うさぎさんはさみしいと…

CG:ASH

おまけSS:阿羅本



「まったくこんな格好、なんで……」

 自分で着てしまったけど、やっぱり愚痴らずにはいられない。おまけに買っ
たのも自分だから誰かに責任をなすりつけるとしても、お門違いになる。

 けども、あいつがそんなことを言い出さなければ、私だって大枚切ってこんな
服をそろえなくてもよかった……

「それはまぁその、ドレスとかより安いけど」

 ヴェルデのパーティーグッズショップに行って、本当にあったときにはどう
しようかと思った。それでもって、安いのをみるとこの遠坂凛様が着れるも
のですか!我が家の家訓は優雅かつ余裕を持って!だからうすっぺらくて
みっともないのを着れないわよ、そこの業務用スーツもってきなさい!と……

「遠坂凛のばかものが……」

 なんで誰もいないのにヒートアップするんだろう、私は。きっとこれを見て
ると向こうにあいつのそっぽを向いた笑いが浮かんで、負けられないわよ
こんちくしょーって……

「く……我ながら似合うわね、悔しいけど」

 鏡の前で、うさ耳を整えて、くるりと回ってみたりする。お尻のぽんぽんが
白くふかふかでかわいらしい。

 遠坂はバニーさん似合うかもな、セイバーもうさうさで似合いそうだけど、
とかのほほんと抜かしていたあいつ。
 桜のバニーは見たいんじゃないの? といったら赤面してたっけ。で、先手
を打ってこうして私が……

「見てなさいよ……ぎゃふんと言わせてやるんだから」

 あいつだったらギャフンで済むかどうか。
 どうせならセイバーの分も買ってくれば良かった、あの娘胸がないからスー
ツのサイズがね……

「ダブルでウサギさんだったらあいつ、死んじゃうかもね。あ、セイバーも真っ
赤で大変なことになるわ」

 そうなれば少しは溜飲が下がるかも、とか。
 いちいちあいつに突っかかることはないんだろうけど、この私が――だけど、
あいつを誰かに任せてはおけないじゃない、だって。

「………あ」

 襟と蝶ネクタイ、その下がじっとりと汗ばむ。
 そんな、あいつのことを考えただけでいちいち赤面しないでよもう私、こ、
こんな恰好してるから余計に気になるのかもしれないけど!

 そんな事言ったら、もうあいつにはバニースーツどころか私の、その、隅か
ら隅まで恥ずかしいところを全部見られちゃったんだから今更――――

 …………

 ぞくっと、むき出しの背中に指が這ったような錯覚。
 あいつを吃驚させたら、その後私どうなっちゃうんだろって……や、やだ、
なに考えてるのよ一人で、私。

「こんな……恰好で、あいつに私……」

 身体のラインが出るストッキングとスーツ。胸も押し上げられて、いつもよ
り立派に見えて谷間もくっきり出る。
 肩と背中はむき出しで、すーすーとする。凄く無防備で誘惑めいた、モノトー
ンの恰好。
 白い襟とカフスが逆に、私は無防備なウサギさんですよ、って誘ってるみたい――

「あいつに私……こんなこと、する、のかな」

 鏡に顔を寄せる。
 ルージュを引いた唇、自分の潤んだ瞳。こんな顔をあいつはまたバカみたい
にじっと見つめてるんだろうか? 頭の上の偽のうさぎ耳がふわふわふかふかし
て……

 指が触れる鏡は、個体の水みたいに滑らかで冷たい。

「……ば……ばか……」

 冷たい鏡に、キスした。
 鏡は私にキスをしかえしてくれないけど、首筋にじーんと熱いものが甦って
きた。ぶっきらぼうだけど熱い、あいつの唇。馬鹿なオトコの唇なんだけど、
どうしてこんなに私を熱くさせるんだろ、って――

「あ……し……バカ……」

 じんじんと、体が熱くなってくる。
 鏡に自分でキスして、あいつのことを考えて、こんなはしたない情欲に身を
焦がすなんて――どうにかしてる。自分で自分を慰めるにしてももっと、こん
な居間の鏡にキスなんかしてないで、暗い寝室でもぞもぞって――

 しても、あいつのことばっかり考えている。
 あいつが私の胸をぎこちなく触って、綺麗だよ遠坂って褒めて。どういうふ
うに、って聞いたらもぞもぞと呟いて、ああもうだから遠坂が可愛くて俺がど
うにかなりそうなんだって言いかえして、こんな風に――

「んっ、あ……」

 自分の指で、スーツのベルベット越しに胸を触る。ブラとかしてないから、
内張りの布地が直接先に当たる。こんな服で接待してる人たちって、ちょっと
凄いと思ったり。

 だってこんな風に触れたら、感じちゃうんだし。
 あいつ、私にこんな風に……触るのかな? 上から揉んでみると、カップか
らはみ出そうになったり。私の乳首が黒いスーツから覗きそうになるのが、え
っちだ。

