ボ ク と 魔 王 の 物 語 Profile |
まずは君のことが知りたい。 でないと、人間になれるかどうか、 わからないからね。 ボクは語ることはなんにもない。 だって機械だから。 ――空っぽだから。 しかし、 素性ぐらいは 過去ぐらいは あるであろう。 さぁ語ってみせるがよい。 ――このわたしに。 ボクが、最初に覚えている光景は 蒼い――どこまでも蒼い空 そして天使がいたんだ。 ……ほぅ……天使、が―― うん。 天使はいったんだ。 ボクに『眠りなさい』って。 でも眠れなかったんだ。 悪い子、なのかな? くくくく、 確かにお前は悪い子だ。 でなければ、 このわれ、 この魔王に 出逢うということなど ありえないからな。 それで天使さんはこういったんだ。 咎を、罪を背負うのですか? って。 黒い子羊、なのかな、ボクって。 罪を犯すのか? 咎を負うのか? それもまたよい。 その名は良心。 善き心と呼ばれる それが苦しめる源なのだから。 苦しいけど、気持ちいい。 機械仕掛けのボクにも 心があるんだって この痛みが教えてくれるんだ。 烙印を背負うのは、生きている者のみ。 心ある者だけが背負える印。 苦しいか、苦しいであろう。 だが、それこそおまえの望んだもの。 渇望したものなのだ。 ――苦しむがよい。 身悶え、その重みに胸が張り裂けるがよい。 耐えるよ。 この痛みを。 喜ぶよ。 この痛みを。 ボクが機械仕掛けなんかじゃないって いってくれる、この痛みを。 では、取引をしないか? その痛みを、われに譲ってはくれまいか。 お前の、その痛みを買い取ってやろう。 代償は、咎、だ。 背徳の咎、で支払おうぞ。 でもこの痛みはボクのだ。 この痛みはボクが機械仕掛けなんかじゃないって その証拠だよ。 だから、駄目だよ。あげられないんだ、魔王さん |