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 琥珀さんは白い肌襦袢一枚になっていた。足袋も脱いで小さく形の揃った足
の指が覗く。
 俺の前で琥珀さんは横座りになり、俺の身体をじっと見つめる。
 一方の俺はと言うと、上着を脱いで傷のある上半身を見せていて下半身も……
まだズボンは履いているけども、すぐに脱げるようになっている。

 俺も琥珀さんも、準備万端というか……

「琥珀さんは……その、どういう風にするの?」

 俺はぽつりとそんな疑問を口にする。
 それはまぁ、女性の自慰には色々やり方はあるとは聞いたことはあったけど
も、目の前の琥珀さんがどういう風にするのかは見当がつかない。いや、今ま
で琥珀さんや翡翠の自慰の光景を妄想に弄んだことがないと言えば嘘になる。
でもそれはあくまで妄想の訳で……

 琥珀さんはぽっと顔を赤らめてシーツの上に視線を彷徨わせる。
 やっぱり言うのは抵抗が……あるよなぁ、うん。

「えーっと、御免……やっぱりはずかしいよね……」
「ええ、それはまぁ……でも……どうされると志貴さんは思ってらっしゃるん
ですか?」

 琥珀さんはそう切り返して尋ねてくると、俺はう、と言い淀む。
 それはまぁ……その……やはり……

「俺もよく知らないんだけど、やっぱり指で……するの?」
「……はい」

 琥珀さんは恥ずかしそうにこくり、と頷く。
 ベッドの上に襦袢一枚で横座りになった琥珀さんは艶めかしく、俺は琥珀さ
んをそのまま押し倒して口づけしてしまいたい衝動に駆られる。だけども、今
夜ばかりはそうではなくて……

 お互いに自慰を見せ合う。
 この、血が沸き狂うのではないのかと思う倒錯的な行為。
 知らずに荒くなる俺の鼻息を押さえながら、何もしないのに震え出す声で喋る。

「いや、俺もよく知らないんだけど、道具を使ったりする女の子もいるって……」
「そ、そうなんですか、私もあまりよくは知らないんですけども……志貴さん
はどうされるんですか?」

 来るとは思っていたけども、案の定聞かれると……これは存外に恥ずかしい。
 自分のオナニーのスタイルを語る、それも女の子に。もしこれが昼間で別の
女性の前だとしたら、おそらく俺はその恥辱に憤死してしまうのではないのか
と思う。

 かぁぁ、と顔が赤くなるのを感じているが、血液は俺の顔だけではなく、股
間にも集まってくる。今更隠してもどうしようもないのだけど、俺は不自然に
体育座りになる。
 うう、今俺は勃起しています、と叫ぶような情けないポーズ……

「えーと、こう、上下に擦るので」
「あ、やっぱりそうですよねー、男性の方はほとんどそう……だと聞いたこと
がありますからねー」

 まぁ、世間にはまっさらのシーツの上に全裸で俯せになり、腰を振りまくっ
て擦って射精するというスタイルもあると言うけども、そーいうアブノーマル
なのはあまり……もしそうしていると琥珀さんに思われていたらショックだけど。
 あはは、と俺は喉で枯れがちな声で笑ってみる。

「男のあれはあまりレパートリーがないからね……じゃ、じゃぁ……」
「あ……そ、そうですね」

 二人とも、何となく会話を交わしてリラックスしようとしてみたけども、や
っぱりすることをしなくちゃ、と思っているみたいだ。自分のを見せる、とい
うのよりも琥珀さんのオナニーを見たいという覗見の耐え難い欲望が俺を駆り
立てる。

「ん……う……」

 琥珀さんは目を閉じて、襦袢越しに胸に手を当てる。
 琥珀さんの襦袢の胸元は程良く盛り上がり、そこにふにり、と柔らかそうに
手が触れる。琥珀さんは胸の形を確かめるように、左手で右乳房を揉み始める。
絹の襦袢が琥珀さんの指が動くたびにキシ、と僅かな衣擦れの音を立てる。

