いつか。
いつか忘れられていくのだろうか。
あの月の欠片の降る夜の事さえ。
人は心に鎧を纏う。
弱さ故に。望み故に。怖さ故に。痛み故に。
ならば。
その鎧は一体何から、何を守るものであるのか。
天には蒼い月。深い紺色の月にただ一人、漂う事すら出来ず、繋がれている。
光は映す。
月下には夜を。
夜には闇を。
闇には虞を。
そして。
だからこそ。
人は闇を怖れ、夜を恐れ、光を虞、月を畏れる。
魔とは元来、夜である。
光がなければ夜はなく、光があるからこそ、在るのは必然である夜。
そこに、疑う余地など無い。
鬼、幽、妖怪、鵺、餓鬼、病魔。
夜である。
故に。
光無しでは、夜は有り得ない。
月とは何か。
光である。
夜を彩る白銀の姫である。
故に。
夜から生まれし魔は、月の姫に逆らいながら生きる事は出来ない。
月姫という家系がある。
その名の通り、月の家系である。姫の家系でもある。
故に、その力と名は、代々女性にしか受け継がれる事はない。
月は夜に映え、夜は月を魅せる。
出会いなんてモノは、いつだって必然だ。
望むまいと、望もうと。
黒い森の中に、少女が一人。
蒼い髪、蒼い眼。
名を、月姫蒼香という。
彼女は今逃げている。
黒以外、何も見えない、その人殺しの森を。
何から?
それは勿論、理不尽な婚姻からである。
話を聞いたのはついさっき。
巫山戯ている、と蒼香は思う。いつも自分に優しくしてくれないのに、今日は優し
かったから付いて行ったらすぐこれだ。
父さんは嘘つきだ、と蒼香は思っていた。
いや、事実そうだった。
知っていたのだ。蒼香は長い月姫の歴史の中で片手で数えられるほどしかいない、
五代目の女性として生を受けているのだから。
“月姫”を名乗っているのだから。
月姫の男は月姫を名乗れない。
妬んでいるのだ。
自分よりも、大切にされている事を。
一体私が何をしたって言うのか。
女に生まれてしまったから、愛されないのか。
それ以上に。
何故、嫌われなければならないのか。
っ!
衝撃があって、蒼香は転んだ。何かにぶつかったらしい。
怪我はない。
痛さはあまり感じない。
大丈夫だ。大丈夫だって言うのに………。
なんで。
ナンデワタシハナイテイルノダロウ。
悲しみから?苦しみから?痛みから?それとも。
誰にも愛されないかも知れないという怖れから?
涙が蒼香の頬を伝う。
わからない。いったい何で泣いているのか。
全く、蒼香にはわからなかったけれど。
泣かないと壊れてしまう、と言う事だけは、わかったから。
幸いここは黒だ。闇だ。夜だ。
全部飲み込んで、飲み込んで、のみこんで…………。
だから、大声で泣く事に蒼香は微塵の迷いも起こさなかった。
志貴は夜は好きだ。
七夜という名前のせいかも知れないが、何となく夜は澄んでいる感じがいい。
だから、志貴は夜の森を歩くのは好きだった。
その日はツカサは別の用事があると言って一緒にはいけなかった。
一人、風と共に歩く。
歩く。歩く。歩く。
光さえない夜。
不意に。
月は綺麗だろうかなんておもった。
樹を伝って、天辺へ。
月はその蒼さを欠いていた。
何かが、覆っているのだと、志貴は思った。
欠片が降った。
月に返してやらないといけない。
志貴は、月の欠片を追う。
出会いはそんな感じ。
はぁ。勢いで書いてしまったので、ワケ判らないかもです。
またデリるのは嫌だな〜(汗)。
意見、感想待ってます。っていうか、書けないよ。上手く。精進在るのみ、ですね。