彼女の希望 彼女の欲望

                     阿羅本 景



「うふ――士郎……?」

 踞る美女が笑う。
 長い髪が白く滑らかな裸体を覆い隠し、まるで紫の川の流れに潜っている様に見
える。そして、そこから顔を出している――腰の上に、ズボンを脱がしながら。

 ライダーの指が、トランクスの中を探る。
 ひんやりとした冷たい手が蒸れた下着の中に入ってくると、ぞくりと背筋が震え
る。陰毛の中をわさわさと動き、硬いペニスを引っ張り出そうとする。

「はぁ……これほど硬いのですか、士郎のは」

 間近に被さって、股間を見つめているライダー。あの眼鏡越しの魔眼に恥ずかし
いところをみられると、堪らない気がする。

 ……女性にこれを見せるのは、初めてはない。
 桜にはもう何度と無く見せていた。ライダーだって初めてじゃないけど、でも…
…ライダーだけに見せるのは、初めてだった。

 こんな事はいけない、と理性は止める。
 だが、股間を指でわさりと触られながらではそんなことを考えても、どうにもな
らない。

「今日は――サクラの代わりに私が、士郎のお相手をします」

 そう、涼やかに告げてきたライダー。
 どういうこと? と訊くまでもなく布団の上に押し倒されていた。ライダーに素
手でも、いや魔術を使っても逃げることなんか容易じゃない。

「こんなの、だって桜に知られたら、俺は――うっ」

 中に芯が通ったように固まってきたペニスを抜き出され、声を殺す。こんなつま
み食いを桜に知られたら、絶対に許してくれない。

 だが、俺のそんな危惧を読みとったのか、ライダーはふっと切れ長の瞳を細めて
笑う。

「ええ、ご心配なく。サクラから直に、士郎のお相手をするように承ってきました。
それも――いえ、それは後のお楽しみにしましょう」

 なにを隠しているのか分からないけど、ライダーが妖しく笑っている。その楽し
そうなことは――まるで俺が可愛らしい獲物で、彼女が丸飲みにする蛇のような、
そんな威圧すら感じる様子。

 しかし、訊かずにはいられない。
 どうして――

「どうして桜がそんなことを?」
「――生理が早く来まして、今は寝込んでいます。サクラは重いのですよ、体質柄」

 ――そうなのか、って。
 生理なんてモノはないから実感はないけど、晩には無理して元気そうな振りをし
ていた桜。そんな体調なら俺だって何も言わないのに――

「だ、だからライダーが?」
「はい、そろそろ士郎が切ながっている頃だから、私に慰めて上げてほしいと――
枕頭の桜からそう」

 それで、襲われてペニスを剥き出しにされている。
 ズボンは腰の下まで開かれて、トランクスも反下げにされている。そしてライダー
の白い指に支えられている、ペニス。血管に伝わる振動が、ライダーに読みとられ
る気がして怖くもある。

「サクラの言うとおりでした、こんなに性欲を溜めて硬くなっていたのですね、士
郎のおちんちんは――」

 ライダーにそんな名前を呼ばれると、恥ずかしくなる。こんなに端整な美人なの
に、そんなことを言ったら汚れそうで、何か冒涜されるみたいで許せなくなる。

 指が、摘んで動く。
 しゅっと、まるで戯れに手淫をするように。細い指に握られていると、ぬるぬる
と尿道から先走りの液を垂らしてしまいそうなほど――

「ふふ、私が来なかったらこうして――」
「あ……は、ぁっ……」
「一人で手で慰めていたのですか? 士郎は」

 淫らな問いを発するライダー。
 そんな、オナニーをするかなんて、男根を摘まれながら言われると死にそうにな
る。それも、ライダーの目の前に恥ずかしい現物は晒されていて、オナニーなんか
しないなんて言っても聞きれられそうにない。