 琥珀さんは目を閉じ、微かに俯いて自慰を――始めていた。

「ん……んん……はぁ……あっ」

 琥珀さんは胸を触る手を動かし、何度も胸の形を変えるように手首を動かし
ていたが、やがて手を引くとするり、と襦袢の袷からその下に手を潜り込ませた。
 着物はこういうときに、すぐに内側に入れる……便利な物だと思う。

 琥珀さんの手が襦袢の中に潜ると、ほんの少し琥珀さんの眉が動く。
 密やかに声を殺しながら、琥珀さんは自分の身体を触っている。自らの手で
自らの胸を愛撫しているその光景は、いやらしさよりも綺麗さの方を感じる。

 琥珀さんの手が、襦袢の布地を動かすのが見える。
 その度に琥珀さんは小さく声を上げる。胸の上の方で指を動かしている様に
も見え、乳首を触っているのか?と思う。

「ん……あ……ああん……」

 琥珀さんは片目で俺の方を見る。俺は、自分がなんにもしないでただ琥珀さ
んの痴態に見入っていたことに気が付かされる。それほどに琥珀さんの姿は艶
めかしく、美しく――

「志貴さん……ん……志貴さんも……始めて下さいね……」
「う、うん……」

 俺はまるで8歳の少年に戻ってしまったかのように感じながら、体育座りを
止めて中腰になり、ズボンを下ろす。洋服はこういうときには不便だ。
 俺はトランクス一枚になると、おもむろに……ゴムを下げた。

 ぺちん、と腹を打つほどに勃起している、俺のムスコ。
 もう我慢できません、とばかりに弾け出た肉棒を琥珀さんは見ていた。あ、
と俺がつい手で隠そうとすると琥珀さんは……

「志貴さん、見せて下さい……志貴さんのおちんちん」
「あ……はぁ……」

 俺は、おそるおそる、琥珀さんの言葉に従って手を離す。
 自分で言うのもなんだけど、実に立派に弓なりに反っていて先の包皮も剥け
ている。俺が息を吸うたびにひょこひょこと腹筋に従って上下する。

 琥珀さんはそんな俺の股間を見つめながら――讐っぽくうふ、と笑った。
 そして右手で襦袢の衿を摘むと、そのまま横に開いていく。

「志貴さん……私のおっぱいも見て下さいねー」
「琥珀……さん……うぉぁ……」

 琥珀さんは衿を引っぱり、胸どころか肩口まで露わにして見せた。
 琥珀さんの白い肌と見事な女性らしい曲線を描く胸。カップはCぐらいで、
グラビアモデルみたいに形がいい乳房だった。そんな乳房の上のピンク色の
突起を、琥珀さんの指が摘んでいた。
 見せつけるように、くりくりと人差し指を動かしながら。

「ああん……はぁ……ふぅん……」

 琥珀さんの首筋と鎖骨、肩の細い線が描き出すキャンバスの上に、魅惑的な
琥珀さんの張りのある乳房がある。それをたおやかな琥珀さんの手がこねくり
回している。
 見せられるだけで堪らない。琥珀さんの指がまるで俺の指になって、その妙
なる心地が脳に流れ込んでくるような気にすらさせてくれる。

 俺は、琥珀さんを前に肉棒に指を触れた。 

「はぁん……ああああ……んっ、ふぅ……」

 琥珀さんは右胸を自ら愛撫していたかと思うと、今度は襦袢の上から逆の乳
房を揉み始める。琥珀さんが脇を締めて絞り出す様に胸を揉むと、形を変えた
乳房が布地を盛り上げる。
 俺は、ゆっくりと親指を添えるようにして、撫で始める。

 琥珀さんはかすかに眉をしかめてしたけども、俺の顔を見つめて囁く。

「……あはっ、乳首が硬くなってきましたね……志貴さんのもカチカチですね」
「琥珀さんも汗……かいてきて……」

 興奮のためか、うっすらと上気した琥珀さんの肌に微かな汗が浮かんでいる。
 琥珀さんは今まで空いていた右手を、胸に当てたかと思うとそのままするり
と下げていく。その手が胸から肋の下に、お腹の上に、そして……襦袢の上か
ら足の付け根の上に当たる。

「……ん!」

 琥珀さんはまず、着物の上から股間をさわさわと撫でていた。そして何度か
指でお腹を押すように動かすと、その裾を開く。
 琥珀さんの白い内股が裾の間から覗く。もちろん生足で、出来ることなら唇
を付けてくまなくその跡を付けたくなるようなきめの細かい肌。