 こんなのをあいつに見せたら、弄ばれちゃう。
 遠坂、先っぽが立ってるとかうれしハズカシなことを口にして、指と下でな
ぞってきたり。手の平に胸を包まれて揉まれたりして、私がこんな声を上げる
までうさぎさんな私を虐めるんだろう。

「ん……はぁ、あ……ん……」

 指先で、一番感じる先のあたりをつつく。
 その度に胸の先から背中まで、ぞくぞくっと快感が走り抜ける。昔は痛いな
ぁ、と思ってたんだけど、あいつにされたりするとそれが気持ちよさなんだっ
て感覚が慣らされてきて。

 ……だんだんえっちになってくる、私。

 遠坂凛っていう真面目でお堅くて完璧な女の子をやってたけど、いつか乙女
チックに抱かれる幸せに酔えるのかもね、と思ってた。だけどそれは青天の霹
靂みたいに、あのオトコが私を奪っていった。

「あ……く、悔しいけど……私も……負けて……」

 負けてられない。
 一回泣かされちゃったし、いつかあいつもひいひいとみっともなくベッドで
鳴かせてやろうと思っていた。だからこんな恰好でびっくりさせて、キャイン
と言わせてやろうと思ったのに――

「あ……は、や……ん……」

 可愛がられるのは、可愛いウサギさんの私?
 スーツの中がじっとり汗ばんでくる。背中がかっかと熱くて、髪の毛が貼り
付いてくる。まだ胸しか触ってないのに、私の足が震え出す。

 だって、立ちながら……してこともないし、されたこともない。そんなこと
出来るの? と思うけど。
 だらしなく絨毯の上に腰を下ろす。破廉恥だぞ遠坂凛、遠坂家の当主が居間
で自慰に耽るなんてなにごとだ、先祖に申し訳が立つのかなんて思うけど――


 駄目。もう。
 身体の芯が熱くなっちゃって、肉と肌の中でぐにゃぐにゃに融けている。気
持ちいいって身体が感じると、だんだん駄目になって力が抜けてくる。骨を繋
ぐ筋が煮込んだオックステールみたいになっちゃってる。

 あいつに触られると、肌が狂いそうになる。
 こんな風になっちゃうと、手を握ってるだけで頭の中がかっかとしてくる。
それなのにあいつはリードしなくてもじもじしてて、だから私がこんな風にし
てやらないと、だって――

「ば……馬鹿、私だって恥ずかしいのよ、これは」

 なんて言い訳を口にする。
 それは嘘で、本当は気持ちよくなりたいから、する。身体がばーって広がっ
ちゃって、ベッドの上であいつを包み込んでやりたくなる。こんな風に、一番
感じる所に指を添える。

「あ………ん」

 いつもベッドの中でするみたいに、あいつの指だって思う。こんななよなよ
したんじゃなくて、ゴツくて力加減を知らない指だけど。
 股の切れ上がったこのスーツの、一番下の部分を撫でる。インナー履いてる
けど、もうじっとりして来ちゃって……

 あーもう、私、何してるんだろ……
 せっかくおろしたてのバニースーツを着てみて、それであいつにされること
を期待して一人で、触ったりして。だけど気持ちいいなって感じちゃうと、こ
こで止めるともっと駄目になりそうな気がする。

 このまま、コートを引っかけてあいつの家に行ってしまったり。それも身体
はこんなに火照ってるし、スーツの中は立ってるし、濡れてるし、この遠坂凛
という女の子が今やまるで黒い皮で熟した果実を包んだみたいになってる。

 それで、ハイヒールであの夜の坂を下る。
 うさぎの耳を着けたままで、見られたらもう恥ずかしくて死んじゃうかもし
れない。あいつの家まで辿り着いたら、門の前でもうくたくたになって、果て
ちゃうかもしれない。

 玄関で、コートの下がバニースーツで、真っ赤な顔をしてイっちゃう私。そ
れをあいつはどんな目で見るんだろ?

