遠野槙久氏の歪んだ愛情 ―或るいは、彼はいかにして、堕ちたか―

遠野槙久氏の歪んだ愛情


―或るいは、彼はいかにして、堕ちたか―
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8月30日
一つの時間が終わった、気がする。
四季の反転は、軽い。
これならいつか返り来るだろう。
一度、安定すれば翡翠もいることだしそう問題もない。
琥珀も、おとなしく。
しばらくは、ゆったりとした時間が続くのだろう。
8月29日
車が、出ていく。
遠野志貴を乗せた車。
数奇な、運命の少年。
いつか、四季に殺されるであろう少年。
彼は、生き残る事ができるのだろうか。
できれば、そうある方が、面白い、のだが。
そろそろ、起きているのは限界。
だが、もう少し。
琥珀が戻るまでは起きて、おきたい、のだ。
8月28日
志貴の、扱いに困った。
代役、といえども彼が今の遠野家の長男だ。
しかし彼自身に後を継がせる訳には行かない。
それにいずれ四季が落ちつけば彼には退場してもらわなければならない。
その為にも、彼を表舞台には立たせないようにしなければならない。
なのでどこか、適当な家に預けてしまうとする。
身内で、それでいて親族の中では発言権のない家が良い。
そっと、遠ざけよう。
8月27日
七夜志貴は、遠野志貴になった。
遠野四季は、四季になった。
これも、いってみれば反転か。
己が槙久に成り代わったようでどこか、愉快。
牢につながれた四季は、いずれ遠野四季に戻るのだろうか。
それもまた、面白い、気がした。
8月26日
四季を、牢に繋ぐ。
世話は、琥珀に任せることにする。
あれならば、秘密を漏らすこともなかろう。
しかし、どうしよう。
まさか、遠野の長男が反転したとも公表できぬ。
誰かしら、代役を立てねば……。
8月25日
予想通りというべきか。
転輪は、回り出す。
からからと、転がり落ちていく先にあるのは。
開放か、死か。
いずれにしろ、この重圧から逃れられるのならば。
それで、十分。
そして、私は。
二人揃って堕ちていくのだろう。
8月24日
惨劇が起こる。
四季が、反転した。
そんな、馬鹿なこと、が。
どう考えてもおかしい。
あいつは、妹の秋葉よりも遠野の血は薄かったはずなのに。
何が、あいつをそうさせたのか。
そして、私は。
何故あいつの体をくし刺しにして笑っていたのだ、ろう。
8月23日
屋敷の庭に座って空を眺める。
流れていくのは、雲。
さて、行動をはじめようか。
新たな、宴の。
8月22日
大分、良くなったので起きる。
ずっと寝ていても体に良くない。
そう言えば、体力を回復するために
琥珀を呼んだら何故か腰をもまれた。
なぜだ?
まぁ、これはこれで確かに良いのだが。
妙に、毒気を抜かれてしまった。
ううむ、謎。
8月21日
ごろごろ。
ゆっくりと骨休めをしている。
とても暇。
暇なので、琥珀を呼ぶ。
で、腰をもませる。
全く、槙久は運動不足でいけない。
この体、あちこちがたがきているぞ。
8月20日
熱、下がる。
が、昨日の今日なので今日一日は寝ていることにする。
無理は、体に良くない。
だが、それにしてもひどく退屈。
何か、することでもないかと思い本を引っ張り出して読む。
8月19日
熱のため、動けない。
不覚。
せっかくめぐらしてきた罠が、こんな事で動かせないとは。
馬鹿らしい。
自分の間抜けさを、呪う。
8月18日
風邪を、引いた。。
熱が高い。これほどの高熱は久しぶり。
ああ、寒い。。
布団をいくらかぶっても寒気が止まらない。
こんな、時は。
冷たい手が何故か気持ち良い。
8月17日
四季を、見る。
大分、こちら側に揺らいでいる模様。
落ちるのも近いか。
二、三仕込をしておこう。
祭は、派手なほどいい。
8月16日
気持ち、悪い。
自分の手が血の色に染まっているような気がして。
夜中、一人、手を洗う。
洗っても、洗っても、落ちない。
ああ、嫌だ。嫌だ。
何故、こうもわずらわしい事が多いの、か。
8月15日
余り変わることの無い日々。
槙久は、あいも変わらず不安定。
猫の死体は三つに増えた。
この調子でいくと遠からず屋敷の裏に猫の墓が林立する事になりそうだ。
ひどく、無感情。
つまら、ない。。
8月14日
猫が、死んだ。
ふといらだつことがあり、
屋敷の猫の首に手をかけて少し力を篭めてみたら
ぱきり、と乾いた音を立てて首の骨が折れてしまった。
なんと。あっけない。
なんだか、ひどく、虚しく、なった。
8月13日