 指の上下運動に、腰が疼き出す。
 ライダーに愛撫されている、それがまた拍車を掛けて――

「ふふ、私もサクラもいるのです。士郎に手淫などはさせませんよ。少しでもこの
おちんちんが硬くなったら言ってくれればいいのです、サクラや、私としたいと―
―」

 流し目が頭に染みる。
 紫の髪は冷たく気持ちよさそうで、あれに巻き付けられたら心地よさそうだとか、
あられもない妄想が走る。それに、ライダーの――

「いつでもどこでも、いいのですよ? この寝室でも、私の部屋でも、サクラの部
屋でも。居間でもいいです、玄関で荒々しく押し倒して、貫かれてもいい」

 言霊が紡がれ、耳から脳を冒す。
 言葉がイメージになる。桜が居間で制服のスカートをまくり上げて、下着を付け
てない股間を晒している。玄関でライダーがジーンズを下ろして、まるまるとした
お尻を差し出してくる。

 そんな、極彩色の毒々しい快感の、妄想。
 頭の中がどうにかなってしまえ――というほどの。鼻の奥にきーんと、愛液の幻
臭が挿す。

「どこでも――新都の街の中でも、弓道場でも、どこでもしたいときは言ってくれ
ればいいのです。人前でもかまいません、むしろ彼らや彼女たちがどんな顔で私た
ちをみるのでしょうか――士郎――」

 痛いぐらい、ペニスは硬く反り返っていた。
 指の刺激と、言葉の妄想。いいのですよ――その言葉が脊髄を煮え立たせ、腰骨
の中を踊らせる。陰嚢がいたくなるほどの興奮。

 ライダーの眼鏡に擦りつけそうなほど、勃起する。
 それを愛おしそうに眺めるライダー。息が掛かると蜜のように濡れる。長い舌が
唇を割って、ぬらりと出て――

「ですが……今は私が士郎を慰めてあげます。こうして――ぁ、はぁ……」

 表面の感覚に、泣き笑いしたくなった。
 亀頭を舐められている。尿道口からつーっと舌先を下げられて、雁首の隙間を舐
め取られた。指で支えられ、起ったペニスに絡みつくライダーの舌と唇。

 唇が熱く、そして冷たい。
 だが、飲み込まれるとそれはペニスを溶かして飲み込まれるんじゃないかって思
うほどにぬらりと蠢いていて――

「うぁっあっ、あ………うっ!」
「ふふふ、サクラにもいつもされているでしょう? それでもそんな声を上げるの
ですか?」

 戯れ、挑発するようなライダーの言葉。
 答える暇もなく、ライダーがくちゅりと唇をまとわりつかせる。舌でずるっと亀
頭を包まれると、その感触が首がねじれそうに心地良い。

 ぐちゅぐちゅと、ライダーのフェラチオが続く。
 口でされるのはなんどもあったけど、その度に吸われるような、包まれるこの感
触は喉が震えるほどだった。エッジの起った快感が、神経の中を傷つけながら走り
抜けていくような――

「はっ、う――あああ……」

 ライダーの頭を掴んで、その口の中に吐き出してしまいたかった。そうすれば、
この責め苦のような快感から一瞬だけは解放されるんじゃないのかと。

「はぁ……ふふ、士郎の味です。これですね、サクラに口移しで飲ませてもらった
こともある――士郎の濃い香りがぷんぷんしますよ」

 亀頭を甘噛みしながら、ライダーは嬲る。
 指で陰嚢を転がしたり、揉んだり、お尻の穴まで触れてくる。欲しいままにされ
るペニスは唾液でべったり濡れ、骨でも生えたかのように硬い。

「このまま……サクラのところに行きましょうか? そして見せてあげるのです、
貴方が苦しんでいる間に愛しい士郎はこんなに硬くして、貴方のことを欲しがって
いるんですよと――」

 そんな事をされたら、堪らない。
 桜にこうして愛撫されている姿を見せつけれたら――理性が壊れてしまう。
 それも、ライダーに舐められ、たらたらと塗れた液体をまとわせながら。

