「秋葉も……兄さんものにしてください」

 そして、倒れ掛かるようにしなだれかかる。
 胸板にかかる秋葉の双丘の感触と、シャツ越しに感じられる小さい突起の感
触に、志貴は目が回る思いだった。同じくして顔にかかる秋葉の酒気交じりの
甘い吐息と、潤んだ相貌。そして上から頬にかかる秋葉の長い髪の感触と洗い
立てのリンスの香り。その全てに、志貴の男は振るい出していた。
 自分のものにして欲しいと言う秋葉の台詞がそれらと思考の中を反響し、燃
えるような感情と共に志貴は強く秋葉の唇を吸っていた。
 下からの求めに、秋葉は身を任せるように、そして自分からも求めるように
唇を押し付ける。

 思いの丈を確かめ合うかのような長い時間口付け。慣れないキスの鼻からの
拙い呼気が、お互いの頬と耳孔を刺激しあい、段々と厚く熱を帯びたものに変
わってゆく。
 その熱が、熱い口付けでは収まらないくらいに高められたとき、やっと二人
は唇を離した。荒い呼吸が交わされ、立ち昇る男と女の匂いが絡まりあう。

「秋葉」

 抱え、志貴は秋葉の体をベッドに仰向けに寝かせる。
 横から乗りかかるように、志貴は秋葉の頬に手を添える。その暖かい感触に
目を閉じ、秋葉は全てに対してコクンと一つ、頷いた。
 優しく左腕を秋葉の枕代わりにまわしながら、志貴は首筋に秋葉の荒い呼吸
を感じながら、寝間着の上から乳房に手を乗せる。
 全体にかかるように優しく押し当て、その壊れそうな柔らかさと、手のひら
に小さく感じる固いものを確認する。
 頬と頬を合わせながら、ゆっくりと円を描くように手を動かす。目を閉じた
秋葉は、全てを志貴に任せるように体全体でその愛撫を感じている。
 揉むと言うよりは、捏ねるような優しい愛撫だった。不規則に力を入れるが、
それも優しい力強さだった。秋葉を思う志貴の、彼女と付き合う呼吸を知り尽
くしたかのように手馴れたものだった。指の股に突起したものを挟み、捏ねる
動きの中で愛撫するたびに、秋葉は切ない快感の吐息を挙げる。
 その吐息を身近に感じるように、志貴は彼女の首筋に顔を埋めるように吸い
付いた。先ほど秋葉に受けたような舌での愛撫で、後れ毛と一緒に白いうなじ
を蹂躙するように舐め上げる。
 快感を感じる場所が増え、秋葉の切ない囁きが次第に甘い響きを帯びてくる。

 秋葉も一人で慰めるとき以上のものを感じ、困惑の中で志貴の愛撫を受け入
れている。その切ない女の疼きを間断なく責められ、衝動的に秋葉は志貴の寄
せられた頬に舌と唇を這わせる。その動きから志貴も一旦うなじの攻めを止め、
首を上げると秋葉の唇を強く塞ぐ。秋葉も応えるように、自然に舌を突き出し、
絡めてくる。何時の間にか尻に回された志貴の手が、豊かな手応えを返す丸みを、
強く捏ねるように揉みしだく。

 硬い下半身の緊張を突き崩すかのような、温かい志貴の手による激しく熱い
愛撫。秋葉は内股に宿していた緊張を解き、志貴の足に自ら足を絡めるように
抱きつく。二つの体が一つになるかのように絡み合い吸いあう愛撫が終わると、
抱える腕はそのままに、志貴の利き手は秋葉の寝間着をめくるようにその白い
腹部に添えられる。
 体に直に感じる熱い男の体温に、秋葉は一瞬身をこわばらせる。
 志貴も反射的に手を引きそうになるが、そのままブラをつけていない秋葉の
乳房に手を伸ばす。

