その日、遠野邸で火事があった。
どうやら放火魔か誰かが火を放ったのか原因はなんだか知らないが、ケムいと思っ
た時には俺の部屋にも火が来ていた。
急いで消そうとしたら、制服に火が移って、火傷した。
秋葉もどうやらスカートに火が移ったらしい。
翡翠が消火器で部屋の火を消しているとき、俺は急いで秋葉の火を消して、抱えて
外へ出た。
琥珀さんは消防車を呼ぼうと、煙の中電話に向かった。
その後は――――よく覚えていない。
ただ、俺は秋葉と一緒に入院する事になった。
オレは二週間、秋葉は全治四週間だ。
どうやら第三度火傷――とか言ってた、翡翠と琥珀さんは第二度らしい。
入院の必要はなかったみたいだ。


翡翠と琥珀さんはすごく落ち込んでる。
自分たちが屋敷の注意を怠っていたからだと、見てるこっちに罪悪感が来るぐらい
かわいそうだ。
翡翠は両手に火傷を負った。
琥珀さんは足首と腕に怪我を。
オレの体は――少しだけど腕に移っただけだ。
だが秋葉はひざの周りに火傷を負った。
歩くのすらままならないくらいひどい。
幸いにして、手術をすれば痕は残らないらしいが、それでも秋葉はとても悲しそう
だった。
でも耐えた表情は崩さなかった。
遠野家の主として、泣き顔は見せられない――そんな感じだった。
だが、各部屋に戻った時、隣の部屋だから声が聴こえてた。
今日は12月25日。
一般にはクリスマスと呼ばれる日だ。
そんな日なのに入院する羽目にあってしまったその子は、一般の女の子の幸せを手
にすることが出来ず、泣いていた。
俺が覚えてるのは―――外が真っ暗になってもまだ泣いてる女の子の声だけ。

ただ、それだけ。


「白床と白雪」
          ぜん





「――――朝……か」
カーテン越しの柔らかい日差しと、いつまでたっても慣れないピリピリとした寒さ。
それらが入院生活の一日目を迎えてくれた。
目が覚めると共に腕に痛みが走る、それとジワジワとする痛みだ。
いつまで待っても消えない――治るまではずっと。
でも、こんな痛み――両足の秋葉に比べれば……
「――――行くか。」
早速、秋葉の部屋に行く。
病院にいて、隣いると言えど、とても心配になるのは兄として仕方が無い事だ。
秋葉は歩けないので手術段階に入るまでは車椅子だ。
そこで、看護士の方に包帯やら点滴やらそれ以外。
およそ一般人でも出来るような世話は、俺にやらせてもらうことにした。
その時隣にいた秋葉も、それを望んでいたようで一緒にお願いした。
結果、俺は食事の時とかに秋葉を連れて行く、他にも物を取ってやったり、布団を
かけてやったりするのだろう。
ひょっとしたら…身体を拭くのも………
〜妄想〜
な…ここは病院だぞ志貴!(自問自答)
それも看護士の方がいると言うのに!
――――でも、捨てがたい――――
〜自主規制〜
………やめよう。頼まれても一応拒否はしておこう。
まぁ頼まれる事も無いだろう。
さぁ、チャントした態度で入らないと、またいつもの様に小言を言われるかもな。
コンコン、と手際よくノックする。
「入るよ、秋葉」
………………返事が無い。
「トイレかな…?」
しばし待ってから、もう一度ノックしてみる。
「秋葉、入っていいか?」
………………やはり返事は無い。
さて、どうしようか。
このまま戻るのも面白くないな。
「――やっぱ入っちゃおう」
ゆっっくりと、扉をスライドさせる。と、

やはり、寝ていた。
多分色々な事があったから疲れているんだろう。
安らかな寝顔を見ると、不思議と――痛みが消えたような気がした。
「〜8:00より、朝食時間です。食堂へお越し下さい〜」
と、館内アナウンス。
「折角、人が幸せに浸っている時に…」
アナウンスのお姉さんに少し苛立った。
秋葉の寝顔なんて、普通だったらそう見れない代物だ。
「………………可愛い」
兄貴の衝動に駆られてしまう。

…………よし、やるか。

そう意気込み、頬に優しくキスしてみた。
「………………………ぁ…」
起きた。と言うよりも起こしてしまった。
ちなみに顔と顔の距離は4pほど。
「に…兄さん!?今何したんです!?」
「いやーあまりにも寝顔が可愛かったから…」
「朝っぱらから何するんですか!!」
「あれ、嬉しくなかった?やっぱり…迷惑か………」
と、思いっきり拗ねてみると――
「あ、いえ……迷惑、では無い、のですけど……」
なんて、顔を赤くして答える。
………………ほんとに可愛い。
「でも、どうせするなら起きてる時に…して欲しいです………」
「…………いいよ」
そう言って、俺も顔の角度を少し捻る。
秋葉は目を閉じて、ほんの少しだけ唇を出し、そのままその唇にキスをする。
「おはよう秋葉」
「おはようございます、兄さん」
二人とも、顔が赤くなった。