「ふふふ、この香りをサクラに嗅がせたらきっとむしゃぶりつくでしょうね――ん、
もっと硬くなってきましたね、はぁ……ん……」

 また、ライダーの口に飲み込まれる。
 一方的に、心も体もライダーに責められていた。だが、むしろ無力に快感に震え
ている方が、どうしようもなく心地良い。そこが桜と少し違う感じが――する。

「はぁ……素敵です、士郎」
「あ、ああ……ふう、ライダー。こんなのは……」
「おや、男性はこんなにしてももはや理性も何もないはずなのに、頑張りますね貴
方は」
「ら――ぁああああ!」

 ライダーの指が責める。
 陰嚢を握り、竿を締め付ける。頭の中ががんがんする苦痛が、むしろ真っ黄色の
快感になって痺れる。腰が戦慄き、太股がつりそうになる。

「ふ……それだから、私は貴方が好きなのですよ、士郎。桜のためならこんな風に
なっても、我慢が出来る。半身を失っても止めることは出来ない。そんな貴方だか
らこそ――」

 ペニスに口づけされた。
 それは口舌の戯れよりも、忠誠と慈愛の仕草のような――温かく優しい感じが、
不意にした。


「だからこそ、サクラが愛するに足る、そして私が尽くすに足る方です。士郎――
だから、気持ちよくなって下さい……」

 白濁しそうな意識と、強すぎる快感。
 唇が俺のペニスを舐め上げ、包み、扱く。激しくも優しく、この優美なライダー
が全霊を持って奉仕するそんな、どうしようもなく鮮明な快感――

「はっ、あっぅ――ライダ――あ……」
「ん……んふ……ふぁっ、すごいですね、口の中からはみ出そうで――んっ、んんー」
「う――あああっう!」

 ライダーの首が、動く。
 それは、舌と唇に包まれていたペニスをもっと奥に――喉に飲もうという動きだ
った。ライダーの口はまるで性器になったみたいに、ペニスを包んで、飲み込んで
いく――

「ん……んんっ、ん……」

 桜の喉にペニスで触れた事は、ある。
 それでも苦しそうだったのですぐ止めたけど、ライダーはむしろ、そんな喉で男
根を受け入れようとして――狭い咽頭に入っていく、有り得ない快感。

「うぁあっ!」

 根本まで飲み込むライダー。
 眼鏡のレンズに陰毛が触れている。腰に縋り付くライダーは、まるで口とお尻が
逆になってしまったように、俺の股間に深く刺さっていて――

「ん――んんっ、んん!」

 動いた。座位で抱かれるみたいに、頭が動く。
 喉に締め付けられ、粘膜の温かい襞に亀頭を擦りつける。それは性器に包まれて
いるのと異なるが、それでも背徳的で奇形的な快感。

「はあああっ、うう!」

 腰が、ライダーの喉の奥を突こうとする。
 頭をつい掴んで、もっと深くに抉り込もうとしていた。腰が弾みだし、堪らなく
震える。じゅふりじゅふりと起つ濡れた淫音、それに――高ぶりきった神経が、脳
を揺すぶる。

「はぁ――くっ、ああっ!」

 ライダーだって、こんなのはきついに決まってる。それなのにくわえ込んだ顔が、
ぞくぞくするほど楽しそうに見える。喉まで男根を抉り込まれて、笑って見上げて
くるそれは、魂まで淫らに振る舞っているようで。

 快感は、思考を遮る。
 ライダーに飲み込まれ、陰毛を唾液で濡らす。
 喉の奥が亀頭に触れる快感、むずむずと腰の中に甲虫めいて潜っている官能が、
弾けようと這い上がってくる、この――絶頂感。

「ライダー、俺、だから……」

 慌てて頭を退けて、抜こうとする。
 しかし、縋り付くライダー。このまま喉の奥に射精したら、窒息するんじゃない
かと――

「ん――ん、はふ――んっ!