 琥珀さんの手は、恥ずかしそうに……裾の付け根の秘所に潜り込んでいた。
 手首まで裾の中に埋まると、琥珀さんは身体を崩してぱたり、とベッドの上
に横になった。裾が乱れて琥珀さんの白い足が露わになる。こんな風に見せら
れる方が、ミニスカートなどで露わになるより遥かに艶めかしい。

 俺は琥珀さんの身体を前にして、右手で自分の軸をゆっくりとしごき出す。
 自分一人でするのも悪くはないけども、今のこの部屋の中で触れると全然そ
の感覚が違うように思える。逸物の表面が敏感になっていて、握るだけで痺れ
る様に感じた。

「うっ……はぁはぁはぁ……」
「はぁ……ううん……あああ……あん」

 琥珀さんは胸を、秘所をその手で愛撫している。
 胸を撫で、刺激している手の様子はよく見える。揉んでその肉をこね回し、
指先で乳首を触れ、弾くたびに小さく悲鳴のように声を上げる。
 そして、襦袢の下で琥珀さんは女陰を指でねぶっている。その様子は隠れて
いるけども、きっと……中に触れているんだろう、琥珀さんの陰毛の底にある
柔らかい女性の柔襞を。

 ベッド上に横たわり、微かに腰を引くような姿勢で自慰に耽る琥珀さん。
 眼は閉じがちだったけども、俺の身体をちらちらを眺める視線を感じていた。
俺はと言うとそんな琥珀さんの傍らに膝立ちになって、まるで後付のパーツの
ようにそそり立った凶暴な肉の凶器を擦っている。それも、絞り出してすっき
りする為ではなく、一刻でも長く快感を楽しむためにコントロールしながら、
ゆっくりと。

 俺は琥珀さんの身体をくまなく見下ろしながら、眼で琥珀さんの身体を犯し
ていた。
 今は直接琥珀さんの身体を抱きしめ、口づけし、愛撫するよりもこの方が――
倒錯的でめくるめく快感に酔いしれることが出来た。

 相互オナニー鑑賞などという、陽が高かったら狂ってるとしか思えない痴戯。
 それに、今の俺と琥珀さんは深夜の部屋の中でずっぷりと首まで浸っていた。

「はぁ、うん、はぁ……はぁぁ……はっはっ」
「あん……志貴さん……ふぅん……ああんあん、うっ、あー……はぁ……」

 琥珀さんの手が足の間で妖しく舞う。
 その度に、ぬちゃぬちゃという水気を帯びた音を立てているように感じる。
それに、俺が肉棒を擦るしゅっしゅっというリズム正しい音が響く。
 そして、二人の呼吸が時には合い、時には不協和音となる。

 琥珀さんは首を上げて、俺の顔をじっと見つめる。
 その顔に浮かんだ顔色を俺は――見た。笑っていた、琥珀さんはまるで楽し
くて堪らないように、相好を崩して、嫣然と。そしてそのアンバーブラウンの
瞳に妖しい光が過ぎる。

 一瞬の目の錯覚か。俺は琥珀さんの瞳がどこをも見ていないような気がした。
 だがそれも刹那のこと、琥珀さんは身体をくの字に折り曲げて……

「志貴さん……志貴さん……」

 琥珀さんはきゅと膝を絞り、ぶるりと背中を震わせる。そして体を起こして
俺の方に足を向ける。上体の襦袢は左肩に引っかかっているだけで、手に握ら
れた琥珀さんの乳房が見える。そして、腰紐だけで止まっている態の襦袢の裾
から、すらりとした琥珀さんの足が覗いていて……

 琥珀さんは俺に足を向けると、その足を隠している襦袢を払う。
 むき出しになった足が、膝が俺の目の前で左右に開かれていって――俺は心
臓を狂ったように高鳴らせながら、琥珀さんの足に、太股に、そしてその奥の
秘所に見入る。

