[an error occurred while processing this directive]



鬼の居ぬ間の

 作:しにを




 さてと、お仕事、お仕事。
 シーツの交換して、お洗濯っと。
 いいお天気だし、暑くならないうちに済ませてしまいましょう。

 まずは秋葉さまのお部屋。
 こんなベッドだとかえって疲れちゃいそうだけど、お嬢様はこうでないと。
 お布団を……?
 ふーん。
 朝に伺った時、私からちょっぴり顔を逸らしてる風だったけど。
 夜かしら。
 違うわね、これはきっと朝早くにお目覚めになって。

 うふふ、秋葉さま、シーツにほんの少しですけど匂いが残っていますよ。
 ほんのりと雌の匂い。
 まあ、お年頃ですし、別に悪いことでもないですけどね。
 秋葉さまは、覗き見しているこちらが恥ずかしくなっちゃうほど、没頭なさ
れるから。
 凄く、可愛いお顔ですけど。
 うっとりと見惚れてしまうくらい。
 あ、そう言えば朝のお風呂の時にも、ショーツを慌てて他の下着と一緒に丸
めてしまわれたけど、あれって?

 後で確認してみましょう。
 また感じすぎて、ちょぴりおもらしされたのかしら。
 ただでさえ、ぐしょぐしょになさるけど。
 最初から脱いでしまわれればいいと思うけど、下着の上から指で充分に弄っ
てからって言うのが、秋葉さまのお好みの手順なんでしょうねえ。
 今日も志貴さんのお写真をオカズにされたのかしら、それとも?
 ちょっと見てみましょう。確認ね。

 机の引出し。
 こんな鍵なんて過信しちゃダメなんですけどね。
 ほら、こうやってただの針金を少し曲げて……、開いた。
 志貴さんの写真、また増えてる。
 いつどうやって撮っているのかしら。
 あ、これ可愛いなあ。
 焼き増し欲しいけど……、さすがに頼めないでしょうねえ。
 後でスキャンして、ポスターにして差し上げたら、これも駄目ね。
 あっ、これ。
 この子供の頃のボロボロになった写真。
 昔の写真は、ほとんど槙久さまに処分されたから、こっそり隠して持ってい
らしたんでしょうね。
 本当に、大切にされて……。
 一途ですね、秋葉さまは。

 こちらの本は、と。
 あら、何冊か新しいのに入れ替わっている。
 これは漫画じゃなくて、小説なのね。
 どこでこういうものは手に入れるのかしら。
 ふーん、わあ……、凄い。
 リアルさには欠けますけど、この内容……、ずいぶんハードね。
 でも、今ひとつわからないなあ。
 男の子同士のお話ってそんなに楽しいのかしら、秋葉さま。
 まだ可愛い女の子同士の方がいいけどなあ。

 こっちはノーマル……、兄妹モノが本当に好きですねえ、秋葉さまは。
 成人向けって書いてあるけどいいのかしら?
 こういうの少しは参考になさって、甘えてみればいいのに。
 まあ、それが出来ないで志貴さんを想って一人で慰めている処が、秋葉さま
らしいと言えばらしいですけど。
 
 では、失礼しますね、秋葉さま。
 ほどほどになさった方がよろしいですよ。



                 ◇



 さて、次は翡翠ちゃんの部屋。
 入りますよー。
 いないのわかってるけど、少しドキドキ。
 うーん、翡翠ちゃんの部屋って片付いているのだけど、なんでこう不思議な
感じがするのかしら。どこかバランスが狂っていると言うか、得体の知れない
違和感があると言うか。
 翡翠ちゃんから見れば、わたしの部屋の方が言語道断なんでしょうけどね。
 なんであんなめちゃくちゃな処で暮らせるんですかって、前に怒られちゃっ
たものね。
 あの少し困り顔で怒ってる翡翠ちゃん、可愛かったなあ。

 あれ、志貴さんの写真のスタンド、少し動いてる。
 なんで、ベッドの傍にあるのかなあ、翡翠ちゃん?
 なんてね。
 翡翠ちゃんは露骨にわかるものね。
 朝、会った時に顔を真っ赤にしちゃって。
 志貴さんとも少しぎくしゃくと意識して。
 別にあんなに罪悪感持たなくてもいいのに。
 でも、いけない事しているって感覚が、かえって快感につながるのかしら。
 
