「クリ済ます」
西紀 貫之
物置の中、俺はとあるモノを探していた。
遠野家ほどの家ならこんなに苦労せずともドデカいそいつを容易く発見できるような気がしてたが……どうやらそんなことはなかったようだ。
「うーん、無いなぁ」
何度目の呟きだったか。
しかし、この埃っぽさは参るなぁ。
ふむ。一巡したか。
「こりゃ買うしかないのかな」
小一時間もひっくり返したり混ぜ返したりした物置の整理もせずに、俺は速やかに扉を閉めて退散する。
手を洗って、これからの予定を組もうと、廊下を往く最中にふと中庭を見た。
なんというか、洋風の館にピッタリというかそぐわないと言うか。こう、ちゃんとした針葉樹じゃなくってふつうの日本に多い広葉樹ばっかりだ。
桜の木……もあるなぁ。
「うーん」
頭の中に探し物を思い浮かべ、庭に生えてるそれらと比べてみる。
「楓に電飾なんて似合わないしな」
そしてまた俺は頭を抱える。
いやぁ、考えてみればこの屋敷でクリスマスを祝うなんて、今までは考えられなかったんだろうな。そう思えばアレが無いのも頷ける。
「遠野槙久に、クリスマスは似合わん……か」
さて、どうしよう。
この時期だし、買おうと思えばすぐに買える物だろうけれど、なにぶん俺は貧乏であるからして。
うーん。
頭の中で思考錯誤。
せっかくのクリスマスなのになぁ。
有彦のヤツはクリスマス死ね死ね団に入会したとかしなかったとか言ってたし、あいつに頼ることも出来ないなぁ。頼ったら頼ったでうちに来そうだし。
そうなったら遠野家イチャイチャ大作戦も不可能になってしまう。それだけは避けたい。
と、そのときだ。
俺の頭の中に電光石火疾風迅雷の如く閃いたことがあった!
「おお、その手があったかぁぁあ!」
俺はまっすぐ翡翠の部屋に向かった。
「翡翠ー!」
ダンダンダンダン!
力強くグーでノックする俺。
「は、はい!?」
血相を変えて翡翠が顔を出す。
「翡翠」
「は、はい」
俺は翡翠の姿を頭の天辺からつま先までじーっと見ると、やおらしゃがみ込んでヒョイとスカートをめくり上げた。
「きゃっ……」
「ええい、静かに!」
両手でスカートを押さえて内股になって腰を引く翡翠にピシャリと言い放つ。
哀しいかな、メイド魂。
翡翠は中腰のまま頬を赤らめて硬直する。静かにと言ったので、言いたいことも言えずに口をもごもごさせてるだけである。
「おりゃ」
「ひっく!」
白いパンティーを一気に膝まで引き下げる拙者。
「こ、こんなところで……姉さんに見られて……あっ」
ふーむ。
あらわになったソコを見て、俺はため息を一つ。
「駄目だ、こりゃ」
「がびーん」
パンツを戻す俺。
「すまんな翡翠。邪魔してすまん」
「し、志貴さま? ……あの、『駄目』?」
さーて、どうすっかな。
「志貴さま? ひっく、翡翠のは駄目なのですか?」
うーん。
「あ、あの……」
「琥珀さんのところに行ってみるかぁ」
「がびーん」
なんか倒れる音がしたようだが……まぁいいや。
俺は琥珀さんの部屋に急いだ。
この時間、琥珀さんは……っと。
あ、いたいた。
「琥珀さーん!」
声をかけて手を振ると、ちょうど秋葉の紅茶を煎れ替えに来てる琥珀さんが厨房からいつもの笑顔で笑いかけてくる。
「あら、どうしたんですか?」
ポットを置き、こちらに振り返る琥珀さんに近づく俺。
「いや、ちょっと確認したいことがあって」
「あら、なんですか?」
と、キョトンとする琥珀さんの間合にすべるように入り込む。
「え?」と琥珀さんがハテナマークを出してる隙に、右手を背後に伸ばして帯を解く。
「おりゃさー!」
軸足と腰、そして肩・腕・諸々を一挙動で発動させて帯を引っ張る。
「!?」
琥珀さん、声も無く早送りの『あ〜れ〜お代官様プレイ』。襦袢をはためかせて流しの向こうまでもんどりうって回転していく。
ふらふら……パタン。
かるく脳を振られたのか、そのまま倒れて動かない。
うむ、これなら確認がしやすい。
「はいはい、ご免なすって」
襦袢をめくり、その下も幾つかめくって確認。
…………うーん。
「惜しい。ちょっと高さが足りない」
もうちょっとこっちまでありゃなぁ。
色も少しイメージに合わないし。
抱えた足を解放。
「うーん、こうなると秋葉か」
よし、俺がお茶のお替りを持って行くついでに確認してやろう。うん。
「よ、秋葉」
「あら……兄さんがお茶を? 琥珀はどうしたんですか?」
「ああ、また俺が迷惑かけてその後始末してる。ってことでお茶は俺が持ってきたぞ。おまえの好きなオレンジペコの濃ゆーいヤツだ」
居間に座る秋葉は、またかと困った顔をした。
「何をやったか知りませんが、ほどほどにしてくださいよ」
「はっはっは」
二人がけの大きいソファーに移り、秋葉は俺を隣に座らせる。
「ふふ……ちゃっかり自分のカップを持ってきてるなんて」
「秋葉といっしょにお茶したかったからな」
「あらあら……」
頬を染める秋葉が紅茶を飲みこむ。
「……って嘘さ〜!」
「!?」
カップを取り落とし、俺に肩を預ける秋葉。
「ふっふっふ……さすがに象十頭分の麻酔薬。一口でこれだとは」
「に……にぃさん」
お、まだ口がきけるとは。
「悪く思うな秋葉」
俺はソファーに立てかけるように、秋葉の体をさかさまにする。
「よっよっと」
スカートをめくって垂らすと、薄いピンクのパンティーがあわらになる。
「しかし良い格好だなぁ」
羞恥に真っ赤になった秋葉。何か言いたそうにしてるが、羞恥と怒りのあまりに言葉が出てこないのだろう。ふふふ、可愛いやつ。
「よし、確かめさせてもらうぞ」
パンティーに手をかけ、一気に脱がせる。
「ひゃうっ!」
おーおーおー、声は可愛いなぁ。
「む!」
こ、これは!