 しゅしゅっと硬い肉棒を擦りながら、俺は言葉もなく――

「志貴さん……私のおまんこ……見て下さい……」

 琥珀さんは、俺に向けて足を開いていた。
 滑らかな内太股は淫液に濡れて、奥の女性の秘処が見える。黒く柔らかい陰
毛に彩られた琥珀さんのあそこは、大陰唇から微かに中の襞を覗かせている。

「あ……」
「ん……んふ……」

 琥珀さんは目を伏せながら、指を膝から太股へ、そして俺の目線を追うかの
ようのその秘裂に近づける。しゃり、と琥珀さんの恥毛を撫でる音が聞こえた
ような気がしたが、次のぬちゃり、という濡れた音は確実に俺の耳に届いた。

 琥珀さんは指をその恥唇に添える。そして、指で俺に見せつけるように――
 秘裂を割り広げ、濡れた琥珀さんの襞を俺の前で晒していた。

 琥珀さんのピンクの花弁。

 ズキン、と俺の亀頭に流れ込む血が沸騰したかのような、痛みにも似た快感。

「はぁ……志貴さん……見えてますかね……」
「うん、琥珀さんのあそこが……指で広げられて……クリトリスも、膣口も見
えてる」

 俺が女陰の中の箇所を口にする度に、まるでそこを触られたかの様に琥珀さ
んの身体が震える。息を浅くして喘ぎながら、股を開いて性器を広げている指
を動かす。
 琥珀さんの指に従って、くにくにと襞が蠢く。そして、とうとう我慢できな
くなったみたいに――

「あああっ!」

 にゅぷん、と琥珀さんの指が恥裂の中に埋もれた。
 琥珀さんは割れ目の中に指を進めると、まるで円を書くようにその中をかき混
ぜていた。ぐちゅぐちゅと女陰の襞と指で淫液をかき混ぜるような音がする。

 琥珀さんは、胸を触り続けていた残りの手を、すっと股間に当てる。指は当
然、自慰で濡れた割れ目の中に潜り込んで……

「ああああん!ああああっ、いいいー!」
「うっ、はぁっ、はっ!」

 琥珀さんは首を仰け反らせながら、淫らな指遊びの中に溺れていた。
 指が粘膜の襞を擦るように巡っていたかと思うと、小陰唇の上にある包皮に
包まれたクリトリスの上に添えられ、その感じやすい小さな実をくりくりと弄る。

「あああんっ、あああ!はぁ……ぁあああん!」

 琥珀さんは次々と押し寄せる快感の波濤の中で身悶えしている。足をぐいぐ
いと俺に向かって広げ、ついには腰を浮かせてブリッジするような姿勢になる。

 琥珀さんの足がベッドの上について、腰が上がる。まるでクリトリスに添え
られた指によって身体がつり上げられるかのように。琥珀さんの腰が弓なりに
反り、俺の腰の前に、指で弄られどろどろの淫液を肛門まで滴らせる秘裂が持
ち上がる。

 そして、それに突きつけるようにして、俺は膝をついて肉棒を扱き上げている。

 そのまま腰を進めていけば、とろとろに融けた琥珀さんの膣に俺の肉棒を差
し込み、中に溢れるくらい注ぐことが出来る体勢だった。琥珀さんは誘うかの
ように腰を振り、指に狂わされる女陰の痴態を露わにする。

「んっ、いいっ、いいです志貴さんっ、はぁぁぁ!」

 だけども、俺はそうする気になれなかった。
 これはお互いのオナニーを見せ合うというプレイであって、セックスではな
い。いや、こんな倒錯的なプレイは他にはなく、俺の快感に痺れる脳髄はむし
ろ、挿入よりもこのまま倒錯した遊戯に溺れることを選んだ。
 なんでこんなにきもちいいのか、分からない。

 俺は熱くなった鉄のような肉棒を、中身が飛び散るばかりに強く擦り上げる。
 目の前にあるのは琥珀さんの淫らな秘所。琥珀さんの指が、ぬるりと膣口の
中に抵抗無く飲み込まれていった。

「ああああん!志貴さん!うぁああ!」
「こっ、琥珀さんっ、琥珀さん!」

 俺は半狂乱になって琥珀さんの名前を叫んでいた。
 琥珀さんの身体は綺麗なブリッジを描き、引きつったように腰が震える。
 琥珀さんは首で上体を支えていたが、その顔は真っ赤でむしろ苦しそうにも
見えた。琥珀さんは息を我慢しているみたいに口を噤んで、眼をきゅと閉じて
いて。