 ……。
 想像しちゃった。
 翡翠ちゃんが自分の指で慰めている光景。
 わあ、どうにかなっちゃいそう。
 うう、どんどん頭の中に克明な映像が……。

 恥ずかしそうに、そして罪の意識をありありと顔に浮かべてる翡翠ちゃん。
 ためらいがちに白い指が、下腹部に伸びて。
 まだ男の人が、いえ誰一人として、自分ですらよくは見たことのない花園に
辿り着く。
 いけない、そう思っても、体は素直で。
 でもその手は自分の中に潜むものに恐怖すら抱いていて。
 可憐な花弁をそっと触れるだけ。
 ほんの少し爪先を沈めかけては、ビクンと離してしまう。
 でも、次第に指先は露に濡れて。
 もう一方の手で、笑顔を向ける志貴さんを見つめて。
 そんな志貴さまを想って指を動かす自分を嫌悪して、でも気持ち良くて。
 口に出して志貴さんに、ごめんなさいと呟いても指は止まらず……。

 ああ、見える。
 萌えるわ、翡翠ちゃん。
 本当に見たいなあ。
 いっそ、カメラでも仕掛けて。
 ……。
 ダメね。
 もしばれたら、もう一生許して貰えない。
 それに、そんな事したらさすがに二度とわたしが翡翠ちゃんの顔を正面から
見られなくなるかもしれない。
 ううん、きっとそうなる。
 断念しましょう。
 では可愛い妹のお部屋は撤退。



                 ◇



 さてさて、最後はお楽しみの志貴さんのお部屋。
 相変わらず殺風景と言うか、こざっぱりとしていると言うか。
 ある意味、凄く志貴さんらしいお部屋ね。
 でも、やっぱり男の人の部屋って、誰もいなくても匂いが違う。
 雄って感じの、間違えようがない匂い。
 翡翠ちゃん、毎日そんな事を感じてるのかな。
 朝なんて志貴さんがお眠りになっているわけだし。
 よく平気ね。
 もしかして、それで我慢できなくてしちゃうのかな、一人で?

 志貴さんのベッドかあ。
 いつもここで眠っているのよね。
 ここで、志貴さんが……。
 いいよね、ちょっとくらい。

 えい。
 うふふ、志貴さんのベッドで寝ちゃった。
 ああ……、男の人の匂い。
 ちょっと獣じみた、でも、いい匂い……。
 ……、
 あれ?
 この匂いって、どこかしら?

 あった。
 何でこんな処に。
 志貴さんのトランクスなんて、お洗濯の時に何度も触ってるけど、こんな処
で見るとなんだか卑猥な感じ。
 うわあ、……どろどろ。
 これは隠されてても、はっきりと匂いがわかるわね。
 翡翠ちゃんとかだと、何の匂いかわからないから、わたしみたいに過敏には
気づかないかもしれないけど。

 なんで、朝からこんなに?
 本物の精液よね、これ。
 うーん。
 もしかして夢精でもなされたのかしら?
 なんだか、慌ててらしたし。
 こっそり洗う暇もなくて、とりあえず隠しておいたって処でしょうかね。

 もしかして、レンちゃんの悪戯かしら。
 余波で翡翠ちゃんとか秋葉さままでむずむずされて、目が覚めてから。
 うん、ありそうね。
 だとすると、惜しかったなあ。
 昨日はお薬で眠ったから。
 それにしても、凄い量。
 乾いたり布に染み込んでまだこんなに……。
 どろりとして濃いし、匂いが漂ってくらくらしそう。

 もったいないなあ。
 志貴さんの事、想っている女の子が三人もいるんですけどね、このお屋敷の
中には。
 時々お一人でもなさっているみたいだし。
 ゴミ掃除の時に確認すると時々ありますからね。
 こんなに指に粘つくほどなんだから、きっと溜まってらしたんでしょうね。

