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晶ちゃんと一緒

                        春日ている


「やや、ごめんごめん」

 待ち合わせ時間からは、ちょっと遅れてしまったけれど。
 喫茶店に走り込んで来た俺を、晶ちゃんは快い笑顔で迎えてくれた。

「早速で何ですが、電話でお話した件で……」

「うん、何かな?」

 ちょっと言い淀んで。
 晶ちゃんは、どこか不安そうにきょろきょろと辺りを見回す。

「ああ、秋葉のことなら心配ないよ。屋敷から出られないようにして来たから」

 今頃は琥珀さん(似)の不条理クイズに負けて、落とし穴に落ちている頃で
あろうか……。

「遠野先輩のことじゃなくて……いえ、それも少し関係ありますけど……」

 カップを握り締め、ごにょごにょと口の中で何事か呟く。
 そして、きっと俺を見据え。

「お願いです、志貴さん! 私の初めて体験に付き合ってください!」

「は、初めてぇ?」

 俺は思わず、テーブルに突っ伏しそうになった。
 女の子が『初めて』って言ったら、やっぱりあれのことだよな……いやでも、
どうして晶ちゃんがそんな大胆発言を……と言うか何で俺?
 俺は努めて平静を装いながら、もっと詳しく話を聞いてみることにした。

「初めてって、一体何の初めて?」

 そう訊ねると、晶ちゃんは顔を真っ赤にしてしまい。

「その……クラスの友達が『こないだ彼と経験しちゃった』って言って、それ
が何だか羨ましくて……私も経験しちゃいたいなぁ、と」

「晶ちゃん、それはちょっと気が早過ぎるんじゃないかな? そう言うことは、
もっと大きくなって本当に好きな人が出来てから……」

「わっ、私だってもう立派な大人ですっ! 志貴さんのことだって……そのう
……大好きなんですっ!」

 最後のセリフは、一際声が大きかった。
 そのせいか、店内がざわりと騒ぎ始めてしまい。

「と、とにかくここじゃ何だから。外に出て、公園辺りでゆっくり話そう。ね、
晶ちゃん?」

「は、はい……」

 我に返り、店内の雰囲気に気付いたのか。
 両手で顔を隠しながら、俺の後に隠れるようにして店を出る晶ちゃんなので
あった。






「あの……すみません、いきなりあんなこと言っちゃって……」

「いや、気にしなくてもいいよ。俺も晶ちゃんのこと、大好きだし」

 ただ……秋葉にこのことが知れた場合の、晶ちゃんの身の安全の方が気には
なるが。

「あうう……さらりと言ってくれちゃうんですね、志貴さんってやっぱり大人
です」

「それで? 俺としたいだなんて、単に友達の話を聞いただけじゃないんだろ」

「はい……実はさっき、また視えちゃったんです……」

 曰く、自分が俺に腕枕されている光景が視えてしまったとのこと。
 しかも、2人とも裸の姿で。
 そのような内容であったので、友人との話も相まって……自分は欲求不満で
あるのかと今日は相談したかったらしいが、話が入れ代わってしまった模様。
 それがどうして『初めて体験』まで飛躍してしまったのかはわからないが。

「晶ちゃんくらいの年頃なら、むしろ普通だと思うよ? 女の子は往々にして
早熟だって言うし」

「それじゃやっぱり、志貴さんもそうだったんですか?」

「ああ……うん、そう言うことになるね」

 中学校の頃、男子のクラスメイト達はこぞってそんな話題で持ちきりだった。
 俺は……興味がなかったと言えば嘘になるが、どちらかと言えば淡白? な
方だったかな。まぁ有彦が話題を持ちかけて来た時は、ここぞと反応していた
ような気もするけど。

