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朝起きたらはえていた・・・・(まる)


あさがみゆめみし
                              えんどるふぃん


混乱する頭で必死に考える。あたしは月姫蒼香。浅上女学院の一年生。
我が親友にして元ルームメイトの遠野秋葉なんかは「下手な男より男らしい」などと
失礼なことをのたまってくれるが、少なくとも昨日までは戸籍上も肉体上も
立派に"女の子"だったはずだ。

今朝は珍しく、ふとしたことで目が覚めた。窓の外に気配を感じたのだが、猫でも居たのだろうか。
時間は朝の五時。この規律正しい浅上女学院の寮でも、こう早くては何もすることがない。
まして今日は休日。ライブがあるわけでもなし、もう少し眠ろうとパジャマ代わりの乱れたスエットを
直そうと思ったら、これに気が付いてしまった。
そう、股間からはえてパジャマのスエットを持ち上げた男性の"モノ"に。

我ながら、こんなものを見てよく大声で叫ばなかったと思う。最後の理性が働いたのかもしれない。
こんなときでもオカシクなれない自分が、こういうときだけはちょっと恨めしい。

どうしてこんなことになったのか。自分の行動を思い出して、必死に原因を考えてみる。
でも、こんなことが起こる原因なんて当然ながら思い浮かばない。
遠野が昔言っていた「呪い」でも、こんなことは起こらないだろう。
混乱した頭でそんなことをずっと考えていて、唖然としていたのかもしれない。

だから、ルームメイトでもう一人の親友、三澤羽居がいつの間にか起きだしていたことにも気が付いていなかった。
そう、羽居がいつの間にかあたしのそばにやってきていて、

「あ〜。蒼ちゃんにおちんちんはえちゃった〜。」

なんて耳元でささやくまで。


慌てて羽居のほうに振り返ると、羽居はいつの間にかあたしのベットのそばまで来ていた。
「は、は、羽居。こっ、これは」
必死で何か言おうとするのだが、動揺してしまってうまく声が出ない。

だが、羽居はそんなあたしの動揺など、まるで知らないかのように近寄って、
「蒼ちゃん。こんなに固くしちゃっていけない子だねー」
なんて言いながら、スエットの上から固くなった肉の棒に触れてきた。

びくん。そんな擬音が相応しい勢いであたしの体が勝手に反応する。
「やっ。やめろ。羽居。やめてくれっ」
下から背骨をくすぐられるような淡い快感に流されないように、必死に羽居を離そうとする。

「へへー。駄目〜。蒼ちゃん、覚悟してね。大丈夫〜。痛くしないからー。」
そんなことを言いながら、あたしの体を覆うようにすりよって、肉の棒をスエットの上から優しく撫でてくる。
「かんねんしな〜。うぶなねんねじゃあるまいし〜」
なんて、どこで覚えたのかそんな言葉まで口走っている。

そりゃあ、あたしはロッカーだし、色々と仲間からそんな話を聞くこともあるけど、
あたし自身は音楽以外のことに興味はない健全系だ。そんな経験は全然ない。
羽居の言葉はあたしにとって侮辱ではあるのだが、この状況では反論する余裕はない。

それに、このままじゃ流されたら何をされるかわからない。
あたしは、話を変えようと、羽居に問いかける。

「待て、羽居。そもそも、あたしに何でこんなものが生えてるのか、おかしいと思わないか?」
「そんなことないよ。だって私、蒼ちゃんが男の子だったらいいなあ。って、前から思ってたもん。」
はい??こんな状況なのに一瞬頭が真っ白になってしまった。何を言ってるんだ?コヤツは。

「えー。だって、蒼ちゃんがイケナイんだよ。」
あたしを真剣な目で見つめる。
「私、蒼ちゃんのこと愛してるけど、蒼ちゃんが女の子だから、女の子同士は変だってあきらめてたのに。
 蒼ちゃんとはいいお友達だって、ずっと言い聞かせてきたのに」
そういって、顔を伏せた。

普段から何を考えてるヤツかわからないと思っていたが、こんなトンデモなことを考えていたのか。
そう思いながら、最後の告白を終えた羽居を見ると、体が細かく震えている。
うっ、これは羽居の"泣いちゃうぞ"サインだ。
あたしは一人っ子だったせいか、こういう羽居の保護欲をくすぐられる態度に妙に弱い。