 喉の奥がきゅっと締まった。
 まるで膣口が締まるみたいに、こんな刺激で責め立てられては、堪らない。

 瞬きが無闇に繋がり、目がおかしくなりそうな快感。

「あああっ、うっ、ライダー――!」

 尿道を駆け上がる、煮える精液。
 それがライダーの喉を直に灼くのが、わかった。
 どくどくと、空気に触れることもなく身体から身体に、体液を注ぎ込む。ライダー
の背中が二度三度と、痙攣する。

「あ……わるい、ライダ――ぁっ、ああああ!」

 それで、終わりではなかった。
 快感は悪夢めいた影絵を動かす。紫の髪に踞る裸体が、また妖しく蠕動を始める。
口にたっぷりと精液を満たしたまま、ライダーの喉がまた締め付ける――

「んー、ふ――んふ、んー……」
「そんなっ、ああ、くはぁ――っ!」

 抜かずにセックスを持続させるような、切れ目のない快感の連続。僅かに谷に下
がったかと思うと、むりやり頂の上に引きずり上げられる。

 ぐしゅぐしゅと、唇から精液が漏れる。
 まるで、ライダーが唾液の代わりに精を漏らしているみたいだった。ぬるぬるに
なった口腔のなかで、液体と男根と舌が、こね合わされる。

「はっ、あああ、く、あああ!」

 ペニスは柔らかくなることを許されない。
 魔力めいたライダーの口腔がひたすらに愛撫を続ける。これは慰めるなんてもの
じゃないくてあたかも駆り立てているようだ。

 射精して萎えることなんか、ライダーは許さない。だから髪を掻き分けるのも惜
しんで、こんなに激しく腰に抱きついて、ひたすらに――

 じゅるり、と啜る音。
 漏れる精が身体を濡らす。熱い、自分が出した液体がこんなに熱いとは知らない
ほどに。ならばライダーの口腔はどんな香りで爛れているのか、想像も出来ない。

「ぁ――はぁ、んっ――」

 たらたらと精液を垂らしながら、ライダーが顔を上げる。零れた精液と前髪のま
とわりつく眼鏡、魔眼の瞳は饗宴の光に燃え、唇からはいつまでも白く濁った精液
が吐き出されるみたいな――淫らで恐ろしい、乱れた女神の姿。

 指が、ぬるぬると粘土細工のようにペニスを捏ねる。
 その痴戯めいた振る舞いにも、身体は燃えて応えようとした。

「はぁ、素敵です士郎、こんなに射精してもまだこんなに硬い――ふふ、これなら
サクラの言いつけも果たせそうです」

 笑うライダー。妖しく、そしていい知れない歓喜に震えている。横たわる俺は、
彼女の手に股間を弄られながら荒い息を吐く。

「なんだ――それ、って」

 桜の言いつけ――と、ライダーは言っていた。
 そうだ、最初の頃にも何かそんなことを言っていた。それは後のお楽しみだって
――

「そうですね、お教えしましょう。それを私にしてくれるのは、士郎しかいないの
ですから――」

 まだ白い精液の糸を引きながら、囁く唇。
 ライダーが立ち上がる。一糸まとわぬ裸体、でも紫の髪はどんな豪華な錦よりも、
豪奢に彼女の身体を飾る。
 均整の取れた身体には、ただ呆然と見上げるばかり。

 美しいから、見惚れる――だけじゃない。それでもなお、ライダーの身体は雌の
香りを漂わせていた。

「士郎……ふふ、見えますか?」

 ライダーの指が示した場所――一瞬だけ見て、本能的に目を背ける。そこは髪と
同じ色をした、陰毛に彩られた股間の丘だった。 

 ライダーの指が前から割れ目に入り、中の襞を広げている。精液と似た、生々し
い香りが流れてくる――

「ちゃんと見てくれないと、困ります」
「あ……うう、く……」

 欲望と本能の間で触れる視線を、そこに向ける。
 くぱりと口を広げされられた淫裂の中に、ひくついている襞とクリトリス。指で
曲げられたその形はあまりにも放縦で、危うい。