ふと、時計に目を走らせる。
すでに8:00は越していた。
それにお腹も少し鳴った気もする。
「あ、秋葉。朝ごはんがもう始まってるから行こう」
「え、持って来るのでは無いのですか?」
「そうか、お前入院経験無いもんな。持って来てくれるのは例外、ベッドから離れ
られない人だけだよ」
「そうなんですか…」
「それじゃ、行こうか」
と、車椅子を掴み、ベッドの横に置く。
「さ、秋葉。捕まって」
両腕を秋葉に差し出すと、
「わ…私一人でも座れます!」
「無理するな。まだ痛むだろ?ほら、捕まれ」
「………………はい」
秋葉はゆっくりと、なおかつ遠慮しがちに手を俺の首の後ろに回してきた。
俺は秋葉の背中に手を回すと、調度抱き合う形になってしまって…そのまま秋葉の
動きが止まった。
「…………秋葉?」
「…………兄………………さん」
声はギリギリで聞き取れるくらい。
気づけば、泣いていた。
いつもの気丈な秋葉ではなくて、それはか弱く、不安定で、寂しがりやの秋葉。
「………怖かった…………熱くて……痛くて…………」
「秋葉…………」
「……死ぬって…………思ったんです……………でも………兄さんが……助けに来
てくれて……本当に………………」
「……秋葉………………」
グッと力を入れると、秋葉も返した。
「さぁ………ご飯食べに行こう、秋葉」
「…………………………はい…」
そう言って顔を上げると、――ドキッとした。
涙目のまま、笑っていた。
正直な感想を言えば、とても美しかった。
いかんいかん、魅入ってしまう。
「………………さて!よっこらせっと…」
とりあえず車椅子に座らせる。
腕は痛むが、嫌な気にはならない。
そのまま食堂へ秋葉を押していった。

二人、仲良く、不恰好にも、涙目で。




無事、朝食がすんで、自分の部屋で包帯を換える。
中々看護士さんは容赦なく俺の腕をギチギチと包帯を巻いてきた。
少し殺意を覚えたのは言うまでも無い。
その後すぐに秋葉の部屋へ行き、自分で淹れた日本茶をすする。
「さて秋葉、この後はお昼まで何も無いんだけど…この後どうする?」
そう、問題はコレだ。
入院生活をすると必ず訪れるのが暇。
コレばっかりは見舞いでも来ない限り…とか思っていると。
「そういえば兄さん、琥珀や翡翠はどうしたのかしら?」
なんて話しかけられたからチョットビックリした。
「あ、あぁ、流石に家で安静にしていたい、だってさ。こんなケガじゃ逆に迷惑を
かけてしまう―だってさ、律儀だよなぁ…」
そう言ってお茶をすする。
はぁ…和むぜオイ。
「遠野ーーーー!!来てやったぞー!!」
「ブッ!!!」
隣の部屋で聞きなれた声がした。
ビックリして飲みかけのお茶を物の見事にミスト化させてしまった。
一瞬だが虹の幻覚も見たし、秋葉も思いっきり退いた。
「!? まさか!?」
ここは病院、大声禁止、それなのに人の名前を大声で呼ぶ奴。
「――兄さん。今のは…」
「あぁ…間違いない…」
これで腕が無事だったら確実にオレはアイツに怒りを大降りアッパーに変換してお
見舞いできる自信があっただろう。
だが今はケガ人な俺。
はぁ…と、嫌々扉を開くと――いた。
「有彦っ!ココ病院だぞ!大声出すな!」
思いっきり叱ってやると、そこには紙袋を持った茶髪少年I(乾)がいた。
「おぉ遠野!そっちか!…って、ココは誰の部屋だ?」
あ、マズい…バレてしまう――――
フォロー!フォローだ!フォローしなければコイツが秋葉に殺されちまう!
「待て、有彦。俺の部屋はそっち…」
「遠野…秋葉?なぬっ!?まさか秋葉ちゃんまで入院か!?」
バレた
「……あんまり叫ぶな。恥ずかしい。あとお前は死ぬ。」
正直、コイツはうるさい。
周りの人が部屋から顔を出してきた。
「違う!問題なのはそこじゃない!なぜ秋葉ちゃんまでもが入院してるのだ!?」
――――だから叫ぶな。
恥ずかしいと言っているのに!と言うのは止めにして、マズはコイツを納得させよ
う。
「何故って…秋葉も怪我した――――」
「お前それでも俺の義兄か!?妹を守れないでどうする!?」