「羽居・・・。」
私は出来るだけ優しく声をかける。頭に手を乗せると、羽居はその手を取って、もう片方の手も握ってくる。
あたしの手を強く握り締めると、すばやく抱きしめるようにあたしの背中に手を回して"かちゃん"と言う音。
って、かちゃん????
見ると、私の手が金属製の冷たい手錠で後ろ手に拘束されてしまっていた。

「うわっ。なんだこりゃ。」
「何って、新七つ道具の手錠だよ。この前のお休みで買ってきたのだ。」
そんな風に、あっさりという羽居。見ると顔には涙の跡などかけらもない。
『嘘泣きっ』。羽居のヤツ、いつそんな騙し技を覚えた。
そんな動揺で隙を見せたのが悪かった。あっさりとベットに押し倒されて、羽居が体の上に乗ってきた。
所詮、軽量級のあたしでは、羽居のマウントを跳ね除ける術はない。やばい、完全につかまった。

私を文字通り押し倒して、薄く笑う羽居。こんな羽居の顔は見たことがなかった。
「蒼ちゃんが男の子になって嬉しかったんだよ。男の子と女の子なら、愛し合えるんだから。」
そういうと、また私の"モノ"に触れてくる。羽居の手つきは本当に絶妙で、気を張っていないと
すぐに快楽に流されてしまいそうだ。
正直、声が出るのは我慢しているけど、息はどんどん荒くなっているのが自分でもわかるほど。

「ふふふっ。じゃあ、ご対面〜」
そういうと羽居は、あたしの下半身に回り、スエットのズボンとショーツを一気に引きずり落とす。
そこから現れたのは、もうはちきれそうなくらいにびんびんに固くなった"あたしのモノ"。
正直、男性器がここまでグロテスクとは思わなかった。それを、羽居は優しく握ってくる。

「あんっ」
「蒼ちゃんたら、可愛い声出しちゃって。女の子みたい。って、ごめん。蒼ちゃん女の子だもんね」
"こんなのくっ付いちゃってるけど"なんていって、思わず声を上げてしまったあたしを言葉で責めながら
肉の棒をこする。こんなことされたら、声が止められない。

『せめて遠野が居てくれれば』と、切に思う。少なくとも、羽居のヤツに押し倒されて貞操?を奪われそうになる
こんな事態は回避できたはずなのに。

「ぶー。蒼ちゃんったら、秋葉ちゃんのこと考えてるでしょー。」
"私と愛し合ってる最中なのに"なんて、すさまじい一言を付け加えて羽居が膨れている。
果てしなく誤解があるような気がするが、今の羽居にはそんな説明は通じないだろう。

「じゃあ、秋葉ちゃんには絶対に出来ないテクニックを見せてあげる〜。」
そういうと、ワンピースのパジャマを脱ぎすてた。首から脱ぎ捨てるときに、羽居の大きな胸が"ぷるん"と揺れる。
後に残るのは、ショーツ一枚だけになった羽居。

少しぽっちゃりした感もあるが、羽居のスタイルは本当にすばらしい。
特に、寮の共同浴場で"羽居が羨ましいと思える唯一の点"とあたしと遠野に言わしめた、
大きさと形の美しさが共存する胸は、女性の目から見てもドキドキするほど綺麗だ。

「覚悟してね。」
そういうと、あたしの足元に移動した羽居は、あたしのそそり立つ凶暴な性器を豊満な胸で挟み
こすりたててきた。しかも、胸に収まりきれない先端に、ちゅっと音を立ててキスをしてくる。

「あんっ。」
たまらず、女の子そのものの声を出してしまうあたし。羽居の胸は温かく柔らかい。挟まれているだけで
性器にうっとりするほどの心地よさを感じてしまう。しかも、羽居のキスであふれた唾液と性器から出る
先走りでぬめったヌルヌルという感触で、快感は更に増幅される。

股間から聞こえるぬちゅぬちゅと言う音、そして何よりあの肉棒からしびれるほどの快楽が脳髄に
伝えられてくる。女とは違う男の感触。そして、羽居の胸で挟まれ、先の敏感な部分を舐められ
吸われる圧倒的な快美感。どこで覚えたのか、羽居の口技は絶妙で、舌で先っぽの括れを舐めたかと思えば、
口に含むときゅっと強く吸い上げながら、先割れの部分に舌を差し込んでくる。
その羽居の愛撫にあわせて、背骨を電流のように快感が走り、私の背中がびくびく跳ねて快感を
体で表現してしまう。

