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きぃぃん
                        風原 誠



 冬休みも近い12月の末、浅上女学院のクラブ棟を歩いていた月姫蒼香は、
耳の奥で奇妙な耳鳴りを感じた。
 あたりを見回すが人影は無く、鍵の閉められた部室の中からも人の気配はし
ない。

きぃぃん

もう一度、今度は指向性を持って聞こえて来る。
 この耳鳴り、彼女の持つ特殊なカンの様なもので、ごくごく稀に聞こえるも
のなのだが、彼女の受ける危険や災害の前に必ずと云って良いほど聞こえてく
る。
同室の羽居などは、
「蒼ちゃんってば、にゅーたいぷだったんだぁ」
などとあっけらかんと言うが、受ける被害を回避できるならともかく、知らせ
るだけ知らせて回避できないと云う嫌な性質を持っている為、彼女にしてみれ
ば迷惑なモノに違いなかった。

きぃぃん

まただ。
 蒼香は顔をしかめると、耳鳴りが聞こえた方向を凝視する。
その先にあるのは、クラブ棟の端 【女子トイレ】
回避は出来なくとも、受ける被害を最小限に喰い止めることは出来るため、苦
虫を噛みつぶした表情で、蒼香は鬼門へと歩みを向けた。








ぎぃぃぃ

 軋んだ音を立てるトイレの扉を開く。中には個室が奥へ向かって4つ。その
うち1つが扉を閉じて、誰かしらが使用している旨を知らせている。

「ふぅむ…」
 怪訝な表情で蒼香はトイレの中を見回すが、これと云って怪しいモノは見つ
からない。

きぃぃん

 今度は、よりはっきりと聞こえて来る。
 蒼香は目を閉じて意識を四方に拡散させた。

きぃぃん

 短い間隔で響いた耳鳴りを彼女の意識の網が捉える。
 指向性を持った耳鳴りは、明らかに閉じられた個室の扉から発せられるのが
感じられた。
(…いったい誰だ?)
 足音を忍ばせてそっと個室へ近づく。耳をそばだてると、押し殺した荒い息
づかいが扉越しに耳へと飛び込んでくる。
(この声は…瀬尾か)
 
 『瀬尾 晶』
  
 相手の名前を確信した事によって蒼香の眉間の皺が一層深くなった。
生徒会の書記で、秋葉の飼い犬と呼ばれている晶だが、彼女には同級生を使っ
た小説(かなりヤバ目)を書く癖があり、蒼香自身も題材にされ本気で倒れそ
うになった事がある。

(秋葉に見つからないようにとは云え、こんな所で書いているとは)

 そう苦笑をする蒼香だが、彼女のカンが知らせたと云う事は、おそらく蒼香
がまた題材にされているに違いなく、早々に手を打たなければとんでもない事
になるのは明白だった。
(少しお灸をすえてやらんといかんな)
 そうひとりごちると、蒼香は個室の前へ立ち、拳で思い切り扉を叩く。

  だンッ    「瀬尾、出て来い!!」
           「ひゃはぁぁッ」
      
                       がたん




蒼香の叫び声と、
晶の悲鳴と同時に、
個室の扉が音を立てて外れた。


 
 お互い、動く事が出来ずに固まる蒼香と晶。いきなり扉を破壊された晶はも
とよりだが、蒼香の目も突然の事に点になった。作りが古いとはいえ洋式のト
イレに腰掛けた晶の股間から、本来女性には無い男性器、いわゆる「おちんち
ん」が己の存在を主張せんとばかりに‘にょっきり’と屹立しているのだ。


「せ、瀬尾、一つ聞くが、その股間の、ソレはなんだ?!」

 ともすればあちらの世界へ飛んでしまいそうになる思考を、蒼香は必死の思
いでかき集め、とぎれとぎれの言葉を吐きだす。真っ赤な顔でパニックに陥る
晶を前に、蒼香の思考は徐々に回復を始める。冷静さをいくぶん取り戻した蒼
香は、ぐるりと周りを見渡し、外れた扉を横目で見やると、未だパニック状態
から回復しない晶を立たせて、掃除のために鍵を預かっていた空き教室へと彼
女の手を引いた。












「ほほぅ」
 我ながらここまで険のある声が出るとは思っていなかったと、蒼香は心の中
で呟く。パニック状態から回復した晶から聞きだした話、要約すると
      
    『赤い服着た白いお髭のおじいさんにお願いしたら生えちゃった』

などという、羽居でもなければ言い出さないような、そんなふざけた話を聞か
されれば誰だってこうなるに違いない。
「で、それを消す方法は?」
冷たい声で訪ねる蒼香に、椅子の上で縮こまった晶は涙目で頭を振る。



 その怯えた晶の表情に…蒼香の心臓が、大きく鳴った。

 頬が紅潮していくのが、蒼香自身にも感じられた。尻尾を丸め込み、耳を伏
せた子犬…否、小狐が怯えている様に、言いようのない高揚感を感じてくる。
 蒼香は、晶のスカートの下で未だ存在を主張している「おちんちん」を、そ
のスカートの上からぎゅっと握りしめ、晶の耳元でささやいた。

「案外、出し切れば無くなるかもしれないな」






 
「はぁぁぁ・・・んっ」

 くちゅくちゅといういやらしい音を響かせながら晶のモノを扱き上げる。覆
い被さるように体重を預けた蒼香の耳元に、晶のこそばゆい熱い吐息が吐きつ
けられ、彼女の受けている快感を伝えてくる。先走りを潤滑油に肉茎を手のひ
らで上下に扱き、親指の爪でくびれの付け根を刺激する。
「だめ、ですぅ…せん、ぱいっ」

 びくんっ、とからだがひとつ大きく跳ね上がる。
 くびれの合わせ目、裏側の筋へ爪を立てると、面白いように彼女の身体が反
応する。

「そうは言っても、とたんに大きくふくれあがったぞ、お前さんのココは」

 空いた左の手で晶の髪をかき上げ、耳元へ口を付けて囁く。
 そうする度にまるで体中の血液が流れ込むが如く晶のモノが跳ね上がる。
 ぶるッと彼女の身体が震え、宛て無く彷徨わせていた晶の両手が、蒼香の身
体にしがみつく。瞬間、蒼香の握りしめていた「おちんちん」から、噴水のよ
うに白濁した液が吹き上がり、二人の顔を直撃する。

「ん、濃い…な」
 
 蒼香は、べったりと顔に付いた白濁液を指で拭い、まじまじと見つめた。お
そるおそる舌先でなめ採ってみると、過日の羽居のようなえぐみは無く、愛液
を薄めたようなそんな味がする。蒼香は身体を屈めると、ぐったりと椅子の背
もたれに身体を預けた、白濁の飛び散った晶の顔へ丹念に舌を這わせ始めた。



 クラブ棟から校舎へと続く渡り廊下。
 二人の生徒が対照的な表情で、肩を並べて歩いていく。

   すっきりとした表情の 瀬尾 晶
 と
   げんなりとした表情の 月姫 蒼香

「まさか、月姫先輩があんなに豹変するとは思っても見ませんでした」
「まさか、自分があんな風になるとは思っても見なかったよ」

朗らかな表情の晶に、蒼香は表情を引きつらせながら心の中で呟いた。



「コレが、今回の災難か。
     認めたくないものだな、若さ故の過ちとは」

                                          《fin》