――あ――――――――――――


「――――そう、だな………」
ごもっともなことを率直に言われてしまった。
そうだ、有彦の言ってる事は全て間違っている訳ではない。
俺はチャント妹を…秋葉を守ってやれなかった。
それだけは事実、変えようの無い、事実。
「有彦……俺ってやっぱ、ダメ兄貴かもな…………」
「む…そこまでヘコまれるとこっちもヘコんじまう気がする」
と、親友はショボくれた顔で俺のショボくれた顔を覗きこんでくる。
でもコイツの顔を見ていると少し、ほんの少し現実に戻れたんだなぁ、と実感でき
る。
「んで………何持って来たんだ?」
やはり見舞いの品には期待しない訳が無いので言う。
するとガサゴソと紙袋の中身を確認し始めた。
「お、おぉ、適当な茶菓子だな。センベイと、羊羹、おはぎと〜団子!」

これは―――――和菓子セットでわないかっ!

「……グッドだ、有彦。いま調度お茶を飲んでたんだ」
「なるほど、流石遠野だ、俺の為―グハァッ!」
すかさずわき腹に貫手。
うむ、我ながらいい角度だしキレも良い。
「……さすが遠野、技のキレは衰えていない……」
有彦は苦しみながらもそう言ってくる、褒められたのだろうか?
「んじゃ、とりあえず部屋に入るか」
「あぁそうだな。それじゃ、失礼」
「あ!そっちは秋葉が―――」
そのまま俺の中で時が止まった。
よりによってコイツは俺の部屋ではなく、間違って、いや、わざと秋葉の部屋に入
ったのだ。
死――――
「やぁ、具合どう?秋葉ちゃん」
「あら乾先輩、えぇ、だいぶ良くなりましたわ」
「そうか、何よりだ。あ、これつまらない物だけど…」
「お気を使わなくても結構ですのに…ありがとうございます。乾先輩」


おいおい、何で話が噛みあってんだ?
なんて心の中でツッコミ。しぶしぶ部屋に入るしかなさそうだ。
正直ゆうと奴が邪魔だが。




「んで、お前学校はどうしたんだ?」
「そりゃあ休むだろう!親友の見舞いは肉親の死と同じ位大事だ!」
コイツはサラッととんでもない事を言うな…アルクェイドみたいだな、ホント。
「ちなみに俺は死んでないぞ、有彦」
「あぁ、よかったな遠野、無事で」
コイツ、軽すぎじゃないか?俺だってそろそろ手術なんですけど。
「……まぁ、確かに良かった」
「だろ?んじゃ俺は行くぜ」
「…………え?」
おかしい。
秋葉に照準を合わせている有彦がこんなに早く撤退するなんて。
何か大きな災害の予知とか、それとも誰かがこの後死ぬ予兆なのか!?
「おい有彦、もっと秋葉と話したくないのか?」 
「ふっ。何を言ってる遠野、明日も来るとは思わないのか?」
――――甘かった。
コイツは明日も明後日も、多分秋葉が退院するまでずっと来る気だろう。
俺と秋葉がもう×××し合っているとも知らずに…クッ…!

すまん…有彦……そしてシキ、俺が…秋葉を…汚しちまった(はぁと

「…………そうか。わかった、明日も会って元気にしてやってくれ」
両手を肩に乗せ、俯きながら俺は言った。
じゃないとコイツのプライドが……
「よし、それじゃ明日もこの時間に来るからな!秋葉ちゃんもお大事に!」
「はい、ありがとうございます先輩」
そう言って奴は、嵐のごとく消えていった。
さようなら親友。