「秋葉、ブラつけてないのか?」

 めくれた上半身を恥じるかのように身を捩り、秋葉は小さく頷いた。

「こうなりたかったから……着けてこなかったの」
「……そうか、脱がす愉しみもあるのになぁ」

 お互いに笑い合うと得心したように志貴は腕を抜き、秋葉は自分から寝間着
の上をめくる。

「あまり大きくないけど、兄さんのものよ」

 めくった上着で顔を隠しながら、上目で秋葉がそう囁く。
 志貴は、初めて目の当たりにする妹の白い肌と大きな二つのふくらみ、そし
てその上の桜色のちいさなふくらみに目を奪われた。その白い体を確認するか
のように、手を臍の部分からゆっくりとおなかを通って乳房まで這わせていく。

「秋葉」
「…………?」

 志貴に何と言われるか恐々としながら待っていた秋葉は、真面目な感情の込
められたその言葉に身を硬くする。

「お臍の穴まで綺麗だね」
「や、やだ兄さんっ」

 志貴はこのとき、恥ずかしさで染まるのは頬だけじゃないことを知った。
 白く桜色な肢体に舌を這わせ、全身を舐めるように愛撫する志貴。
 乳房を両手で刺激しながら、腹部に唇と舌の愛撫を降り注ぐ。

「に、兄さん、私何だか…………ぁ」

 志貴が秋葉の痛いほど尖った両乳首を摘み上げたとき、秋葉の体が大きくビ
クンと震える。
 寝間着を咥えるようにして声を押し殺し、秋葉は少しして大きく息をついた。

「秋葉、もしかしてお前」

 手を止めた志貴は秋葉に問い掛ける。
 秋葉はその意味合いを汲み、今まで以上に赤くなって頷いた。

「うん、いっちゃった」

 未だ息の荒く落ち着かない秋葉の半裸を前に、志貴はどうにも我慢ができな
くなって、自らシャツを脱いだ。
 呆としていた秋葉もゆっくりと上着を脱ぎ、白い下着一枚の姿になる。
 改めて、二人はベッドの上で向き直った。

「兄さん、今度は私がしてあげますわ」

 秋葉は慣れない手つきで志貴を寝かせ、その残された下着に手を掛ける。
 そこは、見ただけで大きなものが自己主張しているとわかるふくらみがあった。
 そのままでは、脱がしにくい。
 志貴はそれを悟って、腰を浮かせて自分から露出させた。

「……ぁ」

 いきなり眼前に出た形の志貴のものに、秋葉は言葉を失った。
 大きさとか形とかいろいろな予備知識はあったものの、心に決めた相手のも
のを直視した衝撃で思考が一瞬停止してしまったようだった。

「こ、これが兄さんなのね」
「あ、ああ」
「入るのかしら、私に」

 志貴も秋葉に何と言われるか恐々としながら待っていたのだがまずは安心で
きるような言葉だった。
 志貴の足の間に寝そべり、志貴の下腹に張り付かんばかりに硬くなったもの
に手を添える。

「ああ、すごく熱くなってる」

 身を乗り出し、熱くなったものを垂直に立てる。

「……こんなに硬くなるのね」

 両手を添え、親指で鈴口のあたりの膨張した感触を味わっているうちに、そ
の先から薄くにじむものが出てくる。

「あら、これは何かしら」

 触ってみると、鈴口から指に掛けてきらきらした糸が引かれる。
 粘液のような体液を面白がるように触り、すくった指を秋葉は恐る恐る口に含む。
 味はわからなかった。
 志貴はそんな妹のしぐさに、余計自分の下半身に熱がこもるのを感じる。
 秋葉は添えた手を手前に、躊躇無く志貴のものを口に含んだ。

「……あっ」

 いきなりもたらされたその生々しい感触に、思わず腰が浮きそうになるのを
感じて志貴はうめきをもらした。
 先ほどの体液を搾り出すかのように、秋葉は口の中で志貴のものを味わって
いた。舌で舐め上げ、唇でしごき、唾液を含ませて先端を愛撫する。添えた手
は優しく茎を撫で、それらの快感に志貴は堪らず荒い息を吐いていた。

