[an error occurred while processing this directive]


遠野家の乱

                             春日 晶

『うきょ――――!?』

 優しい翡翠の声で目を覚ましかけていた俺は、屋敷中に響き渡った謎の悲鳴
ではっきり覚醒してしまった。
 いつものようにもうちょっと翡翠の甘いささやきを楽しもうと思っていた俺
は、不機嫌が表に出ぬよう努めつつ翡翠に目覚めのキスをしてベッドを降りた。

「ところで翡翠、俺の知らない間に変な動物でも飼い始めたのか?」

「私も存じませんが、どうやら秋葉様のお声のように聞こえました」

 普段から女らしくない秋葉の大声と言えば俺を叱り付ける声しか聞いたこと
がなかったが、やはり悲鳴も微妙なライン上にあるものであったか。

「とりあえず行ってみるか……」

 悲鳴と呼ぶのも何か違うような気がしたが、秋葉があのような叫び声を出す
と言ったら相当な事態が発生したのだろう。
 俺はゆっくり服を着替え、ゆっくりトイレ洗顔を済ませてからゆっくり秋葉
のいるであろうリビングへ足を運んだ。

「いよう」

「あっ、あああ兄さん! おはようございます!」

 慌てながらもしっかり挨拶をする辺りが秋葉らしいが、制服の上だけで下は
ぱんつと靴下しか履いていないところは微妙に異常事態っぽかった。

「おう、おはよう。朝からどっきり☆ハプニングだが、その格好は一体何事か
説明してもらえるだろうか」

「……はっ!」

 はたと気付いて両手でぱんつを隠すも、その仕草はよりえっちに思える。

「見ましたか!? 見たんですね!?」

「お前がそんな格好でいるのが悪いんじゃないか。怒るんなら見せられ料取る
けどいいか?」

「お、怒りません怒るもんですか! それより助けてください!」

 俺の腕にすがるように抱き付いて来た秋葉は、俺にお尻をさわさわなでられ
ながらそう言えば何故か倒れているソファーの陰を指差した。

「こは、琥珀が! 琥珀が変なんです!」

「むしろ変なのは秋葉じゃないかと思うけど、言われてみれば琥珀さんはどこ
に行ったんだろう?」

「その言葉はちょっと心外ではありますが、琥珀ならソファーの下で気絶して
います」

「そりゃ確かに大変だ」

 俺は秋葉の腕を解き、急いでソファーを持ち上げて琥珀さんを引きずり出す。
 秋葉の言った通りに琥珀さんの意識は失われていて、人工呼吸しようと顔を
近付けたら秋葉にぺしんと叩かれた。

「どさくさに何をするんですか、兄さん」

「いや何、琥珀さんにも朝の挨拶をな」

「なら先に私にしてください」

「お前にはさっきおはようって言ったじゃないか」

 再度琥珀さんの唇を奪おうとすると、今度は脳天に踵が落とされた。
 その衝撃で琥珀さんには歯がぶつかりそうなくらいに強烈なキスをお見舞い
してしまったが、当初の目的は果たされたのでまぁいいとしよう。

「秋葉……いくら胸がないからって、琥珀さんに当たるのは胸違いだろう」

 琥珀さんの頬を軽く数度叩くと、彼女は小さなうめき声を上げて目を覚ます。

「誰が世界年齢別胸囲ワーストワンですか! ああっ、そんなことより琥珀が!
琥珀が!」

「うーん、痛たたた……あ、おはようございます志貴さん」

 にっこり微笑む琥珀さんは、どうやら特に怪我もないようだったので一安心。

「おはよー琥珀さん。ところで何で朝からソファーに押し倒されてたの?」

「ええ、秋葉様が紅茶にミルクを所望されたのでご用意しようとしたら一瞬で
殴り飛ばされて記憶が飛んだので詳しくはわかりません」

 十分過ぎる状況説明をありがとう。

「秋葉、琥珀さんの胸のどこが気に入らなかったんだ」

「だからミニマム胸とか言わないでください! 琥珀が変なことしたのが悪い
んですよ!」

 着物の隙間から直に琥珀さんの胸を揉んでいたら、何故か翡翠が息を飲んだ。

「うぁ……志貴様、失神してもよろしいでしょうか?」

「ん? ああ、その間に何されてもいいのなら」

「それではお言葉に甘えて」

 お辞儀をしようとして、頭を下げたらそのまま絨毯の上にぱたりと倒れ込む
翡翠。
 今イチ状況が掴めなかったが、ふと秋葉の視線が琥珀さんの股間に注がれて
いることに気が付いた。

「わーお。そうか、秋葉の胸パットが何時の間にか琥珀さんのぱんつの中に」

「バストアップ吸引器なんか使ってませんってば!」

 どんどん穴を掘り進む秋葉は放っておいて、俺は琥珀さんの着物の裾に手を
入れた。

「ま、志貴さんったら勇気がおありですねー」

「いやいや、翡翠をどうにかする前の景気付けに2・3発どうですか琥珀さん」

「あら、よろしいんですか?」

 何故か秋葉ががくがく震えだしたが、胸元が全く揺れようともしないので俺
は涙を誘われそうになった。

「でもですね、秋葉様もそろそろかと思いますので大変ですよ?」

 秋葉のことなので一体何のことを言っているのかは気にしなかったが、着物
の裾から入れた手に普段から慣れ親しんだ感触を受けて俺は驚いた。

「……素?」

「素と言えばちょっと違うかもしれませんが、とりあえず生やしてみましたー」

 ぽっと頬を染める琥珀さんから視線を移すと、妙に腰を引いて前屈みに俺を
見つめる秋葉がいた。

「ううっ……まさか昨夜ベッドの真ん中に落ちていた兄さんのぱんつに薬が!」

「……俺より男らしいな、秋葉」

 キングサイズなそれは、前屈みになろうとも両手で覆い隠そうとも隠しきれ
てはいなかった。
 俺のぱんつが秋葉にどんな取扱いをされたのかを追及する前に、琥珀さんが
さっき言っていた『紅茶にミルク』との言葉を思い出して俺はげんなりした。