「だって……私だって、こんな……の」

 ベルベットの生地の上から撫でて、感じるところを指で撫でている。スーツ
にストッキングにインナー、3つも重なってるからもどかしくて、びりって破
ってそのまま指を入れたくなる。

 そんな刹那的で自堕落な快感より、こうして……ゆっくりゆっくり撫でてる
と、じわじわっと気持ちよくなってくる。あいつ、服のこと気にしてずっと生
殺しで撫でてくれるかも知れないな、胸も、ここも……そういうの、悪くない
けど。

「は……あ……あ、はぁ……」

 自分で聞こえる自分の喘ぎ声。
 甘くて、バニースーツの中で茹だる私があげる湯気みたいな声だった。自分
で聞いてても、すごくえっちだなぁ、まるでオトコが欲しくて一人泣いてる女
の子みたいじゃないのよ、とか思うけど――

 くやしいけど、ビンゴ。
 もしあいつが魔法でも使ってここに現れれば、それがなんでも許しちゃう気
になれる。頭の中がぼーっとしてきて、首の後ろが気持ちよさで攣りそうにな
る。身体はもう腫れるみたいになってて、胸はかたくなってスーツの中で痛気
持ちいいくらいだし、あそこ……こんなにぐちゃぐちゃになってる。

「ぁ……は……」

 脱いでショーツの中を眺めてみたら、死にたくなるほど情けないくらい、感
じて濡れてる。だってあいつに触られてるんじゃなくて、触られたらどうなる
だろうって妄想するだけでこんなになって、えっちな考えでもっと興奮したり
して――馬鹿みたいだけど、もう、こんな恰好したときから私は馬鹿以外の何
にもなれないって分かってた筈。

 だから、感じたい。
 自分一人でするのは寂しいけど、このまま私は我慢なんか出来ない。バニー
さんの恰好で、今で寝ころんで、喘ぎ声なんかだして胸とあそこを撫でてる私。

「は……あ……く………」

 見られたい。
 こんな事をしてるなんて知られたくないのに、あいつにこの姿を見てもらえ
たらなって思う。遠坂凛なんて偉そうにしてるけど、本当は馬鹿なことも馬鹿
だと思いながらも止められないオンナノコんだって、だから抱きしめてよ、あ
んた、オトコなんだから――さ。

「見る、だけじゃ……だめ、だから」

 抱きしめて欲しい。
 抱きしめられたらどんなことをされても良いし、どんなことだってしてあげ
る。赤い顔でいいよ遠坂そんなこと、とかいってもしちゃう、今の私ならもう
頭も身体もアツクなってて、これがすこしでも気持ちよくなれるなら、何でも
出来る気がする。

 身体が感じやすくなってる。
 指が一回撫でるたびに、びりびりって来る。肌が気持ちいいんじゃなくて、
骨が叩かれて痺れるみたいな快感。もう止まらない、染みだしちゃってるな私、
はしたないオンナノコみたい、って思いなながら。

「……こんな……さみしいうさぎさん、嫌い?」

 なんて、鼻に掛かった声でおねだりする私。
 ぞくぞくっと、自分の言葉で感じでしまう。指が止まらない、もっともっと
気持ちよくなって、髪の毛が全部逆立ってしまって、もう遠坂凛がトオサカリ
ンであるのをわするほどに、気持ちよく、なりたい。

「あ……んっ、はっ、はぁぁっ、ああっ!」

 息が荒れる。
 誰もいない私の家の中に、私の甘ったるい声が響く。
 誰も聞いてない、悲しい、あいつに聞いて貰いたい。それであいつの荒い息
を聞いて、指でまさぐられ、弄ばれ、可愛いペットみたいに愛玩されたい。

 だから、ね、ほら――もっと。

「あっ、はぁ……ああっ、く、はぁ――――――」

 ぎゅっと、一番感じるトコロの上を押し込んで。
 そこが一番感じるボタンみたいなところなんだけど、自分でするときはもっ
と柔らかに撫でる。でも、あいつにされてる、ウサギさんの恰好で可愛がられ
て、きゅーんと泣きながらいっちゃうんだから、こんな風に強くされるんだろ
うな、って――――

「はっ、ああっ、あああ――――」

 血が足りなくなって、快感が無理に頭の中に足される。
 見上げたシャンデリアの明かりじゃなくて、銀色の光が見える。その中に照
らされて、私は震えながら。

「は……………はぁ……」

 イっちゃった。

 エクスタシーの心地よく、それでもう何もしたくなくなる疲れが全身を浸す。
べとべとになった身体と、弾んだ息。それなのにバニースーツで絨毯に横たわ
る私。

「はぁ……あああ、やっちゃった……」

 ……まったくもう、何してるんだろ。
 あいつにされる前に、自分で感じてたら訳ない……けど、予行演習だとおも
えば。

「こんな事に予行なんかしなくてもいいわよ、それよりあいつが引いた方が
――はぁ」

 まだ寝っ転がっていたいけど、そうも行かない。
 一人で汚しちゃったからクリーニングにかけないと行けないし、お風呂に入っ
てさっぱりしないとこれからどうしてくれようかもゆっくり考えられない。

 さて、うさぎさんのオンナノコから遠坂凛にがんばって戻るとしますか――

「あ………」

 鏡の中で、寂しいウサギさんが顔を火照らせている。
 でもね、あいつがちゃんと可愛がってくれるわよ、あんたを。

「ね……だから覚悟なさい、衛宮くん」


《fin》