「――ふぅ。疲れたなぁ…」
「兄さん……あの…お疲れ……なのですか?」
? なんだろうか、秋葉はモジモジしながら聞いてくる。
これはこれで良いんだけど。
「あぁ、流石にアンナにテンション高い奴が来るとね」
「では………私のベッドでお休みになりますか?」
――――そう言う事か。
甘えたい時間が来た訳か。
それならお兄ちゃんはなんでもノろう。
いや、ノるしか選択肢が見つからないのだ。
「…あぁ。そうするよ」
そういって俺は『扉の鍵を閉めてから』秋葉のベッドへもぐりこむ。
やっぱり――――ドキドキした。
「………秋葉…………」
「………フフッ、こんなに近くに兄さんがいる………入院中はずっと兄さんと一緒
ですものね…………あぁ…幸せです……兄さん…………」
少し笑って体をくっつけてきた。
すでに体は密着していたのに…さらに、接着面積を広くするように。
まるで、求愛行動のように。
「こらこら秋葉、まだ昼前だぞ?」
ちなみに時間は午前10時だ。
まだとても明るい。
こんな時間にスルなんてチョット常識に反している、といつもの秋葉なら言うだろ
うなぁ…でも
「構いませんわ、だって鍵を閉めたのも兄さんがしたかったから…でしょう?」
構いません、と来ましたか!
「それに…クリスマスに最愛の方と結ばれるなんて…とても幸せじゃありません事?」
まぁ確かに出来る事なら今すぐ抱き締めたいが…
「でも秋葉、お前ケガしてるんだぞ?」
「あ――――」
思い出したように秋葉が声を上げた。
そう、ケガなんかしたままHなんてしたら、揺れて擦れて痛いに決まっている。
「そんな足で、どうするんだ?してる最中にだったらすっごく痛むぞ?流石に俺も
ケガ人相手にしたくは無い。それも秋葉なら尚更カワイそうだ」
「…………………………」
顔を伏せたまま黙ってしまった、よほど残念だったのだろうか…?
「………そんなにしたいの?」
なんて、一番聞いちゃいけないような事を思い切って聞いてみたら
「なっ!…何を言い出すんですか!」
なんて、焦った様に反撃してきた。
顔も真っ赤になっている。
でも本当に…秋葉って美人だなぁ……
「…………違うの?」
「……………いえ……したい、です」
なんて…可愛い事を…言ってくるんだコイツはぁ… 
萌――はッ!
「でもなぁ、秋葉の足のケガが悪化しちゃあマズイしなぁ」
「どうしましょうか……」
考えてみればこの二人はとても危ない事に真剣に悩んでいる。
秋葉も秋葉で何故ノルんだろう?そんなにか?
はたから見ればド真剣で近親相姦の相談をしている兄妹。
――――――笑えます。
「足をどうにかすればいいんだよな?」
「えぇ、今のところ痛むのは足だけですので…」
足を…足を…足?足で?いや、違う…う〜ん…
よし!とりあえず容態を確認しよう!
「よし、秋葉。服を脱がすけど、いい?」
「なっ………はい…………」
待ってた様にテキパキと服を脱がす俺。
……ホント、いつみても綺麗だなぁ…お兄ちゃんは感激だ。
と、やはり痛々しい光景を見た。
ひざを中心にふくらはぎと太股の真ん中辺りまで包帯が巻いてある。
再度、罪悪感に襲われた。
俺は……あの時……何をしていたんだ……?
「……………………秋葉……」
「…兄さん?どうか…しましたか?」
「ごめんな………俺………情け無いよなぁ…………」
改めて自分の無力さを実感する。
妹がケガをした。
それも、自分よりも重いケガを。
それだけで俺の心はどんどん落ち込んで、自分にあきれて、悲しくなる
「………………………兄さんは、立派でしたよ?」
慰めてるのか、本気なのか、明るい声で言ってくれた。
でも、やはり後ろめたい。
結局は完全に守れなかった。

あの時――――あぁすれば――――

「兄さんは偉いです、ちゃんと私を運んでくれました」
「でも!でも…ケガさせちまった……本当に…ゴメン………」
「〜〜、もうっ!こんな格好してるのにいきなり止めないで下さい!」
あ、思いっきり忘れてた。
秋葉の状態は下着のみになっているのをすっかり。
それは話をカットしたくなるか
「…………あぁ、ゴメンゴメン。すぐにヤリましょうかお嬢様」
すぐに戦闘再開しようとすると今度は秋葉が止まった。
そして少し困った顔をしてこっちをチラチラ見る。
はて、どうしたのだろうか?
「………やる、と言うのは少し好ましくありません、どこか野蛮です」
なんて言ってきた。
なるほどね、流石お嬢様学校育ち、だけどな秋葉。
お前も今からベッドで野蛮になるんだぞ
と言いたかったが、そこはこらえた方で正解だったと思う。
「んじゃあ『セックス』――でいいのかな?」
なんて女性が聞いたら引く、もしくは恥ずかしがる言葉No.1を口に出すと、やはり
期待通りの反応で返してきた
「――――――――――――――」
もンの凄い赤面ぶり、パジャマのピンク色より赤い、赤い顔をした。
正直言って、すごくからかいたくなってきた。
ほんの少しSになろう。
「ん?『セックス』はお気に召しませんか?それじゃ…『フ○ック』とか?」
知ってる限りのH情報を口にする、オレも少し恥ずかしくなって来た所だ。
ちなみに秋葉は俯いたて聞いたまま。
かと、思っていると真っ赤な顔を上げて
「……兄さん!もう…乙女の前でそんなに……」
と、抗議して来た。
それでも俺のSハートは止まらない。
だって秋葉の照れる仕草や表情、と言うよりも照れる秋葉が可愛すぎて、仕方が無
かったからだ。
「そんなに、何?」
最後の爆撃。
これを食らったらあの秋葉でも―――――
「………兄さんのバカ」
上目遣い、涙目、モジモジ、下着姿。
人生最高潮エレクト
俺は多分ネロの犬のクルートー君のように秋葉に飛びついたんだと思う。
その辺りはあまり意識が無い、すまん。
「キャッ!…………」
秋葉は抵抗もせずただ俺の瞳を見つめていた、それも普通のときの何倍も殺傷能力
のある涙目で。
「秋葉………イマすっごく可愛かった」
「え―――――――――――――あ―――――はい――」
本当の事を話したのに秋葉の顔はさらに真っ赤になり、俺自身も顔が赤くなった。
それほど秋葉には何か――強い魅力があった。
もう、秋葉は“女”だった。
「さぁて、秋葉。それじゃ『愛し合おう』か」
「…はい、嬉しいです兄さん」





