ーーーーー夢
ヒトが見る夢。
それは己の秘めた欲望・願望等を眠りという映写機が見せるモノ。
刺さるような白色。
そんな日差しが差し込む時間だった。
窓の外には全てを見透かしたような青色。
まさに快晴っていうやつだ。
そして、全てが止まったかのような無色。
外の喧騒も聞こえない程の静けさ。
そんな水彩画のような光景。
その絵の中にシエルが描かれている事。
それはとても幸せなことだと思う。
「それにしてもここは静かだね。」
目の前でお茶をすすっているシエルに声をかける。
まあ、なんというか・・・・その姿がひどく似合っている。
もっともこんな事をシエルに言ったら怒られるだろうが。
「そうですね。この部室は校舎の端の方にありますから。だからなんですよ。」
ぼんやりと恐ろしい事を考えてると、シエルはそう言って柔らかい微笑みを俺に見せる。
「でも、おかげでこんなふうにのんびり出来るから静かなのもいいかも。」
ただシエルと二人でお茶を飲みながら、話をするだけの時間。
だが、そんな時間を俺は気に入っていた。
シエルとのかけがえのない時間。それを感じられるから。
「そうですね。こんな時間もいいものです。昔の私からみると夢みたいです。」
昔のシエル……その姿が脳裏に浮かび上がる。
それに、最近見る夢………。
「遠野くん?どうしたんですか?何か難しい顔をしますよ。」
「いや、なんでもないんだ。ちょっと考え事をね。」
「考え事ですか?私でよかったら相談に乗りますよ。」
「いや、別にたいしたことじゃないから大丈夫ですよ。」
そういった言葉でその夢の話は終わりにしようとする。
だが、
「ふ〜ん、そうなんですか。さっきの顔は結構深刻そうに見えましたよ。
それとも、私じゃ頼りないですか?」
「そんなことはないよ。先輩は十分頼りにしてます。」
慌ててフォローを入れる。
「じゃあ、話してもらえますね。」
両手を腰に当て、射るような視線でこっちを見てくる。
マズイ…………。
こうなったシエルはなかなか折れない。それは、過去に何度も経験済みだ。
………はぁ、しかたない。
「分かりました……。話しますよ………。」
そして俺は最近よく見る夢の話を始めた。
「嫌な夢を見るんだ。毎晩のように。以前のような先輩にもどってしまう夢。
それで、先輩があの感情を殺した顔で俺を見て言うんだよ。
『死ねる事が私の望みです。』
ってね。それがちょっと気になっただけだよ。ただ、それだけ。変な夢を見ますよね〜、俺って」
最後の方はわざと少し明るめに言い、笑ってみせる。
大した事じゃないよって伝える為に。
「遠野くんは私が今でも死ぬ事が望みだと思っていると思いますか?」
真顔での先輩の問い。
「そんな事はないと思ってますよ。あの時先輩が言ってくれた言葉に嘘はないでしょうから。」
あの夜の校舎で俺を殺そうとして出来なかった先輩。そして、『楽しかったんです』と言って
くれた言葉に嘘はないと信じているから。
「もしかして死にたいとでも思っているとか?」
そういうと先輩はにっこりと微笑み、
「冗談ですよ。今は遠野くん達との生活がとても楽しいですから。ただ、遠野くんが
どう反応するかなって思っただけです。」
そういって意地悪そうな顔に表情を変えてみせる。
そんなシエルが可愛いなとかぼんやり考えていると、また真面目な表情に変化し、
「ですが、昔はそう思っていたんですよね。今、考えるとばかげた考えです。」
「先輩………。」
「そして遠野くんを殺そうとした…………。あの第七聖典まで持ち出して…………。」
そう言ってうつむいてしまう。
「もうその件は終わったんだからいいじゃないですか。ほら、俺も気にしてないしね。」
これは、慰めではない言葉。
自分の本心が言わせてる言葉だ。
「ですがっ、私は今でも忘れられないんですっ!こんなに大事な人を………、愛してる
人を……、殺そうとしたなんて…………。」
瞳に溢れんばかりの涙を溜め、訴えるような口調のシエル。
シエルの深い傷痕が見たような気がする。
「あの時、遠野くんに気にしないって言ってもらいました。私も忘れようって……。
でも、忘れられないんです。こんな幸せでいいのか?って問いかける私がいるんです。」
あの時俺を殺そうとした事。
それはシエルの中では癒えない傷になっているのかもしれない。
それに苦しんでいるシエルをなんとかしてやりたい。
だから、俺なりの答えをシエルに出す。
「それならそれでいいと思うよ。」
「えっ!」
俺の放った答えに驚くシエル。
だが、俺は続ける。
「もし先輩の中にその事が傷痕になって癒えないのなら、それを抱えていけばいいんじゃ
ないかな。一人で苦しいなら俺が一緒に抱えていくよ。」
驚きで俺を黙って見つめるシエル。
「そんな答えじゃダメかな?」
見つめられている俺は、多分、クサイセリフのおかげで真っ赤だと思う。
本当なら隠れてしまいたい程の恥ずかしさだし。
だけど今は、シエルの目をしっかりと見つめる。
俺の言葉を信じて欲しいから。
「いいんですか?そんなことを言って………。ずっと付きまとっちゃいますよ。」
「かまわないよ。それが俺の望みだし。」
それは心からの言葉。
「もうっ!嬉しくなっちゃうじゃないですか。」
そして、最高の笑顔を見せてくれる。
それがとても嬉しくて、思わずシエルを強く抱きしめた……。
おまけ
暗闇の中に浮かぶ白い影。
その影が志貴の枕もとに近づいていく。
「志貴〜。シエルはね〜。死ぬのが望みなんだってさ〜。」
ボソボソとつぶやく白い影。
つぶやくその先にはうなされる志貴。
「それでね〜、……………ウニャァァァ!!」
不意に現れる法衣姿のシエル。
足元には攻撃を受け、転がるネコクェイドの姿。
「あなたが原因だったのですねっ!このあーぱー吸血鬼!!」
「ちっ、違うんだにゃ!わ、私はただ…………。」
「問答無用ですっ!!」
「にゃぁぁぁぁ!許すニャ。怒らないで欲しいニャ。にゃ、にゃぁぁぁぁ!!」
ーーーーー夢
ヒトが見る夢。
それは外的要因からの影響も考慮されるモノ(笑)
あとがき
また何も考えずに書いてしまいました。
相変わらずうまくなりません(汗
今回も前に書いたものとあまり変わりがないような……。
次があったら、今度はシエル先輩以外のも書いてみたいです(汗