月姫舞踊 明けましたおめでとう 

                         春日 ている








 今、俺はアルクェイドの部屋にいる。正月早々呼び出された為だ。
 勿論秋葉には反対されたが、他ならぬアルクェイドの頼み。俺には断る理由
などなかった。
 ……のだが。

「えへへ、どーぉ? 『ハレギ』って言うんでしょ、これ」

 くるりん。

「うむ、確かにそうだが……着方間違ってないか? それ」

 美しい模様の着物。また金にものを言わせて購入したのだろう。
 だが……俺も着物には詳しくないが、これは明らかに間違っていると思う。
 帯が越中褌状態になっていると言うのは、一体どう言うことか。

「なぁ、お前何を資料にして着付けしたんだ?」

「んー? 最近流行りのインターネットで」

 部屋の片隅にあるパソコンを指差しながら、笑顔で言うアルク。
 自分では完璧な着付けだと思っているのだろう、自信満々だ。

「あのなぁ……」

 俺は溜め息を吐く。
 が、それに気付いていないのか……アルクェイドは鼻歌混じりに、俺の周り
をくるくると回る。

「ねーねー、『ハツモウデ』に行こうよ♪ 志貴と一緒に行こうと思って、私
ずっと我慢してたんだー♪」

「行ってやってもいいが……でもなぁ、その格好じゃなぁ」

 帯が褌だしな。

「え?」

「ええい、俺が結んでやる! お前はそこでじっと立っておれい!」

「う、うん」

 アルクェイドの返事もそこそこに、俺は褌結びをがしがしと解く。
 ……完璧な褌結びだ。こいついつも下着は褌なんじゃないのか?

「アルク、この結び方どんなサイトで知った?」

「え? 何か長い布を巻く方法を探してたら……」

 ……間違えて、褌サイトに直行してしまったと言うわけか。
 頭がいいんだか悪いんだか、全く世間知らずなお姫様だぜ。

 俺はするする、と帯を解いて行く。
 着物が少しはだけたが、なるべくアルクェイドの身体を見ないようにして。

「えへへー、志貴ってば照れてるぅ」

「何を言う、しっかり着物押さえてろ」

 襦袢はしっかり着ているらしい。
 んなわけで、俺は帯を最初から巻き直そうとしたが。

「『キモノ』の下には下着は着けないんでしょ? 一杯勉強したんだから」

 いや、それは人の好みでそれぞれだとは思うが……。

「……お前、まさか着けてないのか?」

「へ? 勿論よ?」

 …………。
 ナイス、アルクェイド。

「なぁ、日本の伝統行事を教えてやろうか?」

「え? うんうん、何かな?」

 興味深そうに、そして無防備に俺に顔を寄せて来るアルクェイド。

「新年最初にする行動は、『初何とか』と言われてな」

「うんうん」

「中でもセックスは『姫初め』と言われていて大人気なんじゃ――――!」

 ずびっ!

 勢いよく巻きかけの着物帯を引っ張ると、アルクェイドはくるくる回りつつ
ベッドへと倒れ込む。
 俺はそこへすっぴょーんと飛び込むと、襦袢を結んでいる紐を解いて襦袢を
はだけさせて。

「アルク、日本の文化と心を教えてやるぜ!」

「ああん、折角着たのにぃ……志貴の馬鹿ぁ」

 とか言いながら、アルクも結構嬉しそう。
 下着を脱がす手間は無用、後は本番に突入するだけ。
 何て素晴らしいんだろうか。

「んじゃアルク、とりあえず初キスから」

「うん……♪」

 ちゅ、と小さな音がアルクェイドの部屋に響く。
 ここは俺達だけの空間。
 ここには俺達の邪魔をする奴はいない。
 今日はアルクェイドの足腰が立たなくなるまで愛してやるぜ。

 俺はぎゅっとアルクェイドを抱きしめ、抱きしめ返されながら。
 優しく、その白くて吸い込まれそうな首筋に舌を這わせ始めるのだった。







<続きません>