙を見る。
 俺が屋敷に帰ってきてから秋葉とはまだ会っていない。
 今までも連絡をとろうと電話をしたりしたが、学校が厳しいらしくなかなか
 上手く連絡がとれていない。だから文通みたいな事をして連絡をとっている。
 秋葉に会いたいと。
 そして、出来ればまたこの屋敷で一緒に住みたいと。
 だが、秋葉はなぜだか分からないが拒み続けてきた。
 やはり年明けに俺が戻ってきた時に、秋葉への連絡を先輩にまかしたのが悪かった
 のだろうか?とかいろいろ考えてみるがよく分からないでいる。
 それでも俺は秋葉に会いたいと思う。
 だから手紙を送り続けて来たのだ。
 そして、今もまた書いているがどう書いたらいいのかが分からなくなってきた。
「はあ………」
 書き始めてからの何回目かのため息がもれてしまう。
 ふと空を見上げると蒼く輝き続ける月。
 それを黙って見つめ続ける。
「よしっ!」
 月を見ていると心が落ち着いてくる。
 昔から月には神秘的な魔力があるというが、その為だろうか……。俺の心に一つの
 言葉が浮かび上がってきた。
 『考える必要はない。自分の想いをそのまま伝えればいいだけだ』
 そう月が語っているように見えた。
 そして、再び便箋に向かい始めた……。


「ふぅ、今日も疲れた。まったく有彦とシエル先輩が揃うとどうして疲れるんだ?」
 などと一人考えながら屋敷への道を歩く。
 秋葉から手紙の返事はまだ来ていない。
 あれから数日、そろそろ返事が来ていてもいいはずだ。
屋敷へ帰ったら確認してみよう。そう思うと屋敷への足も速くなってくるものだ。
 そして、俺自身も驚くほどの速さで屋敷へついた。
 そこで俺を待っていたものは……。
「……秋葉……」
 思わず呆然と立ち尽くす。
 そこには、少し髪型が違うが秋葉が立っていた。
 そう、目の前には俺が待ち望んでいた人。
 そして、俺の大事な人が立っている。
 それなのに驚きの為かは分からないが、何も反応できずにいた。
「兄さん? 兄さん!」
 秋葉が駆け寄り、俺に飛び込んでくる。俺は迷うことなく秋葉を抱きしめていた。
 俺の大事な人をこれ以上離れないように。
 二度と俺達が離れないように。
「会いたかったよ」
「私も……私もです!兄さん!」
 そう涙ながらに想いをぶつけてくる秋葉の手には一枚の手紙があった。
 それはこの間送った俺からの手紙。

 本当に愛している。
 だから会いたい。

 そのたった2行だけの俺の心からの想いがつまった短い手紙が………。


あとがき
色々な愛の言葉はありますが、「愛している」って言葉ほど自分の気持ちを表して
くれる言葉はないと思います。そう考えて書いたSSなんですが、ダメです。
全然うまく表現できませんでした。反省です(汗
宵待閑話の後、秋葉はやっぱり髪が伸びるまで待てないんじゃないかなぁと思って
こういう話にしました。秋葉はかわいいですね〜(汗


記事一覧へ戻る(I)