ボ ク と 魔 王 の 物 語
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君は異世界を見た方がいい。
そこで他の世界を、
他の考えを、
他の感情を、
知ることになるだろう。
































ボクはここにいるんだ。
他の世界なんて知らない。

ここの話でいいよ。
































よろしい。
ではここの話をしよう。

ここは白き地。
人はここを狭間という
世界にあまねく蜘蛛の糸の上。
空中にぶら下がる
空っぽの箱、だ。
































からっぽの箱?

蜘蛛の糸の上

――なに、それ?
   どうして――
































まずは聞くがよい。

空っぽの箱、
必然と偶然が入り交じった
空虚で不安定で
不明な中身

観測されぬ
――ゆえに未定な場所
































人はここを
蜜天と呼ぶ。
ここは花園。
蜜天の花園。
Grren Paradise.
意味は――背徳。
爛れた生臭い蜜だ。
































楽園?
こんなに荒廃しているのに?

花園?
花なんてひとつも咲いていないのに?
































ボクが今までいたところは
もっと人がたくさんいて、
ビルが建っていて、
クルマが走っていて、
こんなとこじゃなかった。
































世界はひとつではない。
お前がいた世界もまた一つの、
そしてここもまた一つの、
鏡像にすぎないのだから。
































難しいことはわかんないよ。
これは――夢、なの?
































すべてのものは現であり、
また幻である。
夢と思えば夢。
現実と思えば現実。
世界はおまえの心の中にあるのだからな。
































 ボクの心の中?
 それっておかしくないかな?
 だって、
 ボクの外の話なのに。
 なんで――中の話になるの?
































 心の中と外は密接な関わり合いをしている。
 外が天国になるか、地獄になるか
 それは、すべてお前の心しだいなのだ。
 だからこそ、心はとても重要なのだ。
































 それってボクに心があるっていうことだよね?
 あるんだよ、ね?
















 そういってほしいならば、そう告げよう。
 だが、その言葉では満足できまい。