とりあえずキス。それも最初から舌をねじ込む超ディープな奴をお見舞いする。
オレの方ももう我慢できないほど興奮していた。
「む…んん………あ…あぁ………」
秋葉はコレだけでも目がトロンとしてしまうので達成感あふれて仕方が無い。
そして、キスしながらブラを外した。
すると、いつもの様に目に入ってくる秋葉の微乳、もとい美乳。
これはこれで愛しい。
いや、愛しすぎる。
「……本当にいつ見ても綺麗だね」
思ったことを率直に口にした。
秋葉の体はやはりスレンダー、と言う点で見れば最高峰だろう。
縦に走る流線型のラインはまるで水の流れの様に美しい。
「嫌ぁ…そんなに……見ないで下さい………」
やはり、まだ胸にコンプレックスがあるらしい。
ならば今回はあまり胸に執着しないでいこう。
「……そう、じゃあコッチにしようか」
そして俺は秋葉の体から一旦離れ、即座に背中をなめ上げる。
「はぁっ!――兄、さん…どこ、ぅああっ!」
うなじから腰まで、舌を這わせるだけではなく、回しながら。
グルグル、レロレロと広く攻めるように。
「―――ふぁあっ!……あっん…ぁ!……っ」
やはり、秋葉の感度は初めての時よりは格段にレヴェルアップしている。
これからさらに強い快感を与えると思うと、俺のモノもそれに応じて答えた。
だが今は自分の欲求を満たすよりも秋葉の体を開発したい。
なので今回は新境地にも手を出していこう。
腰を這う舌を体ごと前の方に移動させる。
そして次はヘソに舌をすぼめてグリグリとほじる様に舐める。
「あぅんっ!やっ、あん!」
やはり効果はある、こちら側にしてみれば嬉しい事だ。
「秋葉…………可愛い……」
そしてヘソの穴をグチャグチャにした後は、やはり胸。
肩を組むような体勢で秋葉の腕を潜り、乳房を舐め上げる。
それも乳首には舌を当てず、膨らみを舌で押し込む感じで、焦らす。
「うぅん……ふっ…あぁぁ…………くぅん…」
そして十分に焦らした後――――急激な刺激を与える。
右手で右の乳首をつまみ、左脇から回った口で乳首を甘噛みする。
「くっ、ふあぁぁぁぁぁぁっ!はっ…あぁ…」
ビクッと体が跳ね、その後グッタリと体を預けてくる。
しかし、俺のほうの欲求もコレで収まる事は無く、まだ秋葉の乳首を口内で転がす。
「うぁあん…んぁっ!はうぁ……んっ!あっあっふぁぁああ!」
唇で乳首の周りをつまみ、歯で甘く噛む。
その歯の間から少し出ている先端を舌でさっきの要領でクルクルと舐めてみる。
他にも上下や左右に動かし、舌で弾いたり、そして吸ったりしてみる。
もちろん右手の方も休む事は無い。
自分の唾液を指に絡ませてから乳首を指で摘み、捻ったり
少し爪を立ててみたり、押し込んでみたり
時には全体を包むように揉み解したり、乳房に指を埋めてみたりしてみた。
ヌルヌルしているので秋葉も気持ちよさそうだし、俺も興奮する。
それに秋葉の胸は弾力性があってずっと触っていても飽きる事は無い。
その後、上に向かってゾゾッと舌を滑らせる。
首筋に吸い付いてあとが残るようなキスをした。

