『発芽』
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「あ、うん。ありがとう。晶ちゃん」
志貴は電話の向こうの人物に礼を言うと、受話器を置いて呟いた。
「いったいどうしたっていうんだ」
電話の内容はこうだった。
二日前から、秋葉が寮の部屋から出て来ない。
誰とも口をきかずに、授業も休んでいる。
そして、食事すら口にしていない。
寮の子達も一日目は見守っていたのだが、それが二日にもなると、
「そろそろ限界だ」
そう思った同室の子が、志貴と面識のあった晶ちゃんに連絡を入れさせた。
という事らしい。
思えば昨日の日曜日、めずらしく屋敷に帰ってこなかった。
志貴が帰ってくるまでは、あまり屋敷に戻ってくることはなかったらしいが
(琥珀さん談)、
帰ってからは、必ずと言っていいほど毎週寮から帰ってきて、週末は一緒に過
ごしていたのに。
志貴は、「兄さん」と自分を呼ぶ秋葉を思い浮かべる。
先週帰って来た時は、あんなに元気だったのに。
いったいどうしたんだろう。
いくら考えても、原因などわかるはずも無かった。
「屋敷で考えてもしょうがない。秋葉の様子を見に行こう」
そう決めた志貴は、その日学校をさぼって一人で浅上の寮を訪れた。
翡翠と琥珀も心配して、一緒に行こうかと言っていたが、あまり大勢で来ては
大事になりそうなので留守番をお願いしてきた。
浅上の寮に到着して、入口の側にある寮母室ヘ行く。
出てきた寮母のおばさんは志貴を見ると露骨に眉をひそめた。
男が訪ねてきたことを異様に警戒しているのだろう。
しかし、志貴が身分を明かし説明すると、意外なほどあっさりと通してくれた。
どうやら彼女も自分の管理する寮に、閉篭りの生徒が居ることを快く思ってい
なかったようだ。
内心、門前払いになるのではないかとひやひやしていたが、思ったより簡単に
寮に入ることが出来た。
志貴は来客用スリッパに履き替えて、秋葉の部屋を目指す。
ぺたり、ぺたり
自分の足音が耳につく程、寮の中は静まりかえっていた。
もう授業が始まっていて寮の者は皆、学校に行っているからだ。
寮母に教えてもらった廊下を確認しながら目的のドアにたどり着き、ドアの横
についている名札を見る。
『月姫蒼香』『遠野秋葉』『三澤羽居』
間違いない。ここだ。
コンコン。
軽くノックをしてから声をかける。
「秋葉、開けてくれ」
部屋から一歩も出ないと聞いていたから、中に居る筈なのだがいくら呼びかけ
ようとも、扉を叩こうとも反応がない。
反応がまったく無いことに、言い知れぬ不安を感じた志貴はドアノブを回した。
しかし、中から鍵が掛かっている為にドアは開かない。
仕方なく寮母から預かった鍵をポケットから取りだし、
かちゃり
ドアの鍵を開ける。
「入るぞ、秋葉」
そう言って中に入る。
部屋は遮光カーテンが閉まっていて薄暗い。
志貴はその薄暗い部屋の中、秋葉を探す。
最初、ベッドの上にその影を見たとき、丸まった毛布かと思った。
でも、微かにその毛布が動いた気がして、凝視し確認する。
秋葉だ。
ベッドの隅で毛布に包まり、小さくうずくまっている秋葉を見つけた志貴は歩
み寄ろうとする。が、
「だめ、こないで兄さん」
今まで身動き一つしなかった秋葉が志貴を制止する。
志貴は、慎重に言葉を選ぶ。
「どうしたんだ?秋葉。何かあったのか?」
妹を心配した言葉だったが、返ってきた返事は冷たいものだった。
「言えません。特に…、兄さんには」
拒絶―――。
志貴は脳髄を揺さぶられる様な衝撃を受けた。
正直、自惚れていた。
秋葉も自分のことを少なからず想ってくれていると思っていたのに。
たとえそれが兄妹の情でなかったとしても、受け入れても良い。と考えていた。
しかしそれは、志貴の勝手な思い込みだったというのか。
しかも、自分だけに言えないという事は、この篭城は自分に原因があるのだろ
う。
「そうか、わかった。
俺の、せいなんだな。
週末に帰ってこなかったのも、俺に会いたくなかったからか?」
秋はなにも言わず、俯いたままだ。
何も言わないのは肯定だから、か…。
秋葉に拒絶されたのならば、もう遠野の屋敷に居る必要もない。
そして、志貴自身も居たいとは思わなかった。
