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ねぇ、魔王さん

ボクはいったい何なの?
壊れかけた機械
それとも――人間?
































それこそ
お前が定義すべきこと

――どちらになりたい?
































ボクは……
人間になりたい。
































そうか。

ではお前は
学ばなくてはならない。
悪きことを。
そして善きことも。
その両方を
































両方学ぶって……
それって
不完全になるって
いうことじゃないの?
































人間になる、
ということは、

不完全になる、
ということだ。

叡智と愚鈍、
利己と利他、
善と悪、
高潔と堕落、
矛盾した不完全体に、な。
































それでも、ボクは人間になりたい。
完璧という名前の 欠けた存在なんて、イヤ。

欠けたまま、生きるのは
とても――辛いこと、だから。

不完全になりたい。
































不完全に生きるとは
とても辛いことだ。
とても酷いことだ。
不完全ゆえに苦しむ。
本当によいのか?
































いいよ!
ボクは人間になりたい。
どうしても人間になりたいんだ。
































よかろう。
では人間にしてやろう。

それはとても簡単なこと。
この世界のすべてを憎むのだ。
狂おしいほど憎悪するのだ。

――さすれば。
おまえは人間になることができるであろう。
































 そんな簡単なことでいいの?
 憎むなんて――そんな簡単なことで。
 ボクは――憎んでいるよ。
 ……こんなにも。
































 それでは、まだ足りぬ。
 お前はお前自身を憎んでいるのか?
 憎悪しているのか?
 血の涙を流すほど――
 心が張り裂けるほど――。
































 ボク自身を――憎む。
 そんなこと、簡単、だよ。
 機械仕掛けで産まれてきて
 こんなにも、憎んでいる。
 このチクタクという心臓を――。
 こんなにも。
































 よかろう。

 その憎悪は心地よいぞ。

 では人間になるための
 儀式を執り行う。

 二度とその姿には戻れないぞ。
 いいのか?