「志貴〜〜・・・遅いぞ〜♪」
空港のロビーを笑顔で進む金髪に紅い瞳の美人がいる。
彼女は遅れている連れを時折振り返りながら出口の方へ進んでいく。
「アルクェイド、少しは遠慮してくれ、あまり早く行かれても追いつけないよ」
苦笑気味に答えているのは目に包帯を巻いた青年。
遅れていると言っても、盲目とは思えないスピードでアルクェイドと呼ばれた美人を追いかけている。
「むう、どうしてそう言うこと言うかなー・・・目が見えなくっても充分追いつける速さで進めるくせに・・・」
頬を膨らませて、志貴の元へと駆け寄ってくるアルクェイド。
「はいはい、わかった、わかった・・・全くわがままなお姫様だよ、お前は・・・」
「私がわがままなんじゃないよ、志貴が怠け者なだけじゃない」
そう言って、志貴の腕を取り、自分の腕を絡めて寄り添う二人。
これが『真祖』である『白の姫 アルクェイド』と『死徒』である『殺人貴 七夜志貴』の日常である。
殺人貴 〜前編〜
「アルクェイド、教会からは、先輩が来るんだろ?」
ホテルに着いて、くつろいだ様子で志貴がアルクェイドに話し掛ける。
アルクェイドはベットに寝っ転がって、少し不機嫌そうに志貴の方を見た。
「ぶーー、しき、なんか嬉しそう・・・」
「当たり前だろ、五年ぶりだからな、先輩に会うのも」
「浮気しちゃ駄目だぞ、シエルは志貴のこと狙ってるんだから」
頬っぺたを膨らませながら文句をつけるアルクェイドの隣に、見えるわけではないだろうが雰囲気を悟った志貴が、そっと腰掛ける。
そのまま、彼女の頭に手をやると優しくなでる。
「大丈夫だよ、俺はアルクェイドといる今の自分を選んだんだ・・・お前以外を選ぶ事なんてあるはず無い」
「志貴は私のなんだからね・・・他の人のものになっちゃ駄目だぞ」
「はいはい、お姫さま」
ぴんぽ〜〜ん
「あ、来たみたいだね・・・は〜い、今、開けます」
そう言って、玄関まで歩いていって、ドアを開ける。
そこには黒ずくめの格好をしたシエルがいた。
「お久しぶりです、遠野君・・・って、その目はどうしたんですか?」
「久しぶり、先輩・・・まあ、立ち話もなんだから上がってよ。」
そのまま、奥の部屋に上げるとアルクェイドが不機嫌そうにシエルを睨み付けていた。
「久しぶり、シエル」
「そうですね、アルクェイド・ブリュンスタッド・・・まだ、志貴君に付きまとっていたんですね」
「ふん、あんたなんかに言われる筋合いなんて無いよ〜だ、志貴と私は愛の絆で結ばれてるんだから」
「くっ、貴方は・・・なんでそう人の神経を逆撫でするような事ばっか言うんですか・・・」
いいかげん、シエルの言葉に殺気がこもってきた所で志貴は冷や汗を流しながら間に入る。
「まあ、まあ、あって早々喧嘩は駄目だよ、今日は仕事もあるんだし・・・」
「まあ、良いです・・・今日の所は見逃して上げます。」
「ふん、それはこっちのセリフよ」
「はは、相変わらずだね・・・元気そうで安心した。」
志貴がそう呟くと、シエルは目の周りに巻かれている包帯を見て、
「遠野君、その包帯は一体何なんですか?」
シエルは心配そうな顔で志貴を見つめる。
「ああ、これね・・・実は眼鏡が利かなくなってね・・・大変だったよ、四六時中、線が見えてるって言うのは・・・
だから、アルクに手伝ってもらってね・・・目が見えなくても日常生活には不便の無いように特訓したんだ。」
「そうですか・・・アルクェイド、貴方が遠野君を死徒になんかするからからこんな副作用が出るんです・・・
全く、考え無しのあーぱー吸血鬼が・・・」
「なによー、しょうがないじゃない、じゃないと志貴はもう死んでるんだから。」
「不本意です・・・遠野君が死徒になってしまうなど、もっと早くあなたを狩っておくべきでした。」
「へぇ、やろうって言うの?・・・今の私と戦って、不死じゃ無くなったあなたが勝てると思うのかしら?」
「やってみなくてはわかりませんよ・・・」
そう言って、黒鍵を取り出すシエルに、爪を伸ばして迎え撃とうとするアルクェイド。
志貴は相変わらずな二人に溜息をつきつつ、喧嘩を止めるため必死に頭を回転させていた。
前半終わり後半に続く。
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始めまして、夜想丹宮と申します。
友人に進められて、月姫にはまって数ヶ月・・・
とうとう、SSに手を出してしまいました。
白本の設定で見かけた殺人貴の所に興味を引かれて、書いてみました。
たいした作品ではありませんが、よろしければ見ていってください。
では、次は後編で・・・