「こちらで、何度も士郎を愛させて頂きました」
「そ、それはそう、だけど」

 ライダーの指が、くにくにと中をかき混ぜる。
 すぐにでも、目の前の女性器にむしゃぶりつきたい、指のうごきでつっと透明な
愛液を垂らす、秘裂に。

 焦らされている犬のように、身体が灼ける。
 股間に血と快感が集まり、硬く腫れ上がる。

「言いつけは――私一人の時は、士郎をここで受け入れてはいけないと」

 指先がつついているのは、奥の膣口。
 腰を前に突き出すような恰好で立っているライダー。破廉恥な恰好のまま、理解
できない事をを囁いている。

「ですので――」

 指が離れ、陰唇がまた口を合わせる。
 ライダーは目の前で、まるでダンスを踊るようにくると回れ右をする。髪が柳の
枝のように舞う。

 俺の膝を跨いで、背中を向けて立った。
 俺の方を、背中越しに振り返るライダー。その顔はどこか戯れるように、笑って
いた。

「う――ど、どうするんだ?」 

 目の前の白く綺麗なお尻に、圧倒される
 手が、髪を払いのけて、その二つの丘を摘む。指が凝脂のような白いお尻に食い
込むのは、目に突き刺さるほどに官能的だった。

「こちらで――」

 大きな白桃を割るように、ライダーの手が動く。
 お尻の二つの丘を、左右に割るように。
 目の前に、一番人体の中で無防備な場所を晒し出すライダー。お尻の谷間には、
きゅっとした菊門、というべき窄まりが息づいている。

「こちらで、士郎を受け入れるようにと」
「え――こ、これってお尻、じゃないか?」

 そんなところに、このペニスが入るわけがない。
 ライダーの膣でもけっこうきついのに、出すための排泄器官に、どうして入れら
れるんだ――

「ご安心下さい――んっふ――ぁ――」

 ライダーの手が動き、指が肛門に触る。
 そして、指が窄まりの中心に触れると、くっと――中に沈み込む。まるで肛門が
指をくわえ込んだように。

「ぁ……ん、はぁ…… 

 人差し指が、少しづつ進んでいく。
 精液に濡れていたけど、オイルとかで濡れているわけじゃない。それなのに、ラ
イダーは自分のお尻の穴に、自分の指を突き立てている――つるんとしたお尻が、
膝裏がふるふると震える。

「どう、ですか――ぁ……士郎……」
「これって、その……う……」
「サクラに、慣らして貰いました……ふふ、毎日サクラは私のお尻の穴を舐めて、
指や恥ずかしい道具でほぐしてくれるんですよ――んっ」

 指がにゅるり、と奥まではいる。
 口を広げて飲み込んでいる様が、言い様もなく淫蕩だった。そして、毎晩桜がラ
イダーの肛門調教を――

「私は、こちらでしたら……いつでも士郎としていいと。そのためにサクラが私に
こんな身体になるまで、してくれたのです――はっ、んん、んは――ああ……」
 
 指が、桜の指と錯覚する。
 耳の奥で幻聴が鳴る。それは桜の声色を借りて、耳の奥に囁いていた。

 ……――ほら先輩、ライダーってこんないやらしいアナルをしてるんですよ? 
わたしががほぐして先輩のために、って思ったのに、ライダーったらアナルでひと
りえっちしちゃうくらい肛門で感じちゃうです、ほら、あんな風に――

「ん……ですので、士郎……下さい……」

 ……――ほしがってますよ、先輩? ライダーってお尻がむずむずする身体にな
っちゃったんです、知ってます? ウォシュレットでずーっとライダーったらお尻
の穴を洗ってるんですよ? もう、お尻で感じて堪らない身体になっちゃったんで
す、だから先輩が――……