体は勝手に快楽を求めて突っ走る。背中に回された腕にはめられた手錠がガチャガチャと音を立てる。
いまや、自分にも制御できない快感による痙攣で、手錠をはめられた手首はあざになり始めているのだが、
そこから来る痛みですら、脳が勝手に快楽に変換してしまっているくらい。

「変。ああっ。駄目っ。」
何か、背骨から男根へ得体の知れない感覚がせり上がって、爆発しそうなのを必死にこらえる。
これがはじけたら何かが終わると、本能が訴えている。
「やめて。やめて。やめて」
爆発しそうな"何か"への期待と恐れ。もう自分を取り繕っている暇すらない。
うわごとのように羽居に呼びかけても、羽居は行為に没頭してしまって、私の言葉が耳に入っていないようだ。

あたしの我慢ももう限界。圧倒的な快楽の前に、ついに意識が折れた。爆発を止められない絶望から
意味の無い叫びと共に、最後のリミッターが外れた。
「もう、駄目っ。ああっ。いやいやいやいやーーーーーー。」
そう大きく叫ぶと、羽居の胸に包まれた男根がびくびくと震えて、白濁の粘液を発射した。
それが、羽居の顔や胸に降り注いで汚していく様に、綺麗なものを汚す背徳のような喜びを感じながら。

「蒼ちゃんってば、いっぱい出しちゃったね」
白い粘液、いや精液に汚された羽居は、それが愛しいものであるかのようにうっとりとした口調でそんなことをいう。
顔に付いた精液を集めてぺろりと舐める羽居の舌に、妙に淫靡な物を感じてしまう。

「変な味だけど、すっごく濃いね。これが愛する蒼ちゃんの味だと思うと美味しい。」
そういって、今度は胸に付いた精液まで指ですくって口に運ぶ。一滴残らず無駄にしたくない、とでもいうかのように。

「あー。おちんちん、まだこんなに元気〜。困った暴れん坊だね〜。」
全ての精液を飲み終わった羽居が、"それ"の状態を確かめる。
正直、出してしまったことで体力がごっそり削られているのだが、この男根だけは新たな快楽を求めて
どくんどくんと脈打っている。

射精の影響で息も絶え絶えになって動けないあたしを、羽居は"お姫様抱っこ"の形で抱きかかえると、
椅子の上に座らせてくれた。椅子に座れるように、一瞬だけ手錠の拘束を外したのだが、
そこから反撃できる気力はもうなかった。
気持ちは泥のように重いのに、この体だけが更なる快楽を求めて熱く燃えているようだ。

「蒼ちゃんのおちんちん可愛がってたら、私もこんなにぐっちょりだよ。」
唯一まとっていたショーツを脱ぎ捨てると、あたしの膝の上に座って抱きついてくる。
羽居の女性器に触れた私の太ももに、熱いしたたりをはっきりと感じ、押し当てられた胸の
柔らかさに、また心臓が高鳴る。

その間も羽居は少しも休んでくれない。今度は、スウェットの上着のジッパーを開けて
その下に着ていたTシャツをめくりあげる。そうすると、私の小ぶりな胸が出てしまう。
あたしとしては形が綺麗だと自負しているが、羽居と比べるとどうしても見劣りするので
今は恥ずかしくて仕方がない。

その胸の先の乳首を、羽居は「ちゅっ。」っと、わざと音を立ててしゃぶっている。
先ほどからの愛撫でいやと言うほどとがっていた私の乳首は、据われるたびに電流のような
快楽を与えてきて、もう何かを考えるのが難しくなっている。

「ふふ〜。蒼ちゃんのおちんちん。入れてあげるね〜。」
そういって、あたしと抱き合うように、"男性器"にまたがってくる羽居。
これがラストチャンス。最後の気力で羽居に話しかける。

「ちょっと待て。あの、その、お前。初めて、、、じゃないのか?」
「うん。私、ほんとに好きな人としかしないよ。だから、これが初めて」
ほんとに無邪気としか言いようのない口調で、あっさりとそう言う。