「あっ、志貴さんっ、いっ、いやぁぁぁ!」
「琥珀さんっ、俺も、もう……はぁぁあ!」

 俺ももう限界であった。睾丸から身体の奥を通って熱い精液が駆けめぐり、
会陰の下をまるで溶岩流のように駆け上がる。
 琥珀さんの指が、ぎゅっとクリトリスを持ち上げる。そして、痙攣するみた
いにブリッジした身体を突っ張らせて、そして最後に――

「いっ、いっちゃう、志貴さんっ、あああんっ!ごめんなさいぃ!」
「琥珀さん!俺も……はぁぁああ!」

 俺は射精した。
 今までのどんなオナニーでも感じたことがないほどの、激しい快感だった。
尻から足の先まで筋肉の全部が攣ってしまって、俺の身体が精液を吐き出す
ポンプに成り果ててしまったかのような感覚すらする。

 白濁した粘り気のある白濁液を、俺はどくどくと放出する。
 尿道を通る精液の排出感の心地よさは、俺を中からも外からも真っ白にして
しまうほどだった。俺は精液をまき散らし、一直線に跳ぶ精液は琥珀さんのあ
そこに飛び散る。

 俺の精液が、琥珀さんの陰毛に、女陰に掛かる。
 琥珀さんのブリッジした腰にある秘裂も、びくんと震えたかと思うと――

「やぁぁぁぁ!」
「うぁぁぁ!」

 じょろっ、と琥珀さんのあそこから液体が飛び散る。
 それは琥珀さんの尿道口から放たれた、尿だった。すこし黄色い水条は綺麗
に弧を描くと、俺の身体の上に……

 なま暖かい琥珀さんの尿を浴びながら、俺は射精を続けていた。
 琥珀さんは俺の精液を浴び、失禁しながら絶頂に達していた。
 俺も琥珀さんも悲鳴みたいな声を上げながら、自慰でオルガイスムに達し、
お互いの体液を掛け合う。

 正気ではない。なんでこんな事になったのか分からない。
 でも、そんなことはどうでも良くなるほどの気持ちよさであった。

 わからない。
 でも、このまま真っ白になってしまえば――

「あぁ……はぁん……」
「ふぅ、ふぁ、はぁ……」

 琥珀さんの尿が途切れると、力が抜けたようにぱたんと腰が落ちる。
 俺は琥珀さんの尿に身体に浴びながら、その温かさと微かな薫りに打ち震え
ていた。射精後の虚脱感が訪れるが、それでもなにか、普通のセックス以上の
達成感を感じていた。

 俺は魂が抜けたように、琥珀さんの白濁液と尿に汚れた身体を見下ろしていた。
 琥珀さんは顔を腕で隠して、何度か身体を痙攣させる。びくりびくりと何度
か身体を突っ張らせるかのように震えて、ようやく力が抜けてぐったりする。

 俺と琥珀さんは、ベッドの上で体液に汚れながら、快感の極みに漂っていた。
 お互いに何かを言うのが億劫なほどの、浮遊するような快感の中に――

            §            §

「ごめんなさい志貴さん、その、ごめんなさいねー」

 風呂場で琥珀さんは、俺の身体を泡だらけにして擦っている。
 腰掛けに腰を下ろしながら、俺は身体を洗おうとする琥珀さんにすまなそう
に笑う。

「いや、俺もすまないことを……琥珀さんに懸けちゃったし」

 俺と琥珀さんは、相互オナニー鑑賞の虚脱の後に、お互いの姿を見だしたの
であった。
 お互い尿と精液にまみれ、裸の凄い姿で。すぐに正気に戻ると琥珀さんはシー
ツをはぎ取り、俺はそんな琥珀さんの身体をシーツでぬぐい取ろうとした。

 妙にばたばたと動き回った据えにお互いのこの惨状に気が付き、「とりあえ
ず、お風呂に入りましょう」という琥珀さんの提案に従ってまだお湯が残って
いた風呂場にやって来たのであった。
 時間は深夜で、足音を殺してタオルを巻き付けながら廊下を歩く琥珀さんと
俺は滑稽だったがかもしれないが、二人とも至ってその時は真剣だった。