「そうですか」

 ほっ、と何故か安堵の溜め息。

「ところで……さっき私が言ったこと、まだ覚えていますか?」

「うん、あれはそうそう忘れられるものじゃないからね」

 俺がそう言うと、晶ちゃんは顔を真っ赤にしながら。

「折角視えた幸せそうな未来なんですから、是非とも実現したいと思うんです。
……協力していただけますか?」

「……ああ、晶ちゃんがよくて、相手が俺なんかでよければ」

「あ、さっき言ったこともう忘れてますね?」

「え?」

「私、志貴さんのことが大好きなんです。志貴さんだって、私のこと好きだと
言ってくれましたし」

 そう言って、きゃーと両手で顔を覆ってしまう。
 ……そうか、そう言えばそんなことも。

「だから、初めては志貴さんに捧げたいと思うんです……」

「……あのさ、晶ちゃんは中等部でしょ? まだ早いと思うんだけど」

「いえ、私の周りって結構経験済みの子が多いんです。その手の話もよく聞き
ますから、心の準備は出来ているつもりです」

「だからさぁ……」

 この子には、一体何をどう言えばいいのやら。

「それとも……私なんかじゃ嫌ですか?」

 泣きそうになりながら、上目で俺を見上げる晶ちゃん。
 うう、これじゃぁ断れないじゃないかよう。

「……わかった。晶ちゃんの初めて、ありがたくいただくよ」

「あ、ありがとうございます……って言うのも、何だか変ですね」

 てへへ、と照れ隠し。
 俺は覚悟を決めて、晶ちゃんの手を握った。

「じゃ……しに行こうか」

 さて、どこへ行こう。
 初めてが公園で青姦では、いささか問題があるだろう。
 かと言って、遠野の屋敷は使えない。晶ちゃんは寮住まいだし、先輩や
アルクェイドのところに行って部屋を借りるなぞ言語道断。
 ……うう、財布が心許ないがブティホしかないか。

「は、はい……」






「晶ちゃん、どこがいい?」

「うー、志貴さんにお任せします」

「わかった」

 昼間のホテル街は人通りも少なく、俺達の姿が見咎められることはなかった。
 こんなところを警官や補導員に見付かったら、俺は精々停学で済むだろうが
……晶ちゃんは、退学なんぞ食らうかもしれない。
 そんなことを思ってしまい、急いで傍のホテルに晶ちゃんを連れ込んだ。

 財布から金を出して、入り口前。
 晶ちゃんは物珍しそうに、辺りをきょろきょろ見回している。
 俺は適当な部屋を見繕い、金を入れて出て来た部屋のキーを手に取る。

「晶ちゃん、部屋は3階だよ」

「あ、はい」

 平然としているように見えるが、その実落ち着きがないのがすぐにわかる。
 やはり、晶ちゃんなりに緊張しているのだろう。
 エレベーターで3階まで上り、部屋の前まで来ると。

「うー……」

「どうする? 止めるなら今のうちだよ?」

「……や、止めません! あんな幸せそうな光景を視たら、もう実行あるのみ
です!」

「……はい、じゃぁご案内っと」

 ドアを開け、先に晶ちゃんを入れてから内鍵を閉める。
 これでもう、後戻りは出来ない。

「晶ちゃん、先にシャワー浴びる?」

「あ、いえ。来る前にお風呂入って来ましたから」

「そ、そう」

 何となくやり難い。
 やり難いが、やるしかない。
 俺がそんなことを考えている間に晶ちゃんは部屋の物色を終えて、ベッドの
真ん中にちょこんと座っていた。

「で、では不束者ですが……よろしくお願いしますっ」

「あ、ああ……こちらこそよろしく」

 ゆっくりとベッドに近付き、端に座ると。
 それだけで、晶ちゃんがびくっと震えたのがわかった。

「やっぱり怖い?」

「こ、怖いのも少しありますけど……志貴さんがどんな風にしてくれるのかの
期待の方が大きいです」

 覚悟を決めたような視線で、俺を見つめる。
 真剣なその表情に苦笑しながら、俺は晶ちゃんの傍まで行き。

「そんなに緊張してたら、気持ちよくなれないよ?」

 つう、と晶ちゃんの頬に触れる。

「んっ」

 目を閉じて、ふるふるとそれを受け入れる晶ちゃん。
 逃げるような素振りはない……本当に覚悟完了したようだ。

「服、脱がすよ」

「はい……」

 俺はゆっくりと、優しく晶ちゃんの着衣を剥いて行く。
 セーラー服、スカート……シャツにブラジャー、そしてぱんつ。
 ぱんつには、見慣れないものが貼り付いていた。

「……ナプキン?」

 それはじっとりと水分を含み、多少の重さを感じさせていた。

「ううっ、恥ずかしいです」

 大事な部分を隠しながら、晶ちゃんは丸くなってしまう。
 俺も服を脱ぎ、その隣に横になって。

「女の子の日だったら、やっぱり別の日にした方が……」

「いえ、生理じゃないんです。志貴さんと会う時は、必ずそれを……」

「……何で?」

 わからない。
 この子がよくわからない。

「志貴さんの声を聞くと、胸がきゅうんってなっちゃうんです。更にその上私
の名前なんか呼ばれちゃったりすると……初めて声を聞いた時なんか、ぱんつ
ぐっしょりになっちゃってましたから」