「ほ、ほら。お前、痛いの駄目だったろ??初めては痛いって言うぞ。だから、」
思いとどまれ。と言おうとした。

でも
「うん。だから自分でマク破っちゃった。やっぱり初めては気持ち良い方が良いもん。」
なんて、更にトンデモナイ返事で返してきやがった。
ダレカ、コノテンネンアルファーハヲトメテクレ。

「いただきまーす。」
その言葉を合図に、羽居がゆっくりと腰を下ろしてきた。
「あっ、んっ」
先端が、羽居の入り口に触れただけで、熱いぬめりとした感触が快楽として腰骨を駆け上がる。

「あっ。ふうんっ。いや。」
「はあん。んっ。くっ」
あたしの"モノ"が、羽居の中に少しずつ埋まっていく。羽居の中が"アタシ"で埋められ、
アタシが羽居の中を押し広げていく感触に、二人の喘ぎが少しずつ重なってしまう。

「じゃあ蒼ちゃん、う、動くね。」
顔を真っ赤に火照らせて、欲情に潤む瞳で私を見つめると。羽居がゆっくりと腰を動かす。
羽居の熱い粘膜に、肉棒全体が締め付けられこすられて、そこからあふれ出す快感が
背骨を通って脳で爆発する。

体をゆすって、少しでも快楽を散らそうとしているのに、それが絶え間ない快楽に流されている
自分を象徴しているみたいに、いやらしい動きに変換されてしまう。
手錠をはめられた手首は、正直血がにじんでいてもおかしくないくらいなのにちっとも痛さを感じない。
むしろ、拘束されていることが、あたしの快感を更に高めているような錯覚にすら陥ってします。

「あ、いい。そこ、いい」
「駄目。そんなとこ、駄目ぇっ」
「耳、もっと噛んで」
「ああん。はあんっ。いいっ。あああんんっっ」
そして、耐え切れない快感に流されている自分を少しでもごまかすかのように、あたしも知らずに腰を動かして
羽居の中を突き、捏ね、かき回す。二人の腰の動きが快楽の高まりとともにシンクロする。

「ねえ。オッパイ吸って。」
抱きついたまま、その豊かな胸をあたしの目の前に差し出す。
もう快感でわけがわからなくなって差し出された乳首を反射的に吸い上げる。

「赤ちゃんみたい。でも、可愛い。もっと気持ちよくしてあげるね。」
そういうと、羽居は私に密着したままで腰使いを激しく、いや体全体を大きく動かした。
肉棒の先端から根元まで、存分に羽居の中でこすりたてようとする動き。
そして、結合部から聞こえるぐちゅぐちゅと聞こえるぬめった水音。
それらが渾然一体となって、私に今まで以上の快楽を与えてくれる。

羽居に包まれた私の"それ"の根元から、再び熱い"モノ"が爆発しそうなのが自分でもわかる。
もう我慢なんて出来ない。そう思うと、最後の一線が切れた。
「は、羽居。もう駄目。出ちゃうよ。」
「うん。蒼ちゃん。私の中でこのままイって。熱いの、私に頂戴。」
もう駄目。。。頭が真っ白に・・・・。

「あは〜。蒼ちゃん。出しちゃえ〜。」
「出ちゃう。ああっ。いくっ。」
その最後の言葉を引き金に、私の中から熱いものが飛び出して羽居の中に叩きつけられていく。
お互い、快感でドロドロに溶けた思考の中、最後にむさぼるような口付けを交わして、私の意識が溶けていく・・・。


「・・・ちゃん。蒼ちゃん。蒼ちゃんっ」
白い光の中、ダレカがアタシを読んでいる。この声は・・・。
「蒼ちゃん。大丈夫?ねえ、蒼ちゃんっ。起きてっ。」
必死になってあたしの体をゆすっている、今にも泣きそうな女の子。何だ、羽居のヤツか。
何で朝から騒いでるんだ?コイツは。寝起きすぐじゃ、頭が回転してくれない。
でも、こんな真剣な顔した羽居を放っておくのも寝覚めが悪そうだし・・・・・。

って、羽居っっっ。

先ほどまでの羽居とのことを思い出して、思いっきり跳ね起きた。

「はっ。羽居っ」
「良かったあ。蒼ちゃん。起きてくれたんだ。」
心底ほっとしたように、羽居が言ってくる。
「このまま目が覚めなかったらどうしようかと思って心配したんだよ。蒼ちゃんってば
 ずっとうなされてたんだから。」

