自鋳:コハク
くちゅり……
そう淫らな音がしてほしいのに、そこはまったく渇いていた。
逆にこすれて痛い。
……早くしないと……
今日は庭のあの子達を見ていて、いつもより遅くなってしまったから、早くし
ないと……。
わたしは自分のあそこをとにかくいじる。
早くしないとご主人様がくるから……
わたしは慌てる。
急がないと、急がないと。
でもどんなに急いでも、あそこが濡れることはない。
濡れていないと痛いのに、濡れてくれない。
泣きそうになってしまう。
でも誰も助けてくれない。
『助けて』
何度書いても、囁いても、泣き叫んでも、喚いても、
――――誰も助けてくれない。
お姉ちゃんだから……頑張らないと……
今さっきまで見ていた外の光景を思い浮かべる。
元気な男の子が二人と女の子が二人。
とても楽しそうに、仲良く庭を走っていた。
あんなふうに走ったことはない
はしりたい……?
つい、迸った心を抑える。押さえ込んで隠してしまう。
でないと……。
あぁもぅこんな時間なのに!
まだ濡れない。
こんなにこねくりまわして、
襞をひろげて
こすって、
胸をもんで、
うえの突起をつまんでいるのに!
はやくしないとご主人様がきちゃう!
どうしても濡れない。
気分が高揚しない。
どうして。
どうして?
どうして!
早く、早く、早く
早くしないと来てしまうのに。
わたしは早くしないと無理矢理入れられる。
血が出ても、
泣いても、
叫んでも、
許してくれない。
殴られ、
蹴られ、
しゃぶられ、
しごかせて、
そして入れられる。
そして出される。
あの青臭いものを、
どろりとした粘液を、
胎内に。
口の中に。
顔の上に。
――だから濡れないといけないのに!
ふと、あの子の笑みが浮かぶ。
にっこりと笑ったあの子。
名前……はたしかシキ。
シキちゃん。
庭から見上げてわたしに手を伸ばしてくれる。
届かないのに
届くわけないのに
でも、届いて欲しかった。
わたしも……
こんなこと考えていけないのに。
あの子の笑顔を思い浮かべたら、
くちゅり
といった。
なんだか喉が渇いてくる。
胸もまだべったんこなのに、とがってきた。
触ると痛い。
でもその痛みはじんじんとしてきて、気持ちいい。
むず痒い感じ。
あそこの襞がゆっくりと湿ってくる。
シキくん
そう思うと腰の奥が柔らかくなっていく。
そこから熱が広がってくる。
暖かくて、なんだかジンジンする。
あそこの襞が湿ってきて、指に絡み始める。
指に絡んできて、飲み込もうとする。
だから、そっと中指を中に入れてみる。
まだ冷たいし、濡れていない。
まだダメ。
まだ表面だけ。
その入り口のまわりをゆっくりとゆっくりとさする。
股間を柔らかく、吐く息に、吸う息に合わせてさわる。
そして上の突起にふれる。
びりっとする。
痛い。
躰がびくんとしてしまう。
手を思わず引っ込めてしまう。
痛いからつい涙目になってしまった。
息が上がってきてしまう。
なのに、その痛みで火照ってきてしまう。
そのドロドロとした熱に導かれるように、今度は突起のまわりを優しく撫でる。
……今度は痛くない。
じんわりとした熱がひろがって、体がぽっかぽかしてくる。
暖かいから、汗をかき始める。
乳首が尖っていた。
大人の人のような胸なんてまだないのに。
それをあいている左手の人差し指で触れてみる。
くすぐったいような、痛いような、痺れるような妙な感じ。
いつもの感じ。
シキちゃん
あの顔を思い浮かべると体がきゅぅっとなる。
なぜだかわからない。
あの笑顔がとっても好きだから?
あの子が妹に笑顔を向けていると、わたしに向けられているようで、嬉しい。
あの笑顔がわたしにも向けられている。
そう考えるだけで、嬉しい。
ほんわかしてくる。
だから、ほんの、ほんのつかの間だけど、助けて欲しい、という気持ちも消える。
消えて残るのは、このぽっかぽかしたものと腰の奥のあついドロドロ。
右手の指をしゃぶる。
たっぷりと唾をつけて、濡らす。
じゃないと痛いから。
指を丹念に舌で舐める。
舌をからめて、唾液をすすり上げ、唇と舌で指をしゃぶり続ける。
感じるのは酸っぱいような味。
わたしの体液の味。
それはとてもイヤなのに、しゃぶっていると、唇がジンジンとしてくる。
それだけでほんわかとしてしてしまう。
もっと味わいたくて、喉の奥にまで指を吸い込んでしまう。
苦しい。
でも……甘い。
舌で爪を、指紋を、関節をなめる。
味がしなくなるまで、指を味わう。
ふやけるまで、味わう。
びちゃびちゃにする。
唾液でびちゃびちゃになった指を、まだつるんとしたそこをかき分けて、挿れる。
いやらしい音がする。
わからないけど、それがとても恥ずかしくていやらしいことだけがわかる。
そして指をゆっくりと動かす。
暖かかった。
ドロドロしていた。
そして指をコの字に曲げて、刺激する。
一番ムズムズするところに触る。
いつもここにさわると躰がビクンとしてしまうところ。
ぎゅぅっとしなって、頭が真っ白になるところ。
鼻の奥がきな臭くなるところ。
そこに触れる。
ビクンとする。
まるで電気が走ったよう。
鼻の奥がつーんとする。
左右に動かす。
そこをおさえてぐりぐりとする。
なんかどろどになったなにかをかき乱す音がする。
いやにうるさい。