 やがてお風呂に入って身体を洗い出すと、ようやく心に落ち着きが出来てきて……

 琥珀さんはごしごし、と手にしたボディスポンジで俺の腰を重点的に泡立て
ていく。俺も琥珀さんの身体を洗おうとしたけども、まず俺を洗うと言って聞
かない琥珀さんだった。

 それにしても。
 なんというか――信じられないほどにめくるめく体験だったと思う。

「しかし……凄かった。琥珀さんのオナニーどころかおもらしも見られたし」
「は、恥ずかしいので言わないでくださいよー志貴さん。気持ちよかったんで
ちょっと身体が緩んじゃって……ああん」

 琥珀さんは恥ずかしそうに俯きながら、俺の身体を洗う手を止めない。
 俺はぼーっとその柔らかい手つきを味わっていたが、意を決して琥珀さんの
腕を取る。
 そして、琥珀さんの手からボディーソープ漬けのスポンジを奪い取った。

「志貴さん?」
「琥珀さんも身体、ちゃんと洗わなきゃ……掛かったでしょ?俺の」

 俺は琥珀さんのお腹の辺から、撫でるようにスポンジを使い出す。
 柔らかい琥珀さんの肌の上に泡立てながら、抗う琥珀さんの身体を押さえて
洗い始める。俺は初めて風呂場で琥珀さんの肌に触れていることに気が付いた。

 でも、これはセックスと言うよりも子供のじゃれ合いみたいで――

「私は後で洗いますから、そんな志貴さん自ら洗って頂かなくても」
「ヤダ。俺が琥珀さんを汚したんだから、俺が洗わなきゃ?こら、暴れない!」
「やー、くすぐったいですよー志貴さんー、えい!」
「うわっ、と!」

 俺と琥珀さんはスポンジを奪い、合い、手でその身体を押さえつけたり抱き
止めたりして洗いっこを繰り広げていた。俺の手が琥珀さんの太股や股間、お
尻に触れたり、琥珀さんの手が俺の男性自身や肛門に触れたりしても、ぜんぜ
ん性的な興奮は感じず、ただお互いに泡だらけになりながらどれだけ泡だらけ
にさせるかを争いあって――

 二人とも、頬まで泡を飛び散らせ、笑いながら洗い合った。

「えい!」

 琥珀さんが手桶を取って、汲んだお湯をざばりと掛けると、俺と琥珀さんは
動きを止めた。
 肌を隠す泡の膜が無くなり、琥珀さんの上気した肌が見える。しっとりと水
気を帯びた肌と、胸からしたたり落ちる水滴の一滴一滴まで見えるような。

 琥珀さんも、驚いたように眼を見開いて俺の身体を見つめている。
 先ほどは全然気にしなかったお互いの男女の性の差を、今更ながら意識した
ように――

「……流しますね、お身体」
「あ、うん……」

 俺は琥珀さんにくるりと背中を向けて、汲んでは注がれるお湯に身体を任せた。
 琥珀さんもその後に、自分の身体を洗い流していたようだった。俺は振り返
らないで琥珀さんに呼びかける。

「一緒に入る?琥珀さん」
「はい、喜んで……では志貴さんからどうぞ」

 俺は立ち上がると、湯船を跨いでお湯の中に身を沈める。
 閉鎖されている大浴場ほどでもないが、今の風呂場も3人ほどが優に浸かれ
る湯船があった。俺は琥珀さんにようやく振り返ると、胸を手で隠した琥珀さ
んが丁度、湯船を跨いだ所だった。

「あー……いやですよー志貴さん、もう」
「あ……ごめん」

 琥珀さんの片足が上がっていて濡れた秘毛の丘が目に映ってしまった。
 すぐに目をそらすと、高鳴る心臓を押さえ込んで俺は琥珀さんにスペースを
開ける。肩までお湯に浸かった琥珀さんは、悪戯そうに笑いながら俺にぴたっ、
と肩を寄せる。