「ははぁ、なるほど。晶ちゃんは、声だけで感じちゃうんだ」

「うう、恥ずかしながらその通りです……けど、志貴さんの声だけが特別なん
ですよ? 他の人の声じゃ何ともないのに……」

「晶ちゃんは変態さんだね」

 俺はにやにや笑いながら口走る。

「へ、変態!?」

「ああ、声だけで濡らしちゃうんだから……変態以外の何者でもないだろ?」

「そんな……酷いです、志貴さん」

「そんなこと言っても、ここはもう凄いことになってるよ?」

 晶ちゃんの股間に手を這わせると。
 じゅぷり、と派手な淫音がした。

「晶ちゃんの、えっち」

「くぅん……んっ」

「このまま挿入れても大丈夫っぽいけど……ちゃんと順番にやって行かないと
な、初めてだし」

 ぴちゃ、とわざと音を立てながら指を舐める俺。
 これが晶ちゃんの味……うむ、未成熟な果実の滴らせる蜜の何と甘美なこと
か。

「うん、美味しいよ。晶ちゃん」

「はぁっ、そんなぁ……」

 恥ずかしさで泣きそうな表情になりながらも、どこか様子がおかしい。

「晶ちゃん?」

「はいっ……ひぐっ」

 ふるるっ、と晶ちゃんの身体が震える。
 どうやら、俺の声で感じると言うのは嘘でも何でもないらしい。
 そうなると、することは1つ。

 俺は晶ちゃんの上に覆い被さると、耳元へ口を寄せて。

「感じてるんだね? 我慢しなくていいよ、もっともっと囁いてあげるから」

「ううっ、志貴さぁん……」

 きゅっ、と俺の首に細い腕が回される。
 俺も晶ちゃんを抱き返し、身体を密着させた。

「晶ちゃん、わかるよね? 前戯もされる前からこんなに濡らしちゃって……
普通の女の子だったら、こんな風にはならないよ?」

「わ、私って普通じゃないんですかぁ……?」

「ああ、普通じゃないだろ? 声だけで感じて、濡らして……これで愛撫まで
してしまったら、晶ちゃんは一体どうなっちゃうんだろうね」

 俺は声のトーンを落とし、晶ちゃんの耳に口が密着する程近付けて。

「晶ちゃんは、変態。さ、自分で言ってごらん?」

「あふうっ……わっ、私は変態ですぅっ……志貴さんの声だけで、気持ちよく
なっちゃう……異常な女の子ですぅ……」

 耳に俺の吐息がかかったせいか、ぶるぶると身を震わせながら。

「よく出来ました。ご褒美に、何でも言って欲しいことを言ってあげるよ」

「はぁぁ……」

 最早、心ここにあらず。
 一向に答えてくれないので、晶ちゃんが悦びそうな言葉を言ってみる。

「晶ちゃん、可愛いよ」

「んっ」

 ぴくっと反応あり。
 思わずこのまま、晶ちゃんの身体を蹂躙したくなってしまう。

「自分でしたことある? 俺の声を想像しながら……俺のことを想像しながら」

「はっ、はい……同室の子が寝た後とか、自分で……」

「今日は想像じゃなくて、生の声で出来るんだよ? さぁ、してみてごらん」

「はい……わかりました」

 そう言って俺の首から手を解き、自分の胸と股間へ移動させる。

「最初はどんな風にするの?」

「最初は……胸からです……」

 秋葉とどちらが大きいだろうか、そんな不謹慎なことを考えてしまうような
可愛らしい胸。

「ふぅん……どんな風にするの? こんな風に?」

 さわっ、と軽く膨らみをなでてみる。
 すると、それだけで身体を激しく反らせてしまう晶ちゃん。

「そんなに感じるの、晶ちゃん?」

「い、いつもはこんなじゃないんですぅ……志貴さんが、志貴さんが……」

 言いながら、その小さな手は動き始めていた。

「ああっ、くぅ……んっ」

 ぴちゃ、ぴちゃと下方から水音も聞こえる。

「へぇ、あそこも最初からいじっちゃうんだ。晶ちゃんはどこまでえっちなん
だろう」

「違っ……これ、これは……志貴さんのせいで濡れちゃってて、もう我慢出来
なくって……」

 ちゅぷっ、ちゃくっ……。

「俺が悪いの? じゃぁ帰っちゃおうかなぁ」

「ま、待ってくださいっ! そんな意地悪、言わないでください……」

「でも、手は忙しく動いてるじゃない? 俺がいなくても、1人で満足出来る
んじゃないの?」

「そんなこと言われても……止まっ、止まらないんですっ! 志貴さんが傍に
いてくれると思うと、志貴さんに見られていると思うと……ああんっ」