あれ、なんか………………

違和感、そう違和感だ。
秋葉の体の味が違うのだ、少し…
あ―――――――そう言うことかぁ
「秋葉………そういえば俺もだけどさ………お風呂……入れなかったよね」
出来るだけ傷つかせない様に優しく呟いてみた。
いきなり臭いなんて言える訳無いし、なおかつ愛する秋葉の汗なら嫌悪感を抱かな
い自信がある、と言うか絶対に抱かない。
けれど
「――――――――――――あ」
気付くのが遅かった、見たいな顔をして秋葉はものすごい勢いでリンゴ色の顔をし
た。
言ってしまえば今まで一番赤かったって事。
「い…嫌ぁーッ!離れて…離れて下さいッ!」
俺の腕の中で本気で暴れる秋葉、だが汗ばんだ秋葉の貴重度は俺のランクの中でも
A級以上のシロモノだ。
このチャンスを逃す訳には!
ふふふ……ここで放すほどお兄ちゃんはバカじゃない。
って事でとりあえず後ろから抱いたまま脇を舐める。
「あふぁっ!………兄さん…やめ…んはっ!あぁぅ……はぁあ!」
「秋葉………秋葉の汗、おいしいよ…………」
「イヤぁ……あん!………ふぅ……んぁはぁ!……兄、さぁん……」
脇を舐めつつ、胸を優しく愛撫する。
左手は乳房を柔らかく包み、右手は突起をクリクリと弄る。
それだけでもう俺の一物は早く、早く!と急かすようにピクピクと脈打つ。
と、それを秋葉が逆手に握ってきた。
「あ…………兄さん、の……はんっ………すごく……硬い……」
ビクビクと体を震わせながら、秋葉は俺のをしごいてくる。
流石に週にニ、三回もやってると上手くなってきた。
触るコツ――いや、感じさせるコツを覚えてきている。
その証拠に時に力強く、そして角度を変えたりして俺を絶頂へ促す。
それに秋葉にしごかれていると思うと、さらに俺も感度が上がった、ので
「あっ、んぁはあぁ!あぁう…ふぅあっ!あぁぁ!」
背後から下着越しに秋葉の潤ってて柔らかくて繊細な所に指を埋める。
すでにしっとりとしていて、少しだがクリトリスも突起していた。
「ふぅん、秋葉ってホントHなんだね」
「んぁ……そんな事……………」
うっとりする様な目をして振り返ってくるその様は、俺の中の”雄“の精神をさら
に向上させ、そして活発化させる。
言ってしまえば更に性欲が上がってきた、と言う事だ。
と、その時

トントン

とした音の後に
「遠野 秋葉さーん、点滴の時間ですよー」
すごくいいタイミングで看護士さんが来てくれた。
「―――――――なにっ!?」
俺は驚きと共に看護士に二度目の殺意を覚えたのは言うまでも無い。
その前にまずこの場をどうにかしなければ!
急いで服を着て、元の状態に戻る。
そして何事もなかったかのような雰囲気、顔をして扉の鍵を開ける。
看護士の方は少し驚いた表情をして、テキパキと秋葉の点滴を換える。
今になって気付いたけど秋葉がいつも通りの秋葉だった。
すごいな、俺より早く着替えたのかな?
しぶしぶ部屋を後にすると、兄さん
と秋葉が呼び止めた。
そして一言残してまた照れたように下を向く。
「――――――――――――――後で」
その後、俺は性欲衝動と戦いながら自室で交換が終わるのを待っていた。




「秋葉ちゃん、お兄さんの事好きなの?」
「………えっ!?」
思わず声が裏返ってしまった。
この看護士の人はいきなり凄いことを聞いてきた。
私が兄さんを好いているのかどうかを。
普通の妹は素直に言えるのだろうけど、私は違う。
「―――そんな事ありません!……誰が…兄さんなんか………」
遠野家当主として世間体を守る為に、とても痛い嘘をついた。
「―――――――――フフッ」
「……何故笑うんです?」
「いや、ね。こーゆー時くらい素直になればいいのにな、と思ってね」
―――――わかってたんだ。
と言うよりもバレたの方が合ってる。
現に私の顔は多分赤くなっているだろう。
「フフフッ、やっぱり秋葉ちゃんみたいな子でも照れるんだ」
「なっ…!私だってもう立派な女ですよ!ナめないで下さい!」
流石に図星だったのでカチンときた。
看護士のクセに中々図々しい人だった。
「あらら、ゴメンナサイ。ちょっと調子に乗っちゃったわね〜」
でもあっさり謝った、まるでソレを予測してた様に。
「………全くです……誰が………兄…さんを…」
それでもなお嘘をつく。
本当に苦しい嘘、喋りながらもシーツを少し強く握る。
思えば、兄さん以外考えられない。
兄さんが遠野の屋敷を離れた時、私はひどく悲しんだ。
勉学にも身が入らなかったし、毎晩安心して眠れなかった。
そして、兄さんが帰って来た時、私は態度こそ冷静だったが自分の部屋で泣きなが
ら喜んだ。
余りにも長すぎる期間を超えて、最愛の人は戻ってきた。
それが純粋に嬉しかった。
そしてなによりあの離れで結ばれて以来―――――兄さんがいないと不安になって
しまう。
ここまで兄さんに夢中なのだ。
「――――――――兄さん――――――――――」
狂ってしまう、好きすぎて、狂ってしまう、愛されすぎて。
そして…もし、私の「血」がまた暴走してしまったら…