「……」
「…………ふぅ」

 天井に着いた露が規則正しくぴちょーん、ぴちょーんと音を立てて落ちる。
 二人とも湯船に浸かりながら、ようやく落ち着いて一息ついていた。思えば
お互いに掛け合ってオルガイスムに達してから、慌ただしく動いてばっかりで……

「……どうだった?」

 俺はふと思いついて琥珀さんに尋ねてみた。
 え?と首を傾げる琥珀さんに俺は言葉を続ける。

「いや、その……俺が自慰をするの。あんまり面白い物じゃなかったかもしれ
ないけど……」
「いえいえ、その、私も男性の方がするのは初めて見ましたからー、あはは……」

 照れ隠しみたいに琥珀さんは笑うと、そっと俺の顔を窺ってくる。
 そして、少し声を潜めて言いづらそうにしながら――

「では……私のは如何でした?志貴さん」
「うん……その、凄い綺麗で、出来るならずっと見ていたい……って思うほどに」

 それが偽らざる俺の感想だった。俺は琥珀さんの綺麗な身体を、身をくねら
せる艶な仕草を、形を変える柔らかい胸を、濡れる秘所を、そして快感に打ち
震える琥珀さんの顔を飽かずに眺めていたかった。

 ……琥珀さんを抱きたい、という気持ちなない訳じゃない。
 でも、何となく今みたいに二人で並んでお風呂に入っている方が落ち着くよう
な……おかしい、俺はあの部屋の倒錯したプレイで狂ってしまったんだろうか?

 ――わからない。

「はぁ……後でマットレスも干さなきゃいけませんね」
「手伝うよ、琥珀さん。その……まぁ、俺もいろいろしたから」

 なにしろベッドの上で失禁までしたんだから、ちゃんと後片付けをしなくち
ゃいけない。もっとも翡翠や秋葉に見つかったら俺も琥珀さんも命はないよな、
という気はするけども……

「琥珀さん、そう言えば……ビデオは明日返さないといけないよね」
「はい、そうですが……志貴さん?」
「明日、学校の帰りに返しに行ってくるよ。それで――」

 俺は琥珀さんに笑い掛ける。どうも恥ずかしくて口元が緩んでしまうけども。
 琥珀さんは不思議そうな顔で、俺の次の言葉を待っている。

「別のビデオ借りてくるよ。また――一緒に見たいな」
「あ……」

 俺の言葉の外にある意味を琥珀さんも読みとったみたいだった。
 一緒にビデオを見ると言うことは、また今日みたいに――

 琥珀さんが頷いてる顔が、赤かったのはお湯に上せている訳じゃないと思う。
 頷きながら、笑う琥珀さんは……

「はい、志貴さんと一緒でしたら喜んで」
 
                               《END》






《あとがき》

 どうも、阿羅本です。今回の琥珀さんおなにゅ作品、お楽しみ頂けましたでしょうか?

 まず、皆様に謝らなくては行けないことがございます……すいません、バカ映画スキ
のネタを使ってしまいました(笑)。劇中、琥珀さんが借りてくる『デッド・オア・アライブ』と
いうのは同名の格闘ゲームではなく、「日本映画史上最大の問題作」「見た瞬間
自分が狂気に陥ったのか、世界が発狂したのか、それとも映写室でフィルム掛け
違えたのか分からなくなる」などと言われる、三池監督のバカ映画です(笑)

 どんな作品?と言われるとやっぱり劇中で『ヤクザ映画の最後の5分だけイデオン
発動編』と言うコメントが一番適切だと……こればっかりは見て下さい、このネタ知って
も、あのエンディングは意味不明というか、超絶しています(笑)
 知らないと本当に、発狂したのかと思いますし(笑)

 これに勝てるのは丹波哲郎主演のノストラダムスの大予言ぐらいですね(笑)

 さて、そんなことは置いておいて(笑)
 今回の琥珀さんおなにゅ、難しかったです……結局「相互おなにーぷれい」という
マニアックなネタに走りましたが、それでもそれに情熱を注いで書きました、ええ、
やはり琥珀さんのえちぃ描写は最高じゃわい!とか叫びながら敗北しそうになる自
分を励まして(爆)

 こんな出来になりましたが、お楽しみ頂けましたら幸いです。
 皆様のご感想、お待ちしております。でわでわ!!〜