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 秋葉の閉じた口から、僅かに息が洩れる。
 その辺りを丹念に指で探索する。
 ああ、と志貴は気づく。
 明らかな突起がそこにあった。
 尖り硬くなった秋葉の胸の先。

 ノーブラだからだろう、布地の上からもはっきりとその存在感がわかる。
 今は左胸だった。
 志貴はすぐに左手を伸ばし、右胸の乳首も見つけ出した。
 指の腹でくりくりと揉むように擦った。

 秋葉が声にならない悲鳴を上げているのがわかる。
 ここは、秋葉の急所の一つだった。
 胸が小さい女性はその分、乳房や乳首から受ける感覚が鋭敏だという俗説が
あるが、秋葉について言えば、それは真理だった。もっとも、では大きい胸の
女性は胸で感じ難いのかと言えば、有力な反証がすぐ傍でこちらを熱い目で眺
めているのだが……。
 ともかく、その重要攻略拠点を忘れていたな、と自分の不覚を叱り、志貴は
秋葉の胸を熱中して弄り始めた。
 優しく摘み、転がすように動かしたり、軽く引っ張っては放してみたり。

 その度に秋葉の動きが僅かに乱れ、その性感が尋常ならざる事を雄弁に証明
していた。
 膣内の感触も若干変わっていた。
 締め付け、同時にぬめぬめと襞が動く感触は同じだったが、よりしっかりと
絡みつくように収縮している。
 腰の動きはむしろ緩やかなのに、ひしとしがみつくような感触ゆえに、より
いっそう気持ちよさが増していた。
 この膣内の変化は、志貴にとって馴染みのものだった。
 そして秋葉の虚ろな目と上気した顔。
 口だけはしっかりと閉じているが、そこが自由ならば喘ぎ声と切ない吐息を
洩らしているだろう。
 もうすぐ秋葉はイキそうなんだな。
 何度も肌を重ねている者の勘で、志貴はそう悟った。

 こちらからも腰を突き上げて絶頂に導いてやろうかと思ったが、今は秋葉に
させなければならない事だったなと思い出す。
 代わりに、志貴は体操服の上からの愛撫を、直接接触に切り替えた。
 体操服の裾を捲り上げ、僅かに覗く事が出来る薄紅色のつんと突き出た乳首
を摘んだ。
 もう一方の手は広げて胸全体のすべすべした感触を楽しみつつ、指と指の間
に乳首を挟みこみゆるゆると揉みしだいた。

 高まっている。
 秋葉の表情で、もう限界が近いと感知する。
 両手の動きを変える。
 親指と人差し指で両の乳首を摘み、ぎゅっと痛いほどに押し潰した。

 その瞬間、びくびくと秋葉の体が動き、硬直した。
 イッたな。
 崩れそうな体を、手で支えながら、志貴は満足感に浸った。

 と、秋葉が急に手で口を押さえた。
 苦痛に顔を歪め、顔を真っ赤にして体を折る。
 のたうつようなその体の動きで、志貴との接合は解かれた。

 呆然として志貴は秋葉を見つめた。
 今しがたの秋葉の苦痛を堪えているようにも見える快美の表情が、まったく
の苦悶のそれに変わっていた。

「どうした、秋葉」

 答えは無い。
 体を丸めて動かない。
 僅かに、押さえた手から潰れた呼気や、声にならない声が洩れている。

 どうした……、これは咳き込んでいる?
 秋葉の様子に、そう志貴は判断をした。
 軽く達したショックで唾液が気管にでも入ったのだろうか。
 そうだ、確かにしきりに激しく咳き込んでいる。

 口を頑として閉じたままで。
 涙をだらだらとこぼし、苦痛に顔を歪め、それでも閉じつづけている口の隙
間と鼻から息を洩らしている。

 志貴は我に返ったように、秋葉に叫ぶ。

「出せ、秋葉。口の中の吐き出せ」

 しかし、秋葉は涙目で首を微かに左右に動かす。
 苦しげに悶絶したままで。
 なんでだ、と志貴はうろたえる。
 こうまでして外に出そうとしないなんて、何故?
 志貴はもう一度秋葉に同じ言葉をかけた。

「言葉が違いますよ、遠野くん」
「え?」
「お兄さんの精液を外に吐き捨てるような真似を、秋葉さんが出来る訳はない
でしょう。
言うのなら、逆を、ね、秋葉さん……」
「逆って?」

 戸惑い、そして志貴は唐突に気づき、叫ぶ。

「呑んでいいぞ、秋葉」

 秋葉は今度はこくりと素直に頷き、精液を混ぜ込んだ唾液を嚥下した。
 量が多く、まだ咳き込みは残っていて苦しそうではあるが、何度も喉が動く。
 志貴は秋葉の体を支えるようにして、背中をさすった。