初めて拝ませてもらう秋葉のお宝。
……ではなく、俺はその『毛』を見て「これだ!」と叫んだ。
「いいぞ秋葉!」
「……は?」
スースーするのに閉じられない股間に、あまつさえ俺の顔が近づいてるという特異なシチュエーション。秋葉の思考回路は処理し切れなくなって、逆に冷静になったようだ。
「にぃさん?」
「いいぞ秋葉。これぞ理想のインモーだ!」
その稜線を指でなぞる。
「いいぞ、この臍下三寸から逆三角形に生え揃った毛! こうして逆から見ると理想的なモミの木じゃないか」
「……はぃ?」
俺はポケットから茶色のペンを取り出す。
「ほれ、ここをこーすると」
「ひゃうんっ」
毛のところからヘソのあたりまで、モミの木の幹の部分を書く。
「そしてだな……」
今度は違うペンを出して、ヘソの部分に植木蜂を書く。
「おお! マーベラス!」
そして畳み掛けるようにクリスマス用の飾りつけで使う鈴とかを取り出す。
「いやぁ、なんでうちにクリスマス用のモミの木とかないのかなと思ってさぁ。まぁ、無いなら在るもので間に合わせるしかないわな」
インモーに結べば良いから楽だな、うん。
「ほーら秋葉、素敵なツリーだ!」
「…………にぃさん?」
ん、声の調子がおかしいな。
「にぃさんは、モミの木をかおうとはおもわなかったんですか?」
「だって俺、小遣い貰ってないし」
秋葉の体から、滲むように殺気が放たれ始める。
「にぃさん、あなたってひとわぁぁああ」
と、徐々に秋葉の髪の毛が紅く……。
「馬鹿者おおおおおおおおお!!」
バシーン!
「きゃうんっ」
俺は力いっぱい秋葉の尻を叩いた。
「秋葉、なんのつもりだ! 遠野の血を発動させたら、インモーまで紅くなるだろうが!」
バシーン!
「あひぃっ!」
「そうなったらせっかくの綺麗な黒光りするモミの木風のコレが台無しじゃねえか!」
バシーン!
「ああんっ!」
「お前はこの俺にクリスマスをさせないつもりか! ああん!?」
バシーンバシーン!
「ゆ、ゆるひてくらさい! にぃさん! ……ああっ」
徐々に黒さを取り戻す秋葉の体毛。
はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……。
「わかってくれたか秋葉」
それに免じて電飾は勘弁してやろう。
「おや?」
少し濡れてる。
くにゅくにゅ。
「あ、そこはいじっちゃだめなところですぅ……」
「ふふふ、用意の良いことだ」
俺はポケットから、装飾のトリを飾るブツを取り出した。
「じゃじゃーん」
それはツリーの天辺につける、星だった。
「に、にぃさん?」
「これを秋葉の凹に差し込めば、遠野家のクリスマスツリーは完成となる」
うむ、なんて丁度良いのだ。
「そ、それはっ!」
「まぁ、ここまできたら見逃せ。な? な? な?」
くにゅくにゅ。
安心せい、膜は破らん。
「あ……あ……にぃさん、こんなのいやですぅ」
「まぁまぁ、遠野家の当主たるもの、多少のお目こぼしは必要だぞ」
と、星を差し込む拙者。
おお、完成だ!
「見ろ秋葉! 完成だ。ちょっと星がでかい気もするがそりゃ愛嬌だ」
しかし、これがホントの『オ○コ星』とは言うまい。
「ん……ん……」
なんかモジモジする秋葉。
「ははぁ、切なくなってきたか?」
秋葉は静かに頷いた。
「ふふふ……しかたがないなぁ」
妹のはじめてを聖夜に汚すのもまた一興か! そうすれば中に出した白いのが垂れてきたりなんかして、なんか妙にリアルになりそうなクリスマスツリー。
そう考えて自分のもっこりを取り出そうとする拙者。
「あ」
いかんいかん。星が刺さってるではないか。
「これじゃできないなぁ、はっはっは」
「いや〜ん!」
しょうがないので、俺は秋葉の股間に手を伸ばす。
「だから今日はコレで我慢ね」
すりすりすりすり……。
「あ、そんな、せつないですにぃさん……」
すりゅすりゅすりゅぬりゅりゅ……。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あああああああああっ」
ってことで、ビバ! クリ済ます!
<浣>
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