起きたばかりのあたしにいきなり言い募ってくる羽居。
何か話が合わない。
あたしが気絶していたのは、その、さっき羽居に気絶するほど"凄いこと"をされたからのはずなんだけど・・・。

でもおかしい、今の羽居はさっきまでの羽居と違うように思える。今居るのは、いつも私のそばで
素直に泣き笑う、感情にあふれた普段の羽居だ。今は泣きそうな顔をしているけど、先ほどのような
仮面のように薄っぺらな笑みを浮かべた表情はかけらほども見えはしない。

「んー。蒼ちゃん。やっぱり変。お熱は、大丈夫みたいだけど」
思考に流されて、羽居の接近に気が付いていなかった。
羽居は、あたしの額に自分の額をくっ付けて熱を測っている。女の子同士だと比較的当たり前にやるけど
さっきあんなことをしていたからか、羽居のピンクの唇が気になって仕方ない。

「蒼ちゃん、何か悪いユメでも見ちゃったの?何か凄くうなされてたよ。」
悪いユメ。そう言われて、さっきまで付いていた"モノ"の事を思い出す。
ちゃんと履いたままのスエットのズボンの上から股間を叩いてみる。
無い。女の子に戻れた。そういえば、確かめるために叩いた腕を上げてみると、手錠をはめられていたせいで
傷ついていたはずの手首にも痣や傷など一つも無い。

じゃあ、あれは本当に夢???
夢は心の鏡だという。
悪夢淫夢も夢のうちとは言うけれど、あたしはあんな夢を見てしまうほどの何かを精神に抱えていたとでも言うんだろうか。

「うなされてたって、いつから?」
「んー。10分くらいかなあ。すっごい苦しそうな声で"羽居、羽居"って言ってるから、
 私の事を呼んでくれてるのかと思って・・・。夢の中でも、蒼ちゃんに心配かけちゃったかなって・・・。」
また泣き出しそうな顔になる羽居。あたしは、少しでも羽居に心配をかけないように
頭をそっと撫でてあげる。

どうやら、"あの夢"を見ながら寝言まで言ってしまっていたらしい。
経験の無い羽居には、あれは苦しんでいる声に聞こえてくれていたようだ。
羽居を相手に、あんな夢を見ていたことだけは絶対に知られたくない。
だから、あたしはなるべく内容をごまかして話をすることにした。

「んっ。確かにちょっと夢見が悪かった。正直、あんまし思い出したくないかも」
"羽居も思いっきりボケてくれたけど、別に迷惑はかけてない"、とだけ付け加えておく。
「体の方は、特にだるいとか熱いとか無いし、大丈夫。これでも自己管理は羽居よりしっかりしてる。」
そういうと、ようやく落ち着いて安心してくれる。
「うん、良かった。蒼ちゃん。」
そういうと、羽居は満面の笑顔で笑ってくれる。本当に嬉しそうに。
羽居のヤツに言ってやるつもりはないけど、羽居の笑顔が本当に可愛いというのは、あたしと遠野の
共通認識だ。羽居の柔らかさが与えてくれる安らぎには、あたしも遠野もかなわない。

「ごめん。もう大丈夫だから。もう少し寝かせてくれない?起きたばっかりなのに疲れちゃって。」
つい口調が女の子に戻る。でも、本当にマラソン大会で20kmほど走らされたときのような
なんともいえない疲労感が残っている。悪い夢とは、体力も使うものらしい。
「うん。良いよ。じゃあ、蒼ちゃんが悪い夢をみないように、私も一緒にお眠りするね。」
そう言って、勝手に羽居のヤツはあたしの布団にもぐりこんでくる。

夢の内容を思い出して、頭に血が上りそうだった。でも、それも一瞬。いつもの能天気で無邪気な羽居の姿に
あたしは、アレが"夢"なんだと、初めて実感することが出来た。

「じゃあ蒼ちゃん、お休み〜。」
そういった直後に、あたしに抱きついたままスヤスヤと寝息を立てる羽居。
こいつの柔らかい体の感触は、淫らさよりもほっとできる暖かさに溢れている。
その優しい心地に包まれるようにして、アタシも再び眠りに付く。
今度は、遠野と羽居と、3人でのんびりする夢を願いながら・・・・・。

アタシは再び眠りの深みに落ちていく。
眠りに落ちる寸前に、子猫の鳴き声が聞こえた気がした。

(END)