「秋葉、そんなにしたら……俺」

 先ほどのお返しとばかりに、秋葉は志貴の言葉を聞くと、より強く吸い上げ
る。添えた手は強く茎をこすり上げ、口元から濡れ湿ったひどく猥雑な音が響く。

「…………秋葉っ」

 秋葉の頭を股間に押し付けるように抱え込み、志貴はそのまま大きく腰を突
き出して射精の律動に身を震わせた。
 一通りの快感が身を過ぎ、脱力と共に秋葉を開放する。
 軽く咳き込みながら、秋葉は志貴の股間から、未だ硬さを失わないものを愛
しげに零しながら顔を上げる。

「いっぱい出ましたわ」
「すまん秋葉っ」

 快感に負けて、乱暴に押し付けたことを志貴は慌てたように思い出した。

「いいの。それよりも私で感じてくれたことが、すごく嬉しい……」

 秋葉はもう一度志貴のそそり立つものにキスをする。

「でも苦いと聞いていたけれど、そうでもなかったわ」
「あ、秋葉、飲んじゃったんだ」
「ええ、当然でしょう?」

 その言葉に、秋葉の口元で志貴のものが反応してピクリと脈打つ。

「ふふふふふ、まだ元気」

 秋葉は志貴の枕もとまで体を上げ、寄り添うようにして上目で囁く。

「お兄様、七年分の秋葉を可愛がって。……一回や二回じゃ許してあげません
からね」

 すでに汗以外のもので濡れそぼった秋葉の下着に手を掛けながら、志貴は一
度出したというのに秋葉の肢体に性急にのしかかった。

 






 翌朝。
 秋葉も志貴も登校した後、翡翠は志貴のベッドメイキングの途中で固まって
しまっていた。
 そこには取り繕ってはいるが、あからさまに男女の交情の痕跡が生々しく残っ
ていた。それとなく伸ばされたしわも、薄くなった染みも、漂う性臭も、隠し
ようが無かった。
 すかさずゴミ箱をチェックする翡翠。
 丸まったティッシュがたくさん捨ててある。
 鬼気迫る無表情で、翡翠はその一つ一つを手にとって調べる。
 乾ききっていない手ごたえのものも多い。
 男のものも、女のものも多かった。
 しかし、探しているものはついに見つけられなかった。

「あらあらあらあら」
「キャ!」

 突然後ろの耳元から声を掛けられ、翡翠は声を上げて振り向いた。
 いたのは七夜である。

「こんなにあるなんて、三回や四回じゃないですねえ。ゴム製品も捨ててあり
ませんし、これは翡翠ちゃん、生ですよナマ」
「…………やっぱり」
「しかし秋葉さんも早いですわ、よっぽど志貴さんを好きだったってことで
しょうねえ」
「……まさかその日のうちにするとは」
「でも翡翠ちゃん、『志貴さんは皆のもの』って言ってたわよね。あなたが納
得してるなら別にいいじゃない」
「それでも、志貴さんを一番愛せるのは私でいたいんです。それが、一晩に6
回も……しかもナマで」

 そんな生々しいものをいじくっていた指先をじっとにらみながら、翡翠は立
ち上がる。

「お料理も、夜のお相手も、なんか分が悪いわね翡翠ちゃん。なんならお料理
の特訓しましょうか?」
「ぅっ」
「せめて、ご飯を炊けるようになるまでにはなりましょうね。肉じゃがなんて遠い話よ?」
「……ぅぅ」

 ゴミ箱に傾れるように落ち込む翡翠。
 そんな翡翠に、七夜は思い出したかのようにこう言った。




「こうなると私だけ仲間はずれというのも寂しいし、今夜あたり私も志貴さんに……」
「絶対だめー!!」

 



<おわり>