〜It`s my Perfect Life.

 


 「志貴さん。」

 「あ、琥珀さん。どうしたの?」

 そう言って、湯のみを渡す。そして、隣り合って椅子に座る。

 こういうのは年齢的にはふさわしくないのかもしれないけれど、二人でゆったりと過ごせるのは

 すごく嬉しい。

 「しかし、意外だよね。俺が屋敷に帰った日なんて、

  琥珀さんとこんなになるなんて、全然考えもしなかったから。」

 微笑みながら志貴さんが言う。

 心の底が温かくなる笑顔。

 「そんな、私もそんなこと、思いませんでしたよ。だって、現に今二人でここにいることも

  信じられないくらいですから。」

 私も笑顔で言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   本当の笑顔を教えてくれた人に―――

 

 

 

 

    本当の心からの笑顔を見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  二人でほうっとすると心地よい。

 何よりも空気が、柔らかく感じる。

 もう年も明けたというのに。

 いつもならば痛いくらいに寒いのに、隣に大切な人がいるだけで、こんな

 気持ちになるなんて・・・。 

 不思議だと思う。人形だと言い聞かせて、私には幸せなんてないと思っていた。

  でも、それでも、私はどこかで願っていたのかもしれない。

 あの、約束をした男の子の側にいることを・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇ、志貴さん。」

 私は枯葉を見ながら言う。

 「どうしたの?」

 そしてさりげなく、目を合わせて、続きを促す。

 「えぇ、こんなに幸せなのが怖いんです。急に志貴さんがいなくなってしまいそうで・・・。」

 最近、どうしてもそう感じる。

 

 「そんなことないって言い切れないけれど、それでも、俺は琥珀さんといたいって思ったんだよ。」

 ・・・思考が止まる。

 二人ともこういう言葉に弱い。

 元々、私はこういうことを言われるのに慣れていないけれど、志貴さんも、こういうことが

 苦手なようだ。

 二人並んで座っていたのに、二人とも下を向いてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ―――でも、嬉しいです・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぽつりと言う。

 志貴さんは耳まで真っ赤になってしまって、どうしていいのかわからなくなって

 しまう。

 私も、自分が言ったことに、顔が徐々に赤くなってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、お茶、冷めますよ。」

 場を取り繕うように言った。

 「あ・・・そうだね。」

 志貴さんも、はた、という気付いたように、お茶を喉に流し込む。

 二人で、隣り合ってお茶を飲むというのを思うと可笑しいな、と思う。

 「なんだか、テレビで見る老夫婦のようですね。」

 ふふふ、と笑う。

 それにつられて志貴さんも

 「そうだね。」

 と言ってまた飲む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  風が吹いた。

 冷たい風が二人の前を通る。

 「冷えてきたね。」

 私はその声に同意する。

 「えぇ・・・。」

 今夜は、底冷えしそうな風の冷たさ。

 そうやって、志貴さんは、私の手を握る。

 「冷たくなってる。琥珀さんは冷え性だったっけ?」

 横目で言う。

 私はその手を握り返して、

 「いえ、今日は風が冷たいですから。」

 私は笑顔で志貴さんに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ―――ねぇ?志貴さん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  声に出さない呼びかけをしてみる。心の中で。

 志貴さんは前を向いたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ―――志貴さんは、今、幸せですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  その顔を見つめてみる。

 少しクセのある前髪と蒼い瞳。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん?」

 不意に横を向かれた。

 偶然にも、目が合って視線をずらすことが出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「うん・・。琥珀さん、俺は幸せだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はっきりと言った。

 「え?志貴さんどうしたんですか?いきなり。」

 私は言葉に出してないので、驚く。

 「ど・・・・どうして急に?」

 笑いながら志貴さんは私に言う。

 「いや、そう言ってるように聞こえたんだ。違った?」

 顔が真っ赤になってくる。

 「え、えっと、違った?」

 志貴さんは急にあたふたし始める。

 「い・・・いえ。そんなことないです。」

 そう答えるのがやっと・・・。

 

 でも心の中では

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ―――幸せです。志貴さんを愛してますから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    そう言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   見上げた空はまだまだ青が深く、まだ冬が続くのだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

      それでも、私の心の中は、まるで優しい木漏れ日に照らされたかのような

 

 

 

 

 

 

 

 

         温かさを持っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        〜〜〜FIN〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

 

 こんばんは。

 安直にハッピーなお話です。

 友人との会話で「琥珀さんはハッピーにしたいよね。何の不安もなく。」

 と言いながら書いてみたお話。

 はた、と気付けば琥珀さんの寄贈は初だったりします。

 ゆったり、まったり、ですね。

 

 

 

 

                      TAMAKI