集中できない。
そう思って聞いてみると、それはわたしの息だった。
荒い息。
熱く粘ついた息。
それが耳に、頭に響いてくる。
そしてわたしの声。
悲鳴に似た声。
でも悲鳴じゃなくて短い呼吸と短い声が響く。
……あえぎ、というんだっけ。
わからないけど頭がぼおっとしてくる。
かすみがかかったよう。
本当に自分の声だかどうだかわからなくなっていく。
――――でも、こうなれば、いい。
こうなると感じなくなるから。
感じたとしても『きもちいいこと』だけ。
そうご主人様はいう。
だから――それだけでいっぱいになればいい。
それでいっぱいにならないと、痛いから。
痛いのはイヤだから。
感じなければ痛くないのに。
痛みなんて感じなければ。
でも痛いから、だからいじる。
自分の考えがわかんなくなっていく。
腰の奥のドロドロが頭にのぼってきて。
目の前があつくとろとろになって。
何もわからなくなる。
ザラザラとしたところを擦る。
ぎゅーっと胸をついばむ。
痛い。
痛いのは嫌い。
なのに、なぜかそうしてしまう。
この尖った先をぎゅっとしたくなってしまう。
痛い。
じんじんする。
でもその痺れが広がっていく。
ドロドロと痺れがとろとろな頭に、まるで練り物のようにまじりあっていく。
体がぐちゃぐちゃになっていく。
あとこから匂いが漂ってくる。
こういう風になると、漂うわたしの体臭。
ご主人様は『なんて、いやらしい匂いだ』という。
だから、これはいやらしい匂い。
オンナの匂い。
琥珀の匂い。
そうしていると、躰に力が入らなくなる。
ぐにゃぐにゃになってしまった。
自分の荒い息と声だけが響く。
何にもない部屋に響いて、消えていく。
右手の抜き差しを早める。
でも感じない。
ただ圧迫感が、ただ焦燥感があるだけ。
でもそれが背中をムズムズさせる。
だから、そのまま胸から手を離して、あそこの突起にふれる。
痛い。
でもいい。
わからないけど、いい。
ジンジンとする。
痒いところに手が届くような、痛みにも似たそれ。
それがいい。
わたしにはわからないけど、どうすればいいのか、体が知っていた。
太股を擦り上げ、乳首をつまみ、あそこをいじり、あそこの突起をいじる。
それだけで体がびくんびくんする。
切なくて、わからないけど、いじる。
誰にも教わっていないのに、わかる。わかってしまう。
なで上げ、いじり、広げ、擦り、つまみ、つぶし、そしてなで回す。
頭の中が白くなっていく。
あの子の顔だけになる。
あの子の笑顔。
あの子の差しのばされた手。
あの子の走っている姿。
頭の中があの子だけになってもまだ足りない。
体すべてをあの子にしたい。
頭の中も、体の中も、心の中も。
そう思うだけで、
体がビクンビクンして、意識が途切れる。
口が大きくあいて、声を漏らす。
漏らせば漏らすほど気持ちいい。
外へと広がっていく。
声の分だけ何かが出ていって、あの子でいっぱいになる。
気持ちいい。
たぶん、これは気持ちいい。
わからないけど、たぶんこれがそう。
おしっこを漏らしそうなのを我慢しているような、そしてそれを出しているよ
うなあの気持ちいい感じ。
解放感と甘い疼き。
これが気持ちいいということだと思う。
体も頭も心もすべてが溶けていく。
そして突起を抓む。はじく。擦り、押しつぶす。
どんどん焦燥感が、圧迫感が、わたしを急き立てる。
躰がもうどうにかなってしまったようで。
それしか感じない。
痛みなんて感じない躰。
とっても具合のいい躰。
心もそうなればいいのに。
でも心もあの子ばかりになって。
何も感じない。
だからいい。
とてもいい。
こうやって自分をいじっている時が、理想の姿。
どんどんあそこから水が漏れてくる。
それで内股がびしょびしょになる。
どんどん出ていく。
わたしの中から出ていって、あの子だけになっていく。
あの子が――わたしの気持ちいいこと。
何も考えられない。
真っ白に。
あの子だけになっていく。
すべてが埋め尽くされる。
わたしは消えてしまう。
頭の中がはじける。
真っ白に――。
「 シ キ く ん ! 」
躰がビクンとなって、わたしは背をのけ反らせる。
ちょろちょろとあそこから何かが漏れる。
体に力が入らない。
……お漏らし、しちゃった……
そう思うとさらにビクンとして、何かが勢いよく、音を立てて出ていく。
そして滴がたれる音がして、わたしの体はすべてから解放される。
わたしの体から今まであった力はすべて消え去り、冷たい床に転がる。
火照っていた、冷たい床にびくんとしてしまう。
でも力が入らなくて。
体はびくんびくんと痙攣していて。
アソコから何かが滴っていて。
でもそんなことはどうでもよくて。
腰あたりがぬれちゃっていて。
気持ち悪いんだけど、そこだけが妙に暖かくて。
しばらくして、床も暖かくなり、
どうでもよくなって。
この気だるくぼんやりとした感じがたまらなく好きで。
何も考えなくていいからで。
早くこの状態のときにご主人様である槙久様がこないかな、と、ふと思った。
そうすれば――――楽なのに。
暗転
To be Continued Next Episode:慈慰.
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