路空会合1話 序


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1: 烈風601型 (2001/10/24 11:44:00)[kouji-sugi at mtj.biglobe.ne.jp]

「えっ?」
その男はあまりにも静かに疑問も声をあげ、自分の胸元と
自分の胸元にいるその青年を交互に見比べた。
何故だ?何故自分がこんな目に遭っている?
”私は末席とはいえ、藤原氏の一族の者。それがどうしてこの様な
理不尽な死を迎えなければならないのだ?”
男は必死に、助けを呼ぼうとした。
しかしそんな言葉すら網その男には発する事は出来なかった。
激痛の為では無い。
加害者の青年が口を塞いでいると言う訳でもない。
不思議な事だが、何かに刺されている感触は確かに有る。
なのに、痛みも感じない。
血も一滴たりとも出てはいない。
では何故、脱力感を感じる。二度と目を覚まさない事もわかっている筈なのに、
あがらう事の出来ないこの眠りへの誘いは何なのだ?
貴族は最後の力を文字通り振り絞り、「・・・・な、・・・な・・・ぜ・・・」と
囁き、左手で、青年の襟を掴んだ。
しかしそれは精一杯であった。
やがて、貴族の目から光が失せ、左手も、力なくだらりと下がり、
体を自分を殺した男に預けた。
「・・・・・・」その様を冷酷そのものの視線で見届け、完全に息絶えたと見ると、
青年は面倒くさそうに、その死体を除けた。
その物体は、ほんの数瞬空を泳いだが、直ぐに地面を寝床としていた。
そこまで見届けると、その青年は、左手に持っていた、武器
―柄の短い槍のような物―を懐に収めた。
歳は少年期から青年期に入ってそう間が無い。
漆黒の粗末な着物を着た青年はつい今しがた自らの手で生者から死者へと変えた
それを冷徹な視線でただ見ていた。
その表情といい、人殺しが初めてとは到底思えない。
「御館様」ふと、後方よりそんな声が聞こえてきた。
驚いた風もなく振り向くとそこには、壮年の男が畏まっていた。
「・・・首尾は?・・・」
”御館様”そう呼ばれた青年はこれも歳に似つかわしくない、低く冷淡な声で
そう尋ねた。
「はっ、家人ことごとく・・・」「・・・」静かに頷くと、「引くぞ・・・」
「はっ!」そんな言葉のやり取りを最後に、二人の男達は漆黒の夜の闇に、
溶ける様に消えていった。
「・・・しかし御館様、何時見ても見事な腕前で・・・」
自らの寝床に、戻る途中、一人の男がそう呟いた。
何時の間にか、周囲には、複数の男達が、付き添うように、現れていた。
「賛辞を受けるほどのものでは無い・・・」
それに対して青年はただ静かに、そう言っただけであった。
彼にはわかっていた。
自らの力がどれほど異形のものなのかと言う事も、こんな自分が生きられるのは、
死と血に満ちた、地獄しかないと言う事も・・・・。
「・・・」その様な思いすらも、口にしたのであろう、周囲には気まずい沈黙に満ちた。
先刻の男も、後悔したような表情を浮かべている。
「かまわん。毎回毎回、その様なしけた表情をするな」「・・・はっ・・・」
そんな青年の強がったような言葉に、一層一同は恐縮してしまった。
彼は、子供の頃よりその力ゆえに恐れられ、その一族には似つかわしくないぐらいの
優しさで一族中に愛された。
そして、彼自身は年長者には敬意を年少者はことのほか慈しんだ。
これは、彼自身の得た教訓だった。
どんなに異形の力を得ても、周囲より無償の愛情を受ければ人を保つ事が出来るのだと・・・
彼の名は七夜鳳明。
後に、暗殺者のとして、そして退魔の一族として、長年頂点に君臨し
数多くの優秀な暗殺者を輩出し続けた、七夜一族の現当主。
そして、一族の中でも、最も異形の力を持つと言われる伝説の当主である・・・


路空会合(M全員【どちらかと言うと志貴メイン】+オリジナルメンバー・傾シリアス・バトル)


後書き
   前回はあのような中途半端な投稿で申し訳ありませんでした。(なにぶん初投稿でしたので・・・)
   今後は月2回又は3回ぐらいで、これぐらいの長さで、投稿していきます。
   この物語は、誰のエンディング後と言う訳ではありません。
   ただ、志貴は5人全員をその毒牙にかけ(笑)かつネロ・ロア・シキをことごとく
   葬り去り、さらには七夜志貴の時代の記憶も戻っていると言う、
   設定で行います。
   暇な時の時間つぶしとなってくれれば幸いです。


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