兄さんは私を殺してくれるだろうか?

あの時は「殺してほしい」と思った。
でも今は違う、出来る事ならば兄さんと永い時をすごしたい。
あのお節介な兄さんだもの、何とか方法を見つけて救ってくれるに違いない。
あの兄さんだもの。




…………よし、終わった。
秋葉のほうも終わっただろうか?
俺は頑張って包帯を交換しに来た看護士(女性)に中途半端にストップをかけられた
自分の化身の膨張をバレずにすんだ。
でも、今もなお鎮まる気配は一向に無い。
ならば行こう。
隣なんだから誰にも見られる事は無いだろうし、ギンギンを利用してやる。
服装を気にせずに扉を勢い良く開ける、そしてスリッパで疾走。




「秋葉ー、入っていいかー?」
「はーい、どうぞー」
なんかハイテンションだ。
部屋に入ると秋葉は椅子に座ってまったりしていたご様子。
そんなポカポカ空気も一瞬でブッ飛ぶ最高の言葉を口にする。
いや、気付いたらしていた。
「秋葉、とりあえず…する?」
「ぇ……するって………えっと……」
「俺はしたい」
――――――――――んーと。
暴言に近い物だった気がするけど、まぁいいや。
「実は……私も、もう……我慢できない、んです………」

言語理解中

……よーく見てみれば秋葉の頬がピンク色に火照っていた。
もはや臨戦態勢だね、こりゃあ。
「それじゃ続き、しようか」
そう言いながら徐々にベッドに侵入する。
秋葉は息を荒くしながら急かす様な目をしていた。
俺は少し恐怖感を覚えたが、そこは若さでカバーしようと思う。




キスをしながら秋葉をベッドに押し倒す。
病院でするなんて不謹慎だ、なんていつもの秋葉なら言うかもしれない。
上気した肌、期待の色で溢れるセルリアンブルーの瞳。
そして何より、その仕草、その一挙一動が俺を狂わせる。
が、
「秋葉………泣いてる、のか……?」
秋葉の目からは一筋の涙、それも両方の目からだ。
「…………………兄さん?」
「…、ん……何だ?」
「私が貴方をどれだけ愛しているか、分かりますか?」
泣いたまま、あくまで泣いたまま秋葉は俺をまっすぐ見つめて言った。
涙を止めようともしないまま、秋葉はそのまま語り続ける。
「…私はずっと、ずーっと待っていたんですよ?それなのに兄さんったら私だけを
見ないで、皆に目を配らせている。」
秋葉は止めない。
俺が口を開けるタイミングを与えないようにすぐに語りだす。
「以前、言いましたよね?兄さんは決して一番の人物を作らないって。それは私達
にとっては本当に苦しいんです。」
秋葉は私達…と言った。
やはり、ライバル心があるのか、秋葉は泣いたまま目を燃やす。
「どんなに綺麗な服を着たってあの人の一番にはなれないんだ。どんなに可愛い仕
草をしてもあの人には認めてもらえないんだ、と思うと。私は怖いんです。兄さん
の一番の人になりたいのに、その方法がわからない。いえ、無いモノを探すことが
出来ないんです。」
「秋葉……」
「兄さん、私は貴方を愛しています。もう一度言います兄さん、貴方をどれだけ愛
しているか、貴方は分かりますか?」
涙に濡れた頬、そして瞳。
そんな涙を拭くような仕草も見せないまま。
秋葉は真剣に俺の答えを求めている。
俺も真剣な気持ちで答えなければならない、なのに上手く口が開かない。
それだけ戸惑っているのか、秋葉を一番と認めたくないのか、もう一番は決まって
いるのか。
「…………秋葉………俺は……」
その場凌ぎの様な呟き、なんの意味も持たない反応。
俺の力ではソレが精一杯だった。
「……秋葉を………っ…………」
何がなんだかわからなくなってくる。
自分でも何を口にしているかわからなくなる始末。
そんな時に秋葉は不意に声を出す。
「……兄さん、もういいですよ。」
「―――――え?」
「だから、もういいです。分かりました。」
急に話を止める秋葉。
すでに涙は止まっていて、潤んだ目だけが残っている。
「分かったって……何が?」
「だから、兄さんが私をどれだけ愛しているか、です。」
答えはまだ出していない。
答えになるような素振りも見せていない。
ならば秋葉は―――――諦めたのか?
「秋葉、…お前は」
「兄さんは他の方のことも放っておけないんでしょう?」
喋ろうとした途端、確信を打ち抜かれた。
それこそが俺が黙っていた理由だった。
「……あぁ、そうだな。ゴメン。」
こんなにも愛してくれてるのに一番にしてやれない。
そんな自分の不甲斐無さからも謝罪せずにはいられなかった。
「謝る事は無いですよ?私にも良い目標が出来ました。」
「―――目標?どんな?」
「はい、兄さんの“一番の人になる”。です。」
午後の柔らかな薄暗い陽射し、温かな空気の中で秋葉は、今までに無い位の幸せそ
うな笑顔で答えてくれた。
そして分かった。
俺は秋葉を愛しているが、そんなのは秋葉の愛に比べてみれば微小だった。
秋葉の愛は、大きい。
これから一緒に生きていくに連れて、もっともっと大きくなっていくのだろう。
「兄さん?覚悟してくださいね?」
「え、なんで?」
「これからは休む事無く、兄さんに私の気持ちをぶつけるからです。」
「…………秋葉」
「はい、何ですか?兄さん」
名前を口にしただけなのに、あえて話をさせるような発言をする秋葉
俺に何かを言って欲しいんだろう。
俺は、優柔不断だが、わかってる事はある。
「………愛してる、と言えば嘘になるかも知れない。」
「……はい。」
「でもな秋葉、俺は秋葉が大好きだ。これだけは嘘じゃない、胸をはって言い切れ
る。」
「………………はいっ。」