 うんん……。
 あら、んんッ……。
 何をわたし色っぽい声を洩らしているのかしら。
 手が勝手に。

 あふん。
 こういう時は着物は不便ですね。
 すぐに手を伸ばしてって訳に……。
 何をしてるのよ。
 ああ、帯を解いちゃった。
 汚しちゃいけないし、でも……。

 翡翠ちゃん離れに行って掃除って言ってたから、しばらく戻らないよね。
 今は誰もいない。
 わたしだけ……。
 まだお日様が出ているのに。
 うう。
 ああ、もう胸の先、こんなに……んふふッ。
 気持ちいいよう……。

 志貴さんが悪いんですよ、こんなのでわたしを惑わすから。
 んん、いい匂い。
 ああ、パンツの匂い嗅ぎながら、こんな……。
 変態みたい、こんなの……、濡れて、もう……。
 自分の指なのに、なんでこんなに、ひぁっ。

 こんな姿見られたら。
 秋葉さまが、んんん……、いないのは知ってるけど突然現れたら、蔑んだ目
で見られて、声も掛けてもらえなくて……、いきなり怖い顔をされてわたしの
事を平手打ちされたりして……、
 ッッッ、いい、いいです、気持ちいいです、秋葉さま。

 志貴さんなら……。
 そうね志貴さんなら、凍りついたみたいに固まって、ごめん琥珀さんとか言
って真っ赤になって部屋を出て行きそう、悪いのはわたしなのに。
 わたしはくすくす笑って、狂ったみたいに続けるのよ、きっと、こんな風に。
 痺れてる。
 もっと欲しい、刺激、もっと。

 ああ、いくらなんでも、こんな。
 志貴さんが穿いてたパンツに舌を伸ばすなんて。
 ダメよ、舐めようなんて、こんな精液を、ダメだって。
 うん、精液だけでなくて少しキツイ匂い。
 ふふ、そっかあ、若い男の人ってこうなんだ。
 ほら、もう少し……、ああ、舌が離れているのに匂いで味覚が……。
 あは、舐めちゃった。

 わたし、男の人の精液に汚されたパンツを嬉しそうに舐めている。
 変態みたいじゃなくて、完全な変態ね、これじゃ。
 ああ、もし、こんな処をさっきの秋葉さまや志貴さんだけでなくて、翡翠ち
ゃんに見られたら。
 んんんッッッ、考えただけで、電気が走ったみたい。

 そうね、突然、扉が開いて。
 翡翠ちゃんはすぐには、目の前のものが認識出来ないの。
 そうよね、志貴さんのベッドで、ほとんど全裸になって、男物のパンツを片
手に舌でペロペロしながら、自分の性器を弄っている姉の姿なんて、頭のほう
が拒否するわよね。
 うん、こんな風にね。
 数秒固まって、それから寒気がしたみたいにぶるぶる震えて、鳴きそうな声
で、姉さんって言葉を口にするのがやっとで……。

 え!?
 な
 な
 な 
 なんで、翡翠ちゃんがいるの?

 違う、違うのよ、翡翠ちゃん。
 うわ、ああッ、なんでこんないきなり、ダメ、今はイッてる暇なんて。

 ああ、もうも、どうすればいいの。
 困った、わわわ、早く何か。
 そうだ、翡翠ちゃんも仲間にして巻き込むしか。
 姉妹ですもの。
 翡翠ちゃんが動けないでいるうちに、ベッドに引きずりこんで。

 もう。
 なんでこんな事に。
 ううう。
 
 はいはい、翡翠ちゃん、おとなしくして下さいね。
 可愛がってあげるんだから、そんなに怯えないで。
 ごめん、ごめんね、翡翠ちゃん。
 二人、冥府魔道の愛欲地獄へ。
 恨むなら、わたしでなく志貴さんを。

 ううう。
 そうよ、志貴さんが悪いんだあ。 
 志貴さんの、志貴さんのばかあぁぁッッ。
 
 
 
 《おしまい》





―――あとがき
 いや、割とシリアス系のお話が多いと聞いたので、脱力して読める馬鹿を。
 出張がありまして、電車の中で急に思いついて、おおまかにノートに書いて、
次の日に直しつつ打ち込み。
 すごく実時間少ないですね。
 
 なんで、一つ目と二つ目がまだ終わらないのに、こんなの書いて、なおかつ
先に書き終わっているんだろう。まあ、短いけど。

 えっちぃのは、他の人ので補完してください。
 ああ、本当に酷い馬鹿話だな。

   by しにを (2002/7/25)