「理由はわからないけど、俺のせいみたいだな。
俺に会うのが厭なら、屋敷を出て有間の家に戻るよ。
だから安心して屋敷に帰ってくればいいよ」
はっきりとではないが、志貴からの別れの言葉。
それを聞いて反射的に顔を上げる秋葉。
そして見てしまう。悲しそうな兄の顔を。
息を呑む
「兄さん…」
この兄には、決して知られてはならない。言うまいと思っていたのに。
こんな悲しい顔をさせるくらいなら、全てを話して嫌われた方がいい。
私が傷つく事くらい何でもない。
愛想を尽かされても、嫌悪のこもった目で見られても。
この兄の悲しい顔を見るよりはましだ。
それに、話しても話さなくても、兄を失うことに変わりは無いのだから。
意を固めると、
「待って、兄さん」
部屋を出て行こうとする志貴を呼びとめる。
「見て、下さい」
立ち上がって、スカートの留め金をはずし、手を離す。
ぱさり
重力に従い、スカートが皺をつくって床に落ちる。
「何してるんだ。やめろ秋葉」
そう言って見ない様に後ろを向く志貴。
秋葉は更にショーツも脱ぐと、再度言う。
「見て、下さい」
その微かに震えた消え入りそうな声に、志貴は覚悟を決めて振りかえる。
そして、
志貴は見た。
「秋葉、お前、それは…」
何も覆われていない秋葉の股間には、未発達で小さいが、紛うことなき
―――男性の象徴があった。
「三日前からです。こんな、こんなものが生えたら、もう、兄さんに愛しても
らえない」
告白しているうちに、潤んできた瞳から大粒の雫がこぼれる。
志貴は近寄って肩を震わせて泣く秋葉を抱き寄せる。
「大丈夫だから、俺はどんな秋葉でも大好きだよ」
その言葉に驚いて顔を上げる。
「いいん、ですか?こんな身体の私でも」
「いいさ。どんな身体でも、俺の大好きな秋葉に変わりはないよ」
「こんな身体、抱くのは嫌でしょう?」
素直に聞いてくる秋葉に頭(かぶり)を振る。
「嘘、」
なおも食い下がる秋葉に笑って答えた。
「証拠、見せようか?」
言うが早いか、志貴の手が秋葉の股間をまさぐる。
「んっ。兄さん、何を…ひゃう!」
そっと秋葉を握ると、ゆっくりと波打つように指を動かす。
連続して起こる指の圧迫感に秋葉は声を発する。
「んっ、やっ」
ひとしきり秋葉を弄ぶと手の動きを止める。
「兄さん、すごい」
志貴の責めに感嘆の言葉を漏らす。
「そりゃそうさ。俺だって男だからね。コレの扱いに関しては秋葉より一日の
長がある。
ま、舐めるのは初めてだけどな」
自然な動作で膝を曲げると、握っていた秋葉にくちづけをする。
生えたばかりからか、ピンク色の未成熟なそれは、志貴の唇の感触に一層大き
くなる。
包んでいる皮を舌で剥き、先端に舌を這わせる。
生えたてのそれは、まるで孵ったばかりの幼生の様に外界に対する用意が無く、
全体の神経が、過敏になっていた。
「ふぁ、こんな、立っていられない」
震えていた秋葉の膝が、耐えきれずに折れる。
志貴の肩に手を置いて何とか崩れ落ちるのを堪える。
「兄さん、駄目。私、何かくる。来ちゃう。やぁぁ」
一際高い声と共に、秋葉の腰が痙攣する。
びく、びく。
数秒後、志貴は眉をひそめる。
口内に舌を巡らせて確認するが、何の痕跡も無い。
「まだ精通はしてないのか」
秋葉の話なら生えてから三日、未成熟なそれはまだその機能が備わっていない
のだろう。
志貴は受けとめる覚悟をしていただけに、肩透かしをくった気分だ。
一方秋葉は、達した快感でその場にへたり込んでしまっていた。
そんな秋葉の頭をくしゃくしゃとなでる。
「な、大丈夫だっただろ?どんな秋葉でも愛していけるさ。
たとえナニがあろうとも、胸が薄かろうともね」
唐突にコンプレックスを突つかれた秋葉は顔を真っ赤にする。
「もー。兄さん!」
怒ってこぶしを振り上げた秋葉の顔には、確かに笑みがこぼれていた。
―――了―――
志貴のお口。
やっぱり生えたて(特に秋葉)は若芽のようなヤツかなと思ったんで、小さめ
に。
単に「阿羅本さんやしにをさんみたいに濃厚なえちシーンが書けないから」と
いうだけなんですけどね。
かなりの乱文で読み辛いと思います。申し訳ありません。
2002/12/28 you
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