「ふぅぐっ、けほん、……んんッッ」

 秋葉はようやく全部始末できたようで、大きく口を開けて喘いでいた。
 目尻に涙が浮かんでいる。

「大丈夫か、秋葉」
「はい……、平気です」

 そう力なく答え、はっとしたように志貴の顔を、そして志貴の体を見て、気
落ちした顔をする。

「ごめんなさい、ごめんなさい、兄さん」
「え、どうした、秋葉?」
「まだ兄さんの事を悦ばせていないのに、途中で私……。口の中のも呑んでし
まいましたし、言いつけに背いてしまいました。
 どんな厳しい罰でも受けます。命じてください、兄さん」

 かすれた声で、秋葉が言う。
 顔を真っ青にしながらも、しっかりと志貴の目を見ている。
 目は潤み、気丈にも泣き出しそうになるのを堪えているの見て取れた。

「もう、いいよ、秋葉。充分頑張った」
「え?」
「充分俺は満足した。その後で俺が呑んでいいって言ったんだから、罰とかは
無しだよ。うん、よく頑張ったな、秋葉」
「本当ですか? もう、はしたない秋葉へのお仕置きは終わりですか?」
「嘘なんて言わないよ」

 志貴の頷く顔を見て、秋葉は一転して明るい笑顔に変わる。
 そして、上目遣いで兄の顔を見つめる。
 躊躇いがちに言葉を口にする。

「では、兄さん、良くやったって頭を撫ぜてくれませんか」
「頭を?」

 頭を撫ぜるくらい、いくらでもやってやるけど?
 訝しげに志貴は秋葉を見て、ああ、と悟る。
 文字通りの意味ではなく、比喩的な言葉だろうと。

「そうだな、厳しく躾るばかりじゃダメだな。どうして欲しいんだ、秋葉は?」
「兄さんはまだ終わっていらっしゃいませんし……、その…さっきの続きをし
て下さい。いっぱい……、注いで欲しいんです。溢れるくらいいっぱい」
「いいよ、望むところだ」

 今度は秋葉を横たえ、自分から志貴は挿入した。
 ずぶずぶと自分を貫く志貴の感触に、それだけで秋葉は歓喜の声を洩らす。
 志貴の背に手を回し、うっとりした顔で胸に顔を埋める。
 
「秋葉……」
「はい?」
「そんなに熱烈に抱き締めてくれるのは嬉しいけど、それだと動けない」
「は、はい、ごめんなさい」

 志貴は慌てた様子の秋葉に笑顔を見せ、ゆっくりと抜き差しを始めた。
 いつも以上に、秋葉は素直に声を洩らす。
 さっきの反動かな、と志貴は思ったが、余計な事を言って口を噤まれると困
るなと、黙ってその甘美な声に聞き入った。

 さっきまでの熱はまだ体に残っていた。
 志貴は簡単に沸点に近づく。
 秋葉もそれを感じているのか、来るべき終局にドキドキとしている。
 気持ちだけでなく、それが体の到るところへ伝播していく。

「うぁっ、また……、秋葉の中がうねって凄いよ」
「兄さん、もう我慢できませんか?」
「ああ、そろそろだな」

 そう言いながら、志貴は自分だけでなく、秋葉も連れて行こうと動く。
 志貴はまた激しく小刻みに体を動かし、立て続けに秋葉の深奥を抉った。

「はぁぁ、いいです、兄さん」
「いいぞ、秋葉、そんなに締め付けて、出すぞ」
「はい、ください。兄さん、ああああぁぁぁ………」

 志貴の腰がびくんと跳ねた瞬間、秋葉は叫び、音声とならないほど声を張り
上げ……、かくんと体の力を抜いた。
 糸の切れた操り人形の如く、しかし見間違いようの無い歓喜の表情で、意識
をもうろうとさせていった。





「平気ですよ、遠野くんは早く外へ」
「うん……」
「誰かに三人でこそこそ出る所を見られたらまずいですよ。先に出て校門の処
で待っていてください。
 大丈夫です、私たちも着替えてすぐにそちらへ向かいますから」

 シエルはきっぱりとそう言うが、志貴は心配そうにシエルの背後を、まだ力
なく蹲ったままの秋葉の姿を見つめている。
 と、秋葉が顔を上げた。
 目が何かを告げ、志貴は躊躇いがちに頷いた。

「わかったよ。じゃあ先輩、すまないけど秋葉を頼む」




                                      《つづく》