「キスしてほしいの」
                     西紀 貫之
 


「先輩ー!」

 茶道室の戸に手をかけ、思いっきり開け放つ。
 高速で敷居の上を撥ね飛ぶように開いたりしまったりする戸の奥で、シエルの顔が
げんなりとしていくのが見える。左右にぶつかり撥ねる戸の音にビックリしたのもあ
るだろう。
 戸が左右に撥ねるのを止め、半開きになった向こうで先輩は一つため息をついた。

「いつになくパワフルな登場ですね」
「はっはっはっはっは」

 今度は静かにカラカラと戸を開けて入る。

「いやぁ、先輩に会いたくなっちゃってさぁ」
「それはとてもうれしいのですが」

 と、そこで彼女は正座をしたまま手で俺を制した。

「そのやる気まんまんな股間はなんでしょう」
「いやぁ」

 ははははは。
 もうすんごくしたくなっちゃってさぁ。
 股間にテントを豪快に張ったまま、すべるように和室に潜入。そのまま先輩の目の
前に滑り込んで正座。
 わが息子は、シエルの口元に向かってそそり立ち、そのさきっちょは時折ピクピク
ンとゆれている。

「……鶺鴒の尾のように上下する切っ先。並の剣術者以上の気迫が向けられています
ね」

 先輩が少し困った顔で息子を見つめている。

「そんなにしたいのですか?」
「おうよ!」
「……だめです」

 む、即座に否定されてしまった。

「なんか遠野くん、最近するためだけに私に会いに来てませんか?」

 頷こうとした瞬間、先輩がすごくコワイ目でにらみました。

「それはちょっと哀しいですよ?」

 まぁ、たしかにそうなんだが。

「だってだって先輩。今まで不健康だった体が、一気に健康体になったんだよ? 
日々溢れ出るこのリビドーの処理に戸惑う俺の気持ちもっ」

 すげえ自分本意なセリフ爆発。

「そういう切ない時には、自ら握って擦る伝統的な自慰があるでしょう」
「まぁ、それもまた青春だけどね」
「そうです。私は遠野君の自慰の道具じゃありません。愛が最近薄いと思いませんか?」

 むう、欲情先行型が裏目に出たか。

「そうだなぁ……すこし冷静になってみるか」
「そうですよ」

 冷静になってみよう。

「そうだ先輩」
「はい?」
「……キス、ならいい?」
「キス? ……はぁ」

 すこーし頬を赤らめる先輩。
 ふふふ。

「口と、口。恋人同士の愛を確かめ合う伝統的な儀式。これならいいでしょ?」
「え、ええ……まぁ」

 おーし、じゃぁ決まりだ。

「さ……先輩」

 にじり寄る俺。
 恥ずかしそうに目を伏せる先輩。

「こうして改めてしようとすると、恥ずかしいものですね……」

 と油断してる隙に。

「うりゃさー!」

 突き出された顎に手をかけ、思い切り押し倒す。

「ぐっは!」

 ふふふ、さすがの先輩も避けられなかった模様。
 んでもって、正座のままのけぞった先輩のひざをすばやく抱え上げる。

「ふふふふふ」

 ほら、もうすでに女性立膝の正常位スタイル。

「なにしますか!」
「……いや、だからキスだってば」
「この体位のどこがキスかぁ!」
「ふふふふふふふふふふ」

 俺はチャックを開けると、おっきくなった逸物を掘り出した。んでもって、先輩の
薄いピンクのパンチーの股間部分にあてがう。

「……と、とおのくん?」
「これはキスなんだってば」
「は?」
「だって、口と口をくっつけるわけだし」

 口と口。
 膣口と鈴口(尿道口でも可だ)。

「………………………………」
「ふふふ、声も出まい。俗に言う『先っちょだけ、先っちょだけだからっ!』ってや
つさ」

 くりくり。
 先っちょでパンチー越しに先輩を弄くる拙者。

「お? なんかヌルヌルになってきてない?」
「き、嫌いです」
「はっはっは」

 まぁほら、キスはOKだそうだから……よいしょっと。

「あっ」

 めくって……宛がう。

「………………」
「ほーら先輩。キスだよー」

 ぅおお、こういうのも気持ち良いな。

「でも入れない。キスだもん」

 ぬるぬる。

「あー、残念だー。俺はこんなにも愛しているのに先輩の体だけが目当てと誤解され
るくらいやりまくった償いがあるからコレ以上はできないー」

 もちろん棒読み。
 ぬるぬる。
 ヌルヌル。
 ぬるぬる。
 ヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌルヌル。

「…………と、遠野くん」

 ふふふ、堪え切れなくなったかなシエルくん。

「そ、そうですね。キスだけという約束ですもんね」

 む、先っちょだけのキスなんてあるかーい! というツッコミはないのか。
 こりゃ作戦ミスか。

「遠野くん、その……ディ……ディープキスまでならOKです」
「は?」

 ガッシ!
 俺が?マーク乱舞させている隙に、先輩は両足を俺の腰にまわしてきて……。
 ぬるん!

「あふぅ……」
「ぬああぁ」

 足を閉めるもんだから、入ってしまったではないか。
 うぉ、気持ち良い。
 ……こつん。
 お? 奥まで行ったか。

「ふぅー」
「先輩、これじゃキスにならないよ?」
「ふっふっふっふ。乗せられるのがイヤだから、素直にさせてあげません」
「は?」
「ほら」

 と、先輩は足を絡めて腰を密着させてくる。

「ね? 奥にあたってるでしょう」
「は、はぁ」
「子宮口と鈴口。立派にキスじゃないですか」

 ……………………………………。

「遠野くん……隙あり!」
「お? おああ!」

 気がつくと、俺と先輩の上下が逆に。

「あ……」
「うふふふふ」

 先輩、なんかやる気モードだったりする?

「ディープキスなので下を……いや、舌をちゃんと奥まで入れて下さいね」
「あ……あひ?」
「まったく、こんな下らないことを考えなくなるくらいしてあげないといけません
ね」
「あ、あひぃ!」

 ……8回。