 身体を丸め、それでもこの子は行為を止めることをしない。
 男にその恥ずかしい姿を見られているのに。変態だのえっちだのと罵られて
いるのに。

「晶ちゃんは、見られるのも好きなんだね。いいよ、見ていてあげるから……
イっちゃうといい」

「きゃふっ……志貴さん、見てください! 変態でももういい、志貴さんに私
のえっちな姿を見ていて欲しいんですぅっ!」

「ああ、じっくり見てるよ? 晶ちゃんの1番恥ずかしいところに指が出入り
してるところとか……」

「んっ、もっと見てください……もっと言ってください!」

 晶ちゃんは、2本の指で自分の陰部を広げて見せてくれた。
 それは綺麗なピンク色の花のようであり……とても美しく思えた。

「うわ、もうどろどろになってるよ……これじゃぁ俺、やっぱり必要ないのと
違うかな?」

「嫌ぁ……そんな、志貴さんがいないと私っ……」

 口からは涎、目からは涙……股間からは、愛液を。
 色んな汁を垂れ流しつつ、俺に哀願するような視線を送って来る。

「嫌いですか、こんな変態の女の子? こんなえっちな子は、嫌いですか?」

 じゅぷ、じゅくっ。

 手指の動きは一層激しくなり、絶頂がもうすぐであることを教えてくれる。

「そうだなぁ……晶ちゃんみたいな変態さんなら、好きだよ」

「志貴さん、大好きですっ! 志貴さんがいないと、私……もうっ!」

「もう、イっちゃう?」

 ずぶり、と指を晶ちゃんの蜜壷に挿入れる俺。
 それを機に、晶ちゃんは果ててしまった。

「あっ、あっ……ああ……んっ」

「イっちゃったんだね、晶ちゃん」

「は……い」

「可愛かったよ、とても」

 言って、晶ちゃんの汁まみれになった指を眼前に差し出すと。
 晶ちゃんは、それを愛しげにちゅぱちゅぱと舐めて綺麗にしてくれた。

「さて、どうする?」

「はぁ、はぁ……」

 大きく呼吸をしながら、晶ちゃんは俺を見る。

「晶ちゃん、ちょっと休む? それとも、このまま本番に入る?」

「あの……じゃぁ、キスからお願いします……」

 今さっきイったばかりなのに、もう次を求め始めている。
 この子はえっちになる、間違いない。

「うん、わかってる。気を楽にして、全部俺に任せてよ」

 つい、と顎を上向けさせ。
 ちゅ、と軽くキス。
 それだけで真っ赤になって、言葉も発せなくなってしまう辺りが初々しい。

「じゃぁ、始めるよ……」

「はい……」






 結局晶ちゃんの未来視通りに、俺達は素っ裸で腕枕添い寝。
 横を向くと、晶ちゃんの満足そうな……幸せそうな顔。

「……志貴さんって、お上手なんですね」

「ん? そうかな?」

「だって、あんまり痛くなかったし……凄く優しくしてくれたし」

 あんまり痛くなかったのは、多分俺のせいじゃないと思うけど。
 怖かったとか言われなかったので、俺は少し嬉しかった。

「初めて、どうだった?」

「……素敵でした。それに、とても気持ちよかったです。何だか、もっと志貴
さんのことを好きになっちゃったです」

「そりゃどうも」

 照れ笑いを浮かべながら、晶ちゃんの髪をなでてみる。
 ふわふわしてて、とても感触がいい。
 こんな子の初めてを、上手いことプロデュース出来たわけだ……俺は、ある
種の満足感に包まれていた。

「あの……これからも、時々こうして抱いてくれますか?」

「ああ、勿論。時々と言わず、晶ちゃんが望むならいつでも」

 でも、毎回ホテルに入るのはちょっと財政事情が……。
 仕方ない、晶ちゃんには涙を飲んでもらって……屋敷の俺の部屋で!

「……っと、そろそろ時間だな。もっとこうしていたいけど、出ようか」

「はい」

 にっこりと微笑む晶ちゃん。

「…………」

「あれ? どうかしましたか?」

「いや、晶ちゃんの笑顔……可愛くなったな、と思って」

「そんな、今まではどうだったって言うんですか?」

「今までも可愛かったけど、何だかこう……女らしくなったって言うか」

「そ、そうですか?」

 晶ちゃんは両手を頬に添え、俯いてしまう。

 そんな彼女が可愛くて。
 フロントからの催促の電話が鳴るまで、俺達はベッドの中で寄り添っていた
のであった。






<続きません>