二人は笑顔で、確認しなきゃいけないと言う訳でもない事を確認しあう。
その様子は、他人から見ても決して可笑しい事ではなく、二人にしてみれば、この
上なく幸せな空間だけが広がっていたという事だった。
そんな二人を、天までもが祝福した。
「兄さん、見て下さい。」
「あ……雪だ…珍しいな……」
「はい、この辺りではあまり降りませんからね…あ、一度だけありましたね。」
「あー、あぁ。レンか、あの時は大変だったなぁ…」
大変なんてものじゃなかった、が。
今になってはそのくらいにしか感じられなかった。
そんな余韻に浸っていると、秋葉が険しい声で尋ねてきた。
「……そういえば兄さん、レンもですか?」
「ん…レンもって……何が?」
も、って所が引っかかる。
「だから…レンの事も……好きなんですか?」
「えっ、あぁー」
レン…かぁ……猫だけどなぁ…
「……そうかも」
そう答えながら赤面していくのがわかった。
「……………ロリコン」
「ぶっ!…なっ…秋葉っ!お前、いま何て…!?」
思いがけない致死発言。
おいおいソレはないだろ遠野?とか有彦がいいそうな症状だ。
「なんでもないですよ?秋葉は何も言ってません。」
「秋葉…しらばっくれる気か…?」
この期に及んで…兄は怒りますよ?
いや、怒れる立場じゃないですけれど…
「フフッ、兄さんは本当に可笑しいですね。」
「秋葉こそ、可笑しい兄を好きになったんだ、お互い様だよ。」
俺は一度下を見て顔を上げ、秋葉を見つめなおした。
そこで俺が見たものは、秋葉のとてもとても綺麗な笑顔だ。
無邪気な少年のはしゃぐ顔、と言えばわかりやすいだろうか。
すごく楽しそうで、すごく幸せそうな顔だった。
そんな顔されたら俺は、抱きしめずにはいられなかった。
あ、と小さく秋葉が声を漏らす。
「兄さん…暖かいです……兄さん…」
「あぁ、秋葉も暖かいよ…すごく…」

今日はクリスマス。
街の人たちが色々な大きさの幸せを見つける日。
そして、ここにも一つの幸せ。
お互いを抱きしめ合い、幸せを共有する者がいた。
その男は思った。
秋葉とずっと幸せでいられますように。
そして、世界中に幸せが訪れますように。






〜あとがき〜
みなさんメリークリスマス!!
いやぁ、クリスマスなんで急速で練りました(笑)
看護イベントはやはり大事かな、と(爆)
ワタクシ、PCの前に鎮座しながらSS書きつつ、ギター弾いてます。
かなり…鬱になりますね…orz
では!
みなさんクリスマスを楽しんでください!