「琥珀さん、今時そんなギャグには突っ込む気にもならないよ……」

「いえ、むしろ突っ込むのは私の方ですけど」

 がしっと両肩を固められて振り向くと、秋葉が髪を真っ赤に染めて俺の首筋
に舌を這わせ始めた。

「ああ、道具に頼らず兄さんを貫けるなんてまるで夢のよう」

「道具の方が俺は幸せだったかもしれん」

「では私はお口で」

 琥珀さんは俺の腕からするりと抜け出し、着物を脱いで俺の前に腰を構えた。

「しゃきーん」

「うわー、もうロックオンされた」

「さぁさぁ兄さん、今日の学校は病欠と言うことで病人らしくお注射を受けて
くださいな」

 はぁはぁ荒い息を吹きかけながら、秋葉は自分の腕並に太い注射針を俺の尻
に押し付けて来る。

「ところで何でそんなに馴染んでるんだよ秋葉」

「あら、伊達に琥珀相手に道具を使用した仮想練習を励んでいたわけではない
のですよ」

「そうですよ、秋葉様の高速ピストンは志貴さんを凌駕する程なんですから」

 くそう、2人はそんな秘密特訓を重ねていたのか。
 しかし昨日今日いやたった今生えたばかりの者に負けるわけにも行かない。

「ええい、みすみす貫かれてなるものか!」

 秋葉の隙を突いて握り締めると、腰が震えるような甘い声を出された。

「ああっ、強く握られると力が抜けてしまうのです」

「情けないな秋葉、それでも戦闘民族か?」

「志貴さんの気が逸れた隙にエントリープラグそーにゅー」 

「んぐもっ」

 くっはー、と琥珀さんは恍惚の表情で腰を振り始めた。
 まさか噛み千切ることも出来ず、そんなことをしたら後で同じことをされて
しまいそうな気がしてきゅーっと袋が縮み上がった。

「ああん、志貴さんったらいつもこんないいことを」

「ええい、私も遅れてなるものですか」

 秋葉は俺のズボンの後ろを檻髪で消失させて穴を明けて、俺の手をがっしり
掴んでストレイトガオーの照準を定めた。

「共同作業ですね、兄さん」

「うう、その言い方は嫌だなあ」

 自分を貫く片棒を担ぐのは御免なので秋葉から手を放すと、待ってましたと
秋葉は腰を突き出した。
 よく考えたら俺が自分で最後の封印を解いてしまったも同然であった。

「んも――――!」

 上も下も塞がれてしまっては、もう為す術はない。
 と思ったがふとあることに思い至り、俺は串刺しにされつつも少しづつ身体
を移動させて行く。

「逃がしはしませんよ、はぁはぁ」

「いいえ秋葉様、どう足掻いてもコエの出せない志貴さんに残された武器が」

 琥珀さんの声に秋葉は俺の視線を追い、納得したように俺の動きに合わせて
動きつつでも腰を振るのは止めなかった。

「翡翠ちゃんだけ仲間外れは可哀想ですもんねー……はうっ」

 俺の口の中に生絞りを放出すると、琥珀さんは秋葉の背後に回る。

「さて、私も練習させていただきますねー」

「ああ、貫きながら貫かれるなんてまるで夢のよう」

 琥珀さんに腰を押さえられながら、秋葉はうっとり。

「嫌な夢だな、おい」

 どこで生産されたのかもわからない琥珀汁を、いつも飲まされる謎の薬より
はマシかと飲み下して俺は翡翠のスカートに手をかけた。

「これで全員男だったらげんなりですねー」

「全員兄さんだったらむしろ大ハッスルですが」

「俺はどっちもげんなりだがな」

 琥珀さんから特製ローションを受け取り、翡翠と俺自身にたっぷりかける。
 琥珀さんと秋葉とが微妙にズレたリズムで腰を動かしているので狙いが付け
難かったが、間違った方に入っちゃってもいいかと思ってそのままエンジンに
点火した。

「はんっ、うふ……志貴様?」

「翡翠、落ち着いて聞いてくれ」

 いやらしい音がそこかしこから聞こえる中、翡翠は俺に抱き付いて。

「今すぐ失神したいところですが、志貴様に失神させていただくことにします」

「何でこうすぐに馴染むかなぁ」

「いいじゃないですか志貴さん、翡翠ちゃんにもこれを生やして色々と4人で
フォーメーションを組んでみましょう」

「ああ、貫きながら貫いて口も塞がれるなんて夢のよう」

 秋葉は一足先にイメージトレーニングを開始した模様。
 何にしても、俺は誰かに常にバックアップされることは間違いなかろう。

「そうだ、後で羽居や蒼香を寮から拉致して来ましょう」

「あ、じゃぁついでに晶ちゃんも。俺は先輩やアルクを呼ぶからさ」

 何だか色んな意味で凄いことになりそうだ。

「志貴さんを立食するパーティですか、腰の振るい甲斐がありますねー」

 言葉のニュアンスが微妙に気になったが、この状況で気にすることではない。

「やん、はんっ……何かこう、微妙にズレたリズムが気持ちいいです志貴様」






 その宴は3日3晩続き、集められた関係者は絞り注ぎ注がれ尽くされて全員
が3日間も寝込むことになった。
 これが後に『遠野家の乱』として、秋葉は勿論羽居・蒼香・晶が浅上女学院
で自慢気に語り継いで行く伝説である。






<続きません>