--------------------------------------------------------------------------------
月姫 M:赤い女の子 傾:シリアス
ANOTHER STORY is
・・・・・・
月明かりすら差さないほど昏く一寸先すら、見通せないほどの闇の中、
一人の男が歩いていた。
「俺としては、危害や迷惑を与えるつもりで来た訳じゃないが、
それでも俺を狩るつもりか?」
顔はおろか背丈すらあやふやに見えてしまう男は歩みを止め、
姿を現さない誰かに向かって諭すように言ったが反応はなく。
「幾らあんたが手を尽くそうとも、俺を滅ぼす所か、
返り討ちにされることぐらい解るだろう?」
男の淡々と諭すように紡がれる言葉が昏く静かな森の中にこだまする。
男は視線だけで射殺せるほど鋭い眼光で、闇の中を睨む。
「いい加減にしてくれないか。俺の邪魔をしないでくれ・・・・・」
男の言葉を遮るように突然の炸裂音。
そして、男は爆風をまともに受けて凄まじい勢いで吹き飛ばされ、
木々を薙ぎ倒していく。
「残念だけど、あなたの意志は関係ないのよ。例え、あなたがどれ程
すばらしい偉業をしようとも、残念ながら無意味よ」
冷たく言い捨てながら女性が男の前に近づいていく。
「だから、私についてきなさい・・・・・えっどういうこと、まさか抜け殻?」
女性は、倒れた男の体を調べ、確認すると驚愕の色に顔を染める。
「あの短時間でこんな事ができるなんて、流石は本職の魔導師ってところかしら」
『お喋りに興じるつもりはない。失礼を承知だが召喚主の願いを叶えるために
あなたを依り代にさせて貰う』
いつの間に現れたのか陽炎の様な揺らめきが女性の背後に現れ、女性の中に
入り込もうと、集束する。
「でもね。私も魔法使いなの!!」
女性の紅い髪が風に靡いた瞬間、視界を白に染めて、あらゆるものが一瞬にして
破壊される。
ただ一つの例外を除いて、
「へえ・・・・私でも破壊できないなんて凄いわね」
女性はそう言って、少し土を被った男の抜け殻になった体を背負い、
ゆっくりと闇に消える様にそのまま姿を消した。