 指が、抜かれる。
 きゅっとまた口を閉じる肛門。それを、桜は愛撫し抜き、ライダーは自分で慰め、
この淫行の時を待っていたんだと。

 筋肉が、動き出す。全身に力が満ちあふれ、熱い。それは魔力のようでもあり、
また根元から湧き出すマグマめいた熱い力でもあった。

 股間は、もう訳の分からないほど硬い。
 どこまでが自分の身体で、どこからが肛門を犯し抜く鋼の武器に変わり果ててし
まったかと思うほど。

 ライダーの瞳が、期待と欲望に滲んでいた。

「士郎、私のお尻を犯してください。これから、私はどこででも士郎にお尻を犯さ
れる、貴方の僕です。サクラともども、愛してください――」

 立ち上がり、ライダーのお尻をわしづかみにする 
 指が騒ぎそうな、柔らかい肉体。さらさらとした髪を掴んで、握りしめたくなる。

「ライダー……いいな?」
「は……ぁぁぁ……はい、どうか、士郎の熱いペニスで私のお尻の穴を貫いてくだ
さい――」

 亀頭を、白い魅惑の谷間の穴に据える。
 腰をしっかりと手に取る。尖端に触れる肛門は、ライダーの息の度にひくひくと
震えていた。

 その呼吸を盗むようにして――腰を捻り込んだ。

「あー……っっっ、はぁぁぁ!!!」

 ライダーの髪が舞った。
 身体が弓ぞりになり、腕が宙を泳ぐ。ライダーの身体が逃げて、倒れ込むかと思
った。

 だが、熱い。肛門が締め付けるこの男根の接合部で、ライダーは逃げることも叶
わなく、身体が繋がっている。

「ひっ、いいー……ぁああっはあああ!」

 ライダーの嬌声が、悲鳴じみたモノになる。
 こんなきつい穴に、太い男根をねじ込まれれば痛いに違いない。だが、悲鳴は一
瞬で、すぐにライダーの肛門は締め付ける――

「く……ああ、ライダー……に、入ってる……な」

 脳に水が溜まりそうな、痛々しい快感。
 締め付けが深く、ずきずきと腰骨に応える。脊髄との関節が快感でずれてしまい
そうな、強い感触。だが、膝と腰を無理矢理に駆り立てて、ライダーを犯す。

 犯す――この言葉が、これほど似合う事は今まで感じたことがなかった。

「士郎……はっ、私はっ、あああ……」
「えらいぞライダー……」
「そんなっ、私……ぁ……ぁあああ……んっっ!」

 ライダーの細い腰を抱きしめながら、突く。
 無理矢理犯しているんじゃない、こうしないとぎしぎしと銜えられて、動けなく
なるからだ。
 挿入された男根が、ライダーの肛門の中を、体内を行き来する。膣性交とちがう、
深くて強い感触。

「私……んっ、んんー、んんはぁぁぁ!」
「ちゃんと桜の言いつけ通り、お尻でえっちしてるからな。桜もきっと悦ぶだろう
な――」
「そんな……私は……ああああっ!」

 背中が暴れる。こうして俺を受け入れているのが、快感なのか苦痛なのか。挿し
ている身体もどこか悲鳴じみた叫びを上げているのに、ライダーは……

「サクラ……ああっ、私は、士郎に………」
「ああ……すごい、こんなにライダーに締め付けられると、忘れられなくなりそう
……ああっ、ふっ、あ……」

 腰を打ち付ける。目一杯広がって、ペニスをくわえ込む肛門。精液をこびり付か
せたままに差し込んだ男根が、どろどろと白濁液を垂らしていた。

 まるで、ライダーのお尻が精液を漏らしているみたいな――このお尻の姿だけで、
目眩がしそうだった。

 肉と液体の混じった音の中に、桜が心に囁く。

 ……――どうですか? すごいでしょうライダーのお尻って。わたしもライダー
を可愛がったんです、こんな風に身体をくねらせるほどお尻で感じていて、きゅー
っと締め付けてくるんです。先輩のおちんちんが入ったら、きっと我慢できないほ
ど気持ちいでしょうね、どうですか、先輩、ライダーのアナルって――……