風が、ないて、いる。
こうこうと。
あれは葬送の曲か。
実に、物悲しい。
彼らは、何を、送るのか。
見上げた空には、相変わらず美しい月。
気がつけばなぜか、泣いていた。
8月12日
ツマラナイ。
なぜ、この娘はこうも無反応なのか。
これでは人形を抱いているのと変わらない。
実に、不満。
そう、いっそのこと。
このいまいましい濁った瞳を抉り出したら。
良い声で、哭くのだろうか。
8月11日
琥珀の瞳が、うつろになっていく。
なにも写さない、にごった瞳。
子供のものとも思えない、瞳。
だが、この瞳は良い。
深く見据えれば奥底でうごめく何かがあるのが見える。
そう、この娘は。
実に、面白い。
8月10日
月の、きれいな夜だった。
こんな、夜は遠野の血が昂ぶってしょうがない。
だから、琥珀を呼ぶ。
この娘の能力は甘美だ。
失われた物が、蘇ってくる気がする。
ただ、一つだけつまらないのは。
最近涙を流さない、こと。
ツマラナイ。ツマラナイ。ツマラナイ。
8月9日
月の、きれいな夜だった。
あまりにも月が綺麗だったので、ふらふらと林を散歩していると琥珀が泣いていた。
そこは、はじめてくる場所。
林の切れ目。
月の光が届く場所。
子供が、喜びそうなその場所で。
子供が泣いて、いた。
なんだか、とても、不機嫌になった。
8月8日
今日は、機嫌が悪い。
朝食の席で四季が、下品な食べ方をしていたのだ。
見かねて叱ったところ「うるさいな」等と言われてついかっとなって叩いてしまった。
息子を叩くのは少し、気が引ける。
だが、いくら嫌な事があったとしても人前でそれが行動にでるようでは
いずれ社交界に出た時、四季が恥をかくのだ。
これは四季の為、だ。
8月7日
子供らの、観察。
一件仲のいい連中だがそろそろ不協和音が見え出してきている。
崩壊も、時間の問題か。
少し、小細工をして見ようかと思う。
食事の席ででも秋葉が七夜の少年と仲のいいことをからかってみると言うのはどうだろうか。
これはなかなか、おもしろくなりそうだ。
機会があれば今晩にでも、実行して見ることにする。
8月6日
忙しい。
ここの所体調不良の性で休んでいたが、遠野家も名家の一つである以上それなりに人付き合いというものがある。
こういう世界の連中は、表面こそ物腰柔らかだが腹の底で何を考えているかわからない。
なるべく、顔を見せておかないといつ裏でなにを言われるかわからぬ。
とかく、付き合いづらい連中だ。今日も笑顔で会話していたのだが気がつくと相手の首に手を掛けそうになっている自分がいた。
ゴミを取る振りをしてごまかしたが、危なかった。
まだ、疲れているのだろうか?
8月5日
暇。
なぜ暇なのだろうか考えてみる。
ああ、そうか。
詰まるところ、こういうことを考えている事ができると言うことが暇なのか。
などと妙に哲学的な思考をする。面白いので日記に書きとめておこう。
にしても暇だ。こう、なにか、面白い事件でも起ってくれないだろうか。
8月4日
秋葉も反省した様で、サボる話を聞かない。良い事だ。
小さいときからサボる癖があってはろくな大人にならない。
しかし、すこぶる体調が良い。
感応者の力とは、かくも良い物か。これだけの効果があればかなりの間やつの不快な影に脅かされないですむだろう。
実際、意識を失う時間もかなり減っている。
可能ならば、他の生き残りも探してみたいと思うが。
8月3日
頬を腫らした秋葉と、また出会う。
自分を見ると泣きそうな目をして走り去って行った。
槙久の、暴走にも困ったもの。
だが、理性が壊れ出したという意味では良い徴候、か。
そう、一つ面白い事を思いつく。
秋葉がサボっても自分に報告する義務はない、事にしたらどうなるだろう。
なかなかヒステリックな反応を示してくれるかもしれない。
これは、愉快だ。早速実行してみよう。
8月2日
秋葉を、また叱る。
もう一人の私が何を言ったかは知らないが遠野の者には義務がある。
義務を、果せない者は上に立つ資格はないのだ。
そう、だからしかたなく叱っているだけだというのに。
ナゼ、回りは理解してくれないのか。
それが、不愉快。
8月1日
泣いている子供と、会う。
秋葉、だ。
頬が槙久に叩かれたらしく、赤い。
痛々しい、というやつか。
子供が泣いているのは嫌いなので、四季達の所に行けといった。
するととなぜか嬉しそうに、駆けていった。
……してみると、想像以上に懐いているらしいな。
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