「いい……桜、ライダーのお尻は……こんなに……」
「サクラ、私は……はっ、ああ、士郎が、私の中でこんなに熱くて――奥までっ、
ああこんな奥まで――っ!」

 ライダーのお尻は、どこまでも深く犯せそうだった。行き止まりがあって、ぐっ
と持ち上げるとこつんと突く膣とは違う、深い挿入感。

 ライダーも俺も、桜とお互いの名前を口にして、身体を合わせる。手は柔らかい
胸を掴んで、抱きしめる。身体を走る甘い波のような、快感。

 身体の芯から、滲み出る液体が背中を流れて腰の中に溜まる。それはねばねばと、
身体の奥の管の中で満ちて膨らんでいくような――

 熱く、弾けそうだった。
 肛門を犯し、犯されるライダーと抱き合って、立ったままこんな激しい性交をし
て、それもお尻に男根をくわえて、髪を振り乱して――

「はぁっ、ライダー……ライダー、はあああっ!」
「士郎、サクラ――ううっ、ああああー」

 身体が踊り、締め付ける。
 脳がおかしくなってしまう、身体が竦み上がって痙攣しそうな、仰け反る快感―


 ライダーのお尻の中で、男根は血管と骨が妖しく生えそろったように硬い。
 それが、びくびくと呻いている。ライダーの体の中で吐き出したいと。脈と息が
早すぎて、身体が追いつかない。


 囁き声も、耳の奥で鳴る。

 ――先輩、ライダーの中でいっちゃってください、と。そしてライダーが振り返
り、

「士郎――私のなかに、下さい――士郎のっ、熱い精を――はあああ!」

 ライダーに、深く抱き合わさる。
 そして、体の中の、直腸の奥に吐き出す。熱い精をどくどくと身体に満たしてい
く、つま先立つほどの――震え。

「ああ……士郎……こんな……はぁぁ……」

 顎を逸らして、震えるライダー。
 身体の奥底にまた熱い物を注がれて、震えているのか――こんな激しい交合を受
け止めた、しなやかで豊かな身体を抱きしめる。

「あ……」

 ――足元が、ない。
 力が抜けてしまって、それなのに射精の後の尻が痛くなるような痛みに似た余韻
がある。さらに、ライダーも腰が抜けたようなって重心がずれる。

 そのまま、ライダーと一緒に倒れ込む。
 紫の髪が、ヴェールみたいに体を覆う

「あ……たたた――大丈夫か、ライダー」
「士郎こそ……あ……んっ!」

 にゅるっと、ペニスが抜けた。
 その瞬間に、ライダーの背中がぞくぞくっと震えて――出る時は、気持ちよかっ
たんだろうか。

「はぁ………あっ、ん……」
 
 しばらく、背中を抱いて一緒に座り込んでいた。
 びっしりと浮いた汗が冷たく、虚脱感がやってくる。ライダーも首が据わらない
みたいにくらくらと振れていたが――

「……はぁ、これでサクラの言いつけを、全て果たせました。ふふ、良かったです
よ、士郎」
「あ……なんか無理して、御免。というか、あの最中に言ったお尻でいつでもって
……」

 あれは、俺を興奮させるための嘘――なんだろう。だってどこでもいつでもライ
ダーのお尻を、なんて言われても、困る。

 振り返ったライダーが、うっすらと目を細める。
 あれだけきついえっちだったのに、もう平気……なのかな?

 はぁと溜息を漏らしていると、ライダーが眼鏡を直して話し掛けてくきた。それ
は――

「――サクラの希望ですよ、それが」
「……う、ちょ、ちょっとそれは……ああでも、こんなのしちゃうと忘れられなく
なりそう……」
「おや、それはそれは。サクラを悔しがらせますね、今度のセックスは激しそうで
すね……期待しましょう」
「だっ、あーっ! なんかそれは、ちょっと困る!」

                 《おしまい》